INFINITY WORLDあたしが桐皇潜入
自宅リビングにて。
「第四回!チキチキ!みんなの学校に潜入してみよう大作戦んんんん!!どうもご無沙汰ですやってきました学校潜入ゥゥゥ!!」
パフパフパフ!
ビデオカメラの死角からひょいと顔を出して撮影開始。そうです。やっと再開しました学校潜入。
「ここ最近色々ありましたね!でも日が経ち大分落ち着いてきたので、再開したいと思います。今回の潜入先は〜コレ!桐皇!」
じゃん!と制服を写す。誠凛秀徳洛山ときて桐皇。予測していた人は多いのではないでしょうか。そうでもない?
制服は男女共に黒のブレザー。さっちゃんは上にパーカー羽織ってオリジナリティ出しているけど、あたしは一般生徒に紛れ込むので普通にします。
黒のブレザーに白のカッターシャツ、赤リボンがアクセントですね。下は白のラインが一本入った黒スカート。これが基本だが今は6月中旬で今日は少し暑い。梅雨に入ったが雨も降っていないのでブレザーは脱いでいこうと思います。
勿論眼鏡装備で今日はポニーテールにしています。
「さーて。峰さんはちゃんと授業を受けているのか!さっちゃんのモテ具合はどうなのか!若ちゃんの主将っぷりはどうなのか!良君は何回謝るのか!あ、これは数えるの面倒だわ。諸々調査したいと思います!!」
レリゴー!!あ、違うわ。レッツゴー!!
「いやぁ、やっぱいいね学校。青春の匂いがする。各学校全然佇まいというか雰囲気が違うから面白い」
鞄に仕込んだカメラに話し掛けながら校門を潜る。朝が少し早いので登校する生徒は疎らで、今は体育館に向かっている途中。
朝練してるかなー。峰さん来てなさそう。そう思いながら着いた体育館を覗き込むとバスケ部の面々が頑張っていた。あ、さっちゃんもいる。峰さんはやっぱりいなかった。
「よっし!5分休憩!!」
「「オス!!」」
「お疲れ様です!」
「「あっありがとうございます!!」」
ほうほう。若ちゃんの大きな声は通り易いですね。
さっちゃんが笑顔と共にタオルやドリンクを持って行くと一年の子達が食いつくようにお礼を言っているのを見てすげえモテてると目をかっぴらいた。
良君は安定の謝りキノコと化している。
他は特に面白そうな物は取れずみんなの頑張りっぷりだけを撮り、その場を後にして潜伏場所を探す。
屋上は峰さんのお気に入りスペースだろうし鉢合わせる確率が高いので行けない。図書室は覗いてみたがキリッとした厳しそうな司書さんがいたのでやめた。他にいい所はないかなと探すが見付からないので仕方なしに校舎裏の影を潜伏場所とした。
潜伏場所探しに時間を取ってしまい始業のチャイムが鳴る。あたしは慌てて準備をするとコソコソと盗撮と言う名の授業風景覗いてみよう作戦を決行する。まずみんな探さなきゃだわ。
「ブッフォ!!ヤバいこの峰さんパネェ!!」
撮影後、あたしは校舎裏に戻りビデオを見返して盛大に吹き出した。
峰さんとさっちゃん、良君、若ちゃんの順に撮影をしに行き見事バレずに撮れた。峰さんとさっちゃんは頭が目立つから直ぐに見付けられ、さっちゃんは真面目にノートを取って頑張っていたが峰さんは期待を裏切らず居眠りこいていた。
その時のシーンなのだが、先生がおじいちゃん先生で一番後ろの席で後ろに仰け反り居眠りこく峰さんに気付いていないのか注意をしなかった。しかし峰さんはそんな体勢で寝ているものだから目は白目を剥いて口からは涎が垂れていて、自分の「んがっ」といういびきに吃驚して飛び上がった瞬間が最高。周りの子も吃驚したけど峰さんを見てクスクス笑っているし、峰さんは峰さんで全く気にせず再度寝に入ったからそれも笑えた。
ちなみにそんな峰さんをさっちゃんは冷めた目で見ていてちょっと怖かった。
良君は良君でしっかり真面目に受け、女子から結構人気があるのか色々話し掛けられてその度に謝ったり爽やかな笑みを浮かべたりしていて、彼のモテる疑惑浮上に正直戸惑った。
うちの可愛い良君がモテモテ…!?ふしだらな女の子に捕まっちゃ駄目よ!そうカメラに吹き込んでおく。
若ちゃんは若ちゃんで朝練後で少しウトウトしつつも頑張っていて健気な様子が可愛かった。先生に当てられた時に返事が大きくて先生がビビってた。
そして若ちゃんも女子に結構話し掛けられていたので、みんなそろそろ彼女が出来始めるのではないかと思うと母親の心中の如く少し寂しい気持ちになった。こうやって巣立っていくのですね。
そしてもう直ぐ昼休み。ビッグチャレンジタイムのお時間です!
