INFINITY WORLDみんなと合宿開始
八月に入った。
I・H戦はあれから何度か行ける日は応援に行き、その結果優勝は洛山、準優勝は桐皇、三位が海常との事。あっちゃんは海常に負けたと電話口で悔しがってたのが記憶に新しい。
もう直ぐ合宿!というある日。あたしは机に置いてある一通の封筒と向き合って正座をしている。この空間には一人。ドキドキしながらその封筒に手を伸ばし封を切る。そして中から薄い一枚の紙を取り出し内容を読んだ。
[合格通知書]
「…ぃよっしゃあああああああ!!!」
合格という文字を見てあたしは両拳を突き上げ叫んだ。近隣の人ごめん。
各科目の点数も書いてあり、それを目に通した後封筒にもう一枚入っていた分厚い紙を取り出すと保育士証明書だった。
あたしはそれらを机に並べ写真を撮り、LINKで各学校に写真だけ送る。
すると数秒でおめでとうの返信が沢山届き、さっちゃんやリコぴんらからは電話が入った。店長らには今からバイトに行くのでその時に伝える。
みんなに祝福されながら、これで一つ目標を達成したので次は就職だと意気込み俄然やる気が湧き上がってきた。これもみんなの応援のお陰だと思い、何かお礼したいなと思いながらバイトに行く支度をした。
八月某日の早朝。いよいよやってきました夏の合同合宿!中々テンション上がってますよ。
あたしはリコぴんパパの車に一緒に乗せてもらいリコぴんと合宿場所に向かっている。
各校バスや電車などの公共機関で来るらしいが何故リコぴんは車なのかと言えば、原作でもあったようにバスケットゴールを運ぶからである。あんなでかいのどうやって運ぶんだろうと思ったけど、案外運べるもんなのね。
「着いたあ!リコぴんパパありがとう!」
「おう、気にすんな。ゴールは去年みたいに浜辺に置いておけばいいな?置いたら戻るわ」
「うん。ありがとねパパ」
合宿所に到着。リコぴんパパはゴールを浜辺に設置しに行ったら戻ってくるらしい。今回は合宿に参加なのね。監督とかじゃないけど手伝うらしい。
そこは大きな合宿用の宿泊施設だが少し古く、安く宿泊出来るとの事で此処にしたらしい。でも今夏休みだよ?予約だって一ヶ月前にして余裕で間に合ったらしいし、大人数が宿泊出来るくらい部屋に空きがある事にあたしは何かあるんだろうなと推測している。でも見た感じ嫌な雰囲気はないので取りあえず一安心。だが怖い。
三泊四日分の荷物を持ってリコぴんと宿泊施設に向かって歩きながら、波の音が微かに聞こえ体育館の屋根が近くに見えているのを見て若干更にテンションが上がった。合宿とか高校ぶり。
宿泊施設に入り向かうのはロビー。そこには誠凛が揃っていた。
「みんなおはよー」
「おっはー」
「おっす」
「「おはようございます!!」」
リコぴんに続いて挨拶すると順ちゃんらを始め二三年に元気よく挨拶される。二年元気だなー。
「他の学校はまだ?」
「いや、もうみんな揃ってる。今は各部屋に荷物置きに行ってるぜ」
みんな早いな。じゃああたし達も荷物置きに行くかと言えば、返事した後に誠凛全員があたしに向き合う。ん?
