INFINITY WORLDみんなとバスケットボール教室前日
漢字 バスケットボール教室の前日、つまり土曜日の朝。洛山組と陽泉組と海常組が東京に帰ってきた。
「そらっち〜!!会いたかったっス〜!!」
「前に会ったけどね」
「そら久しぶり!!」
「久しぶり〜。みんなは夏以来だね」
午後から一部の子と明日のプレゼント用のお菓子作りをするので既に起きていた。お菓子作り以外の子は会場設定をするらしい。
県外組が朝に東京に来るのは知っていたが、あたしの家に訪問してもらえるとは思わず吃驚しながらも歓迎する。
きー君はランドで会ったけどみんな久しぶりの感覚なので嬉しくなった。いや、きー君は嬉しくないわけではないよ?でも毎日LINKで連絡したり電話したりしてるから久しぶりって感覚は薄いのよ。
「おはようございます、そらさん」
「おはよ。赤君も久しぶり」
相変わらずイケメンですね。爽やかな笑みを見て何か益々男前になったなと何故か泣きたくなった。
「そらちーん。会いたかったよ〜」
「あ、あっちゃん。久しぶりだね、重いよ死んじゃうよ」
「大丈夫大丈夫〜」
「いや、大丈夫じゃな、ま、っあ゛ああああ゛あああ!!」
「そらさんが潰れちゃうからやめような?アツシ」
赤君の後ろから姿を現したあっちゃん。最後にキスした事は当然忘れていませんとも。まあそれは玲央きゅんとたっちゃんと赤君もだけど。だから変にまた緊張しちゃったけど、正面からのし掛かられ仰け反ったあたしの体が震える。てか今腰グギッていった!ヤバいよあっちゃん!
それを見てたっちゃんが止めてくれた。何かフェロモン増してる気がするのはあたしだけ?何なのみんな成長期?
きー君とハヤヤ、赤君と玲央きゅんとコタと永ちゃん、たっちゃんとあっちゃんと劉ちゃんが揃って部屋に入るがデカイのが沢山いるせいでやけに窮屈に感じた。
朝食は食べてきているようで、家にあったお菓子を広げて話に花を咲かせる。
各々今日の夜は実家で過ごすらしいが、たっちゃんは泊まる所がないのでかがみんの家に泊まるらしい。だが劉ちゃんも泊まる所がないので、あたしの家に泊めて欲しいと言ってきた時にはみんなが口を揃えて駄目と反論し、その話は流れあっちゃん宅でお世話になるそう。いや事前に決めとけ?
「髪伸びたわね」
「そうだねー。美容院にもあんまり行かないから大分量多いけど、これから冬になって寒いからこのままでいいかなって思って」
不意に隣に座っていた玲央きゅんが髪に手を伸ばしそっと梳いた。櫛を通しただけで結ってもない髪をあたしも撫で付けるように触る。
「風呂上がりとか面倒臭そうだな」
「永ちゃんはいつでも寒そうだね、頭」
「その言い方は語弊を生むからヤメロ」
剃り込み入っててイカすだろうがと永ちゃんに頭を鷲掴みにされながらあたしはケラケラと笑った。
「そういやオレそらん家来るの初めてだわ〜」
お菓子に満足した様子のコタが立ち上がり部屋をぐるりと見渡した後、何気なく閉まっているカーテンを開けた。多分景色が見たかったんだろう。
「あっ」
「えっ」
開けないでと止める前に開けてしまい、先日に続き今日も窓に張り付く奴がいた。
「お腹空きむぁすぃたぁ〜」
「ぎゃああぁぁぁあ!!」
