INFINITY WORLD
あたしと夢の国

「お久しぶりっスそらっち〜!」

 日曜日。天気は晴れのち曇り。以前に話していた某夢の国のランドかシーに行くという話で、さっちゃんが各自の予定や休みを考慮し決めた日にちとメンバー。テッちゃん、峰さん、さっちゃん、あたし、真ちゃん、そしてきー君。何と恐れ多い事にキセキに混ざって行く事になったのです。
 唯一県外のきー君は夢の国前の駅で合流した。改札口を出ると女の子の視線を集めていたきー君が駆け寄ってきて早速あたしに抱き着こうとするが、華麗にするりと避けると後ろの真ちゃんに抱き着く形になった。

「わあっ!?緑間っち!?」

「貴様、何をするのだよ離せ!」

「オレはそらっちに抱き着こうとしたのにー!」

「知るか気持ち悪い!」

 グイグイと顔を押し返されるきー君と怪訝な顔で嫌がる真ちゃんを見てあたしと峰さんが爆笑した。
 ちなみに真ちゃんの今日のラッキーアイテムはトランプらしく、胸ポケットからケースがチラリと見えている。小さい方が邪魔じゃなくていいもんね。ナイスおは朝。

「で、今日はどっちに行くんだよ」

「ランドでーす」

「チケットももう取ってあるよ!」

「流石桃っち!」

「決まっているなら早く行くのだよ」

「緑間君って何気に一番楽しみにしてますよね」

「ふざけるな」

 事前にどっちに行くか話し合った時にみんなどっちでもと言っていたので、絶叫系に乗りたいけど苦手な子もいると考えプロジェクションマッピングも観れるランドに行く事になった。今の時期ハロウィンの催し物もやってるし絶叫系が少なくても充分楽しめるから申し分ない。
 結果を聞くと「じゃあ早速行くっスよ!」と言ってさり気なくあたしの手を握って歩き出そうとしたきー君の行動を察し、代わりに峰さんの手を握らせズンズン歩いていく姿を見て笑いを堪える。

「そらっち手大きくないっスか?」

「まあオレだからな」

「ぎゃー!?青峰っちだったんスか!!」

 峰さんだと気付くと慌てて手を離しショックを受けているきー君が「酷いっスよそらっち〜」と嘆いているのを見てまた峰さんと爆笑した。真ちゃんもさっちゃんもちょっと笑ってるし、テッちゃんに至っては笑いを堪えすぎてプルプル震えている。きー君反応面白過ぎ。

 そんなこんなで久しぶりのきー君で遊びつつランドへと向かう。日曜日の為人が多いので入場ゲートに並ぶ事になるが、みんなで他愛ない話をしていると時間はあっという間に過ぎていくので苦痛ではなかった。
 ただあたしはこれだけの美男美女に囲まれているので、いつ誰に刺されても可笑しくないと思っています。特に女子。彼らと出掛けるのはいつでも命懸けだと思っています。

「ファーストパスで最初に何取るっスか?」

「あたしあれがいい。蜂蜜ハント」

「オレスプラッシュ山」

「僕絶叫系苦手です」

 聞くと真ちゃんとさっちゃんも得意ではないそうな。あたしは三半規管強いので問題なく、峰さんもきー君も大丈夫らしい。絶叫系に乗る場合は分かれて別のを乗ればいいとの話になった。そしてファーストパスで取りたいのを各々述べていった結果。

「じゃあ取りあえず最初のファーストパス取りに行くのが蜂蜜ハントで、次が光線銃か隠れんぼね。スプラッシュはあたし達で空いている時間に並ぼ」

「その間に私達は森のクルーズ乗ろっか」

「ファーストパスを取りに行っている間にも何処かに並ぶべきなのだよ」

「ならホーンテッドアパートでどうですか」

 という事に決まった。
 そして各々が入場した後、あたしと峰さんときー君の目付きが変わる。

「競歩で頼んだ」

「お任せ下さいっス!」

「あたしらホーンテッドアパートに並んでるからね」

 従業員のお兄さんお姉さんが危ないから「走らないで下さ〜い」と声を掛けているのを聞き、ルールは守って歩いて行け但し誰よりも早くな、とのあたしの指示で六人の中で一番体力があって足が速い峰さんときー君がみんなのチケットを持って出動する。
 あっという間に姿が見えなくなった二人にグッジョブと思いながら、残りの四人も早歩きでホーンテッドアパートに向かう。

 待ち時間が然程なさそうで、列に並びながら待っていると二人が戻ってきて昼頃のファーストパスだったとの事。
 じゃんけんの結果、ホーンテッドアパートは峰さんとさっちゃん、あたしとテッちゃん、きー君と真ちゃんの二人で乗る事になった。

