INFINITY WORLD
あたしとプール前編

「プーウールー!!」

「「キャーッ!」」

「転けるから走んなよ」

「青峰君すっかり保護者ですね」

 現在あたしはプールに来ております。さっちゃん達に誘われて来ました。

 タカ君が叫んでプールサイドでジャンプをしてはしゃぎ、あたしとさっちゃんも続いてはしゃぎながら追い掛ける。それを声掛ける峰さんは完全にお父さんだった。テッちゃんの言う通り。

 此処は長〜いウォータースライダーが有名で、友達やカップルや家族連れが来るのに持ってこいの場所です。何処でもそうか。

 メンバーはテッちゃん、かがみん、真ちゃん、タカ君、さっちゃん、峰さん、良君、ともっきー。他の都内二年生組(誠凛三人)は用事が入っていて来れなかった。二年生組だけというのも、人が多過ぎても邪魔だとの事で他の学年は誘っていないらしい。充分今でも多めだけどね。
 真ちゃんは今日のラッキーアイテムであるアヒルさんボート(浮き輪タイプ)を片手にグラサンを掛けて優雅に歩いていてシュールだった。タカ君笑ってる。グラサン焼けしないようにね。パンダになったら絶対笑う。
 でもアヒルさんボートとか今日にピッタリだね。

 ちなみに水着は合宿の時に着た水着です。さっちゃんも同じで水色の下地にカラフルな花があしらわれている水着である。言わずもがなビキニ。可愛い。超可愛い。あの乳に埋もれたい。

「おい、ストレッチしてからプール入れよ」

「はぁーい、お母さん」

「誰がお母さんだ!!」

 かがみんもそのまま入る勢いのあたし達に声を掛けるので、からかってやろうと返事をすると案の定怒って返される。いいじゃん、峰さんと夫婦やっとけ。

「そらさんストレッチ手伝ってあげる!」

「え゛」

 ともっきーが嬉々として声を掛けてきた。あたしは引き攣った笑みを浮かべて断るが、そこはともっきー。気にせずあたしの背後に回り、パーカーを着たままのあたしの腕に背中合わせで両腕を絡め、ヒョイと持ち上げられあたしの体が反る。

「ひいいいだだだだ!!」

「はい伸び〜る伸び〜るストップ!」

「ストレッチマンか!ってかこの状態で止まらないで腹裂ける内臓出るううぅぅ」

 ずっとこの状態なんだけど何だよこの状況。もしかして学校潜入の仕返し?
 実は此処に来るまでにあたしの携帯に送った学校潜入のビデオをまだ唯一見せていなかったともっきーに見せたんだけど、自分の背後に霊が負ぶさっていた事に当然ビビりともっきーが可愛いと言った相手があたしだった事で騙されたと文句を言ってきていたので、その仕返しだと思う。楽しんで欲しかっただけなのに。

「このまま回転させていい?」

「いいわけないでしょうが!!」

 あたしが死ぬ!と必死に嫌だと訴えると流石にそれは危ないとわかっているのか愉快そうに笑いながらやめてくれた。クソ、Sめ。
 それから柔軟を続け、いよいよプールに入る時。あたし達がはしゃいでいる間にテッちゃん達が場所の確保をしてくれていて、荷物が置かれたそこにパラソルを広げチェアーも借りていた。テッちゃんと真ちゃんは今はまだ泳がないので先に行ってくるといいと荷物の見張り番を申し出てくれたので、お言葉に甘える事にする。どうやら良君も最初は行かないみたいでパラソルの陰で縮こまっていた。可愛い。
 あたしはパーカーを脱いでさっちゃんの手を引く。

「さっちゃん!ウォータースライダー行こ!」

「はい!でも怖くないですか?」

「大丈夫っしょ!子どもも滑ってるし」

 指差したそこには親子で滑り落ちてくる姿。楽しそうにしており、絶叫系が苦手な人でも大丈夫だ。ちなみにあたしは三半規管が強いので全く酔わないし絶叫系も大好きです。怖いけど。

