INFINITY WORLD
みんなと合宿一日目

 昼食後。再度練習が始まるが此処からは各校分かれての練習となる。
 午前中は一切海には入らず全員が浜辺でダッシュやゲームをして体の軸の調整等を行ったが、午後からは引き続き浜辺チーム、新しく体育館チームと裏山チームに分かれるらしい。

 監督がクジを引いて分かれる。浜辺チームは桐皇と陽泉、体育館チームは誠凛と秀徳と洛山、裏山チームが海常と霧崎。浜辺は午前と同じ練習で、体育館チームは普段通りの練習やゲームを行い、裏山チームは近くの小さな山に向かい山道をダッシュしたりケイドロなどのゲームをするとの事。

 あたしは夕食作りがあるので途中で抜けるが、一人もマネがいない裏山チームに付き合う事になった。
 念には念をと虫除けスプレーを振りたくり日差しが木々で柔らかいとは言え日焼け防止にパーカーを羽織り麦わら帽子も被る。

「いや完全防備過ぎっしょ」

「紫外線は怖いんだよ」

 かずやんに突っ込まれたが予想の範囲内。意に介した様子なくあたしは言葉を返すと、ストップウォッチとバインダーを片手に海常監督の武内さんと並んだ。

「これからお前達には山を駆け回ってもらう。隠れるなどの休憩はなしで走り続けろ。ゲームはケイドロ。さっきのじゃんけんの結果、警察が海常で泥棒が霧崎だ。通常のルール通り捕まったらアウト。だが仲間にタッチされても復活は認めん」

「最早鬼ごっこだね。制限時間は三十分!制限時間内に全員が捕まったら霧崎アウト。捕まえられなかったら海常アウト。罰ゲーム受けてもらいまーす!あ、あと暴力とかした瞬間にあたしがお尻にタイキックしまーす」

 罰ゲームと聞き顔を歪める一同。特に霧崎の五人に言い聞かせると面倒臭そうな顔をしていた。守れよコラ。ゲンゲン…じゃなかった…武内さんは面白そうに鼻で笑うとスタートの合図をする。

「合図をしたら霧崎が先に出発。一分後に海常がスタートだ。始め!!」

 合図と共に霧崎の部員全員が走り出しあたしはストップウォッチでタイムを計る。

「監督ー。勝ったらご褒美はないんスか?」

「…山口が特別美味いものを作ってくれるそうだ」

「言ってないですよ武内ゲンゲンさん」

「ゲンゲン言うな」

 きー君の質問に対し適当に答えた武内さんに突っ込んだ。何この人ボケキャラなの?
 そうこうしているうちに一分が経ち海常が出発する。

 この場には武内さんと二人になり何だか気まずい。

「黄瀬は特に随分と懐いているようだが」

「ああ、まあ。あはは」

「これからも特に黄瀬の躾は頼んだぞ」

 別にいいんだけど何であたしに頼むかな。話題がないからって適当な事ばっかり言うでないよ。










「ハァ…ハァ…っ!」

「うえ…吐きそ…」

 結果、勝者霧崎。だが海常も霧崎も真面目にずっと走っていたようで息が切れて倒れ込んでいる。あたしはタオルやドリンクを配り歩き労いの言葉を掛ける。

「そらっち!いつもみたいにお疲れ様ってナデナデして下さいっス」

「いやいつもしてないし」

 ボケる気力があるなら大丈夫だなと軽くデコピンしてやると痛がりつつも嬉しそうにへにゃりと破顔した。うん、普通に可愛い。

「じゃあ罰ゲームは海常か…」

「監督が怖い…!!」

 武内さんはまさか負けるとはと悔しそうで部員を睨んでおりハヤヤが一番に気付いて少し慄く。

「罰ゲームは明日の朝食で用意しますのでお楽しみに」

「「ゲッ…」」

 食事関係かよ…!と言いたげに海常の顔色が変わった。あたしは楽しみで仕方なくフフフと楽しそうに笑う。

「気色悪い」

「言い方!!」

 とマコマコに言われそこから軽い乱闘になったのは別の話。

 それからの練習は階段の上り下りやでこぼこ道ダッシュなどをして体を動かし、あたしは武内さんが二校の部員達を見て分析し詳細を言うので紙に書き留めたりドリンクを作ったりマネージャー業務を遂行する。経験ないとはいえ中々板についてきたんじゃないかなとか思ってたり。

