INFINITY WORLDみんなとバスケットボール教室�A
数時間後。
「そらおねえちゃん!わたしともあそんで!」
「ダメー!あたしとあそんでもらうの!」
「アンパ◯マンやって!さっきのアン◯ンマンやって!」
賑わってきたバスケットボール教室。最初に預かった赤ちゃんはお母さんが戻ってきたのでお返しし、お兄ちゃんの方は打ち解けたようで高校生に教えてもらいながら楽しそうにしている。
みんな子どもと関わるのが上手なようで、たっちゃんやきー君や赤君や清ちゃんのようにイケメンは女の子に惚れ惚れされながら教えており、さっちゃんやリコぴん美女には男の子が緊張しながら関わっていて、その他のみんなもそれぞれ懐かれながらバスケを教えていた。
テッちゃんを見ると自信なさ気な表情をした女の子が服の裾を引っ張って周りを不安そうにキョロキョロ見ており、テッちゃんがそれを優しく見守りながらバスケを教えている。後で聞いた話だと去年も来た子で、付きっ切りで優しく教えてくれたテッちゃんが気に入ってべったりだそう。それ見てさっちゃんちょっとジェラってた。子どもにヤキモチって、頑張れさっちゃん。
冒頭に戻るが、あたしは今小学生低学年含む幼児さん達数名に引っ張りだこにされている。お姉ちゃんに引き連れられてバスケをしに行くお父さんに預けられた幼児さんが、離れてぐずっていたのでア◯パンマンと言って空を飛ぶようにブーラブラしてあげたらお気に召したようで。それを見ていた他の子が自分も自分もと要求してきて今に至る。いい加減腰ヤバい。
「ちょ、ちょっとタンマ!休憩させてあたしおばあちゃんだから」
「おばあちゃんなの〜?かたたたいてあげる〜!」
「あ、いや大丈…あだっあだだだだ!そこ骨!」
「いたいほうがいいってパパいってたよ〜」
「パパ間違えて教えてる!肩叩きより肩揉みの方がいいから肩揉みにして欲しいな〜」
「いいよ!わたしもしてあげる!」
息切れしながらクッションマットに座り込むと一人の女の子が肩を叩いてくれるが子どもの力でも当たり所が悪ければ痛い。肩叩きは肩凝りを余計に悪くするとテレビでやっていたので、肩揉みに変更をと言うとまた別の女の子も一緒になってマッサージしてくれる。可愛いな〜ちょっと痛いけど。
「きもちいいですか〜」
「気持ちいいでーす。よし!元気になった!ありがとぉー!」
「「キャー!」」
いつの間にかマッサージ屋さんごっこのような雰囲気になりお客に成り切ってみると反応がよかった。くるりと振り返り二人の女の子を抱き込むときゃっきゃと喜んだ。天使。
「「(やっぱり…いいな)」」
いくつかの視線を感じ見てみると数名と目が合ったので、こっちは心配ないからちゃんとそっち見て教えなさいと目を細めながら顎をクイッとしゃくって促した。ヤクザかあたしは。
「ぼくもする!マッサージ!」
「本当?ありがと〜」
クイクイと服を引っ張ってきた男の子が少し拗ねたように言うので女の子二人を解放して男の子と向き直る。
むに。むにむにむに。
「きもちいいですか〜?」
「あ、いや、ちょっと違うかな〜?アハハ」
「「コラァァァァ!!」」
よくあるやつ。男の子はニコニコしながらあたしの貧相なお乳をその小さな手で揉みしだく。わかってやっているのか否か。そうい年齢だよね、うん。
ここで気持ちいいって答えるのは大問題なので苦笑しながら言葉を選んでいると、遠くから怒る声が聞こえてみんな肩を飛び上がらせた。
「駄目!おっぱい揉んじゃ駄目っスよ!!」
「そこのマッサージするのはまだ早い!!あと十年待て!!」
「子どもに何言ってんだあんたは!!」
きー君とタカ君が必死の形相で迫ってくるのを見て当然子ども達が怯えるのでそれを庇う。何よりタカ君の発言駄目!公共の場って事忘れないで親御さんいるから!親御さん達笑ってるけど怒っていいんだからね!!遠慮せずに、さあ!!