「おい、そら。前に溺れてんだから気を付けろよ」

「うん、大丈夫。これだけ人いたら幽霊もいないでしょ」

「それフラグじゃね?」

「やべ」

 撤回する。いつ何処で幽霊さんがお見えになるかわからないので気を付ける事にします。タカ君ナイス。
 あたしはさっちゃんとかがみん、峰さんにタカ君にともっきーの六人で上へ上がりウォータースライダーを滑る事にする。
 二人一組で滑るらしく、あたしはさっちゃんと滑る事にした。
 夏休みとは言え、言う程混雑はしていないが並ぶ事数分、順番が回ってきた。さっちゃんが前であたしが後ろの配置でボートに乗る。

「ファーッ!!ヒャッホォォォイ!!」

「キャーーーッ!!」

 二人で両手を挙げて滑り落ちる。久しぶりに乗った!楽しい!
 着水すると上がる水飛沫が超気持ちい。チョー気持ちい。某水泳選手調です。

「楽しい!」

「怖くなかったですね!また乗りたいです!」

「次はテッちゃんと乗りなよ〜」

「えっ!?」

 ポッと頬を染めるさっちゃん。わかるよ、あのボート二人の距離結構近いもんね。女同士だったら気にならないけど異性だったら絶対緊張するやつだよ。
 でも思い出して。あなた常にテッちゃんに抱き着いているから今更あの距離感どって事ないよ。原作でも丁度去年の夏に水着で抱き着いてたろうに。

「ね、誘ってみなよ」

「は、はい!頑張ります…!」

 意気込むさっちゃんを微笑ましく見ながら待っていると次はともっきーとタカ君が落ちてきた。超叫んでる。楽しそう。
 そして次にかがみんと峰さんが落ちてくるが、何やら喧嘩をしているのか互いに蹴り合う形で降りてきて周りからの注目を集めた。子どもか。いや、子どもでもしないわ。

 そして場所を移し次は流れるプールに身を任せる事に。一度荷物の所に戻り予め持ってきた大きめの浮き輪に体を通す。

「あ、テッちゃん達いつ入る?今から行くならあたし見てるよ」

「いえ。まだ大丈夫です。今アイス食べてますし、先に行ってきて下さい」

「わかった。荷物ありがとね。また後で一緒に泳ごうね!」

 荷物番の三人はいつの間にか各々が好きな物を買ってきて優雅に陰で食していた。マイペースだ。
 そしてまた六人で流れるプールに向かい、あたしはプカプカ浮きながら水流に乗って泳ぐ。気持ちいー。人も混雑していないしぎゅうぎゅう詰めにならないから優雅だ。

「ブァッ!!」

「ぎゃあ!!」

「吃驚したー?」

「た、タカ君か!ビビったぁー」

 少し離れた所に浮き輪で浮いているさっちゃんとともっきーを見付け、追い付こうとしたが不意に水面から顔を出した人物にビビり悲鳴を上げる。それはタカ君で悪戯が成功したような子どもの顔をして笑う。
 今気付いたけどまたかがみんと峰さんが喧嘩して押し合いながら浮き輪なしで泳いでいるのが向こうに見える。仲良しか。

「オレ浮き輪置いてきたから捕まっててもいい?」

「ん?いいよー」

 やったーと笑いながらタカ君はあたしの浮き輪に掴まりプカプカと浮く。

「気持ちいね〜」

「な〜」

「夏だねぇ〜」

「な〜」

 ゆったりした会話をしながら流れに身を任せる。不意に静かになったタカ君に気付き顔を向けると意外と近い場所にタカ君の顔があった。

「…?」

「髪の毛、上げてんの可愛いね」

「え?あ、これ?編み込みね」

 タカ君の視線は自分でやった編み込み付きのサイドテールに注がれている。崩れにくくて簡単に出来るのを適当にやったんだけど、褒められると嬉しい。買ったばっかのちょっとした花の髪飾りも付けている。

「似合うねー。そういや桃井ちゃんのもそらさんがやったの?」

「うん。お揃いでね」

「いいなー。女子みたいじゃん」

「あ、すみません女子です」

 どうしたタカ君、めっちゃ褒めてくれる。まあタカ君は何でも直ぐに褒めてくれるけどね。
 いつもの調子でやや失礼な言葉に切り返していると、タカ君は手を伸ばして少し濡れた髪を触る。

