INFINITY WORLD
みんなと合宿三日目前編

 合宿三日目。
 昨日からよく寝てすっかり体調が万全になったあたしは起床からテキパキと動けた。朝は誠凛が手伝ってくれる事になっているので少ししてリコぴんも起き二人で厨房に向かう。霊の事もあるから、もう少し寝かせてあげたかったけど一緒に行くと言ってくれたのでお言葉に甘えた。

 そして調理開始から少しして、今日は一年ではなく二三年が手伝いに来てくれた。一日目に一年にさせたからという辺り、平等で後輩思いだなと思った。でも結局申し訳なく思った一年は食事開始時間より少し早く来て、配膳を手伝ってくれたので出来た子達だなと感心し、互いに思い合えるいいチームだとも思う。

「出来たー。みんなありがとね!」

「おう」

「うわー!スッゲー美味そう!朝から量ハンパないけど食欲そそるな!」

 かがみんがいてくれたので手早く終わったし味も完璧。リコぴんも栄養剤とか入れなきゃ美味しく出来るから、あたしは目を凝らして入れないか確認したり再三入れるなと注意したりして、全て美味しく出来た。上出来である。

 そして朝食時あたしは誠凛の所で和気藹々と食べ、食事が終わったところでお茶を飲んでいると足元に異変を感じた。
 何かさわさわしてて擽ったく虫かと思って慌てて机の下を覗くと、膝を抱えながら俯いて座ったあの女の人があたしの足元にいた。

「ブッバァァァァアア!!?」

「どわぁっ!?」

「え!?何だ!?」

 吃驚して勢いよくお茶を吹き出し椅子ごと後ろにひっくり返った。運悪く隣に座っていたコガの服にお茶が掛かり汚いと仰け反って周りは何事だとザワザワした。
 あたしはひっくり返った状態で上半身だけを起こしてみると、机の下の女の人はニタリと口元に弧を描いて消えた。ナンテコッタ。

「おい、そら大丈夫か!?」

「ケガはありませんか?」

 呆然とするあたしをかがみんが抱き起こしテッちゃんが濡れた口元をタオルで拭ってくれるが、あの人が何故そこまであたしに執着するかがわからずただただ困惑した。

 事情を知らない人からすれば何が起こったのかわからないだろうが、知っている人はまたかと顔を歪めている。

「オイ、何があった?」

「…あ、虫です虫!何かよくわかんない虫がいて吃驚して…すみません」

 武内さんが声を掛けてくれてあたしはハッと意識を戻し咄嗟に虫だと言うと人騒がせだなと言われた。全くその通りで返す言葉もございません。
 周りを片付けてくれるみんなにお礼を言ってあたしはお守りをぎゅっと握った。もうこれは除霊するしかないかな。

「あ、コガごめん」

「いや別にいいけど…びっしょびしょ」

「洗わせて頂きます」

 被害者のコガにはただただ申し訳なかった。そんなにお茶含んでなかったからびっしょびしょではないがな。話盛るなよ。










 そして今日も練習が始まる。今日からは海には行かず裏山と体育館で練習をするらしい。合宿初日から各学校と何回かは試合出来るようにローテーションして練習試合を行っており、残す所明日と今日だけなので今日からは練習試合を主に進めていくらしい。
 体育館のハーフコート二つでローテーションしている。どの学校も練習試合が楽しみなのか嬉しそうな顔で準備をする。

 ちなみに海や裏山での練習が功を奏し、動きが断然よくなったと選手自身も監督達も話していて合宿した甲斐があったなと思った。

 あたしは初日同様、呼ばれた所でマネの仕事を手伝う。今日もドリンク作りやタオルなどの洗濯物諸々の雑務からリコぴんに教えてもらった簡単なマッサージなど何でもした。
 溺れた昨日の今日なので心配してくれる人もいたがそこまでヤワではないので大丈夫だ。

 その後は昼食作りの為一旦抜けて霧崎の一年に手伝ってもらいながら昼食を作る。スタメンのマコマコらは今試合中なので来るつもりだったらしいが手伝いに来ていない。難なく無事に昼食は出来、時間になってみんなも食べて栄養補給も充分に行った。

