INFINITY WORLDあたしと手紙翻訳
「お待たせしました」
「おーお疲れー」
とある平日の夕方。あたしは仕事終わりに誠凛高校付近のマジバに来ていた。ハピネスセットを頼みセットのおもちゃ(携帯獣が乗っているミニカー)で遊んでいると待ち合わせていた誠凛メンバーが来た。と言っても、テッちゃん達二年組だけだが。
五人は注文をしてからトレーを持ちあたしの座る席に向かってくる。
「何でハピネスセットなんだよ、いい年こいて」
「馬鹿言え。ハピネスセットはファミレスのお子様セットみたいに年齢制限がないから何歳が頼んでも楽しめる仕組みになってんだよ」
「だからって頼まねえだろ」
「お前今世の中のハピネスセットを頼む大人を敵に回したかんな。背後から狙われても知んないかんな」
かがみんはあたしの前に座ると早速ハピネスセットについて突っ込んでくる。あたしはポテトを摘むと先をかがみんに向けながら指摘を返す。かがみんのトレーに乗ってるバーガーの量の方がハピネスセットを頼むあたしよりよっぽど驚愕だと思うけど。
するとかがみんの隣に座ったひろやんがそういえばと口を開く。
「そらさんは自分がおもちゃ欲しいだけだろうけど、自分の子どもにおもちゃをあげるって人や食べる量の問題でハピネスセットを頼む大人は多いらしい」
「よく言ったひろやん。ポテトあげる」
「あ、どうも…じ、自分で食べます!」
摘んだポテトを食べながらあたしをフォローしたひろやんを評価する。そして新しいポテトを摘んで口元に持ってってあげると照れたのか自分でと言いポテトを受け取って食べた。可愛い奴め。あ、大丈夫だよ手洗ってあるから。
「そういえばそらさん集めてましたよね。ハピネスセットのおもちゃ」
「ああ、テレビの上に飾ってたっけ」
「うん。だって可愛いじゃん。こないだとかあたしの好きなアニメのカードとマスコット付きだったからあれは嬉しかった」
あたしの隣に座ったテッちゃんが思い出したように言えばそのまた隣の河ちゃんも納得する。人気アニメとのコラボとかが多いのがハピネスセットのいい所だよね。
「ところで、何で火神を呼んだんですか?」
ひろやんの隣に座ったフリが早速話を振ってくる。そうそう、ハピネスセットについて語る為に君達を呼んだわけではないのだよ。
「アレクさんから手紙が届いたんだけどね、残念ながらあたしは英語が読めないから大半意味わかんないんだよね。だからかがみん読んで」
「ああ…そういう事かよ」
呆れたように溜め息を吐かれた。仕方ないじゃん、苦手なんだもん英語。自分でもスラスラ喋れたらいいのになって思うけど苦手なもんは仕方ない。
あたし鞄から手紙を取り出すとかがみんに手渡す。かがみんはもぎゅもぎゅと食べていたバーガーを置くと手紙を開いて目を通す。ひろやんはそれを隣から覗いた。
「アレクさんの声真似して読んでね」
「何でだよ!面倒臭ェわ!」
あたしは両手で頬杖をついて目を閉じながら聞く体勢を取るがあっさり拒否されてしまった。ケチだな。物真似くらいしろよ。
「ハァ…【そらへ。元気にしているか?私は元気だぞ。木吉も毎日リハビリを頑張っているから順調に回復している。木吉から日向宛てに手紙を書いているだろうから聞いているかもしれないが。】」
「何それ聞いてない」
「この前手紙が主将の所に届いたそうです。元気だそうだとだけ言っていましたよ」
「へー」
順ちゃん忘れてるな。それかあたしにアレクさんから手紙が届くだろうと思って言ってなかったのか…まあ気にする所じゃないからいいけど。
「続き読むぞ。【虹村ともタツヤ繋がりであれからたまに連絡を取るようになってな。元気にしているそうだぞ。だからこちらの心配は何もない。】」
「にじむー!にじむーも向こうだもんね。会いたいな〜」
大分前にも言ったけどあたしが来た事は三人も知ってるけど会ってないからね。
「【こちらの世界に来たと聞いたきり会えていないからな。私も久しぶりに会いたい。近況報告も聞きたいしな。暇があればいつでも遊びに来るといい。宿は私の家に泊まればいいし、観光案内もしてやる。その時に木吉や虹村にも会えばいいだろう。】」
「パスポート申請しに行こ」
「後日にして下さい」
あたしがスクッと立ち上がるとテッちゃんに腕を引かれて座らされる。善は急げって言うじゃん。
「急ぎ過ぎです。アメリカは逃げませんよ」
心の中を読むのはやめて下さい。そしてバニラシェイクを飲むテッちゃん可愛過ぎ。