「ははっ!知ってるよ冗談!そらさんはちゃんと女の子だよ」

 タカ君は髪を持ち上げるとちゅ、と唇を落とす。あたしはそれを間近で見て固まる。そしてじわじわと頬に熱が集まるのがわかる。
 大袈裟かもしれないけど、こう、慈しむような目って言うのかな。そんな目で見つめてくるタカ君の吊り目な瞳から離せなくなってしまった。

「…そらさん」

 少しずつ顔が近付いてくるのをわかっていて、あたしはぼうっと見つめるだけ。暑さで頭がやられたのかも。
 もう直ぐ唇が触れる、というところで冷たい感覚。

 ピューッ

「「んぶ!?」」

 不意にあたしとタカ君の顔に水が掛かり二人して目を閉じる。吃驚して水が来た方を振り返るとそこには真ちゃんがいて、不機嫌そうに口をへの字に曲げて片手には水鉄砲。いつの間にか一周して荷物の置いてある近くまで来ていたらしい。どっから持ってきたそれ。つかもしかして自前で持ってきてたの?

「オレの命中力は落ちん」

「いや、そんなドヤ顔されても」

 何やら若干キリッとしたように言い切る真ちゃんだが、あたしはそれにすかさずツッコミを入れた。隣でテッちゃんそっぽ向きながら笑ってる。笑い堪えてるのかプルプルしていた。

「ちょっと真ちゃん!邪魔しないでくんない!?いい感じだったのに!!」

「フン。何がいい感じだ。馬鹿め」

「み〜ど〜り〜ま〜!!」

 プールから上がり珍しく真ちゃんに怒って突っ掛かっていくタカ君を見送り、恥ずかしい気持ちを誤魔化すようにまた一周しようと水流に乗っていると次は良君がいつの間にか近くにいてあたしの後を追ってきた。

「あの、すいません!僕も一緒に泳いでいいですか?すいませんっ!」

「いいよー掴まりたまえよ」

 そう言うと嬉しそうに何度も謝りながら浮き輪に掴まる良君。どうやらあたしが一人になると海での一件のように溺れても気付かない事態になる可能性が高いので、誰か一人は付きっ切りでいてくれるらしい。感謝永遠に。

 良君とゆっくり話す事が少なく感じていたのでここぞとばかりに部活や学校の話をしながらのんびり浮いて流されていると一周を終えたようで元の位置に戻ってくる。
 既に上がっていたさっちゃんが駆け寄ってきた。

「少し早めですけど、お昼にしませんか?混む前に買いに行こうって話になって」

「いいね、そうしよ。各自好きなの買いに行く感じでいいのかな?」

 あたしは良君とプールから上がり荷物置き場まで近寄る。かがみんがタオルを渡してくれたのでありがたく受け取り、軽く体を拭きながら聞くと順番に買いに行く事に。

「腹減ったー。オラさつき、良行くぞ」

「え!ちょっと待ってよ大ちゃん!」

「は、ハイ!すいません!」

 財布を持って買いに行く峰さんは当然のようにさっちゃんと良君を呼んで買いに行った。仲良いのう。微笑ましい。
 多分峰さんの事だからさっちゃんがナンパされる可能性を考えてボディーガード的な感じで一緒にいるんだろうね。確かにあんな目付きの鋭い奴が近くにいたら声掛ける気にならないもんね。峰さんも自分に自信があるから成せる事だと思う。

 思い返せば峰さん此処に来てからさっちゃんの近くにずっといる気がする。かがみんと喧嘩しながらもちゃんと見張ってたんだな。愛だな。そして過保護。
 ん?待てよ。そうなると良君はオマケ的な扱いになっちゃう?いやいや、オマケじゃないよ。良君も逆ナンされる可能性あるから呼んだんだよねきっと。うん。