内藤さんが顔を貼り付けてお菓子を見つめながら言うのを間近で聞いたコタは絶叫しながら後ろに転んだ。
「うわっ!?誰っスか!?」
「変質者よ!!警察に電話!!」
きー君と玲央きゅんがドン引きの顔で携帯を取り出したのを見て、あたしはピコピコハンマーを手に取ると窓を開けた。
「そらさぁぁぁぁん!!寒かったです!!熱い抱擁を!!」
「シャラァァァップ!!」
飛び付いて抱き着こうとする内藤さんの顎を目掛けてハンマーを振り上げた。ピコンッと軽快な音を立てて後ろに仰け反った内藤さんに拳を突き付ける。
「アーンパァァァァァンチ!!」
「バイバイキーン!!」
例の如く撃退をした後そっと窓を閉めた。
「こうして彼は輝く星の一部になったのです」
「いやいやいや!」
「…どういう状況かな?」
朗読するように補足した後何事もなかったかのように座り直すとハヤヤとたっちゃんが顔を引き攣らせて質問を投げ掛けてくる。
「この前言ってたストーカー。最近いつもああやって気付いたら近くにいんの」
「それは大問題では?」
「まあ。でも撃退出来るし不法侵入はして来ないから。ベランダにはよく来るけど」
「吃驚した〜」
ジュースを飲みながら淡々と説明すると赤君が僅かに顔を顰めながら聞いてくるが、まああれくらい可愛いものだと思う。アレだ、銀の魂的な漫画でよくいるストーカーみたいなもんだ。
吃驚して転んでいたコタが戻ってくるとソファーにごろりと寝転ぶ。
「いつもなの?」
「いつもだね」
「何で警察に言わないの?」
「言ってもあれくらいじゃ動いてくれないんだよ」
初めてベランダに来た時に一回相談したが、撃退出来ているならと大して相手にされなかったので諦めた。あっちゃんが不服そうに質問をしてくるが、まあ本気で犯罪しようものならみんなに頼るからと言うと渋々納得した。
「怖くないんッスか!?」
「そりゃビビるし色んな意味で怖いけど、荷物送り付けたり尾行したりするだけで大きな害はないからあんまりかな?襲われでもしたら流石に怖いけど、あの子本当はいい子だと思うよ」
ハヤヤの食い気味な質問に、タカ君の妹の痴漢捕まえた時に取り押えるの手伝ってくれたしと付け足して言うと微妙な顔をされた。
「恋は盲目って言うじゃん。正にあれ」
「だから余計に心配アル」
「心配してくれてんの?」
「してないアル」
「心配って言ったじゃん」
ここにきて劉ちゃんがツンデレだとニヤニヤしていると、あっちゃんがポテチを摘みながらあたしに視線を向ける。
「油断しちゃ駄目だよ。男はみんな狼なんだから〜」
「……うん、そうだね」
それはわかってるけどまさかあっちゃんからそう言われるとは思わず、あたしはそっとその場を抜け出すとキッチンに向かった。
「何でそっちに行くの〜?」
「男は狼なんでしょ?」
「今はしないし〜」
今はって何だ今はって。あたしはクスクス笑い昼食にピザでも頼もうかと提案すると食い付いてきたワンコ達(きー君とハヤヤとコタとあっちゃん)を可愛いなと思いながらヨシヨシしてやった。耳と尻尾が見える不可思議。
昼食後は各々割り振られた作業の為一時解散する。あたしも髪を結んでやる気を出した。
「そらさん、これで大丈夫ですか?」
「ん、オッケー。オーブン予熱して焼こっか」
「はーい」