ビッグチャレンジタイムとはみんなにアクションを起こしてみようという作戦。誠凛でも順ちゃんと俊ちゃんに仕掛けたやつ。
さっちゃんは女の勘で気付きそうだし、案外峰さんみたいな無頓着なタイプでもそういう時は野生の勘的なので気付きそうだから、ここは若ちゃんか良君狙いでいきます。
カメラを鞄に仕込み直しいざ出陣。まずは食堂辺りを巡ってみよう。
そう思い校舎裏の影から食堂に移動しようと渡り廊下から校舎へ入って直ぐの曲がり角。
「…あ?」
「………」
パックジュースを飲みながら歩いていた若ちゃんと鉢合わせました。この付近にはあたし達二人しかおらず、若ちゃんを見た瞬間固まったあたしを彼は怪訝な目で見下ろしてきた。
何も作戦の詳細を考えないままで急に鉢合わせたのでパニックになり、向かい合ったままで何も言えずダラダラ冷や汗を流す。
「…何だ。オレに何か用か?」
「あ、いえ、あの…」
若ちゃんを見たまま動かないあたしに彼が声を掛けてくれたが、何を言えばいいかわからず曖昧に濁す。しかし折角鉢合わせたんだ、二回目はバレるリスクが高まるしこの機会を逃すわけにはいかない!
「あ、あの!」
「?」
「わ、若松先輩のバスケをする勇ましい姿が大好きです!これからも頑張って下さいっ!」
「!?」
「失礼します!」
「あっ、ちょ、オイ!!」
正に言い逃げとはこの事。精一杯の可愛い声を演出しながら言い切ると、ペコッと頭を下げてきゃーと言いながら逃げる。我ながら酷い演技だ。そして自分キモい。
若ちゃんはその言葉と行動についてこれず、やや赤面して呼び止めるだけで後を追ってくる事はなかった。ウブな奴め。
それから良君も見付け次こそちゃんとアクションを掛けようとしたが、一瞬目が合った時に僅かに瞠目し挙動不審ながらも何か探るような視線を向けてきたので「あ、このままじゃバレる」と直感し話し掛けるのをやめて逃亡。いいんです、チキンでもいいんです何とでも言うがいいわ。
そしてもう一つ。最近落ち着いてから「今何してますか?」の何も問題はないか窺う心配メッセージが届く頻度が減ったのだが、何故か今日に限ってさっちゃんからLINKでその内容が送られてきて(しかも望遠鏡を覗き込むスタンプ付きで)、もしかしてバレてるのではないかと思うともう大っぴらな行動が出来ないと思い自重する事にした。
ネエネエ 僕視エル?
「うっせえ!!」
イヤァ!!