「そらさんも行ってきて下さい」

「ん?いいよ、あたし荷物見てるから買いに行っておいで」

「そうですか…じゃあ遠慮なく」

 そう言ってテッちゃんが財布片手に立ち上がると、ともっきーがテッちゃんに飛び掛かり肩を組んで一緒に買いに出掛けた。ともっきーとテッちゃんの組み合わせって珍しい。
 さっきアイス食べてたからお腹いっぱいだと思ってたけどちゃんと食べるんだね。偉いぞ。またアイス買ってきそうな気がするけど。もしくはシェイク。

 ふと気付くとこの場にはかがみんとあたしだけ。真ちゃんとタカ君はいつの間にか消えていた。

「あれ?秀徳コンビは?」

「さっきあっちに行った」

 指差す方には緑の頭。タカ君はギャーギャー文句言いながらついて行っている辺り、いつまでも煩いタカ君に痺れを切らせて真ちゃんは逃げるように昼食を買いに行ったんだろう。

「かがみんも買ってくれば?」

「あ?そらもまだだろ。一緒に買いに行けばいいじゃん」

 きゅん。何この子、男前かよ。
 何も言わずに寄り添う…出来た男だ。男の中の漢だ。…いや、漢ではない、かな。

「かがみん何食べる?」

「あそこのバーガー食いてえ。向こうのホットドッグも気になる」

「あたしもホットドッグ食べたいからどっちも行こー。あ、食べ過ぎ注意だよ」

「わーってるよ」

 他愛ない話をしていると続々とみんなが戻ってきたのであたしとかがみんが出動する。すっかり乾いた体にパーカーを羽織って話をしながら歩いた。
 バーガーを扱うお店で何個もチーズバーガーを頼み、その後ホットドッグの店でホットドッグを何個も頼む安定のかがみん。腹の中はブラックホールだな。
 あたしはポテトとホットドッグとドリンク頼んでトレーに乗せて運ぶ。

「昼からまたあれ乗ろー!」

「青峰とはもう絶対乗らねえ!」

 でしょうね。ウォータースライダーを見ながら話していたが、足元に水が撒いてあってうっかり足を滑らせた。

「うわぁっ!?」

「うおっ!?」

 あたしは隣のかがみんに体当たりする形でぶつかったが、かがみんが片手で咄嗟にあたしの腰を支えた。かがみんは一つのトレーにいっぱいのバーガーとホットドッグとドリンクをまとめて乗せていたので片手が空いており、見事あたしを支えてくれた。素晴らしい。

 あたしは両手でトレーを持っていたが滑った時に片手をつこうと瞬時に片手持ちに変えていたので、支えてもらって転けずに済んだが体を支えようとかがみんのパーカーにしがみつく。
 二人共が意地でも食べ物を落とすまいとして見事転ばずに済んで、二人で安堵の息を吐く。

「ったく、危ねえな!気を付けろよ!」

「ごめんかがみん」

 冷や汗かいた。あたしは申し訳なく思いながら体勢を立て直しパーカーから手を離して体も離そうとして、はた、と動きが止まる。
 お、おお。体が近い。そしていい腹筋だぜかがみん。
 あたしが素敵なボディ(腹筋)を凝視していると、かがみんは視線に気付いたのかやや居心地悪そうに顔を赤らめてあたしの腰を支えていた手で頭を叩いた。

「いてっ!」

「見過ぎだ馬鹿!」

「よいではないか、よいではないか〜」

「うぜえ!!」

 逃げるようにみんなの所へ戻るかがみんをからかいながら追い掛ける。勿論次は転けないように気を付けて。
 あんな間近で素敵な肉体美を見たから実は見惚れたしドキドキした。それに腰を支えるしっかりした手にもドキドキだった。距離も近かったし…照れた。かがみんやるな。だからそれを隠す為にふざけているのは此処だけの話です。

 そしてみんなで楽しく昼食を済ませ、もう直ぐ午後になる。午後から何をするか楽しみだ。あ、一人用のウォータースライダー滑ってないからあれもしたいな。
 あれもしたい〜これもしたい〜もっとしたいもっともっとしたい〜。って歌懐かしいな。

 後半へ〜続く!

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