INFINITY WORLDあたしと円堂
※後半ちょっと如何わしい&それに伴った暴力表現入ります。
【山崎side】
あれから花宮に指定された所へ急いで向かった。そこに残されているコンビニ袋を持ち上げながら花宮から経緯を詳しく聞いた。
「すると何だよ。そらさんが誘拐されたってーのか?」
これがそらさんが買ったっていう物かはっきりしねえのに拉致られたって話をオレは直ぐに飲み込めなかった。まさか身近にそんな事が起こるなんて想像した事がなかったから、現実味がなく理解出来てねえだけかもしれねえけど。
「現にアイツが何処にいんのかわかんねえだろうが。他の奴も探してるみてえだが…チッ」
焦りからか随分苛立った様子が見受けられる。触らぬ神に祟りなし…適当な発言は控えよう。
そう思っていると、花宮の携帯に着信が入った。
「誠凛の監督からだ。…何だ」
『花宮君、そらさんの居場所がわかったわ』
「!嘘じゃねえだろうな」
花宮の反応が変わりオレと古橋は携帯に近付いて耳を傾ける。
『この状況で嘘吐くわけないじゃない!そらさんの携帯を買った時に念の為にGPS付けといたのを思い出したのよ。それを辿ったらそらさんの家からそこまで遠くない所に反応があったわ』
「何処だ。場所を言え」
『花宮君だけで行くつもり!?駄目よ、何があるかわからないし危険なんだから!犯人は多分だけど今までの流れからいくと恐らく円堂だと思うし、うちの親が車出してくれて今からそこに行くから花宮君は一度家に帰って、』
「何の為にオレがここまでしたと思ってんだよ。それに此処にいるのはオレだけじゃねえ。いいから教えろ!」
切羽詰まったような表情で受話器越しに強く言った花宮に、受話器越しに溜め息が聞こえた。
『お前、うちの大事な娘に何強く言ってくれちゃってんの?』
「「!?」」
え、父親!?父親出てきちゃったよ!
『はぁ…状況が状況だ、焦るのもわかるし今は見逃しといてやる。場所も教えてやるが無理はすんな。オレも今から行くから』
「…わかりました」
そして指定された住所をオレの携帯に打ち込み、地図アプリで検索すると此処から徒歩で一時間くらいの所が表示された。
走れば然程時間も掛からずに着く場所だ。
「案外近いな」
「だがそこに荷物が放置されただけかもしれねえ。急ぐぞ」
そう言って走り出した花宮にオレたちは続いて走り出した。
【そらside】
「……ん」
意識が浮上して目を開けると、そこは暗くて冷たい所だった。コンクリートの地面に寝ており体を起こそうとするが上手くいかない。手首が前でガムテープでぐるぐる巻きにされていた。何とか起き上がると、腹部と項に痛みが走る。
あれ、あたし何してたっけ?……あ、そうだ。ストーカーに追い掛けられて反撃したんだった。そしたら後ろから襲われて…これって誘拐?拉致監禁?