「そらさん手伝いありがとな。合宿中宜しくお願いします!!」
「「お願いします!!」」
「あ、はいこちらこそ」
まさかこんなきっちりお願いされるとは…。ちょっと恥ずかしくなって頬を掻きながら頷き、そそくさと宛てがわれた部屋に向かった。
向かった部屋は女部屋。リコぴんとさっちゃんとあたし、そして陽泉監督の四人部屋だ。その隣に男性監督らの部屋、反対側の隣から以降は各校何部屋かに分かれての男部屋らしい。あたし達は一階だが人数が多いので、部員は一階と二階にかけて部屋を借りている。
誠凛の部員と別れ女部屋に入ると既にさっちゃんと陽泉監督がいた。
「そらさんリコさん、おはようございます!今日から宜しくお願いしますね!」
「おはよー。宜しくね」
「おはよう。張り切って行くわよ!」
三人で和気藹々と挨拶を済ませ、あたしは陽泉監督に近付く。
「初めまして、山口そらです。今日から四日間お世話掛けますが宜しくお願いします」
「ああ、話は聞いている。陽泉の監督、荒木雅子だ。マネージャー業のサポートや食事面で世話掛けるが宜しく頼む」
「はい!頑張ります」
ぺこりと頭を下げると少しだけ微笑んで挨拶してくれた荒木さん。無表情なので若干距離を感じ怖かったがいい人だ。あたしの事はよく部員から聞いているらしいし、今回の合宿での役割も聞いているとの事で逆に宜しくされた。
「話を聞く限りでは変わった奴だと思っていたが、しっかりしているな。これなら任せられる」
「アハハー。お任せ下さい」
ちょっと待ってあっちゃん達あたしのいない所で何言ってくれてんの?もしかしてこの調子だと他校の監督にも変な目で見られそうなんだけど。
乾いた笑みを浮かべながら荷物の整理をし、下はジャージのハーフパンツと上はタンクトップにTシャツで涼しめの格好にする。いざとなればタンクトップ一枚でいく。ただ日焼けは嫌なので日焼け止めを塗りまくった。
みんな準備を終えてロビーに戻ると各校の部員が揃ってワチャワチャなっていた。他の宿泊客もいるようなので迷惑にならないようにしないと。
洛山と秀徳なんかは部員が多いので一軍のみが合宿参加らしいが、それでも七校が集まれば人は多い。
「あ!そらっちこないだぶり!!」
「おはよー」
「おはようございます!!!」
「ハヤヤも元気だねー」
きー君に飛び付かれながら話をしているとハヤヤが部員の一人、中村少年を紹介してきた。そういやこの子も今や海常支えるスタメンだもんね。ディフェンスが上手いらしい。
「中村真也です。話はよく黄瀬や早川から聞いています。宜しくお願いします」
「ご丁寧にどうも。山口そらだよ。宜しくね」
そこで色々と話しているとリコぴんパパが注目と声を掛ける。みんな話をやめてそちらに向き直ると各校の監督が並んでいた。一歩前に出た海常の監督が挨拶をする。このロビーでするのか。今の所他の客いないし体育館暑いしここ涼しいからいいけどさ。
「今回七校が合同合宿という事で大掛かりな合宿となる。各校の情報を互いに得て研究し合い士気を高め、対戦した時にはお互いが全力でぶつかり合えるように、この四日間しっかり取り組むように」
「「オス!」」
「で、こっちの余分なのが」
「余分言うなゲンゲン。相田景虎、誠凛の監督相田リコの父親だ。コイツら監督の連中とは旧知の仲ってやつだな。今回特別に参加する事になったから宜しく」
ゲンゲン。思わず吹きそうになるのを堪えていると海常の連中とタカ君は同じ状態だった。
挨拶を終えたリコぴんパパはあたしを見ると手招きした。あたしは前に出るとみんなに顔合わせする。緊張するぜ…。
「で、こっちが山口そらちゃん。社会人なわけだが心優しい事にマネージャー業の手伝いは勿論主に食事面でサポートしてくれる。食事当番は各学校で決まっていたな。快適な合宿に出来るようにそらちゃんの指示に従ってしっかりやるように。そらちゃんからも何かあったらハイ」
「(そんな投げ方…)山口そらです。突然の参加申し訳ないですけどどうぞ四日間宜しくお願いします」
「「お願いします!」」
監督方と部員にペコペコしながら挨拶するとこれまた元気よく挨拶された。いい事だけどここ体育館じゃないからもう少しだけ静かにしようか元気っ子。
そこからまず浜辺に移動し、砂場で足腰を鍛える練習との事。海水浴客はチラホラいる程度だがいる事はいるので一般客に迷惑にならないようにと監督方が声を掛けた。
あたしはというとマネージャー業で手伝って欲しい事を手伝う。マネがいない学校はあたしやマネがいる学校が協力してフォローする。ちなみにさっちゃん以外のマネは男子だ。
