INFINITY WORLDあたしと大学生組
夏の合同合宿を終えて数日。大学組も八月に入って夏休みになったと以前連絡があった。ので、今日はその大学組を招待してあたしの家で学校潜入のDVDを観る事にした。
ツボちゃんに見せないとだもんね。覚悟しろタカ君。
みんな日中の部活を終えてから夕方に集合し、他の子に合宿の時に観せたDVDをつける。
何をするかは話していないのでみんな何が起こるのかと不思議そうな顔をしている。
にしても、部屋に14人は多いな。リビングのソファーには清ちゃんと翔ちゃんが座って他は床だったりカウンターの椅子だったり、適当に各々好きなように座っている。勿論飲み物やおやつもあるよ。
「何観るんだよ」
「あたしが頑張った作品」
「一人カラオケの様子とか観たくねえぞ」
「違うわ」
福君と清ちゃんに応えながら準備を終える。
ちなみにこのDVDは常連さんにお願いしてちゃんとちょっと駄目なシーンを抜いてもらって新しくDVDに焼いてもらったものである。だから安心して観られる手筈ってわけですな。
あたしは翔ちゃんの隣の端っこに無理矢理座ってリモコン片手に再生ボタンを押した。
《第一回!チキチキ!みんなの学校に潜入してみよう大作戦んんんん!!》
《パフパフパフ!》
「あ?」
「何これ」
「そらさん!制服!?かっ可愛いいいいい!!」
「森山煩い」
あたしは見慣れたオープニングを観てやはりいい出来だと自画自賛して満足げに頷いていると、ゆっきーやスガが声を不思議そうに漏らす傍ら森りんは興奮したようにテレビに近付いた。当然周りからお叱りの声を受ける。岩ちゃんがピシャリと言い放つと森りんは静かになったがテレビにかじりついたまま。どんだけだよ。
「えっへん。各高校に潜入してきたんだー。これはそれの編集したDVD。こないだの合宿でみんなには観せた」
「ああ、夏の合同合宿な」
そういう事かとテロップや軽快な曲が流れる画面を観てスーさんが呟く。
そして学校潜入の誠凛編を観始めて暫く、最初の霊(カケちゃん)が映りテレビ間近で観ていた森りんが吃驚して後ろに倒れた。
「わあっ!?」
「うおっ!?これ心霊映像じゃねえか!」
「スゲー」
「流石そらさんやな」
倒れた森りんの後ろにいた村ちゃんが彼を支えながら食い付くように観ており、スガと翔ちゃんは感心したようにしているだけで特に怖がってはいなかった。あんまり嬉しくないけどね。好きで心霊映像撮ったわけじゃないし。
《カケちゃん。やって欲しいのは此処に誰か入ってきた時に匿って欲しいのと、カメラ持って授業風景撮る手伝いなんだけど》
《
いいですよ》
「全部幽霊の音声もバッチリだな」
「つか幽霊に頼んでんじゃねえよ阿呆」
「痛い」
苦笑しているコボちゃんの近くで呆れた清ちゃんはあたしに手を伸ばしデコピンする。だっていい子だったんだもの。
「幽霊怖い!」
「でっかい図体して何言ってんだ」
ソファーに置いてあったクッションを抱えて岡さんがこれでもかと縮こまり福君に引っ付くが本人は嫌がりゲシゲシ蹴っていた。岡さんの扱い雑過ぎ。
そして話は進み、順ちゃんと俊ちゃんのファンです発言によって翻弄される場面では全員が騙されてやんのと笑っていた。面白いよね、あたしも此処好き。
場面が変わって秀徳編。
「秀徳の制服も似合いますね!」
テレビの近くではいつ幽霊が映るかわからないからか、いつの間にかソファーに座るあたしの足元に引っ付くように座っている森りんが褒めてくれた。悪い気はしない。可愛かったので頭を撫でると調子に乗って足に擦り寄ってきた。ら、隣の翔ちゃんが笑顔で蹴っていた。怖っ。
