INFINITY WORLD
あたしが二校潜入

「第六回!チキチキ!みんなの学校に潜入してみよう大作戦んんんん!!」

 パフパフパフ!

「さあ今回で六回目!早くも六回目ですよ!此処まで数名にしかバレずに出来た事が素晴らしいと思います」

 オープニングにも慣れた感じで音声を吹き込みあたしはカメラの前に姿を見せる。

「そして今回は何と!!テッテレーン!海常でございまーす!」

 イエーイと一人はしゃぐあたしは側から見ればさぞ可笑しい人でしょう。でももう慣れましたよ。何の事ない。
 制服は青のブレザーに水色のシャツに黒ネクタイ。爽やか、海って感じするわ。
 今日はちょっとギャルっぽく茶髪のゆるふわウィッグを被っています。きー君がいるんだもん。金髪の奴が注意されず茶髪が注意されるわけないと思ってる。金髪に注目がいかず茶髪に注目がいくわけないとも思ってる。光の加減で物言ってますすみません。

「アーンド!正邦でっす!!」

 そしてカメラの死角から出したのは正邦の制服。黒のセーラー服です。可愛い。

「海常はお目当ての人が二人だけ、正邦もともっきー以外知らないって事で二校をハシゴしたいと思います!ハードですねぇ」

 東京から神奈川までそこまで時間掛からないし、午前中は海常を回って午後は正邦を回る事にします。これから夏に向けて暑くなるし、暑い時に二校をハシゴしたくないので今日決行する事にしました。

「あ、そろそろ出ないと朝練に間に合わない。霧崎とは違って朝練ありますように!それでは頑張っていきま〜っしょ〜い!!」










「着いたぜ海常!そして何より吃驚!ギャルっぽい子が多し!」

 校門前に来ての第一声がこれです。朝練の時間帯で朝早いのにも関わらず女生徒が多い。いや、大量とかではなく早い時間帯にしては多いって事ね。
 これ…何となく察したよあたし。

 女生徒は殆どが校舎には向かわず違う方へ歩み進めている。その流れに身を任せて歩いていくと、その先には体育館。そしてシューズのスキール音やボールの跳ねる音に混ざり、黄色い声がちらほら聞こえる。うん、やっぱり。

 出入り口にいる女生徒に混ざってひょっこり中を覗くと中にはバスケ部の面々。そしてキラリとした汗をTシャツの襟口で拭い腹チラを見せ、真剣に部活に打ち込むきー君。イケメンかよ。

「「黄瀬君頑張ってー!」」

「今お腹見えた!」

 周りの女子はキャーキャーはしゃいでいる。しかし黄色い声なのは確かなのだが、部活中という事を気に掛けてか絶叫とかではなく思っていたよりは慎ましく応援していた。マナー守ってて偉いぞ少女達。集中切れさせちゃ駄目だもんね。

「腹チララッキーじゃん!今日は部活公開日だからね、きっと神様がサービスしてくれたんだよ!」

「黄瀬君じゃなくて?」

「黄瀬君がかもしれないけど!」

 どうでもいい事を目の前で話す二人の女子の言葉で気になる事があった。部活公開日?

「あの…」

「はい?」

「部活公開日って…」

「あなた知らないで来たの?」

 目の前の二人に小声で声を掛けると知らないのに何故いるんだという目を向けられたが苦笑で誤魔化す。

「あはは…今日初めて見に来ようって思って何も知らずに来たんですけど…」

「運がいいね。あのね、バスケ部は此処にいる私達みたいに黄瀬君ファンの子が多くて、カッコいい姿見たさに部活見学したい子も多いの。去年までは規制はなかったんだけど、毎日毎日押しかけちゃうもんだから規制されたの」

「部活公開日が指定されてね、月一であって今日がその日。掲示板にも日にち指定が貼ってあったでしょ?気付かなかった?」

 まあ見てないんでね。今日初めて来たし、今まで海常のみんなそんな事一言も教えてくれてないし。まあ言う必要ない事だろうけど。
 つか規制される程の人気って事か…凄いなデルモ。

「ちなみに応援する時はあんまり煩くしちゃ駄目なんだよ」

「これはファンの中での暗黙の了解」

「成る程…勉強になります。教えてくれてありがとうございました」

 親切に色々教えてくれた二人に感謝しつつ、頑張っているきー君とキビキビしている主将ハヤヤを見る。
 ハヤヤは何言ってるかわかんない時多いけど色々主将っぽく指示出したりアドバイスしたりしている。なんかハヤヤカッケェぞ!!

