INFINITY WORLD
みんなとバスケットボール教室�@

 バスケットボール教室当日。天気は晴れ。寒さはあるが日差しのお陰で過ごし易い気候と言える。

 早朝に起きておにぎりや玉子焼き、タコさんウインナーなどありきたりなお弁当を作り重箱にいくつか準備し、そろそろ行こうかとジャージに身を包み眠たい目を擦りながら前日に準備しておいた荷物を持ち上げたと同時にインターホンが鳴る。
 画面を覗くとそこには赤君がいて、あたしが声を掛けるとニコリと笑った。

「赤君?」

『おはようございます。迎えに来ました』

「え!あ、おはよう、わざわざありがと」

『いえ。此処で待っています』

「直ぐ行くから待っててね」

『急がなくても大丈夫ですよ』

 めちゃくちゃいいタイミングで来たなと思いながら荷物を持って部屋を出る。フロントの自動ドアを出るとジャージ姿の赤君がいて、あたしを見るとふわりと微笑んだ。

「迎えに来てくれてありがとう」

「いえ、オレがしたかった事なので。急に来てすみません」

「ううん、丁度出ようとしたところだったんだよ。タイミングよかった」

「逆算しましたから」

 成る程。待ち合わせ時間を単純に逆算してあたしの性格上早めに出るのを予測した上でのお迎えだったわけですね。流石赤君。出来る男。

「吃驚させたかったのと、折角だからそらさんと行きたいと思いまして。普段会えませんから、独り占めですね」

「…もーまたそういう事言う〜」

「痛いです」

 さらっと言っちゃうからマジで照れる。ベシッと背中を叩くとバランスを崩す事はなかったが苦笑しながら痛いと訴えた赤君。あたしは笑って誤魔化すと二人で歩き出す。

「荷物お持ちします」

 歩き出す前にスッと重い方の荷物を持ってくれて、自分の荷物もあるのにそういうさり気ないところもイケメンだと思いました。

 そしてストリートバスケに到着。そこには真ちゃんとタカ君、リコぴんと順ちゃんが到着していた。

「そらさんおっはー!赤司もおはようだけど一緒に来たの?」

「おはよ。迎えに来てくれてね」

「ふーん」

 タカ君はあたしを見ると元気よく挨拶をしてくるが、隣にいる赤君を認識すると面白くなさそうな顔をして唇を尖らせる。タカ君の気持ちを知っている以上、そんな顔をしていれば拗ねているのかなと思ってしまいどうしたらいいか対処に困る。
 下手に声を掛けると気まずいかと思っていたが、タカ君はあたしの持っている荷物をヒョイと持つと荷物置き場まで持って行ってくれた。

「ありがとう」

「どいたま〜」

 ニッと歯を見せて笑うタカ君についていきみんな荷物を置いている場所にあたし達も荷物を置く。その真横には保育スペースと段ボールの看板が立てられた座敷があった。

「おはようございますそらさん!今日親御さんに代わって子守りがあったら此処でお願いしますね!」

「はーい。立派に作ってもらっちゃって。いいね、ありがと」

 リコぴんが駆け寄ってきてあたしのスペースの紹介をする。
 畳やクッションマットが敷かれたスペース。ボックス椅子でコの字に囲まれていて余程の事がない限りボールが飛んで来ない位置にあり、でもバスケをしている様子がよく見える立派な保育スペースだった。

「誰がやってくれたの?」

「昨日今吉さんと諏佐さん含む桐皇にやってもらった」

「そっか。お礼言わなきゃだね」

 順ちゃんが疑問に答えてくれた。あたしがいた時に見た記憶ないけど帰ってからやってくれたのかな。ごろりと寝転がってみると晴れた空が見渡せて凄く快適。非常に快適。

「このまま寝そう…」

「気持ちいいですよね」

 リコぴんがクスクス笑うのが聞こえる中で目を閉じ快適さに身を委ねていると、不意に瞼の裏からでもわかるくらい影が差し掛かる。

「おはようございますそらさん!こんな所で寝たら襲ってくれって言ってるものですよ!それに乗じちゃいますけどね!!」

「ぎゃぁぁあああああ!!」

「え!?何で此処にいるの!?」

「僕は何処でもそらさんが行く所について行きます!護衛の為に!」

「あんたが一番危ないわァァァ!!」

 何回連続で出てくるんだ!あたしに覆い被さっていたのはもうわかっていると思うが内藤さんで、リコぴんは吃驚してその場から後退しこの場にいるみんなが近付いてくるのが見えた。
 あたしは内藤さんの服を掴むといつぞやの如く股間を蹴り上げその勢いでせいやぁっと後ろへ放り投げた。

