INFINITY WORLDあたしとプール後編
午後。日が高くなり暑さが増す頃、漸くテッちゃんが峰さんとさっちゃんに引きずられて始動し、流れるプールで三人で流れている。微笑ましきかな。
あたしは日差しにやられ動く気になれずパラソルの下でイチゴのかき氷をシャクシャクと涼みながら食べている。そして荷物番。
左隣にはかがみんが寝転がって昼寝をしており、右隣には良君がいてあたしと同じようにかき氷を食べている。味はメロン。
視線を遠くに移せば一人で滑るウォータースライダーを嫌がる真ちゃんがともっきーとタカ君に連れられて頂上で揉めている様子が見える。周りに迷惑だからやめなさい。
「良君、メロン一口ちょーだい」
「えっ!あ、はいすいません!どうぞ」
「ありがと」
スプーンに掬われたそれを口内へ運ぶ。冷たいふわふわのかき氷にメロンの果肉入りの甘いシロップが絶妙。
「ん〜、美味しい!はい」
「えっ?えと、すいません!いただきますっ」
お礼にあたしのイチゴの果肉入りかき氷を食べさせると嬉しそうに笑った。天使か。
「お天道様頑張り過ぎだよ…あっついあっつい」
「そうですね…プール日和ですけど日焼けが酷くなりそうですね、すいません」
「峰さんとかこれ以上黒くなんのかな…」
「「…ブフッ」」
「す、すいませんすいません!吹いてません!」
あたしが何となく言った一言で良君とあれ以上黒くなる峰さんを想像してしまい、芸能人の松崎さんを超えるのではないかと思うと二人して吹き出してしまった。良君は本人がいないのに焦って謝っているが、吹いちゃってるしめっちゃ顔が笑ってるから意味がない。面白い。
ちなみに松崎さんはこの世界にもおりますよ。名前は少し違うけど真っ黒な人として有名です。
「他の子が戻ってきたら何しよっか」
「そういえば向こうに四人乗りのウォータースライダーがありました。え、偉そうにすいません」
「マジか。そういやあった気がする。後で行ってみよ!あ、あたしこれ捨ててくるね」
「あ、すいません!ありがとうございます!」
二人共かき氷を食べ終え空いたカップを重ねると近くのゴミ箱に捨てに行く為腰を上げる。良君が行くと言ったが別に捨てるだけだしと断り近くのゴミ箱まで歩いていく。
ゴミを捨て戻ろうと踵を返そうとしたところで、見慣れたピンクの髪が視界に入り見てみるとやはりさっちゃん。しかし先程までテッちゃんと峰さんの三人で泳いでいたと思っていたのに今はプールサイドに一人で、なんとナンパされていた。やっぱりか。結局こうなるのね。
辺りを見渡しても二人の姿が見当たらず逸れたのだろう。あたしはずんずんと寄って行くとさっちゃんと彼女を囲む三人の青年の間に割入る。
「すいまっせーん。この子あたしの連れなのでお返し願いまーす」
「!そらさんっ」
「あ?何だコイツ」
コイツじゃねえよテメェらより年上だわ敬え。そう思いつつ口には出さずににっこり笑っておく。
「すいまっせーん。この子あたしの連れなのでお返し願いまーす」
「あー、悪いけど君には用はなくてね。その子と一緒に遊びたいの。だからちょっと貸してもらえるかな」
「すいまっせーん。この子あたしの連れなのでお返し願いまーす」
「いやだから「すいまっせーん。この子あたしの連れなのでお返し願いまーす」
「「「聞けええええ!!」」」
はいと言うまで同じ台詞を何度も言い続けているとしつこいわと三人からツッコミを頂く。聞くのは君達なのだよ馬鹿め。
さっちゃんはあたしの腕にしがみ付くように抱き着いてきた。怖かったんだね、可哀想に。たわわなお胸が当たってますよ。俺得。
「何処の馬の骨か知れない奴で毎日日サロ行ってますけど今日は天然の太陽に焼かれに来ましたみたいな中途半端なう◯こ色みたいな松崎さんには達しない色黒の肌が大して似合ってもないイケメンと思わせて全然イケメンじゃない残念なチャラ男達には悪いけどうちの大事な子を渡せません」
「何コイツ辛辣過ぎる!!」
「初対面でここまで心抉るか普通!?」
近くで見ると目が細くて鼻が低くてぶっちゃけ不細工な彼ら。遠くから見てたら黒いから顔はっきりわかんなかったけど近くで見るとブスって残念過ぎる。
よくそんな顔してさっちゃんをナンパ出来たなと思い腹が立ってきて思わず思っている事をつらつら言ってしまう。中々のダメージを受けたようだ。やったぜ!