活動を縮小せざるを得ない状況でこれからどうするか作戦を練っていた時、今までいなかったはずのおじさん幽霊が背後からやってきてニタリと笑うが、今話し掛けんなとイラッとしたあたしは鞄からシュバッと札を出して暴言と共に投げ付けた。
横暴なあたしの行動に涙を流しながら有白家に強制送還された幽霊を一瞥もする事なく、後は若ちゃんが部活の時に自慢するかの確認と峰さんの部活姿を見る為だけに放課後までじっとしていようと考えをまとめた。
「若松さんどうしたんだろ?」
「ああ?知らねえよ」
放課後。さっちゃんによってやや引きずられるように部活に来た峰さんとさっちゃんは、部活の準備をしながらコソコソ話している。内容はハッキリ聞こえないが、若ちゃんの事についてだと思う。
何故彼の事だとわかったのかって?それは二人の視線の先にいる若ちゃんがさっきから何もない所で滑ったり壁にぶつかったりしているからです。何やらボーッとしてるんだよね。熱かな?
「あ、あのすいません!主将大丈夫ですか?すいません!」
「あ?ああ、別に」
エリカ様かよ。そう言いつつも小指をぶつけたりボールを落としたりしているので、明らかに様子が可笑しい。
もしかして…もしかしてだけど、あたしのあの告白が尾を引いてる?…まさかぁ。
「若松さん、どうしたんですか?様子が変ですけど…体調不良ですか?」
「ああ?別に何とも」
「あっ!もしかして好きな人出来たんですか!?」
「ち、違ェよ」
さっちゃんは体調不良か聞いた後、少し考える素振りをしてフワフワした様子の彼の原因を女の勘と思い当たる限りで聞いてみたが、少し吃るだけで否定される。しかし峰さんはそれを見て然程興味はなさそうに、まるで当てずっぽうのように言いのけた。
「告白されたとか」
「ブッ!?」
しかしその当てずっぽうが図星だったようで若ちゃんは吹き出すと赤面しその場から少し後ずさった。
やっぱりあの告白が原因か。ごめんね若ちゃん。そんなに気にしてくれてたんだね。弄んでごめんね。
「ええー!?若松さん告白されたんですか!?」
「だ、誰ですか!?すいません!!」
「うっうるせえ!!ほっとけ!!」
「えー!!でも気になります!!」
さっちゃんは目をキラキラして食い付き同じように良君も興味津々で詰め寄る。そんな二人に何でもないと言うが、さっちゃんにしつこく聞かれて観念する。
「し、知らねえ奴にだよ!しかも告白っつったって別に付き合ってくれとかそういう事は言われてねえし、ソイツの名前も何年かもわからねえし、ただ一方的に言って逃げてっただけだよ!」
「それ告白か?」
「“若松先輩のバスケをする勇ましい姿が大好きです”って言われたんだよ!!文句あるか!!」
「興味ねえ」
「青峰ええええええ!!」
さっちゃんと良君には大した事じゃないと言うような話し方で答えるが、峰さんの言葉に対しカチンときたのか告白の詳細を暴露する。単純馬鹿なんだから。可愛い。
しかも一語一句間違えずに覚えてるよ若ちゃん。何てピュアな子なんだ若ちゃん。
峰さんのあっけらかんとした態度に若ちゃんは怒る。その近くで良君とさっちゃんが告白されたと聞いてきゃーきゃー騒いでいた。良君、お前女子か。
若ちゃんのウブな性格上、順ちゃん達のように自慢する事はなかったがそれでも告白を気にしていた事が可愛くて健気で、ネタバレした時にショックを受けるかもしれないので何かしらフォローを考えなければと思った。
部活風景で峰さんのチートな動きをカメラに収めてから帰宅する。帰宅後特に良君とさっちゃんから「今日桐皇にいましたよね?」メッセージがこないかドキドキしたが何もなかったので一安心。
「ミッションコンプリート!…なんとか」
今回もあたしのキメ顔で撮影終了。これでまた常連さんに編集をお願いせねば。
次は何処にしよっかな〜。県内の高校はあと霧崎と正邦ね。県外は海常と陽泉と…あ、あと福田総合だ。
うん。県外は出張みたいで別のワクワクがあるね。それでは、乞うご期待!!
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