「子どもなんだから仕方ないよ。もうこっちはいいから早くちゃんと教えてあげてよ!わざわざ来てくれたのに待ちぼうけさせないの」
「クッ…オレも子どもになりたい…!今だけ!」
「うるっせぇよ馬鹿!!真剣にやれ!!」
ねー?と半泣きの子達の頭を撫でながら同意を求めていると、遠くでハンカチを噛みながら何やら嘆いている森りんとシバくゆっきー。森りん助平だな。もう何も触れまい。
そんなこんなありつつ小さい子の相手をしているとあっという間にお昼になった。
『それじゃあ一度お昼休憩にしま〜す!お弁当をお持ち頂いている方はその辺りも自由に使ってもらって構いませんので!買いに行っても食べに行っても構いません!13時になったらお昼からのミニゲームを始めまーす』
拡声器でリコぴんが全体に指示を出し、親と来ている子は親の元へ駆けていき子ども同士で来ている子は子ども同士で食べに行った。テッちゃんにべったりだった子も友達と一緒に何処かに行った様子。
本当は子ども達もお兄さんお姉さんと食べたいと言っていたが、お昼休憩中は次の準備もある為別々にしてあるのです。
「よぉ」
「あれ?灰君じゃん」
あたしが昼食前に保育スペースの砂埃を払って掃除をしていると不意に背後から声を掛けられ肩に腕を回された。振り返ればそこには灰君がいて、いつもの不敵な笑みを浮かべてあたしに体重を掛ける。
「帰ってきてみりゃまたみんなで仲良しこよしやってんじゃん」
「言い方。灰君も混ざる?」
「いや、いいわ。オレ今から女と遊ぶし」
「じゃあ何しに来たんだ」
「挨拶だろうがよ。会えて嬉しいだろ?」
「あーハイハイ」
行き道で見掛けて立ち寄ったらしい。また灰君誘うの忘れてたわ。来ないってわかってても聞くべきだったかな。
多分彼は寂しがり屋なので仲間外れにされて寂しかったからわざわざ声を掛けに来たと思われる。それを考えてプッと小さく吹き出すと灰君に頭突きを食らった。
「ハブァ!!」
「テメェ今ふざけた事考えたろ?」
「いえ滅相もございませぬ」
「棒読みじゃねえか」
間近で睨まれているあたし可哀想。絶対今デコ赤いでしょ。
不機嫌な灰君を見てそういえばと思い出し話題を変える。
「そういえば就職お祝いのメッセージありがとね」
「あ?あー…アイツが煩かったからな」
そう言って視線を流す方にはさっちゃんがいて、サプライズの時もお声は掛けたけど云々〜って言ってたし納得。それでも嬉しかったと伝えると鼻で笑われた。素直じゃないんだからぁん。
「キモい」
「心の中を読まないで下さい」
「ちょっと崎ちん〜。いつの間にいたの?てか何そらちんに絡んでんの」
「よぉ、アツシ」
いつの間にか読心術を得ていた灰君とそんなやり取りをしているとあっちゃんが口の周りにお菓子の食べカスを付けながら離れさせようとする。だがそれよりも早く動いた灰君はスルリと離れて来た道へ戻り出す。
「ちょっと寄っただけだよ。そう怖い顔すんなって。じゃあな」
本当に寄っただけの灰君の後ろ姿を見送っているとあっちゃんに手を引かれる。
「そらちんお腹空いたー。早くこっちでごはん食べよー」
「お菓子の食べカス付けた人が何言ってんだ」
そうツッコミつつも引かれるままにみんなが集まっている方へ行く。レジャーシートを広げたり地べたに座ったりしながらみんなそれぞれ軽食持ってきているようだが、動いた後だしやっぱり足りないだろうからあたしは自分の荷物から重箱をいくつか出すとドドンとみんなの中心にレジャーシートを敷いて置く。
「テッテレーン!そらちゃんお手製お弁当パラダイスでーす!」
「ネーミングのセンス!!」
「おおおお!」
「美味そー!」
ブフォッと吹き出し草を生やすタカ君。驚くところそこなんだね、やっぱり笑いのツボ浅過ぎ。
他の子はあえてスルーで少ししか持ってきてない子は目を輝かせて直ぐさま食い付く。ちょっと悲しい。
「みんなで食べていいよ。喧嘩しないように分けて食べてね」
「「あざーす!」」
持ってきた割り箸でおかずを突きながらうめぇうめぇ言って食べてくれる様子を見て、作った甲斐があったなと本当に思う。この人数だし大食いの永ちゃんとかがみんがいるから余らなそうだ。