辺りをグルッと見渡すと、何処かの工場跡地みたいな建物だった。コンクリートが積まれてたり何かの機械が放置されていたり、ちょっと寒い。
「起きたか」
「!?びっ、くりしたぁ…」
急に声を掛けられめっちゃ飛び上がってしまった。ちょっとだけ恥ずかしい。
振り返った先には30代と20代の男性。二人共薄っすら笑みを浮かべている。何ですか悪役気取りですか。そんな下手くそな笑い方じゃオファーはきませんよ。
「もしかしてあんたがエンドウ豆?」
「あの時もエンドウ豆言わはったけどお前知っとるやろ、名前普通に呼んどったやん。円堂勝負や」
「やっぱエンドウ豆じゃん」
「エンドウ豆ちゃう言うとるやろ!!勝手に変なあだ名付けんなや!!」
てへっと舌を出して笑うとイラッとした顔をする円堂勝負。随分関西弁の訛りがあるな。移ってまうわぁ。あ、馬鹿にしてませんよ。
「オレの事は調べたんか。偉い優秀な子がおるみたいやなぁ。情報なんか一切残してないつもりやったのに。京都から東京に帰る時、手ェ振って別れとったあの子らか?」
わかってんなら聞くんじゃねえやい。あたしは相手を睨みながらその隣にいる奴にも目配せする。
「そっちのは誰?」
「コイツはこっちに来た時に雇った奴や。一人では色々面倒な事も多くてな。お金渡したら喜んで手伝ってくれはったで」
あっそうですか。別に霊感があるとかじゃないのね。
「で、あたしに何の用?ってかアンタに物申す事がある!あたしの鞄に黒い石入れたのアンタなんでしょ?」
「せや」
「何勝手な事してくれとんじゃクソ親父!!危うく死にかけたわ馬鹿野郎!!大の大人が人様に迷惑掛けて飄々とすんなハゲ!!」
「ハゲてへん!!」
確かにハゲてない。寧ろフサフサ、てかちょっとイケメン。認めたくないけど。
「何でこんな事したのか教えて」
「隠すような事でもないし、ええよ。お前は外見張っとれ」
「へーい」
もう一人の男は大きい扉から外に出て行った。それを見送った円堂はあたしの方の近付きながら口を開く。
「お前には霊感があるな?霊力自体は普通より高いレベルやけど、その扱いはひよこ以下。オレはそんな奴を探しとった」
あたしの近くにある機械へ腰掛ける円堂は膝に腕をついて少し前屈みになりながら話を続ける。
「お前が何処まで知っとるか知らんけど全部教えたろ。オレは京都在住の普通の公務員、実家は寺でオレには霊感がある。霊力も高いしコントロールも出来る。言えば一流の霊能力者や」
自分で言うかね。
「親には寺継ぐように言われたけど寺の為に自分の力使うんが嫌でなぁ。オレはこんな所で留まるような男やない!思ってな。オレには弟もおるし弟はやる気あるで後は任せて、オレはオレのしたいようにするって言うて家を出た」
中々自己主張の激しい方ですね。
「オレには式神もおる。京に住み着く霊も妖怪も扱える。そんなオレは自分で作った妖怪が欲しなってな?研究して作ったんはええんやけど、上手い事実体化せぇへんくて」
ああ、成る程。この辺で何となく察しましたよ。由暗君といいこの人といい自分勝手な人が多いですね。
「言うたら霊と妖怪の間みたいな状態のばっかしか作れへんくてな。オレの霊力いくら与えても変わらへんソイツらに何が足りへんのか考えて、単純に生贄かな思って。そこで祓う力はなくても霊力の高い奴を探しに、他県からも京からも人の出入りが多い京都駅に行ってぶらつく事数日。お前を見付けたんや」
やっぱりか。つか仕事しろよこの人公務員なんだろ!