 時間になりあたしは撤収しまた厨房に篭って夕食作りをする。その前にサラサラシートで汗を拭こうと部屋に向かって廊下を歩いていると、あたし以外誰もいない廊下に不意に人影が現れた。

 顔を上げるとそこには白いワンピースを着た女性がいて、肩くらいまでの長さの茶髪の髪を揺らしながらゆっくりとこちらに近付いてくる。その顔は俯いていて見えないが慣れた感覚に目を細める。霊だと直ぐにわかった。
 ぎゅっと胸元のお守りを握ると同時に女性はゆっくり顔を上げる。

「おい」

「うおおおぉぉぉおおい!!?」

 不意に背後から声を掛けられあたしは情けない事に絶叫した。人間本当にビビると腹から声出るもんだね。視界の隅でその声にビビったのか女性もビクッと肩を飛び上がらせていてちょっと笑えた。
 振り返るとそこには荒木さんがいて、あたしが中々野太く声を上げたのに吃驚して目を見開いていた。

「びっ、くりした。驚き過ぎだ」

「ご、ごめんなさい」

「いや…固まって動かないからどうしたのかと声を掛けたんだが、驚かせて悪かった」

「あ、いえこちらこそすみませんでした」

 廊下で棒立ちしていたらそりゃどうしたのってなるよね。あたしは顔を前に戻すが既に女性はおらず。他の人が来たのでいなくなったのだと思い安堵の息を漏らしつつ、荒木さんに向き直る。

「夕食考えてたらちょっとボーっとしちゃってて。荒木さんは何しにこっちに?」

「選手のデータを管理しているUSBを忘れてな、取りに来たんだ」

「成る程」

 そんな会話をしながら知り合ったばかりの荒木さんと普通に話せている事に嬉しく感じつつ、要件を早急に済ませ部屋を出て行く荒木さんを見送りあたしもシートで汗を拭いてからエプロンとバンダナとタオルを装備して厨房に向かった。
 その時にはもう夕食のメニューの事で頭がいっぱいになっていて、女性の霊の存在が頭から抜けていた。










 時は過ぎ。夕食の手伝いは霧崎と海常の一年が手伝ってくれて、後で上級生も合流し配膳なども手伝ってくれた。夕食は特にボリュームが多いのでとても大助かり。
 霧崎と海常の間で食べたが、その時「先生此処座って!」「今日はこっち!」と学校の給食の時間に先生が引っ張りだこになる図と被り、その先生の気持ちになったような感覚になったのはきー君とザキがあたしを引っ張り合いしたからだ。だから間で食べたんだけども。

 そして夕食の片付け後の現在、自由時間になった今、荒木さん以外の女子三人で入浴中です。荒木さんは今日のまとめをしてから一人で入ると言っていた。一緒に入ればいいのに照れてんのかな。

「あ゛〜!つっかれだぁ〜!」

「お疲れ様でした。でもそらさんオバサンみたいですよ」

「オバサンって言葉あたし敏感になってるから。中身アレだから」

 一日目の合宿がやっと終わり、一日かいた汗を流し湯船に浸かっているところ。リコぴんの言葉にあたしは敏感に反応し指摘しておいた。思っても言っちゃ駄目な時もある。

 お風呂は男風呂と女風呂があり壁で隔たれている。故にこの壁の向こう側には男子軍がいて、各校分かれて入っているだろうがわいわい楽しそうな話し声が聞こえる。
 リコぴんは笑って誤魔化しさっちゃんはクスクスと笑った。そんなさっちゃんはふぅと息を吐き出すと肩に湯をかけた。色っぽい。あたしのが年上なのに負けてるってどゆこと。

