INFINITY WORLDみんなとバスケットボール教室�B
16時。バスケを子ども達に教えたり一緒に遊んだり、バスケを通して遊ぶ企画は終了を迎えた。去年参加してくれた子どももいれば初参加の子もいたが、みんな楽しそうにしていたと思う。
また親御さんも来られた家庭は、家族の絆も深められた事でしょう。娘息子に教えられるようにと熱心に高校生や大学生にアドバイスをもらう父兄の方も見られそれはそれは微笑ましかった。
あたしはというと、幼児連れの方が案外いたのでずっと子守をしていました。保育園にはいない子どもと関われてとっても幸せでした。何度か好きと言って男女問わずほっぺにチューをしてきてくれて、本当吐血しそうだった。保育園ではない事なので余計にね。結婚しよとかはよく言われるけど…保育園あるあるですね。
『皆さーん!今日はお疲れ様でした!皆さんと楽しくバスケが出来てよかったです!』
『楽しい時間も終わりになりますが、またいい思い出が出来ました!帰りにお兄さんお姉さんからプレゼントがあるのでもらって帰って下さいね!』
さっちゃんとリコぴんが拡声器を使って終わりを告げた。子ども達は残念そうな様子を見せつつ、またやってね!という次回を期待する声が多く主催者側みんなも嬉しそうに破顔していた。本当みんなバスケ好きだな。
帰りはみんなで作ったお菓子をプレゼント、勿論保護者さんも幼児さんも全員に。沢山作ったから多少余裕がある。余った物は適当にみんなで分けよう。
みんなが一人ひとりに手渡ししていく中、あたしも幼児さんや保護者さんにも配り一人ずつ別れを告げた。
忘れ物がないように全体に声を掛けながら手を振る子ども達を見送る。みんなも手を振り返したり笑ったりしていた。
参加者全員が帰った後。あたしはグーッと伸びをする。
「くあー!やーっと終わったぁ!」
「お疲れ様でした、そらさん」
「最後揉みくちゃにされてたな」
「てか山積みになってたし!」
テッちゃんと峰さんとともっきーが声を掛けてくるのを聞き、確かに最後らへんでみんながのし掛かってきて潰されていた事を思い出す。あたしは苦笑しながら痛む腰を捻って解す。
「まあね。でも楽しかったよ!明日は筋肉痛の予感」
「筋肉ねえもんな」
「年々衰えるものですから」
若ちゃんの厳しい言葉にもあたしは苦笑を返す。今日はぐっすり眠れそうだ。
「でもそらさんの子守流石って感じでした!保育士さんなだけあるなって!」
「子ども達凄く喜んでたしみんな懐いてたもんな!」
「オレも思った!いつもふざけてる時多いのに久しぶりにまともな大人に見えた!」
「ちょっと待て。それじゃあ普段のあたしがまともな大人じゃないみたいじゃん」
「「「…えっ」」」
「貴様らそこに直れ」
フリがやや興奮気味にあたしの保育姿を褒めてくれてそれに乗っかるひろやんと河ちゃん。嬉し恥ずかしい気持ちでいると、河ちゃんの失礼な物言いに気付き目を細める。
三人がヤベッみたいな顔したから正座させて説教しようとしたが、片付けしなくちゃって棒読みで言って上手く逃げられた。それを見て悠君とアサゴ以外の誠凛が笑って微笑ましそうに見ている。いや、あんたらの後輩だかんな。どういう教育してんだコラ。
あたしも追い掛ける気力はないので、みんなで片付けに取り掛かる。
「片付けしたら打ち上げでどっか食いに行かへんか?折角洛山と陽泉と海常も集まっとんのや、たまにはええやろ」
「「さんせーい!」」
翔ちゃんがボックス椅子を重ねて持ち上げながら提案し、一同賛成の意を示し何処に行くかで盛り上がり始めた。この人数で急に行けるのかね。
「赤司、スマンけど頼めるか?」
「わかりました」
「リーズナブルで大人数入れて美味しいもんめっちゃ食べられる所な」
「はい」
成る程、ここで赤君を使うとはやるな翔ちゃん。赤君ならパパッと調べて予約までしてくれそう。赤司財閥の息子だから待遇もよかったり…なんて考えながらクッションマットを分解していく。
「マコマコ達も今からでも来ればいいのにね。迎えに行ったらどうなるかな。奢るって言ったら来るかな」
「いや、無理に呼ばなくてもいいんじゃね?来たかったら日中コッソリ見に来ただろうし(邪魔者増えるだけだから却下で)」
「えー。じゃあちーちゃん」
「黛サンとか特に来なさそうじゃん」
タカ君とコタの言葉を聞いて肩を落とした。確かにそうだと思い反論出来ない。みんなでワイワイしたかったのにな。これだから照れ屋さん組は困るよ全く。
「そらさん、眉間に皺が寄ってるわよ?」
「そんなに気になるか?」
「いや、これだから照れ屋さん組はって思ってただけ」
分解したクッションマットの砂を払い袋に入れて一つにまとめていると玲央きゅんに眉間を突かれた。ちょっとビビった。
永ちゃんの質問に対しては寂しいとかもなくはないけどもっと素直になればいいのにと思っていた事を明かすと鼻で笑われた。鼻息荒いわ。
暫くして片付けを終えた後、一度各自荷物を家に置きに行って店に集合する事になった。予約は無事に取れ、それまで結構時間があるらしい。県外組は夜には帰るので各自家から荷物を持って来るそう。