「オレ達に付いてくるか決めるのは後ろの可愛い方の彼女でしょ?」
わざわざそんな言い方しなくてもわかってるわどブス。テメェらよりマシじゃボゲェ。
「さっちゃんこんな不細工についていきたいの?」
「行きたくないです!!」
「だってさ」
「不細工っつった!もう隠す事なくサラッと不細工っつった!!」
さっちゃんに確認すると当然否定の言葉が返ってきてあたしが勝ち誇ったように笑うと一人の男が胸倉を掴んできた。今はパーカー着ているので掴めちゃうんですね。
「あんま女だからってナメてっと痛い目みんぞ?あぁ?」
「そらさん!」
「あんま女だからってナメてっと痛い目みんぞ?あぁ?」
「オウムかテメェ!!」
こっちの台詞だから真似しただけですけど。さっちゃんがあたしの服をぎゅっと掴んだのがわかった。よし、ここは正当防衛としてキン◯マを蹴る。正当防衛ならやってもいいって言われたし。みんなに。
「何をしているのだよ」
足を少し上げ掛けたところで後ろから声が掛かりみんなで顔を向けると、バックから後光のように日差しに照らされた真ちゃん。顔が見えない。ま、眩しい。
真ちゃんはつかつか近寄って来るとあたしの胸倉を掴んでいた手を振り払いあたしとさっちゃんの前に立ちはだかる。
他三人より身長が高い真ちゃんは男三人を見下ろすが、迫力があるからか三人は段々と退いていく。
「何をしているのかと聞いている」
「っ、な、何でもねえよ!」
いつもより低い声で言う真ちゃんに気圧されたのか、男三人はそう吐き捨てるとスタコラとその場を後にした。すげえ真ちゃんカッケェ!
「ミドリンありがとう!」
「流石真ちゃん!」
「そらさんもありがとうございました。でもあんな事言って心配しましたよ!怖かったんですから!」
「あ、ごめんね。怖かったよね」
「違います!男の人がじゃなくてそらさんが殴られちゃうかもって事でです!」
あ、成る程。そうか、そういう怖いもあるな。あたしは申し訳なくなり眉を下げるとちゃんと謝った。
「ごめんね、さっちゃん」
「馬鹿め」
「いたっ!?」
不意におでこに痛みが走り空いている手で押さえると怒った顔の真ちゃん。さっちゃんと吃驚していると怪訝な顔で口を開く。
「相手は男だ。もっと慎重になるべきなのだよ。誰かを呼べ」
「う。すみません…調子に乗りました…」
「全くだ。あそこでアホ面下げて寝ている火神でも起こせばよかったのだよ」
結局自分で解決出来ないならしゃしゃっても意味ないもんね。軽率だったのは確かだ。どんな相手でも向こうが男なら油断はするな、自分で解決しようとするのではなく助けを請えって事で真ちゃんの言っている意味はわかるので反省する。
「ごめんなさい」
「…わかればいいのだよ」
そう言うと真ちゃんはポンとあたしとさっちゃんの頭に手を置いて荷物置き場に戻るぞと声を掛ける。あたしとさっちゃんは顔を見合わせて、あんな事するなんてと吃驚しつつ嬉しくなって笑い合う。何事もなくてよかったって事ですね。ご馳走様です。
その後テッちゃんと楽しそうな顔して戻ってきた峰さんにボディーガードやるならちゃんとやれと真ちゃんと一緒に叱っておく。叱れる立場ではないけど便乗しておいた。
あの後四人乗りや一人で滑るウォータースライダーを楽しみ目一杯みんなで遊び尽くした。そして楽しい時間は過ぎ、もう少ししたら帰る流れになったが最後に一回だけと峰さんと最初に乗ったウォータースライダーに乗りに来る。
みんなは疲れもあってか下で待っているとの事で優雅に寛いで待っているのが見える。
「そういやさつき、テツとこれ乗ってたぜ。そらに誘ってみろって言われたって」
「お!乗りに行ってたんだ!やるなさっちゃん」
「あいつテツの事になると何でもやるからな…」
そう言う峰さんをじっと見つめた後、ツンツンと肘で小突く。
「なになに?寂しいの?」
「んなんじゃねぇよ」
「大事な幼馴染みが遠くに行ってく!って思って寂しいんじゃないの?」