「…あれ?峰さーん?」

「此処にいるだろうが」

「ごめん暗くて同化してて見えなかったブフッ」

「テメェナメてんのかゴラ」

 あたし達の前に並んでいる峰さんとさっちゃんを見てイジると頭を鷲掴みにされた。

「あれ?テッちゃん千人目の幽霊になったの?じゃあこのアパート運営する意味ないじゃんね」

「その口縫い付けてあげましょうか?」

「何でそんなに喧嘩を吹っ掛けているのだよ」

「テンション上がっちゃって」

 そして隣にいるテッちゃんもイジると睨まれた。怖い。そんなあたしを見て真ちゃんが突っ込むが、楽し過ぎて仕方なかった。今日のあたし絶好調。
 そして順番が来て乗り込み、絶叫系ではないにしろいい感じの速度で走り館内を巡るアトラクションを各々が楽しんだ。

「あれ?テッちゃん映ってない…」

「そらさん怒りますよ」

「アメリカンジョークだよ〜」

 最後の鏡に映ったあたしと映像とテッちゃんの姿を見て呟くとふに、と頬を緩く抓られた。言葉は厳しいのに手付きは優しい。
 あえて言わなかったけど複数の本物の幽霊がいて幽霊役を楽しんでいたのに目を瞑ったのは此処だけの話だ。

 アトラクションを降りた後、折角ランドに来たのだからという理由で何か頭に装着する事になりその辺のショップへ入る。

 あたしとさっちゃんときー君は自分が着けたいのを選んだが、残りの三人はあまり興味がなさそうだったので選んであげる事にした。ちなみにあたしはダックのカチューシャ、さっちゃんはダックの彼女のカチューシャ、きー君はウエスタンハット。二人共よく似合ってる。
 ハロウィン仕様もあるけど、どの時期に来ても着けて違和感のない普通のタイプにした。

 そして峰さんはティラノサウルスのファンキャップ。テッちゃんも少しでも目立つようにエイリアンのファンキャップ。真ちゃんは身長高いから虎のカチューシャにしてあげた。本当はリボン付いてるのにしたかったけど不機嫌になったからやめた。
 あとあたしとさっちゃんはチケットを保管出来るようにパスケースを購入した。それもダック仕様です。

 その後まだ少し時間があったのでティーカップに乗って時間を潰す。

「ファーーー!!」

「ぐっ…そらっち回し過ぎっス…!!」

「ウェーイ!!」

 絶叫系大丈夫組とそうでない組に分かれて乗り、当然あたしがめちゃくちゃに回したくると流石にきー君が顔を青ざめさせていた。峰さんは平気そうだったけど。
 さっちゃん達の方は緩〜く回転しててほのぼのしてたからきー君が羨ましそうに見ていたのはスルーした。

 そして次のファーストパスが取れる時間になってあたしと真ちゃんで光線銃のチケットを取りに行き、蜂蜜ハントに乗る。超楽しかった。
 その後は昼食を済ませて光線銃までの時間にスプラッシュ山と森のクルーズで分かれて乗り、合流してメリーゴーランドに行きシュールな峰さんと真ちゃんが乗る姿を動画に収めたり魔法の3Dコンサートを楽しんだり。

 光線銃のアトラクションでは峰さんと得点を競い、さっちゃんはテッちゃんと二人で乗れて嬉しそうだった。ちなみに六人中高得点だったのは真ちゃん。流石キセキ一のシューター。違うか。

 次のファーストパスで隠れんぼを取って、夜に行けるのでそれまで日中のハロウィンパレードを観たり城の中を回ってガラスの靴を観たり、新アトラクションのエイリアンとの交信を楽しんだり回りたい所を計画的に回った。ちなみに待ち時間で長い時は真ちゃんのトランプで時間を潰す。ランドに来てまでトランプって、と思うかもしれないけど案外楽しいんだよ。

 一方、プロジェクションマッピングの抽選についてだがこっちには運に強い味方がいる。

「真ちゃん、今日の運勢は?」

「一位なのだよ。ラッキーアイテムも持っている」

 自信満々な真ちゃんにグループ代表で抽選をやってもらう。その結果。

「きゃー!!当たったー!!凄いミドリン!!」

「ナイス真ちゃん!!」

「フン。当然なのだよ」

 という事で当たりました。流石人事を尽くして天命を待つ真ちゃん。しかも真ん中でいい席。ヤバい真ちゃん。

 あっという間に夕方になって早めの夕食を食べながら、夜のパレードを観てプロジェクションマッピングを観て最後のアトラクションを楽しんでから帰るという流れを話し合った。
 だが此処で問題が発生。

「あらー…」

「逸れちゃったっスね」

 パレードを観るのにいい所を探そうと歩き回っていた時に、きー君以外と逸れてしまった。電話をして何処にいるかはわかったが、どうやら通路の反対側にいるようでもう封鎖されてしまった為合流は叶わなかった。あたし達が何も言わないで人混みの中反対側に回ったから逸れたんだね、ごめんよ四人共。