取りあえずドリンクを大量に作ろうと意気込み、海へ向かう部員とは逆にあたしと一部マネは宿泊施設の厨房(此処で食事を作る)でドリンクを作り始めた。
「ふい〜…あとはメインとサラダか」
ドリンクを作ったり熱中症にならないように氷渡したりタオル渡したりとさっちゃんらマネージャーと共に走り回り、現在あたしは厨房にて昼食作りの最中。人数が人数なだけに量が本当に半端ないんだけど。
材料は宿泊施設へ来るまでにある程度買ってきたし部員も持ち寄ってるし、足りなかったら買い足す感じだ。
一応冷房は効いているが動き回っているので暑い事は暑い。エプロンしてるし。頭にバンダナ、首にタオルを巻いてせっせと作っていると誠凛の一年生二人が手伝いに来てくれた。確か夜木少年と朝日奈少年だったかな。
「よ、宜しくお願いします!」
「お願いします」
「宜しくー。あ、これ混ぜてくれる?味付けも此処に揃ってるので宜しく!あとそっちの手でちぎって鍋ん中ぶっ込んどいて」
「え、あ、はい!」
「包丁使えるならこれ千切りにして。あとこれざく切り。大量だから頑張ってね。あ、わからない事は何でも聞いてね!」
「わかりました」
あたしは別の作業をしながら指示を出すと少し戸惑いながらも作業に入り中々テキパキと順序よくしてくれる。いいぞ。
「あの…」
「ん?」
「先輩達と何処で知り合ったんですか?」
隣で切る作業をしながら夜木少年が聞いてくる。みんなから聞いてないのかな?まあ出会いとか言いにくいだろうね。
「んー。とある所でたまたま知り合って、一緒に色々しているうちに仲良くなった的な」
「な、成る程…」
「まあ、話せば長くなるし面倒だけど、みんなで支えあったからこその友情的な?」
遠回しに説明が面倒なので話しませんと伝えるとそれ以上突っ込みはしなかった。
「皆さん山口さんの事が大好きっていうのは伝わります」
「あはは!ねー、みんなあたしの事大好きだよねー」
「「(自分で言った…)」」
懐かれてるのは充分過ぎる程わかるしわかんない程鈍感じゃないからね。
「でもあたしもみんなが思ってくれるのよりずっとずっと大好きだよ」
そう言ってはにかんで笑うと二人は微笑ましそうに目を細めて笑った。朝日奈少年は笑ってないけど雰囲気だ雰囲気。年下に微笑ましそうに見られるってどうなの。
その後何とか昼食は出来上がり、各校が食堂に入ってきて昼食が始まる。
「プッ…そら給食のおばさんみてえ」
峰さんが昼食を取りに来たがあたしのエプロン+首にタオル巻いた姿を見て馬鹿にしてきた。暑くて苛々しやすいあたしはそんな挑発に簡単に乗った。
「テメェが汗水流して練習してる間もあたしだって汗かいて飯作ってたんだよありがたく黙って食いやがれビチグソ野郎」
「オイ!最後の下品過ぎんだろ!」
「うるっせえありがたく黙って食えっつってんだよガングロクロ助ェェェエエエ!!食いたくないなら食わんでいいわあああああ!!」
「ぐえっ!!」
「そらさん落ち着いて!!大ちゃんが悪いよ謝って!!」
カウンター越しに胸倉掴むと後ろにいた夜木少年はビビってしまったが、あたしが峰さんに暴言吐いているとさっちゃんが止める。短気は損気ってわかってんだけどね、暑さって怖い。
「そらさん落ち着いて下さい。青峰、ありがたく頂くんだよ」
「ゲホッ…ゴリラおん、いっで!!」
「青峰?」
「ハイスミマセンデシタ。アリガタキ幸セ」
「うむ。よきに計らえ」
騒ぎを見て赤君も止めてくれるが続いた言葉に今ゴリラ女つった?と食って掛かる前に赤君があたしから見えない位置で峰さんの足を踏み止めた。有無を言わさない笑みに峰さんは謝罪したので腕を組んで上から目線で言うと悔しそうな顔をしていた。ざまあ。
「「いただきまーす!!」」
「お残しは許しませんよー」
「んん!そらさん美味しいっす!!」
「この肉美味い!!」
「もう可愛い奴らめ!!たんとお食べ!!」
「扱い違い過ぎだろ!!」
峰さんが何も言わなきゃよかったんだよ。聞こえてくる部員の言葉に嬉しくなってあたしはすっかり笑顔。
「夜木君と朝日奈君も手伝いありがとうね。あたしらも食べに行こっか」
「はい!」
「はい」
全員の配膳が終わりあたしらも食堂に移動して食事を摂る。お昼は誠凛にお邪魔した。
「このサラダ上手く味付け出来てるね」
「あっ、ありがとうございます!」
夜木君が完全にさっきのでビビってしまって、あたしが普通に戻ったのを見て安堵の息を逃していた事には気付かなかった。サラダの味付けを褒めると嬉しそうに笑ったので、新たに天使が増えそうな予感がしました。
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