 そしてその時はきた。

「……」

 通サナイ 行カセナイ

 午後からの練習が始まりあたしは洛山マネの一人とタオルなどの大量の洗濯物を取り込んでいたのだが、その子が部員に呼ばれたので少しの間席を外した時の事。
 不意にあたしは寒気がして振り向くと女の人が真後ろに立っていた。

 当然吃驚するし一人になったのが間違いだったと体育館に駆け込もうとしたが一瞬にして女の人はあたしの前に移動し、反復横跳びで妨害してきた。それが上記の台詞である。

 わかる?ただならぬこの恐怖。
 襲いに来たはずの女の人が目の前で反復横跳びしてるんだよ?シュール過ぎて逆に怖いわ。そりゃ無言にもなるでしょ。髪振り乱してする事じゃないじゃんしかも異様に上手いというか速いし。

「…あのさ。最初から思ってたんだけど何がしたいの?」

 死ネバヨカッタノニ

「それもう聞いたし。てかあの海の事君の仕業?」

 偶然 羨マシイ 私モアナタミタイニナリタイ

「あ、そういえばそれは夢で聞いたわ」

 忘れてたけどそうだった。夢の声が女の人で正しければそう訴えてきていたな。そうか、海のは偶然で間接的に仕向けた事ではないけどざまあみろって事だったのね。鬼か。
 執着する意図はそこなのかな。てかいつまで反復横跳びしてんのこの人。

「あたし何もしてないよね?そりゃ視えるし助け求めるならまだしも恨まれる筋合いないよ」

 ミンナニ囲マレテ 羨マシイ

「逆恨みも大概にしてよ。こういうの迷惑なんだよね。それにあたし最悪強制的に祓うしか出来ないよ?あたしには助ける力はないんだよ」

 今まで自然に成仏した幽霊は記憶にある限り誠凛のカケちゃんしか思い当たらない。それ以外は完全放置か自然に成仏するまで助言だけで放置か、有白家に誘導するか悪霊なら有白家に強制送還か悪意を無にするかしかした事がない。お祓いも全てしてもらったりお守りやお札をもらったりするだけで有白家頼りだし。

「生前の君に何があってそんな姿になってるか知らないけどさ」

 コノ顔ノ所為ナノ

「え」

 コンナ顔ダカラァァアァアアア!!

 フラグ通りになりました。反復横跳びをする足を止めて叫びと共に肩までの茶髪が風でブワッを上がったかと思えば、そこから見えた顔は事故にでもあったかのようにぐちゃぐちゃになっていた。
 そこからマシンガントークのように話し出した内容によれば、元々顔が綺麗ではなく整形を繰り返したのだが失敗続きで顔が醜くなり、周りはどんどん離れそれに耐え兼ねてこの付近で自殺したらしい。顔から落ちて即死だったとの事。

 何デ私ト似タヨウナ普通ノ顔ノクセニ ミンナニチヤホヤサレルノ!!

「オイコラ待てや失礼だろ」

 自分の顔が綺麗じゃないっつったよね?それと似た顔って事は遠回しに綺麗じゃないって言ってるって事だよね?
 何で見ず知らずの奴にそんな事言われなくちゃならんのだ!

「別に整形を否定するつもりはないけど、折角親からもらった体を自分勝手に整形して気に入らないから自殺してって自分の事しか考えてないじゃん!あと周りの目とか気にし過ぎ!言っとくけどあたしも自分勝手に考える奴だけどね、君とあたしの違いは性格でしょどう考えても。自分で言うのもなんだけど普通の顔なのはわかってるし性格であたしは好かれてる!それが現実だ現実を見よ!!」

 黙レェェェェエエ!!

「黙らんんんんんん!!」

 怒り狂った彼女が両腕を伸ばして首を絞めてこようとするが、あたしはお札を取り出すとそれをその顔に押し付ける。

 ギャァァァアア!!