午後。リコぴん、かがみん、水戸さん、さっちゃん、良君、あっちゃん、たっちゃんそしてあたしの八人で自宅にてお菓子作り中。
リコぴんとさっちゃんにアドバイスしながらみんなでテキパキと作っていき、クッキーやパウンドケーキ、マカロンにカップケーキなど色んな種類のお菓子が沢山出来上がる。部屋が甘い匂いに包まれた。
「あっ!ムッ君つまみ食いしちゃ駄目だよ!」
「またアツシは…去年も桃井さんに怒られていたね」
「常習犯か貴様」
「痛いよそらちん」
しゃがみながらこっそり背を向けているでかい奴がいるなとは思ったが、まさか食べているとは思わずさっちゃんとたっちゃんに注意されるのを聞いてあたしがガシッとその頭を掴むと目を光らせて厳しめに注意する。
あっちゃんはもぐもぐと口を動かしながら痛いと訴えてくるが反省の色が見えない。
その手にあるカップケーキを横取ると仁王立ちしながら再度注意をする。
「つまみ食いするなら向こうの会場セッティングチームに行ってもらいまーす」
「え〜ヤダ〜寒いし〜」
「じゃあつまみ食いばっかしてないでちゃんとラッピングして。ちゃんとしないともうあっちゃんとは今日お話ししない」
「ヤダ!もーわかったよ〜」
やれやれと言いながらラッピングの手伝いをするあっちゃん。何がやれやれだコノヤロウ。
「沢山出来ましたね!」
「余ったやつ折角だから会場にいるみんなにお裾分けしようか」
「賛成」
ウキウキする良君マジ天使。あたしがざっとお菓子別に小分けして提案するとかがみんと水戸さんが頷いた。
片付けをしてからみんなで外出の準備をして外に出る。すっかり冬の寒さになりつつある今、寒がりのあたしはマフラー代わりにしているストールが手放せなくなっていた。本当は手袋にニット帽を被ってカイロ常備して完全防寒にしたいけど、今それしちゃうと冬本番乗り越えられないから我慢だ。
ちょっとスーパーに寄ってジュースも買い足し会場へと急ぐ。
バスケットボール教室の会場になるストリートバスケに来るのは初めてだ。到着すると、汚れた壁を拭いたり荷物置き場を作ったり会場セッティングをする面々。そこには高校生組は勿論大学生組もいた。しかし霧崎やちーちゃんはいない。今回も不参加か。
これだけの人数が集まると準備は直ぐに終わるので、一部準備が終わった子はバスケをして遊んでいた。うわぁ、青春。
持ってきた差し入れはリコぴんに託し、壁一面に描かれたストリートアートにあたしは目を輝かせる。
「すっごーい!うわ、うわ!」
「あはは!言葉になってないじゃん!」
何か見るだけで青春詰まってるなぁ、って思えるアートだった。あー、あたしもこの場にいたかったなー。
「どうぞ」
「ん?」
「そらさんも描けば?」
「え!?いいの!?」
「当たり前じゃーん!」
不意にツッチーとコガにペンキが入った缶を幾つか差し出されキョトンとしていると描き足すように言ってくれる。
描いた時に洛山と正邦はいなかったが去年のバスケットボール教室をする前に洛山が描き足し、先程正邦も描き足したからあたしもいいよと言ってもらえた事が嬉しくて泣きそうになった。
「服汚さないようにね」
「うん!」
俊ちゃんに見守られながら、桐皇と描かれた近くに絵を描いていく。何がいいかな〜やっぱここはクマも描いてあるしネコとか?ヒヨコとか?