 まあきー君も言わずもがなカッコいいけどさ。キャーキャー言う女子苦手だぜみたいな雰囲気だけどちょいちょいカッコつけている所がね…飛び蹴りしたくなる。ゆっきーの気持ちめっちゃわかるわ。

 その光景を鞄の中のカメラに収めつつ女生徒に混ざって応援してみる。うん、全然二人共気付かない。こんなバレない安心感を感じつつ堂々と潜入したの久しぶりな感じで爽快感。これしきの事で?って感じだよね。わかってる。

 朝練終了後、女生徒に混ざって校舎へと入る。潜伏先は何かの準備室。直感で人の出入りが少ないと思い入ってみたら、やっぱり色んな物が埃被ってる。霊的な物もなし。いい場所だ。
 もし誰か入ってきてもバレないように少し奥に行き、床の空いているスペースを陣取った。

「部活風景はこれでオッケー。あとは授業風景な訳だけど…きー君見なくてもみんなから熱い視線集めてるのとか色々想像出来ちゃうからやる気が。寧ろそのわかりきってる光景をビデオに残したとして、みんなで見る時に白けた目になるの目に見えてるし…何かアクシデントか面白光景があればいいんだけど」

 ブツブツ独り言を呟いていると、不意に背後から声を掛けられた。

「!?」

 吃驚して振り向くとそこには華子ちゃん。
 …え?何で?

「は、華子ちゃん…何で此処にいんの?」

 霧崎から飛んできました

「何で?」

 そらさんのしている学校潜入が面白かったので、他の学校のもお手伝いしたいなって

 華子ちゃん…味しめちゃったのね。あたしと同じで。てか霊って県境超える事出来るんだね。何はともあれ、華子ちゃんがいれば出来る事が増える。

「じゃあ早速お願いしていい?」

 勿論です!










 現在自宅。あたしは海常の制服から正邦の制服に着替えながら、一緒にこの場にいる華子ちゃんの見ているカメラを覗き込む。

《うおっ!?何っスか!?》

《黄瀬覚悟ォォォ!!》

《何なんっスか長谷川君!!ギャアアア!!》

《黄瀬アウトォォォ!!》

《何なんスかもう…って撫でなくていいっスから!!》

 そこには理不尽なタイキックを食らうきー君の姿。何故そうなったかというと、あたしの指示で同級生の長谷川君(クラスメートらしく仲良さげに話してた)に華子ちゃんが乗り移り、廊下で急にタイキックを嗾けしかけたからである。その後に指示していないが、長谷川君in華子ちゃんはここぞとばかりに痛さに倒れ込むイケメンの尻を撫でて去った。

 何故そんな指示したのかって?ムシャクシャしてやった。
 いや嘘だけど。反応見たさにやりました。
 だってきー君もハヤヤも授業普通に受けてて面白くなかったんだもん。まあハヤヤは英語の授業でラ行が言えず、全く読めなくて周りの子がクスクス笑ってたのは面白かったけど。

 尻を触れたのが嬉しかったのかその後に華子ちゃんは鼻血出してた。今もカメラを見てニヤニヤしている。

「準備出来たよー。次正邦行こっか!」

 はい!

 ウィッグはそのままに正邦に向かう。

 ふわふわ浮く華子ちゃんを後ろに正邦に向かって歩いているとその辺の店から見た事のある顔が出てきた。あたしは咄嗟に隠れるとその人物を影から様子見る。

「灰君じゃん…」

 そうです。学校に行っているはずの灰君がいるのです。ってか福田総合って静岡だよね?寮生活じゃないの?都内が地元だとしても今此処に灰君がいる理由が全くわからなかった。
 私服に身を包んだ彼は横にケバめの女の子を携えて歩いている。白昼堂々学校サボってデートか!宜しくないな。高校に進んだんならちゃんと行きたまえよ!

 都合よくその女の子と別れた灰君はあたしに背を向けてブラブラ歩き出したので、あたしは鞄を華子ちゃんに預けて走り出しその背中に飛び蹴りをかました。

「灰崎バッキャロー!!!」

「ぐっふぉおおおお!!?」

 背中に見事な飛び蹴りが入った。倒れる灰君を見てあたしはガッツポーズを決めると走り去る。あまりの痛みに灰君は起き上がれないでいた。

「テメッ…待てゴラァ!!」

「ちゃんと学校に行きやがれトウモコロシ野郎!!」

「それを言うならトウモロコシだろーが!!」

「うっせえモロコシヤリチン野郎!!ハゲろ!!」

「ざけんなこのアマァァァ!!!」

 ぴゃーっと走り去るあたしは暴言という暴言を吐き灰君はドスの利いた声で止めるが丸無視だ。帰りに気を付けようと思いながら正邦に向かった。
 今日は理不尽デーかもしんない。生理前でイライラしてんのかな。
 でも後悔はしてない。やり切った感だけが残っている。

