INFINITY WORLDあたしが陽泉潜入
「第七回。チキチキ。みんなの学校に潜入してみよう大作戦んんんん」
パフ…パフ…パフ…
さあさあやって参りました最後の高校潜入!今回は残りの陽泉という事ですが、新幹線オンリーで行くと四時間弱掛かるので今回も早朝にございます。
日帰りで勿論バレないように行かないといけないので、行き帰りがハードですね。
「制服は向こうで着替えます。始発で行くけど着くのは10時半頃。上手く潜入できますように!」
さて、制服も持った事だし早速出発しますかね!
秋田にレッツゴー!!
「腰痛い…」
四時間弱座りっぱなしで疲れたあたしはややげっそりとしながら新幹線を降りる。ずっと寝ていて体が固まった。つらたん。体を軽く動かしながらトイレへ向かい制服に着替える。
丁度先日七月に入ったので、半袖カッターシャツに赤ネクタイと灰色チェックのスカートを着用。でも日焼けが嫌なので黒のパーカーを着ておく。髪型は緩く二つ結びで黒縁眼鏡。うん、真面目キャラに見える。 誰もいないので鏡に映った自分にカメラを回しピースしておく。
コインロッカーに余計な荷物を預け、陽泉高校に向かう。着く頃は恐らく三限目の終わりか四限目の途中かかな。授業は午後からもあるし焦っていない。
「さあ着きました陽泉!長かったわ〜。今の時期は雪がないので寒くないのが救い。授業中なので人がいませんねー。さて早速潜入して行きましょー」
毎度の如くカメラを鞄に仕込み学校に一歩足を入れる。ミッション系の学校なだけあって西洋風の校舎。何かカッコいいね。そういや学食美味しいんだっけ?今日のお昼は学食で決まりだな。
そう思いながら歩いているとマリア像が見えたので手を組み祈る。
「今日一日見学させて頂きます。神のご加護を〜」
アーメンと祈り捧げて自己満に浸る。しかし不意にマリア像に影が掛かり見上げるとそこには外国人の男性の霊が座っていた。
「……」
My name is Jesus Christ.
「いや嘘でしょ顔ちょっと似てるだけじゃんイエス様に怒られるよ」
イエスキリストっぽい容姿の霊を冷たい目で見上げながら突っ込んでおく。彼はサラッと手で髪を払い靡かせるとあたしを見てキラッと歯を煌めかせた。
オレに惚れると火傷するぜ
「日本語喋れるんかい!!」
寧ろ日本語しか話せないね
「ああそうですか」
そんなオチだと思いましたよ。相手にしてらんないと素通りすると後ろでまだ何か言っていたが丸無視です。
校舎に入ると三年生の教室がある事に気付き後ろからひょっこり覗いてみる。此処にはいないな。
隣の教室を覗くと劉ちゃんがいた。カリカリとシャーペンを走らせ真剣に聞く姿勢はカッコいい。いつも岡さんとかに毒舌だったのに普通のイケメンと化している。
モテるだろうなと思いながらその隣に移動するとたっちゃんがいた。丁度英文を読みあげているところで流暢な英語が聞こえる。
それに周りの女子生徒が惚れ惚れし男子生徒はギリギリ歯を食いしばって見ていた。男の嫉妬は醜いぞ。女もだけど。
その光景が面白くちゃんとカメラに収め二年の教室に向かう。校内も当然西洋風なので、まるで外国の学校に来た気分になる。いいな、陽泉いいな。
そうこう考えていると二年の教室に着いて各教室を覗いていく。三つ目で大きな紫のあっちゃんを見付けた。やっぱ一番後ろなのね。
あっちゃんはボーッと授業を聞いている。いやあれ聞いてんの?これでも頭いいって話だから解せぬ。勉強しないで頭いいとか解せぬ。峰さんやかがみんやきー君にその才能分けてやれよ。
あ、何か鞄ゴソゴソし始めた。取り出したのは焼肉味のまいう棒。
「よって、この式で成り立つのは……あ〜めっちゃいい匂い。今日の日替わり学食は焼肉定食か?」
「紫原君がフライング焼肉してまーす」
「コラァ!!またお前は、堂々とお菓子を食うんじゃありません!!」
「え〜だってお腹空いたし〜」
「オレにも分けなさい!!」
「「先生狡〜い」」
「紫原が先じゃん!!」
何だあの先生の可愛さ。いじられキャラだなあの先生。ってかあっちゃん授業中にお菓子食うなよ。かずやんと同レベルじゃねえか。でも仲よさげな雰囲気はいいと思う。
フフフと微笑ましげに見ているとチャイムが鳴り慌ててその場から逃げる。あっちゃん達出てきたら大変だからね。
もう昼休みらしくガヤガヤと生徒が食堂や友達のいる他の教室など向かう様子を見て、あたしもご飯食ーべよと食堂へ移動する。
食堂は賑わっていたが混雑というわけではなかった。あっちゃん達来るかな、来たら見える所陣取って様子見ようと思いながらメニューを見ていると、通りすがりの男子生徒に後ろからドンと押された。
「わっ!ブッ」
「あ、悪い」
そのまま過ぎていくがあたしのバランスは前のめりになりこれまた通りすがりの男子生徒に顔面からぶつかる。眼鏡痛い。
「す、すみませ…」
「いや、大丈夫かい?」
た…たっちゃんんんんんん!!