あたしはルンルンで思い付く限りのイラストを描いていく。勿論出来栄えに邪魔になり過ぎないように、空いたスペースに描く。星も描いちゃえ。
「出来た!!」
「おー!」
「いいですね!そらさん!」
「へっへーん」
暫し描き続けて腰を上げる。それを見て俊ちゃんは感嘆の声を漏らした後いい感じだと褒めてくれて、いつの間にかいた森りんにべた褒めされる。嬉しくなってあたしはニヤニヤ笑いながら頬を掻いた。
「あ、付きましたよ」
「え、マジ?やば」
「ちょっと待って下さい」
指に付いてたペンキが頬にも付いてしまったようで、取れなくなると思い慌てて擦ろうとするのを森りんは止めて、急いで何処かに走っていく。
戻ってくると水に湿らせたハンカチを持っていて、乾いていないそれにそっと滑らせて拭いてくれる。
「これで…落ちました!よかった、少量で」
「あ、ありがと森りん」
「そらさんの珠のような肌に汚れが付かなくてよかったです」
近い。いつものふざけた感じじゃなく真剣にやってくれているしイケメン顔が近くにあってトギマギした。クソ、最近森りんの普通のイケメン率が高くなってやがる!目の保養ではあるけど。
あたしは恥ずかしくなって頬が赤くなるのを感じストールに鼻先まで顔を埋めると、目線を合わせていた森りんが動きを止めた。
「…そらさん。ひょっとして照れてますか?」
「…照れてない」
「嘘だ」
「…もう!煩いよ森りん!」
シュピピッと手を振りながら遠ざけようとするとその手を止められて顔を近付けられる。
「そらさん可愛いです」
「〜っ!言わなくていいから!」
「そらさん」
「ちょ、まっ」
微かに頬を染めて顔を近付ける森りんに咄嗟にぎゅっと目を閉じストールに顔を埋めると目の前を風が切った。
目を開けるとそこには森りんはおらず、代わりにきー君がいた。
「そらっち!このクッキー美味しいっスね!」
「え?あれ?」
「ささ!こっちでみんなで食べましょ!」
「コラァ黄瀬!!先輩になんて事を!!」
森りん何処行った?と疑問符を浮かべるあたしにきー君は摘んでいたクッキーを自分の口に放り込みながら声を掛けてきて、あたしの背中を押してみんなが差し入れのお菓子を食べて屯する方へ促される。背後で森りんの声が聞こえ振り返ると芝生に転がっていて葉っぱを付けながらズンズンこちらに向かって歩いてきた。
「森山先輩どうしたんスか?」
「このっ…黄瀬ェェェェ!!」
「うるっせえよ!!さっさとこっちに来て黙って菓子でももらって食ってろ!!」
いい感じだったのにー!と叫ぶ森りんに喝を入れるゆっきー。怒られて自分は悪くないのにと肩を落とす様子をみ受けてコボちゃんが肩を叩いて励ます。何かごめん。
「これはそらさんが?」
「ん?あ、そうそう。あたしがトッピングした」
いつの間にかきー君の反対側の隣には赤君がいて、手に取っているカップケーキを見ながらあたしに話し掛けてくる。
他の子のトッピングは斬新なものが多かったけど、チョコチップを乗せるなど普通のトッピングにしたあたしは一目でそれが自分の作ったものかわかった。
よくあたしだってわかったなと思いながら肯定すると赤君は少し満足そうに微笑んで口に運ぶ。
「美味しいです」
「ありがとう。さっちゃん達も作ったけどちゃんと上手に作れてるからどれ食べても大丈夫だよ」
「「そらさん酷くないですか!?」」
「ごめんごめん」
女子二人に聞こえていたようで半泣きでこっちを見る様子を見て苦笑した。いやいや、日々進歩してるなって話だよ。
「そらさん。少し向こうで話しませんか?」
「ん?いいけど」
「…甘えたい気分なんです」
京都で言った事覚えてたんだね。赤君は離れたベンチを指差しながらやや遠慮がちに言うので、自分から甘えていいって言ったんだしと思い二つ返事で了承した。嬉しそうに笑った赤君イケメン過ぎて辛い。
特に何かあったわけではなくゆっくり一対一で話したかったようで、最近の学校の話や生活の話などをしてゆっくり時間を過ごした。勿論こっちのみんなの話やあたし自身の出来事も伝えた。
だがこの場には構ってちゃんが沢山いるので、タカ君やきー君やさっちゃんは勿論峰さんやかがみんにバスケに誘われるなど、結局みんなでワチャワチャなった。でも楽しかった。
その日の夜、朝早くに起きて差し入れのおにぎりなどを作る為早めに床につき、明日のイベントに向けてしっかり睡眠を取った。いい夢が見られたのも、みんなと過ごして楽しかったからかなと思い早くも充足感を感じたあたしでした。本番は明日なのにね。
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