「落ち着けよ、今直ぐってわけにはいかねぇだろ。えっと…【また来れそうな日があれば教えてくれ。本当なら私が行きたい所だが二人にも会いたいだろうし、こちらの案内をしてやりたい気持ちが大きい。金銭面で問題があればいくらでもサポートしてやるから、遠慮せずに言うといい。】」
「あたしもうアレクさんの所に嫁ごうかな」
「冗談に聞こえないんだけど…」
男前…女前過ぎるアレクさんに泣き付きたくなった。あたしの事よくしてくれ過ぎてマジで泣けてくる。まあお金の心配はそこまでしていない。渡米したら生活費を少し節約したり車を買う機会がまた遠のいたりするくらいだ。
フリが頬を引き攣らせながら呟くのが聞こえた。冗談半分本気半分だからね。
「【また連絡してくれ。何ならこちらから電話を掛けるから電話番号も載せてくれると嬉しい。私のは下に書いておくから一応登録しておいてくれ。愛しているよ、そら。それじゃあ、また。アレックスより。】…だそうだ。最後の愛してるはいらねえだろ…」
読み終えたかがみんは呆れながら手紙を封筒に戻しあたしに手渡す。一方あたしは最後の愛しているにやられて心臓を押さえながら机の上に倒れていた。そんなあたしの頭の上に置かれた手紙。マジ破壊力ハンパねえっすアレク姐さん。
「あたし外国に行くの初めてだから何すればいいかわかんない」
「オレが教えてやっから。長期休暇取れる日決まったらまた手紙書いてやれ」
「英語書けません」
「…オレが代わりに書いてやるから」
「頼りになるかがみん素敵!」
起き上がり頭から落ちた手紙を鞄の中にしまいながら行く気は満々の為行く前提で話をする。するとかがみんはやれやれと呆れたような顔だが笑っていて、色々ご教授頂けるらしい。
「でも一人だと心配ですね」
「じゃあ火神が一緒に行くとか」
「オレは別にいいけど」
何気ないテッちゃんと河ちゃんの言葉に何ならタツヤもと言うかがみん。
「マジで?どんだけ男前だよ。ヤベッ惚れそっ」
「やめた方がいいですよ」
「テメェ…どういう意味だ黒子」
まあ惚れそうって言うのは冗談だとして。辛辣なテッちゃんにかがみんが青筋を浮かべた。
「じゃあ明日職場に休暇の事色々聞いてくるね」
「聞きにくくないですか?」
「聞きにくいけど労働基準法の上で休暇は大事だし取らないといけないもんだからねー」
ひろやんの問いに答えると何て軽い社会人だ…とでもいうような目を向けられるが気にしない。だって休みは大切でしょ。
「いやぁ、いつ行くって決まってないのに計画立てる事になると楽しみだね」
「そうですね。旅行でも何でも計画立てている時が一番楽しいですからね」
あたしがルンルン気分でバーガーを頬張っているとテッちゃんは優しく微笑みながら同意してくれた。嗚呼、天使。
ポテトを摘んで口元に持ってってやると一瞬硬直したがお礼を言って食べてくれた。小動物に餌あげてるみたいだ。可愛い。
「そーだ。あたしさ、新しいアトラクション出来たらしいランドかシーに行きたいのよ。誰か一緒に行かない?」
「桃井さん誘ってみたらどうですか?」
「テッちゃん達行きたくない?」
「行きたいですけどまた人数多くなりませんか?」
「そっか。うーん…じゃあさっちゃんに相談してみる」
旅行の計画といえば、と思い出したのはCMで流れていたランドとシーの新しいアトラクションやパークの宣伝。行きたいなと思っていたので早速話題に出すとみんな満更でもなさそうだが人数が…と言うので、まずさっちゃんは絶対ノッてくれるのでそこで相談する事にした。
「でもさっちゃん行くならテッちゃん来て欲しいなー」
「?」
「…この色男め」
さっちゃんの気持ちわかっているくせに首を傾げるとは…とあたしがペチッとおでこを叩くと吃驚して目を瞑っていた。クソかわ。
その後食べ終えてから暫し雑談を楽しみみんなと別れ、後日あたしの家にかがみんに来てもらう事を約束して帰宅した。
帰宅後は早速さっちゃんにLINKで連絡をしてランドとシーの話を出すと即行くの返事が来た。誰と行くかではさっちゃんが誘って決めてくれるらしいので任せる事にした。さっちゃんならみんなの予定把握して計画素早く練ってくれそうだしね。
それにしてもアメリカかー。いよいよあたしも海外進出かと思うとウキウキしてきて、まだ決まっていないのにその日の夜は楽しみ過ぎてあまり眠れず、翌日子ども達のパワーに負けて保育室の床に伏したのは言うまでもない。その上に子ども達が乗ってきた時は本気で死ぬかと思った。
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