「ぐおっふぅ…ッ!!!」

 モロ股間に蹴り入ったからね。投げ飛ばされた先で股間を押さえながらのたうち回る様子を見て、男性陣は顔を青ざめさせる。痛みがわかるのは男の子だけだもんね。
 あたしは起き上がりフンと鼻を鳴らすと立ち上がった。

「毎回毎回!いい加減にしたまえよ!」

「言うならちゃんと真剣に言わないと」

「もうこりごりなのだよ!!」

「オレの真似をするな!」

 仁王立ちしながらさっさと帰れと言うと赤君にふざけた口調ではなく真剣にと促されるが、それならと真ちゃんの口調で言うが逆に真ちゃんに怒られた。内藤さんは蹲りながら顔を上げる。

「ぼ、僕だってそらさんとワイワイしたい…!!」

「参加したいの?ストーカーやめたらな」

「ストーカーは僕の副業です」

「威張って言えるのが逆に尊敬するわ」

「尊敬…!」

「褒めてねえよ」

 言っても言ってもキリがない。やれやれと頭を振って踵を返し準備に取り掛かろうとすると背後で動く気配がした。

「隙ありィィィ!!」

「だからそういうのをなくせって…ギャァァァ!!」

 あたしの飛び掛った内藤さんに気付き振り返るが、彼があたしに抱き着く事は叶わなかった。

「な〜にやってんだ?内藤クンよ〜」

「!?こ、この声は…!!」

「お前いい加減にしろよ!帰れ殺すぞ!」

 グワシッと頭を鷲掴みにして食い止めたのは前回も助けてくれた清ちゃん。その後ろにはツボちゃんと村ちゃん、そして昨日はいなかった裕ちゃんと初対面の多恵ちゃんも控えていて何事だと目を瞬かせていた。村ちゃん弟の姿は見えない。欠席かな。
 黒い笑みを浮かべながら背後にも黒いオーラを纏っている彼に畏怖した内藤さん肩を飛び上がらせる。

「出たな!爽やかブラックイケメン!そらさんの彼氏だからって調子に乗って!」

「は?」

「え」

「「…ハァァァアア!!?」」

 いや爽やかブラックイケメンって、とツッコミを入れようとしたがその後に続いた言葉に清ちゃんとあたしは目を見張り、聞いていた一同声を上げる。

「そらさんどういう事ですか!?」

「い、いや違くて」

「オレというものがありながら…!!」

「いや違うって!」

 リコぴんにズズイッと顔を近付けられて迫られると冷や汗が頬を伝う。タカ君も凄い剣幕で尚且つ泣きそうになりながら迫って来る様子にあたしはお手上げだった。確かに清ちゃんが“大事な人”って言ってその後も告白的な云々はあったけど…本気で内藤さん付き合ってると勘違いしてる。これはこれで色々まずいし後が面倒だ。清ちゃんが嫌とかじゃなくて。

「そらさん…そうだったんですか」

「え、いや、赤君?」

「信じていたのに…」

 え、何この不穏な空気。赤君の目が据わっていてあたしを見る目がいつもと違う。ちょっと待って、怖い怖い怖い。

「……本当なのか?」

 真ちゃんは明らかに暗いオーラを身に纏わせて聞いてくる。これは言い方を間違えるとみんなにも清ちゃんにも変な誤解が。

「違ェよ、馬鹿」

 そこへ清ちゃんの声が響く。みんなが視線を向けるとバツが悪そうに頭をガシガシと掻いた。

「付き合ってねえよ、勘違いすんな」

「でもあの時確かに大事な人だって!」

「ああ、言った」

 否定する清ちゃんに嘘は言っていないと内藤さんが食い下がるが、清ちゃんは内藤さんの頭を掴む手を離すと真っ直ぐ内藤さんを見据えて口を開いた。

「確かに“まだ”付き合ってねえよ。でも大事な人には変わりねえ。そらさんはオレにとっての大事な女性ひとだから、何処の馬の骨か知らねえ…っつーかストーカー野郎なんかに渡さねえって話だ。勝手に勘違いしてんじゃねえよ、轢くぞ」