「オレから見ても美味しそうな霊力の持ち主やな思ったで。まあえらい強いお守り持ってはるみたいやったけど。東京までの切符買うん見て、京都に住む子とちゃうんやったらオレの所在知られへんかな〜思うてすれ違いざまに石入れたんや。まあ、結局結果が気になったから東京まで見に来たったんやけどな。まさかオレの名前まで知られとる程、情報探っとるとは思わんかったわ」
ハハハと笑うこの人を見ながら何呑気に笑ってんのと股間を蹴り上げたくなった。これなら赤君も怒るまい。
「石は壊されたみたいやな。妖怪の卵も消されて…残念やわ。にしても、最近何か色々しとったみたいやな?前に街中で見た時とほんの少しだけ違うな。霊力のコントロールが出来始めとる」
「前?…あ、もしかしてあの視線…」
岡さんと福君と会った時に感じた視線。思い当たる節があって円堂を見るとニヤリを笑った。
「せや。街中で奇跡的にお前見付けた時は喜んだで。けど普通の様子のお前を見てああ、失敗したんやなって思うと凄い残念やった」
「…で?あたしをまた捕まえて次は何すんの?つか仕事行け公務員」
「今は有給休暇中やでいいんですぅ〜。そんなん決まっとるやろ。実験や」
そう言って円堂がポケットから出したのは黒い石が数個。見覚えのあるそれを見て、この人が元凶だとはっきり認識してしまうと少し怖くなった。思い出すのは黒い鬼。あんな妖怪擬きをまた視る羽目になるのは絶対嫌だと思った。
「ふざけんな。あたしは道具じゃない。ってかあたしも忙しいんだよ!何より今は眠い!もうこんなしょうもない事はやめてさっさと京都に帰って仕事頑張って。これからもう何もしないって言うならこの前の事は許してあげるし、今の事も忘れてあげるから」
「オレの苦労が水の泡になるやん。もしこれで本当に妖怪作れたら意図的に霊障起こさせてお祓い出来て、公務員やってなくてもガッポガッポ稼げるんやで?」
全く魅力的に感じませんが。つか他の人を巻き込むな!
「その実験と研究に加担出来るんやで?喜ばしい事やろ。喜んで実験台になって下さい」
「何も喜ばしい事ないんですけど!!ってかマジでふざけんな!!クソみたいな野望の為に人様を巻き込むなハゲェェェェ!!」
「いっ!?」
ジタバタ足を動かしていると円堂の脛に足が当たったようで痛そうに声を漏らした。あ、と思っていると青筋浮かべた円堂と目が合った。た、短気は損気〜…。
「いだ!?」
胸元を軽く蹴られ重心が傾いた体が後ろへひっくり返る。ゴチンと後頭部を軽く打ってしまい絶対たんこぶになると思いながら、起き上がる前に足で胸元を踏み付けられ体重を掛けられる。
「うぐ、苦しいんですけどぉぉぉ」
「苦しくしてるんですけど?」
ニヒルに笑いながら見下ろす円堂を睨み上げていると足は外されたが、代わりに覆い被さるようにあたしの足の間に体を割り込ませてきた。な、何してんのこの人!
「ぎゃああああ!!ごっ強姦んんんん!!ふぐぅっ!?」
ガバッと口を押さえられ何処から出したのかガムテープを千切り口に貼り付けられた。
「んんん!ふんんん!!(クソハゲ!剥がせぇぇぇ!!)」
「何となく悪口言わはっとんのはわかるわ」
ならばと、ガムテープで縛られた両手をグーにして突き上げ鳩尾を狙ってこの窮地を脱出する!と思い行動に移すが、いとも容易く防がれてしまい万歳するように上へ持ち上げられる。
「はいはい大人しくする〜」
左手であたしの両腕を押さえ右手であたしの服に手を掛けた。ロングTシャツにパーカー、黒のズボンというラフな服装のロングTシャツの襟元に掛けられた手は思い切り下に引っ張られ、ビリビリッと音を立てて破れる。新しく買ったばっかなのに…!!