「みんなに囲まれたいって思うならまずその性格をなんとかしな!!話聞いてて途中ちょっと可哀想だから何とか諭して成仏させてあげようかなって思ったけどやめた!!理不尽な君は反省すべきなのだよ!!」

「オレの真似をするな!」

「あ、真ちゃん」

 押し付けた途端断末魔をあげて白い煙に包まれながら消えたその人は有白家に無事送還された模様。距離的にいけるか不安だったけどよかった。
 消えた事に安堵していると口調に対して指摘してきた真ちゃんが近付いてきていて、その後ろにはタカ君と清ちゃん弟がいた。
 真ちゃんとタカ君は視えていなくてもわかっているが清ちゃん弟は何事だと瞠目して固まっていた。彼も視えないだろうから側から見れば一人で喋ってる怪しい人に映ったに違いない。

「…祓ったのか?」

「強制送還」

「そうか」

 小声で尋ね無事でよかったと安堵の息を吐いた真ちゃんに胸キュンで死ぬかと思った。幽霊関係なく死ぬかと思った。

「あー…大丈夫スか?」

「あ、うん大丈夫ごめんね」

「頭」

「あ、間違いなく清ちゃんの弟だこの人」

 初めて会話するのに頭大丈夫ですかって思っても聞かないよね。流石宮地家。

「清ちゃんの弟君でしょ?宜しくねー」

「本当は怖いから宜しくしたくないけど宜しくッス。宮地裕也です」

「ねえ何なの?思ってる事直ぐに口から出ちゃうの?」

 気にせず挨拶したのにこの仕打ち、如何に。もうあだ名付けないで弟君でいいかな。いいよね。

「まあいいや。宜しくね裕ちゃん」

「結局付けんのかい!」

 いいツッコミだけど心の中は読まないで下さいタカ君や。
 そういえば何故此処に三人が?と思い聞いてみる。

「洛山のマネが体育館に戻ってくるの見てそらさんが一人だって事に気付いたから様子見に来たんだよ」

 休憩中だった二人が慌てて見に来てくれたらしい。裕ちゃんは二人が急に何も言わず出て行くから追い掛けて来たとの事。いい子過ぎるこの秀徳コンビ。

「見に来てくれてありがとね。でも大丈夫だから戻っていいよ」

 裕ちゃんは勝手に出てった二人を説教するつもりだったみたいだが、一人で可笑しくなってる奴の様子を見に来たのなら仕方ないから今回は目を瞑ってやろうみたいな顔をしていたので、霊感の話をしなくて済んだのでそれはよかったけどあたしの印象最悪じゃねえかと思った。辛い。
 でも取りあえずあの霊はいなくなってひと段落ついた。マジで逆恨み系よくない。何なのあの人。

 そう思いながら三人が戻った後洗濯物を取り込む続きをしていると、足元で何かを踏んだ。拾い上げると汚くなった写真で、普通の女の人が友達っぽい人達と映ってる写真だった。

 これもしかして、あの女の人じゃね?髪型とか一緒だし普通の顔だって言ってたし、めっちゃ汚れてるけど自殺する時に持ってたみたいな。此処にある意味はわからないけど。

 あたしはその写真を暫し眺めた後、それを持ち帰る事にした。ひのちゃんパパママに見てもらおう。んで浄化してもらったら少しは報われるんでないかな、と思った。持っていたお札を一枚二つ折りにして写真を包むようにし、ポケットの中に忍ばせた。
 
 さてと。洗濯物も取り込み終わった事だし、今からこれを畳んで時間があったらマネ業務手伝って夕食の支度をしようかな。あ、その前に車出してもらって買い出しだ。材料で欲しいのあるんだよね。

 今日の夜にやりたい事が二つあり、そのうちの一つは全監督(引率顧問(例えば武田先生)含む)の大人達に許可をもらっている事なので、それの準備ともう一つの準備もしなくては。

 今日これまでの収穫は初宮地弟との絡みと除霊。ツボちゃん妹と会えなかったのは残念だけど致し方ない。体調不良だし絶対ツボちゃんよくなっても数日家から出さなそうだし。

 霊の一件もひと段落ついたのでこれで心置きなく夜のイベントが楽しめそうです。






秀徳マネ設定の多恵ちゃんは欠席で武田先生は引率顧問としています。ちなみに村ちゃん弟は現時点で一軍ではないのでいない設定です。

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