 その為必然的にきー君と観る事になり、観やすそうなポジションを見付けて待機する。

「今日大分回れたっスね」

「日曜の混んでいる割にはね。一位の真ちゃんがいたからかも」

「あはは!そーっスね!」

 パレードがあたし達のいる所まで来た。周りのお客さんはみんなそっちに集中していて、ずっと「あれキセリョじゃない!?」みたいな視線を集めていたが今はその視線もなくやっと落ち着ける。それは本人もだと思う。

「おー!キレー!」

「本当っスね!」

「あ!ミーニだ!ミーニこっち向いてえええええ!!」

「そらっち落ち着いて!」

 二人ではしゃぎながら携帯で写真に収めていく。煌びやかな照明にテンションは上がり、キャラクター達のダンスを観てほう、と息を吐く。
 不意に隣から視線を感じて顔を向けるときー君がこちらを見ていて、目が合ってから少し笑って急に質問を投げ掛けてくる。

「そらっち」

「何?」

「そらっちって、好きな人いるんスか?」

「え、急だな」

 何故そんな話題をと、あたしにとってナイーブな問題をまさか此処でも突っ込まれるとは思わず苦笑する。

「うーん、どうだろう。まだわかんない」

「そうっスか」

 そう返すときー君は相槌を打ってパレードに目を向ける。

「きー君は?」

「オレもわかんないっス」

「彼女いた事はあるの?」

「全くないわけではないっス」

 そういえば他の子ともこんな話してなかったな。まあ今まで目を背けていた事だし、当然と言えば当然だけど。

「でも」

「ん?」

「気になる人はいるっスよ」

「え、マジか」

 何と、きー君に想い人が。誰だろうかと聞こうか迷っているときー君から話し出す。

「その人はオレと同じくらい馬鹿で、言う事やる事面白くて飽きない人っス」

「うわ、きー君に馬鹿って言われるなんて…その子可哀想」

 あたしはパレードに顔を向けながらその子の印象を読み取ろうと妄想し耳を傾ける。

「初めは興味なくて変な人だなって思ってただけなんスけどね。でも誰かの為に一生懸命になって、泣いたり苦しんでたりする子を放って置かずにみんな助けようとするんス」

「ヘェ〜」

「その女前さがカッコいいなってずっと思ってて」

 そこまで言うとあたしに体を向けるきー君。あたしはそれに気付くと再び顔を向けた。

「みんなに優しくて頼れる人でオレがモデルって知ってても他と変わらないように接してくれて、ありのままのオレを見てくれてるっていうのも伝わるんスよ。あんまり会えないんスけど、いつも今何してるのかなとか気になってるんス」

「…うん」

「今日も久しぶりに会っていつもと変わらない雰囲気に安心したんス」

「……」

 やだな自意識過剰。流石にそこまでこっち見て言われたら意味する事はわかるけど、そうやって悟っちゃうあたし嫌だわ。つか最初馬鹿って言ったよね?覚えてんかんな。

「だから気になる人なんス、そらっちが」

 そんな風に思ってくれていた事が嬉しくて恥ずかしい。あたしは一瞬視線を彷徨わせたがきー君の方に少し体を向ける。

「ありがとう」

「でもまだわかんないんス。これが恋かそうじゃないか」

「うん」

「だからこれから今までよりいっぱい連絡していいっスか?いっぱい話ししていっぱい遊んで、そらっちの事いっぱい知ってオレの事も知って欲しいっス」

「…そうだね。まだわからない事いっぱいだもんね」

 断る理由が見付からずきー君の真っ直ぐな言葉にあたしは微笑むと頷いた。他の子でも言える事だ。互いに知らない所がまだまだあるはずだ。
 そうやって一つずつ向き合っていく事が今のあたしの課題だと思っている。きー君の思いは受け止め、離れている分いっぱい連絡を取ろうと答えた。

「ありがとう!」

 きー君はお礼を言って嬉しそうにはにかんで笑った。その笑顔が可愛く、同時にカッコよくも見えてあたしも思わず笑った。

 その後パレードは終わりプロジェクションマッピングの時間になるので四人と合流し、真ちゃんのお陰で獲得した特等席に座り城に映し出される映像の数々や花火を観た。
 その間、ちゃっかりあたしの右隣に座ったきー君はベンチに着いたあたしの手の上に手を乗せて握ってきたので、周りから見えないなら少しくらいいいかなと思いそのままにした。その手の大きさや横顔のイケメンさにドキドキしたが、映像が綺麗過ぎてマジックにでも掛かったのだと思いたい。

 最後に隠れんぼのアトラクションをさっちゃんと真ちゃんと峰さんと乗って楽しみ、その横のゴンドラではきー君がテッちゃんに絡みまくってうざがられているのが見えてまた笑った。

 こうして念願のランドでの一日は過ぎ、歩き過ぎて浮腫んだ足は次の日の仕事に向けてしっかりマッサージして寝ました。
 まだ余韻でドキドキする胸は意識しないようにして。

51/73
←|→

BACK/TOP
ALICE+