《おーおー、真ちゃんもタカ君も先輩っぽいじゃん。ちょ、真ちゃんのシュートヤバいんだけど。ブレないとかマジ神。あ、休憩だ。あれ?ちょっとタカ君デレてない?多恵ちゃんにデレてない?スクープ?ちょっとコレお兄ちゃんに知らせていいの?まあこのビデオ通して知らせますけどね》
「お前喋り過ぎ」
「いやぁ、実況大事だなって思って」
「高尾…」
「大坪、顔が大変な事になってる」
ちーちゃんが呆れたようにカウンターの椅子に座りながら突っ込んでくるが、やっぱりビデオを回す者としましては大事かなと思いまして。
そして気になる多恵ちゃんのお兄ちゃんであるツボちゃんの反応ですが、あたしは見た瞬間に思いっ切り顔を背けた。あれは見たらあかんやつや…般若とかそんなレベルじゃない。極度のシスコンか。
村ちゃんに宥められるが表情は変わらないまま。あたしは触らぬ神に祟りなしとばかりにテレビに集中した。
タカ君次ツボちゃんに会ったら殺られるかもしんない。今更だけど観せてごめん。ツボちゃんの何かを目覚めさせてしまったようです。
そして授業風景を観た後、この後の展開はあのタカ君とのシーンはないので急にあの悪霊のシーンに移ります。さてさて、どんな反応になる事やら。
《のわっ!?あ、ありが、とぉぉおお!?》
…あれ?
《どもっす!そらさん》
《た、タカ君》
あれれ?
まさかの展開にあたしは考える前に一時停止はせずに30秒送りボタンを数回連打する。最早反射だった。
「ちょっと待ってや。何で飛ばすん?」
翔ちゃんにリモコンを持つ手を止められた。飛ばし過ぎて幽霊のシーンも飛ばしちゃった。
あたしは翔ちゃんの方を見てにっこり笑う。
「あそこつまんないシーンだし。先に面白いシーンあるからさ」
そう言うと翔ちゃんはニヤリと笑った。ああ、サトリ様。お許し下さいませ。
「こちょこちょこちょー」
「っ!?ひゃあっはははっはは!!」
「諏佐ー」
「はいはい」
お腹を擽り攻撃されてその間にリモコンを奪われる。やっぱりサトリ様を騙す事出来ませんでした。
そして戻された問題のシーン。どうやら前と同じDVDのようで、恐らく常連さんがあたしの隙を突いて面白がって新しく作った物を渡したと見せ掛け前と同じのを持たせたんだろう。そうとしか考えられぬ。やられた。
《ひっ!?》
《んん〜?》
《ちょ、あ、待っ!》
《聞こえませーん》
「「………」」
無言が恐ろしい。
不意にあたしの足元に座る森りんが後ろを振り返ると、その目は据わっていた。こんな目見た事ないんですけど。
「そらさん」
「は、はい」
「オレも如何わしい事してみてもいいですか」
「いいわけねえだろうが!!」
森りんの言葉にあたしが突っ込む前にゆっきーが怒って蹴り飛ばしていた。
「何でだ!!高尾ばっかりいい思いして!!」
「アイツはアイツで今度シバく!!」
「オレも参加する〜」
「アイツ三年がいなくなって気ィ緩んでんじゃねえか?締め上げに行くか。木村、軽トラ用意しとけよ」
「いいけどまず免許取れよ」
「いつ決行するか」
「殺る気満々だな」
ゆっきーの言葉に「あたしの為に?」って思ってちょっとキュンとしたが、その後からスガや清ちゃんが黒い笑みを携えて話す様子を聞いてあたしまで縮み上がった。ツボちゃんもブラックツボちゃんのままなので、村ちゃんは一つひとつ突っ込んでいた。
ごめんタカ君。二重で覚悟した方がいいと思う。無事に朝日が見られるといいね。
「そらさんやらしいなァ」
「いや、あたしがやらしいんじゃなくてね。ってやめんかこの手」