 その言葉でその場が静寂に包まれる。ツボちゃんと村ちゃんは吃驚し過ぎて硬直してるし多恵ちゃんは何がなんだかわからない顔をしているが告白的な台詞に口元を押さえて赤面し、真ちゃんとタカ君も清ちゃんを新種の動物でも見付けたかのような顔で見てるし赤君は先程のオヤコロや逆らえない雰囲気はなくなったが冷静に清ちゃん見据えてて、順ちゃんとリコぴんは意外そうな顔をして固まっている。

 あたしはというと、口から心臓が出るんじゃないかってくらいドキドキしてて絶対顔が真っ赤だ。公言されて恥ずかしくないわけない。しかもその真摯な台詞に、正直心が持ってかれそうだった。

 清ちゃんは自分の言葉を思い返してハッとしあたしを見た後同じように赤面し、顔を隠すようにその場から離れて荷物置き場へ直行する。内藤さんはそれを見送った後、あたしにグルンと振り返って向き直り目の前まで来ると涙目で口を開いた。

「何なんですかあの人!イケメン過ぎます今日のところは負けました!」

「え、いや、あたしに言われても」

「僕もそらさんを振り向かせるのに修行が足りません…今日はこれで一旦失礼します」

 それだけ言うと悄然としながらトボトボ帰っていく内藤さん。上がり下がりの激しい彼についていけないながらも、清ちゃんの真っ直ぐな発言で内藤さんが揺り動かされたのだろうかと思った。

「…そらさんこっち!日向君!みんなで準備進めといて!」

「お、おう」

 この空気をどうしてくれようと思っていると、リコぴん腕を引かれてその場から離れる。その際にきちんと指示をしていて流石監督と思った。

「…そらさん大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫…だけど、吃驚して」

「今までにないくらい顔が真っ赤です」

 それを言われて顔を手で覆うと確かに熱かった。清ちゃんにやられた。

「…告白されてたんですか?」

「…紛いな事は」

「他には?」

「…タカ君ときー君。きー君は気になるってだけだけど」

 そこまで言うと成る程…と納得をして、「最近話を全然聞けていなかったからまた聞かせて下さい」と微笑んで言った。うん、そろそろリコぴんやさっちゃんには色々話そうかなと思う。今まで曖昧に言って逃げてきたからね。

「あの…」

「?あら、あなたは」

「大坪多恵です!大坪泰介の妹です!」

 そこへおずおずと声を掛けてきた多恵ちゃん。あたし達の視線を浴びるとピシッと姿勢をよくして挨拶をする。いい子感がビシバシ伝わる。

「初めまして、山口そらです。ツボちゃん、じゃなくてお兄さんから話聞いてるよ」

「直接話すのは初めてね。私は相田リコ!誠凛の監督よ」

「はい!お二人の話も兄からよく聞いています!前回の夏合宿には参加出来ませんでしたが、今日から宜しくお願いします!」

「こちらこそ宜しくね。今日は手伝いに来てくれたの?」

「はい!私にも何か出来る事があればと思いまして」

 ああ、もう笑顔可愛いキュンキュンする。きっと部員からも人気なんだろうな〜タカ君も潜入の時デレてたしね。
 そこで他愛ない話をしてからあたしも気持ちを切り替わったのでみんなの所に戻る。みんなも同じようにあの空気を一掃して準備に励んでいて、いつの間にか人も増えていた。

 バスケを教える側が全員集まった頃(峰さんもさっちゃんに引きずられるように無事に来た)、学校別に去年同様色分けされたTシャツとロンT重ね着ユニフォームを着て集まる。みんなの胸には名札が付けられていてあたしもそれに倣って付ける。名札とか実習思い出すわ。ユニフォームは各校の特色が生かせてるシンプルなデザインでいいなと思う。