 ちなみにさっきの光景はちゃんと華子ちゃんが撮ってくれていた。










 正邦にて。昼休みが終わる頃だが特に怪しまれずに校舎へと入れた。ともっきーはと校内を歩き回っていると不意に背後から悪寒を感じ、ゆっくり振り返ったそこにはともっきー。そしてその肩に女がおぶさっていた。
 思わずひっと息を飲む。ともっきーは明らかにげっそりしておりあたしに違和感を抱く事なく横を通り過ぎる。その女は長い髪で顔が見えないが、ブツブツ何かを言っている。

 坊主 恨メシヤ

 それって坊主だからともっきーに取り憑いてるって事だよね?お前も理不尽か。
 あたしは鞄からお札を出すとぺいっとその霊に貼り付けた。

 ギャアアア!! 邪魔ヲスルナァァァ!!

「(お前が邪魔だわ!!)」

 断末魔を上げながらこちらに手を伸ばす女の霊の手をぺしっと弾き返し、その場から有白家に送られた霊。修行の成果もあり今までなら取り憑かれそうで触れるのも嫌だったが、臆する事なく弾くくらいは出来るようになったあたしを誰か褒めて欲しい。

 除霊後ともっきーはハッとした顔をして辺りを見渡す。

「何か急に体軽くなった!」

 嬉々として喜ぶともっきーを見てよかったねと思っているとバッチリ目が合った。

「あれ?そらさん?」

「?私は山口華子です」

「あ、人違いか。ごめん!」

 ギクゥッと心臓が跳ねるが首を傾げて華子ちゃんの名を使い人違いだと言うと直ぐに納得した。そしてあたしをじっと見つめてくる。

「あんた可愛いな!」

「…は?」

 ポカンとしていると予鈴のチャイムが鳴り響き、ともっきーは教室に行かないとと言ってあたしに手をブンブン振って去って行った。
 何急に?ともっきーのタイプって何?普段のあたしを見ても何も言わないって事は…ゆるふわな髪の毛の子が好きなの?あたしゆるふわ系に見えた?

「ちょっと眼科行くのをお勧めするよともっきー…」

 でも顔赤いですよ、そらさん

 一々言わなくていいから!華子ちゃんはニヤニヤしない!

 その後、ともっきーの様子を見に探し回って午後の教室風景を覗くと、ともっきーは昼食後という事もあってウトウトしていた。これもよくある光景で見慣れたなと思っていると、ともっきーはおもむろにペンを取り出し隣の女子に鏡を借りて顔に何かを描き始めた。

 何してんだ?と見ていると出来上がったようで鏡を返し、そのまま前を向いて堂々と目を閉じる。その瞬間あたしは吹き出しそうになるのを堪えた。

 瞼に目描いてる!!やっばい発想ヤバい!!よく授業中に堂々としようと思ったな!!

 居眠りしても大丈夫なように描いたんだと思うけどそれアウトでしょ!隣の女子笑っちゃってんじゃん!肩震わせて堪えてんじゃん!

 男性教師は黒板に向けていた体をくるりと反転させた。

「次の問題を〜津川!ブッフゥ!!?」

 先生吹いちゃったよ。まあ急に見たらそりゃ笑うよね。クラス中が笑う感じで和気藹々としている雰囲気はいいと思うけど、ともっきーいつもこんな事してふざけてたら授業になんないよ。
 一頻り笑った後先生は怒った。怒るんなら笑うなよ、耐えろよ。

 後は放課後の部活まで待ち、部活風景を覗きに行くと日中のふざけた感じではなく真剣に打ち込むともっきーの姿を見てカッコいいなと思いました。
 ただ先輩への口の利き方はなってないからめっちゃ怒られてたけど。

 華子ちゃんは部活前に今から生着替えの鑑賞をしに行くと言い霧崎に戻っていったので今はもう不在。あたしは撮影を終えると行き道とは違う道で帰宅した。もしかすると灰君が待ち伏せしてるかもしれないしね。

「ミッションコンプリートッ」

 キャピッとした感じで撮影を終える。今日一日よく頑張ったよあたし。二校ハシゴして灰君にもアクション掛けられたし。
 ただ灰君は今日の事からよく学校をサボっていると思われるので福田総合への学校潜入はやめた。行っていなかったらやだし。
 まあ、今日灰君のざまあな姿が撮れたのでそれでよし。

 これであとは陽泉だけだな。今の時期なら寒くないかな。行くのが楽しみである。

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