「高尾はええのに?」
「誰もあかん!」
ちょっとこの変な空気入れ替えよう!翔ちゃんが太ももに手を置くのでその手の甲を抓りながらあたしはスーさんからリモコンを奪い返し、タカ君との音声シーンで一時停止してあったので再生を押す。
「みんなに観て欲しいシーンはこれ!」
「「ん?」」
タカ君の件でみんなの思考が他所に向いていたが、あたしの言葉を聞いて画面に再度視線を移す。
《
ソノ身体チョウダイィィィ》
《ぎゃああああ!!?》
「「ぎゃああああああ!!!」」
影から飛び出てきた目がない血塗れの女に飛び掛かられたシーン。バッチリカメラに収まりあたしに向かって悍ましい顔で迫り来る恐怖映像に岩ちゃんとツボちゃん、スガと翔ちゃんとちーちゃん以外が大絶叫した。よし、空気戻った。
「いやぁ、面白かった。花宮のズボン下ろすん最高やったな」
「あたしもあの時堪えるの大変だったもん」
「灰崎は哀れだったな」
そして全ての学校が見終わり、DVDを片付けながら翔ちゃんと話をする。やっぱり面白いシーンはみんな同じなようで、翔ちゃんはマコマコのシーンを推している。マコマコの事どんだけ好きなんだよ。
ゆっきーは灰君が横暴な襲撃を受け背後から襲撃されただけのシーンしかない事を含め哀れんでいた。だってまあ、灰君だし。こんな事本人に言ったら殺されるけど。
「てかこれ幽霊映り過ぎだって」
「一番怖かったのは秀徳のやつだな」
「津川に負ぶさってたのも中々怖かった」
「坊主に何の恨みがあったんだろうな」
「一番意味わからなかったのは陽泉の幽霊じゃな。あれはワシでも怖くなかった。あんなんが陽泉にいた事に引いたわい」
「岡村でも引く事あんのな」
コボちゃん、スーさん、スガ、岩ちゃん、岡さん、福君が余韻に浸りながら話す。専らみんなの学校生活より幽霊の話だった。まああたしと一緒に霊の事で関わる子って高校生が多いしね。
あたしはDVDを自分の部屋に置きに行き戻ってくると翔ちゃんが近付いてきた。
「そらさん。あれ焼き増ししてや」
「絶対やだ」
「何でなん?ええやん、ええ感じの喘ぎっぷりやったで」
「やめろおおおおおお!!」
やっぱりそれが目的か!当然それだけじゃなくてマコマコのあのシーンもあるからだろうけど、もう掘り返さないで欲しい。常連さんに頼んでもうこれは破棄してちゃんと、ちゃんとしたDVDをもらう事にする。大事なので二回言いました。
「オレも欲しいです!」
「何に使う気なの」
「えっ…何って…ナニに」
「最低だな」
照れながら言う森りんにちーちゃんがとても怪訝に冷たい目で軽蔑しながら暴言を吐く。あたしも白けた目を暫く向けて、間に受けるとこっちが損をすると思いスルーしてキッチンに向かった。
「もしかしてさ」
「うん?」
「お前大学まで潜入しようとしてねえ?」
ギクゥッ!
あたしが新しいジュースや飲み物を用意しているとカウンター越しに聞く清ちゃんに肩が上がった。
「…まさか〜。大学なんて高校と比べ物にならないくらい大きいし面倒だし行かないよ〜」
「「(嘘下手くそだな…)」」
あたしは引き攣りそうになる笑みを抑えてヘラヘラ笑って答える。しかしまさか全員に疑われているとは思わず、あたしは話を逸らすように今日の夕ご飯一緒に食べませんかと聞いて、この後この団体で近くの洋食屋に食べに行く事になった。
何だかんだ最近絡みが薄かった大学組と一緒に過ごせて楽しかったです。終わり。
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