あたしもラップに包まれたおにぎりを手に取るとやっと昼食を食べ始める。午後からの為にしっかりスタミナを付けねば。
「そらさん!はい、あーん!」
「ん?いいの?」
「私も玉子焼きとかもらったので!」
「ありがと。あー」
隣に座るさっちゃんが呼び掛けるので振り向けばそこにはさっちゃんが持ってきていたメロンパン。それにかぶり付くとふわりと甘い香りが鼻腔を擽り口いっぱいに甘さが広がる。もふもふ食べながら幸せだなぁとしみじみ思った。
「そらちん。はい、あーん」
「え、いやいやあっちゃん食べなよ」
「分けてあげるから〜」
「いやそれあたしが作ったお弁と、んむぐ」
いつの間にか背後に移動していたあっちゃんがさっちゃんの真似をしてあたしの口元に玉子焼きを押し付けてくるが、自分の弁当は自分で取るよと言うものの有無言わさず口に突っ込まれた。強引だ。
「美味しい?」
「うん、まあ、自分で作ったし普通」
何だよこのやり取りと思いながらもヘラッと笑ったあっちゃんが天使過ぎてハゲる。可愛い。
そして重箱が全て空になって昼食は終わり、午後の準備に取り掛かる。さっきもリコぴんが言っていたがミニゲームをするらしい。そのチーム分けなどしているのを見ながら、先程掃除を済ませてやる事がなくなったあたしは日は高く登っているが少し風が出て寒く感じぶるりと身震いした。
「大丈夫?」
「あ、たっちゃん」
「暖かくなるまで着てていいよ」
「わー、ありがとう」
ふわりと肩に掛けられた上着はたっちゃんが後ろにいて掛けてくれたもので、微笑を浮かべながら動いていない間は寒いだろうし着ているよう言われる。勿論自分のコートがないわけではないが分厚く動き難いので着ようとしなかったが、このジャージならコートより薄く軽いので問題ない。ただかなりでかいが。
「暫くお借りします」
「うん。風邪引かないようにね」
たっちゃんが紳士過ぎて辛い。
【氷室side】
午後の部が始まりチーム分けされたチームでミニゲームをする事になった。勿論子ども達も入れてだ。
一試合目が始まるがオレは三試合目から出るので今は手持ち無沙汰。でも周りには子どもが沢山おりありがたい事に子どもに結構懐かれているので、小さな女の子達に手を引かれたり服を引かれたりやや引っ張りだこになる。先程のそらさんと一緒だな。
思えば、先程胸を揉まれていたが子どもだからと笑うそらさんの対応力には感心する。灰崎に触られた時は間を置いて悲鳴を上げていたが、子どもだと割り切って関わる辺り流石保母さんだと思った。
そして今も幼児を中心に関わり子守をするそらさん。ただ子ども達と遊ぶだけではなく、バスケにも興味を持てるように一緒に観戦したりシュートフォームの真似をしたり、子どもを飽きさせない。それは子どもも懐くよね。
太陽のように明るい笑顔を振りまく彼女のあの笑みが好きだ。彼女の雰囲気はオレ達でも安心させる不思議なパワーを感じる。だから子どもも接し易いし好かれるのだろうなと思った。
毎日子どもと遊んでいるだけあって中々パワフルだ。さっき二人の子どもを持ち上げて遊んであげていたし。ただ彼女はお茶目で子どもっぽい性格の時もあるとは思っていたが、彼女の子守を初めて見てやっぱり立派な大人の女性なんだなと改めて思った。
「辰也お兄ちゃん!さっきの見た?」
「凄かったね!シュート!」
「ああ、ダンクだね。みんなカッコいいね」
「「辰也お兄ちゃんもカッコイイ!!」」
「あはは、ありがとう」
「何故氷室だけなんじゃあ〜!!」
「アゴ煩〜い」
「お前がゴリラだからだモアラよ」
「毎回毎回煩いアル」
女の子二人に手を引かれ意識をこちらに戻し、タイガがダンクを決めていたのが視界に映っていたので話を合わせる。はしゃぎながら褒めてくれる彼女達にお礼を言っていると、元主将が泣き喚きながら嘆いていた。アツシと福井さんとリュウは相変わらずの返しをしていて、今までは毎日見ていたやり取りが数ヶ月に一回程度になってしまったので懐かしさを感じる。
またそらさんに視線を戻すと子守されていた幼児は保育スペースに座りながら、タイガのダンクを見て目を輝かせて試合に熱中して見入っていた。あの年でバスケのよさがわかったのかな?と思うと嬉しくなる。