爽やかに微笑み見下ろすたっちゃんに一瞬ビキリと固まるが、引き攣る頬を持ち上げ微笑み返す。
「大丈夫です。ありがとうございます。大丈夫でしたか?」
「ああ、オレは大丈夫」
よかったです、それじゃ。と彼から離れようとするとたっちゃんが腕を掴む。
「あ、あの…何か?」
「ぶつかったお詫びに一緒に昼食食べない?」
え、と固まる。いやぶつかったのあたしじゃん。逆じゃん。
「い、いえ、そもそも私がぶつかったからでして、」
「なら君がお詫びって事で、一緒にご飯食べよう?」
あ、拒否権ない感じですね。てかたっちゃん今知り合った人を誘うなんて大胆というか何というか。ちょっとチャラくね?
いや、もしかしてバレてる?と思い食事を買う為並びながらチラリと見上げるとたっちゃんは微笑みながらあたしを見ていた。バレてそう…。
「君の名前は?」
「あ、一年の川口りくです」
「川口さんね。オレは氷室辰也。三年だよ」
存じています。洛山で使った名前を使うと彼はあたしの分も注文する。お金を渡すが受け取ってくれなかった。イケメンめ。
空いている席に座ると洛山同様視線が痛かった。特に女子。今日だけだ、我慢しよう。
二人で手を合わせて食べ始める。
「川口さんは部活に入ってる?」
「いえ、帰宅部です」
「そうなんだ。何で陽泉に?地元の子?」
「あ、いえ。家庭の事情で四月にこっちに来たんです。元は都会生まれです」
「へえ」
何かめっちゃ質問してくるんだけど。その度に考えて嘘を吐きまくるので罪悪感が募っていく。これが全部たっちゃんの策略だったら怖い。
話をしながら食べているとあっちゃんが来た。たっちゃんに話し掛けた後あたしを見る。
「室ちんの知り合い?」
「さっきちょっとあってね、一緒に食べてるんだよ」
「ふーん。オレも一緒に食べていい?」
「いい?川口さん」
「あ、はい。勿論」
あっちゃんはフラフラと昼食を買いに行く。バレてない、かな?あたしはたっちゃんに目を移すと質問を返す。あっちゃん来るまで違和感なく話を続けなければ。
「あの、氷室先輩は何部なんですか?」
あたしがそう聞くと、たっちゃんは待ってましたとばかりの微笑を浮かべる。
「知ってると思うけど?」
え、あ。たっちゃん主将だから新入生への部活紹介とかで見た事あるだろうし、バスケ部有名だろうから全く知らないなんて事あんまりないじゃん。今のあたしの外見は真面目キャラ偽ってるし部活紹介の時寝ていたとか失礼な嘘吐けないし、ヤバいミスった。そう思っているとたっちゃんはクスクスと笑う。
「知らないはずないよね?」
「え、と」
「そらさん?」
バレてんじゃねぇかァァァァアア!!
結局!結局バレてんじゃん!今までの無駄なやり取りなんなの!辱め受けただけか!