「二人共お疲れ〜。今日暑かったねぇ」

「お疲れ様でした!でもそらさんいい働きっぷりで大助かりです!」

「ご飯も美味しかったし、他の監督達も褒めてましたよ」

「え?そう?えへへ〜」

 二人から褒められ他の監督にも褒められていたと聞けば嬉しくないはずがない。デレデレした後あたしはさっちゃんに顔を向ける。

「さっちゃん本当胸大きいねー。どうしたらそんなに大きくなるの?」

「えっ?ええっと…遺伝、ですかね?」

「遺伝とか羨ま」

 母よ、何故貧乳だったんだ。そして何故貧乳に産んだんだ。
 意味のない言葉を繰り返し心中呟き、やっぱりもっと鶏肉食べようかなと思った。

「でもそらさんは気にする程でもないと思いますよ?リコさんは一年経ってもギリギリBのままですけど」

「余計な事言わなくていいわよ!!」

「そらさんはCありますよね?ギリギリ」

「最後のいらなかったよね?何で付け足した?」

 さっちゃんに悪意を感じながら自分の胸を揉む。確かにギリギリCである。見栄はってC65を付けているが実はB70でもいける。下着屋さんの店員さんに表を見せてもらい説明を受けたが、上記のサイズ二つはほぼ一緒なので好きな方を着ければいいと言われ見栄はってCカップなのだ。本当かよと思いつつ着けて特に問題ないので自称Cカップだったが、さっちゃんにキッパリギリギリと言われたので撤回しようかなと思う。

「胸誰かに揉んでもらってんの?」

 あたしがあっけらかんとそう聞いた瞬間、壁の向こう側で沢山の噎せた声が聞こえた。そんな大きな声で話してなかったのに聞こえたの?思い返すとさっきまで煩かったのに静かにはなってたな。盗み聞きよくないよ。
 さっちゃんは顔を真っ赤にしてブンブン顔を横に振っており、リコぴんは赤い顔を隠すように口元まで浸かりブクブクと泡立てる。

「コラコラー。盗み聞きよくありませんよー」

「テメェらが勝手に胸の話してたんじゃねーか」

「うわ、永ちゃん?マジ卑猥物」

「どういう意味だゴルァ!!」

 永ちゃんの声が聞こえたのでふざけると怒られた。アメリカンジョークだよ。

「そっち誰がいんのー?」

「あー?洛山としゅっブクブク!」

「え?しゅっぶくぶく?ああ、秀徳ね」

「違うのだよ!!」

「いや真ちゃんいるじゃん」

 勝手に言おうとした永ちゃんは誰かの手によって沈められたみたいだ。だが「しゅ」だけわかれば誰が聞いても簡単。そして真ちゃん天然か。向こう側でタカ君が草生やしてるのも聞こえる。

「盗み聞き禁止ー!」

「聞こえるように言うのが悪い!」

「エッチスケッチワンタッチ〜。玲央きゅん、タカ君を宜しく」

「OK、任せて」

「ひいいいぃぃぃぃ!!」

 あたしの言葉に開き直ったタカ君に天罰を、と玲央きゅんに指示すると喜んで引き受けてくれた。タカ君御愁傷様。あたしが指示した事だけど。

 てか聞き耳立ててたんならあたしとリコぴんの胸の大きさも聞かれた?洛山と秀徳に?やっべ、あたしはともかくリコぴんごめん。サイズ言ったのはさっちゃんだけど。
 それからこれ以上聞き耳立てないでねと約束し、なるべく小さな声で胸を大きくするマッサージとか教えてもらい女子会お風呂ver.を楽しんだ。

「よお、ギリギリCカップ」

「誰じゃあたしのサイズ言いふらしたのはァァァァ!!」

 入浴後、自販機でジュースを買いぐびぐび飲んでいると峰さんが通り掛かった。あの場にいなかった峰さんがサイズを知っている事に対しあたしは激怒した。
 犯人はコタであたしが直々に海老反りの刑に処した後、赤君にチクってコタとからかった峰さんの説教をしてもらった。赤君マジ先生。

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