「あいつはただの幼馴染みだ」
ただの幼馴染みねぇ。あたしから見たら常に気にして可愛がってるから幼馴染み以上の感情があるんだと思ってるんだけど。まあさっちゃんに聞いてもそう言うだろうな。
幼馴染みの恋って早々ないものなんだろうか。少女漫画ではよくあるのに。
「よくわかんないね」
「お前こそオレはわかんねぇけど」
「何が?」
「お前は誰が好きなんだよ」
あたしは峰さんの言葉に動きが止まる。目を見開いて峰さんを見上げるとこちらをじっと見つめていた。
「…誰って、もしかして赤君達の事言ってる?」
「それ以外に誰がいんだよ」
「ええええ」
峰さん曰く、キスした事あるのが赤君とあっちゃん、ちょっと悪戯された事あるのがタカ君、頻繁に絡んでは一蹴してくるマコマコ…と挙げだしたら沢山いるらしいがどの人が本命かと言う。
「本命って…」
「紫原には告られてんだろ」
「そうだけど」
「このまま振り回すだけ振り回して終わりなわけねえだろ?お前だし、中途半端のままにはしねえとは思ってっけど」
まさかまさかの峰さんからこんなご指摘を頂くとは。さっちゃんやリコぴんならまだしも。合宿の後当然ながらキスの事で色々突っ込まれたけどあんまり答えっていう答えをせずにはぐらかしたからな。ええ、逃げですとも。
っていうか、峰さんの言葉側から聞いたらビッチっぽく聞こえるんだけど。やめてよ!あたしビッチじゃないよ!言うならカッコよくヴィッチって言って!某暗殺先生に出てくるヴィッチにして!
まあそう思われてるのはあたしがはっきりしないからなのはわかってるけど、でも正直みんなへの気持ちがどう違うとかまだわかんないんだよね。
いい加減向き合っていくべきだって言われればそうかもしれないけど、体年齢の差は埋められたとしてもあたしの心がもう成人越えだからね…どうしてもみんなを“子ども”として見てしまう部分はある。
関係が壊れるのが怖いとかそんなのもあって、わかっていて目を向けようとしなかったけど…峰さんにまで言われるとちょっとマズいかもって思う。
「まさか紫原とかが本気じゃねえとか思ってんのか?」
「…なきにしもあらず」
「はっきり言え馬鹿。まあ高尾とかはオレもわかんねえけど」
意外と人の事よく見てるんですね峰さん。見直しました。
まああっちゃんの言葉は嘘じゃないんだろうなっていうのは前のキスでわかるけど…。むむむむむ。
「…うーん。難しい」
「…焦って答え出すようなモンでもねえし、いいんだけどよ」
峰さんがそう言うと順番が回ってきてあたしが前に座り後ろに峰さんが座った。
さっきの話もあって少しボーッとしていると、グイと後ろに引かれる感覚がした。
視線を下ろすと峰さんの腕が腹に回っていて、思わず振り返る。
「ちなみに、オレもお前といて楽しいしずっと一緒だったら毎日楽しいだろーなって考える時もあっから。宜しく」
「…は?」
ニヤッとニヒルに笑った峰さんに唖然とした。店員さんの明るい「いってらしゃーい」の言葉と同時に出発し長い道を滑っていく。
「ウェーイ」
「………はああああああ!?」
「うおっ!?んな悲鳴出すなよ!ビビるわ!」
あたしが目をひん剥いて叫ぶと峰さんがビビっていたがあたしはそれどころではない。
峰さんの方に顔を向けたままで停止していたがグルンと顔を前に戻すと顔が赤くなる感覚がわかりもうどうしていいかがわからなかった。
無事に下りてこられたけど、峰さんが気掛かりであんまり楽しめなかった。対して峰さんは普通にしており行くぞと声を掛けてみんなの所へ戻る。
あたし…此処にきてモテ期到来、か?
その後はみんなで帰り無事に家に帰宅したけど、頭を占めるのは今までのラブエピソードであったりキュンエピソードであったり、峰さんの言葉だった。
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