「…何でわかったの?」
「見ればわかるよ」
見てもわからない人は今まで沢山いましたけどね。
「制服似合ってるね。眼鏡取って」
「やだ。あっちゃんにバレるじゃん」
そもそも何で此処に?と聞かれて学校潜入の詳細を簡単に伝えると納得してもらえた。
「あっちゃんに言わないでね」
「わかったよ。今も撮ってる?」
「撮ってる」
話をしているとあっちゃんが来た。特にあたしに興味があるわけではないようでほぼたっちゃんに話し掛けて難なく昼食を終えた。
「ねー室ちん」
「何だいアツシ」
「この人そらちんに似てるね」
そう言われた時はギクッとしたがたっちゃんがはぐらかしてくれたお陰で何事もなかった。たっちゃんナイス。
昼休みを終えると二人は教室に戻っていくが、去り際にたっちゃんが部活を見にきて欲しい事と帰りは送る事を耳打ちしてきた。
もうさあ。そういう行動が乙女の心を弄ぶ事に繋がるんだよ。このプレイボーイめ。
午後はまた三人を見て周るが三人共昼食後という事もあってウトウトしたり居眠りしたりと可愛かった。三人共隣の女の子がニヤニヤしながら見ていた事は知らないんだろうなぁ。まあこのビデオ見たらわかるけど。
そして放課後。こっそりバレないように部活風景をカメラに収める。おーおー監督怖ェな。凄い罵声聞こえる。
たっちゃんは優しくアドバイスしたり厳しく指示を飛ばしたり、主将らしくカッコいい。こりゃさらにモテるわな。
特に部活は面白い場面がなかったけど、カッコいい三人が撮れたのでよしとする。
そして帰り。たっちゃんが指示した所へ向かうと遅れてたっちゃんが来た。駅まで送ってくれるそうなので二人で歩いていく。
「部活お疲れ。みんなカッコよかったよ」
「ありがとう。学校潜入は今日で終わりなんだよね?」
「うん」
「じゃあもう一人で来る事はないな。今後も危ないから一人での行動は慎むようにね」
「あー、うん。でも大丈夫。あたしの携帯GPS付いてるみたいだし」
円堂の一件はこっちまで回っているので案じてくれているのがわかる。大丈夫大丈夫言って大丈夫じゃなかったから説得力はないけど、前より周りに注意しているつもりだ。
不意にたっちゃんと肩が触れたかと思うとそのまま手を取られ軽く握られる。目を見開いて見上げるとたっちゃんは笑って言う。
「今だけだからね。独り占め出来るのは」
「…ほらまたぁ」
「?だって遠いから簡単には会えないし」
これだからプレイボーイは…と赤い顔を隠すようにそっぽ向いていると横から伸びてきた手に眼鏡を奪われる。
「折角うちの制服着てくれているんだし、普通に着た姿見ておこうと思って」
もう嫌!!たっちゃんといると恥ずかしい!!羞恥心に苛まれる!!
更に赤くなる顔を隠していると最寄駅に着いた。よ、よかった。寂しいけどこの空気から逃れられる。
「送ってくれてありがとね。じゃあ、あたし行くから」
「帰りも気を付けるんだよ」
「うん。ちゃんと着いたら連絡するね」
手を振って別れようと一歩踏み出すが、同時にたっちゃんに引き寄せられ正面から抱き締められる。
「!?た、たっちゃん!?」
「またそっちに行くから」
耳元でそう囁かれ頬に熱く柔らかい感触が伝わる。ほっぺにちゅーされた!!
あたしがじわじわ熱くなる頬を押さえているとたっちゃんはクスクスと笑う。羞恥心に耐え兼ねブンブン手を振ると足早にその場を去った。クソ、翻弄されっぱなしだ。
帰るの?オレも行っていい?そっちに美人な外国人いる?
「来んな帰れ!!」
ホブゥッ!!
自称イエスキリストが憑いてきていたようでホームに向かう中で話し掛けてきた為、そちらを見ずにパンチをお見舞いする。決して八つ当たりではありませんよ。
コインロッカーに預けた荷物を持ち、帰りも新幹線で四時間弱掛けて帰る。その間最初はほっぺにちゅーを思い出し一人で悶えていたが直ぐに疲れて爆睡した。
東京に着いた時間は23時過ぎで無事に帰ってきた旨を伝えると可愛いお茶目なスタンプを送ってきて癒された。可愛い所もカッコいい所もあるとか、本当この世界の人々狡い。
ってそうだ!眼鏡返してもらってないんだけど!まあいっか。もう使わないし。
「ミッション何となくコンプリート!!」
たっちゃんにバレちゃったしね。でも八校回って数人にしかバレてないならいい方でしょ。
さーて。あとはこの数々のデータを常連さんと一緒に編集整理するだけだ。出来上がりが楽しみだなー。
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