そらさんは小さい男の子を立ちながら抱えていてぐずっているのを揺れながらあやしている。その間にも幼児に話し掛けられる声にちゃんと反応し、話をしながらもその男の子への配慮は怠らない。
泣き疲れて眠たくなったのかウトウトする様子を見て、そらさんは微かに口を動かしながらポンポンと背中をゆっくり叩いて揺れ動く。子守唄でも歌っているんだろうか。
程なくして寝入った男の子を確認すると優しく微笑みながら緩く抱き締めた。それを見て最初の赤ん坊の子守の時も思ったが、いいなと思う。そらさんに子どもが出来たらきっとああやって可愛がり大切にして守っていくんだろう。
あわよくばその子どもが自分との子で、二人の間に子どもがいて幸せな家庭を築けられれば、とまで想像し頭を振ってやめた。これでは妄想する森山さんを馬鹿に出来ないな。
何よりグッと目を引くのがジャージだ。寒そうだったのでオレのジャージを貸したが勿論サイズは大きいしぶかぶか。それを着ている様子はオレを優越感に浸らせるには充分だった。現にそらさんが着るジャージを見て眉を寄せる奴がいくつか見えたしね。
ふと思ったが、夏合宿の時よりみんなに対する態度が少し変わったように感じる。主に一部男性陣に対してだが。
アツシを始め彼女を特別視している奴がいるのはオレは勿論そらさんも気付いていたはずだが、以前はそれから目を逸らし気付かないフリをしていた。一線引くというか僅かな溝があったが、先程話をした時にそれを感じなかったのは気の所為だろうか。彼女の中で何か大きく変化があったならいい事だが、逃げていた彼女自身で気付いて変わるとは考えられず、誰かが彼女を変えたという思考に達しその人物が気になった。
最初会った時から随分時間は経ち会える頻度も少ないのに、ここまで彼女の事を考えるのは何故だろうかと自問すると直ぐに答えが出た。
あの世界で見た怖いのに強がる弱さや小さな背中を見て、守りたいと思ってからが始まりだ。ちょっと悪戯すると純粋な反応が返ってくるのもまた面白いところ。ストーカーがベランダに現れた時は呆然として何も出来ず彼女自身が撃退するのを見ていただけだが、今も守ってあげたい気持ちは変わらない。
笑顔をオレに向けて欲しい。強さも弱さも全部、自分に向けてくれればと思う。普段は子どもを甘やかせる立場でも、オレは甘やかしてあげたいし、甘やかせられる特権が欲しい。
ぼやぼやしていると盗られ兼ねないから気を付けないと。そう思った。
「たっちゃん?」
「!」
「どしたの?」
いつの間にかオレはそらさんの近くにいて、彼女が目を丸くさせながら疑問符を浮かべていた。その腕にはまだ男の子がいてスヤスヤ寝息を立てている。無意識に歩み寄っていたのか。
「…ううん、何でもないよ。あまりにも気持ちよさそうに寝ているから気になってね」
「そだね。泣き疲れちゃったからよく寝てる」
クスクス笑うそらさんを見下ろしていると空いているスペースで一緒に遊び終え、ひと段落ついた母親が兄弟を連れて駆け足で寄ってきて「子守ありがとうございました!本当に助かりました!」とお礼を言って引き取っていた。
母親に男の子を返したそらさんは腕が軽くなり寂しいのかそっと腕を撫でる。
「…ん?」
「疲れてないかい?」
「まだまだ!大丈夫よー」
そっとそらさんの手を握る。それに驚き目を見張ったそらさんに労いの言葉を掛けるとニッと笑って気合いを入れ直していた。
「狡ーい!辰也お兄ちゃん私も!」
「そらおねえちゃん!だっこ!」
懐いている女の子の一人が反対の手を握ってきて苦笑する。そらさんにも小さな女の子が両手を挙げていてよいしょと抱き上げていた。
「…こうしてると、オレ達少しでも家族に見えるのかな?」
そう言うとそらさんはキョトンとした後顔を真っ赤にさせて慌て出した。こういう素直な反応、本当可愛い。
「(室ちん…抜け駆け許さないからね…)」
何やら遠くから黒いオーラを感じるが気付かないフリをしておこう。通用するとは思っていないけどね。
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