 あたしは基本保育担当なので着ているジャージのままです。あの世界ではadid◯sだったけど今回はNI◯Eのジャージです。どうでもいいか。

「今日は去年同様子どもらにバスケを教える企画や。去年と同じようにしたらええけど、怪我はないようにな」

「「オス」」

「今年はそらさんがいるから小さいお子さんがいても面倒見てくれるし、親子で参加する組もいるから失礼のないようにな」

「「オス」」

 翔ちゃんとスーさんが仕切ってくれている中で、あたしは集まり始めた子ども達の影に気付く。

「プレゼント配りは基本帰りだったよね。途中で帰る子はその時にって事で。あっちゃん絶対つまみ食いしちゃ駄目だからね」

「は〜い」

「大丈夫。アツシには別のを与えるから」

「ペットかよ。じゃあもう集まり始めてるから早速やりましょー。あたし音頭取っちゃうけどいい?いいよね」

「「拒否権なし?」」

「それじゃあー頑張っていきまっしょーい!!」

「「おー!!」」

 拳を突き上げるとそれに倣ってしてくれる辺りみんなノリいいよね。してない人もいるけど。

「おはようございまーすっ!」

「キャー!去年のお兄さんいるー!」

 元気に駆けてくる子ども達。その中の女の子はたっちゃんやきー君に一直線で、男の子はさっちゃんやリコぴんに直進していく。ちょっと待って、黄色い子ども用ビブス配ろうとしてる人達スルーされて可哀想だからやめてあげて。

「子どもと言えど血は争えぬな」

「いや何キャラ?」

 あたしが腕組みして防寒していると近くにいた清ちゃんに細やかなツッコミを頂く。あたしが振り返るとバツが悪そうに顔を歪めた後小声で謝ってきた。

「さっきは悪い。勝手な事言ってそらさん困らせた」

「あ、いや。ううん、大丈夫。…ありがとう」

 気持ちは凄く伝わったよと笑うと清ちゃんは微笑んであたしの頭を撫でてみんなの輪に入っていった。

「あら!本当に子守してくれるの?」

「はい!一応保育士なので。その間にお兄ちゃんお姉ちゃんの方と一緒にバスケしてもらっても構いませんよ。此処なら赤ちゃんの様子見えると思いますし」

「助かるわ〜。恥ずかしいからママも一緒にやってって煩かったのよ」

 早速来たもう直ぐ1歳くらいに見える赤ちゃんを抱えたお母さんが預けに来る。その後ろでお母さんの服を引っ張って早く一緒にやってと駄々を捏ねる男の子。お兄さんお姉さんに混ざるのが恥ずかしいんだな。

「お願いします」

「しかと承りました!」

 預ける側も見ず知らずの人に預けるんだから抵抗感あるかなって今更疑問に思ったけど、様子が見えるっていうので難なく預けてくれた。しっかり赤ちゃんを受け取り、来客用荷物置き場に荷物を置いて男の子とコートに向かうお母さんを見送ったあたしは赤ちゃんに視線を落とす。

「あー、うー」

「おはよー。今からママがお兄ちゃんとボールで遊ぶんだって」

「おーう?」

「そ、ボール」

 ぐずらないので人懐っこい子らしい。喃語を話す赤ちゃんを見てあたしは話し掛けながらボックス椅子に腰掛けると、お母さんが見えるように膝の上に座らせた。

「まんま!」

「(ご飯?)ママだね〜。あ、ほら見て、お兄ちゃんボール投げるよ」

「たぁー!うい」

「凄いね、上手だね」

 激かわ。これだから小さい子と関わるのはやめらんない。きゃっきゃっとはしゃぐ赤ちゃんに悶えて吐血しそうになりながらも話を合わせて見学をする。続々と集まる子ども達とバスケを教えて遊ぶみんなを見てあたしもポカポカする気持ちになった。

「「(なんか…いい)」」

 ちゃんと子守をするあたしを見て、タカ君を始め一部男性陣が何かを考えているなんて事は赤ちゃんに夢中なあたしには当然わからなかった。

 まだまだ続くよ!

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