「んんん!!(弁償しろよ!!)」
「やめて!!とかじゃないんやろうな。弁償せえってか?」
わかるんかい。エスパーかよ、つかあたしの周りにエスパー多過ぎ。
「ああ、これね。強〜いお守りの感じがすると思ったら」
胸元にぶら下がるチェーンに通したお守り。それを取られその辺にポイッと捨てられた。
「ふんんんん!?(大事なお守りがぁぁぁ!?)」
「もうあんなん必要ないさかい。いらんいらん」
そう言ってお守りを投げられた方向を絶望の目で見ていると、その隙を突くように円堂が首筋に顔を埋める。
「!?」
ぬるりとした感覚が首を這い、ぞわっと寒気がして鳥肌が立った。
「んん!!ふんぐぅ〜!!」
ジタバタと体全体を動かし抵抗していると顔を上げた円堂にビンタされた。バシッと左頬に走る痛みに目を白黒させていると、ペロリと舌舐めずりをした円堂があたしを冷たく見下ろす。
「言う事聞かへん悪い子は鬼にお仕置きされるで?もしくは食べられるんやで」
鬼さん怖いでなぁ、と言う円堂はあたしの貧相な胸に手を伸ばす。仰向けで、しかも腕を持ち上げられている状態では楽しむものも楽しめないだろうに…。胸大きくなりたい。
「ちっさいなぁ」
うるっせぇ!!ほっとけ馬鹿野郎ゥゥゥ!!ぐすん。
しかしそう思っている余裕がなくなってしまう。
弄るような手の動きに吐き気がし、精一杯抵抗するが当然無視をされる。
しかししつこいあたしに痺れを切らせたのか、円堂は深く息を吐き出すと黒い石の一つを取り出しあたしの鎖骨辺りに押し付ける。
無機質な冷たい感覚に自然と体は固くなった。何やらブツブツと念仏のようなものを唱えた円堂の言葉に反応するように、黒い石があたしの熱を吸い取るように熱くなっていく。うわ、うわ、これやばいいいいい!!
「んっ!んんん!!」
離せと首を左右に振りたくっていると、人肌より少し熱くなった石をあたしの顔の横に置いた円堂。そこから何やら黒いモヤモヤした物が出てきて、あの時と同じように形を作っていく。
「これは一応餓鬼。飢えで亡くなった者がなる霊の一つで、妖怪にしたいんや」
小さい鬼のような顔でお腹が出た人並みの大きさのそれ。体は黒く、不揃いの歯の生える口から黒い息を吐き出した妖怪擬き。
ソイツはあたしを見下ろすとニヤァと笑った。あ、死んだ。
「今からお前の生気を吸い取り始める。そうすれば抵抗もしやんくなるやろ。久しぶりやでな、折角やしオレも若い姉ちゃんと楽しみたいやん。大人しくしときぃ。山口そらちゃん」
名前知られていたのか。目の前の妖怪擬きの恐怖と見ず知らずの人の手に掛かりそうになる恐怖で、自然と目に涙が溜まってしまう。
泣くな泣くな泣くな!!泣いたら余計に立場が悪くなる!そう思っていても、結局涙は溢れてしまうもので。
誰か助けにきて欲しい。何であたしがこんな目に。あたしに撃退する力があれば。
ぐるぐると頭の中で懇願や後悔の念が回る。円堂は再度あたしの首筋に顔を埋める。
これが終わったら絶対股間蹴り上げてやる。少しでも強いハートを持って最後はギャフンと言わせてやる。そう思った瞬間。
ガァン!!!
大きな音が扉の向こうで鳴り響き、あたしも円堂も吃驚してその方向を見る。ちなみにあたしの枕元に立つ妖怪擬きも吃驚して目を見開きながら音の方を見た。
重い扉がゆっくり開かれ、その隙間から月の明かりが差し込む、誰かが開けてるんだろうけど逆光でよく見えない。
すると、ドサッという音と共に外を見張っているように言われた男が扉付近で倒れた。白目を剥いているっぽい。
「ハァ…ハァ…、やっと、見付けた…!!」
「つか建物多過ぎんだよ此処!!」
「ハァ…中々手間取ったな」
聞き慣れた声に自然とブワッと涙が溢れた。凄いよ、原作ではゲスゲス言われてた子らがまさか来てくれるなんて誰が思うよ。
中に入ってきた三人の顔が逆光から外れてよく見える。暗いけど、よく見えた。
「テメェッ…そらから離れろ!!」
瞳孔がやや開き気味のマコマコがドスの利いた声で叫ぶように言い放った。ビリビリと怒りのオーラを感じ、ああ、あたしの為に息切らせて怒ってくれてるんだと思うと無性に嬉しくなってボロボロと涙が流れた。
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