みんなでストリートバスケを後にし各自家に向かって歩く。あたしと家の方向が同じ子と一緒に帰り今日の楽しかった話や面白かった出来事を話して盛り上がる。あっという間にマンションに着いたのでまた後でと言ってそこで別れた。
一回シャワー浴びようと思いながら部屋に入り、荷物を床に置いた。ご飯何食べられるのかな。
【紫原side】
劉ちんと家に帰って荷物の整理をする。と言っても、いつも部活に持ってく物と同じ物くらいしか持ってってなかったから大した片付けはなかった。昨日のうちに荷物ある程度まとめてあったし、直ぐに準備は出来た。
時計を見るとまだ時間があったので、そらちんを迎えに行こうと思う。今日全然絡めなかったし。
「劉ちん。オレ今からそらちんの家に迎えに行くから一緒に来ないでね」
「馬鹿アルかお前。それ聞いてわかりましたって言うわけないアル。…と言いたいところだがオレは折角東京に来たからその辺の店を回りたい。仕方ないから別行動してやるアル」
「やったー」
オレってば優しいから迷子にならないように、迷子になったら連絡したら教えてあげない事もないって助言してあげた。ら、「偉そうに言うな、一々腹立つアル」って呆れたように言われた。そっちこそアルアルうっせーし。一々うぜーし。
その後直ぐに二人で家を出て、互いに逆方向に向かう。劉ちんはご飯食べに行く店や雑貨屋や本屋がある方へ、オレはそらちんの家の方へ。
大きな荷物(オレの体格からしたら然程でかくない)を抱えてそらちんの家に行ってインターホンを鳴らす。少ししてそらちんの声が返ってきた。
『あっちゃん?』
「そらちーん。迎えに来てあげたよ〜」
『マジか!ありがとー。だけどまだ準備終わってないから中で待っててくんない?今開けるから』
「いいよ〜」
そらちんの家に入れるなら何でもいいや。そう思っていると自動ドアのロックが開けられたのでそれを通りエレベーターでそらちんの部屋に向かう。
部屋の前のチャイムを鳴らすと、中から足音が聞こえ直ぐにドアが開いた。
「ごめんねあっちゃん。直ぐ準備するから!」
「んー」
そらちんの髪が濡れていた。さっきと格好も違うし、お風呂でも入ったのかな?そらちんが入っていく部屋に続いて入ると、ふわっとシャンプーの香りがした。
そらちんはちょっとわたわたしながらあっちへ行ったりこっちへ来たりしている。忙しないなぁと思いながらも適当に荷物を置くとソファーに座った。今気付いたけど他に誰も来てない。じゃあ二人っきりじゃん、ラッキー。
そう思っていたらそらちんがジュースとお菓子を出してくれた。
「ごめんね。これでも食べて待ってて」
「わーい」
早速ポテチの袋を開けて食べ始める。こういう気が利くところ好き。オレがお菓子好きって知ってて「食べ過ぎはよくないよ」とかお節介してくるけど、でも何だかんだ色々与えてくれるし。お菓子作るのも上手いし。
勿論今日の余ったお菓子はもらった。欲しい子一人一つだけって言われたけどこっそり二つもらったのは内緒ね。
脱衣所に入っていきドライヤーの音が聞こえる。そこでまたシャンプーの香りが漂ってくるのに気付き、そらちんの匂いだと思った。
そらちんは着飾らないから香水も付けない。のに、甘い匂いがする。
元々男より女の子のが甘い匂いはするもんだと個人的に思うけど、あの世界にいた時からそらちんは特にいい香りがすると思う。それが今みたいにシャンプーの香りだったり、柔軟剤の香りだったり。とにかく優しくて甘い匂いだ。
それが落ち着く。だから抱き締めたくなる。抱き枕には小さ過ぎず大き過ぎずで丁度いいってのもある。本人に言ったら物じゃないって怒られるから言わないけど。
そらちんがドライヤーを終えて自分の部屋に入るのを目で追いながら、ふと何でそらちんが好きなのか考えてみる。
あの世界でそらちんが笑ったり怒ったり泣いたりしたのを見て、見ていて飽きなくて面白いなって思って自分でも自覚があるくらいに懐いた。大人な物言いとかで年の差を感じる時もあったけど馬鹿だし性格上子どもっぽい時もあって、もしそらちんがずっと側にいてくれたら退屈しないなって、年の差なんて気になんなくてそう思った。
だからあの世界から帰って来てそらちんがいなかった時は、胸にポッカリ穴が開いた感じがした。もうあの優しい香りに包まれる事はないのかもって思うと凄く残念だった。
再会した時胸の穴が埋まる感じがして、笑顔見たら好きだなぁってぼんやり思った。やっぱり側で笑っていて欲しいとか、甘い香りに包まれたい(もしくは包みたい)と思ったからその場で告白した。みんなから反感買ったけど、後悔はしてない。
そしたら顔赤くして照れてて可愛かった。それも好きだなって感じた。
けど離れてるからあんまり会えないし、オレの気持ち最初の一回しかちゃんと言えてないからちゃんと伝わってない気がして、誰かに取られるって正直焦ってる。現に赤ちんもそうだけど、知らないうちに都内の一部の奴らのそらちんを見る目変わってっし。ちなみに学校潜入で来てた時に気付かなかったのは本当に悔しかった。しかも室ちんは気付いてたとか、マジあり得ねーし。
だから夏合宿の日も今回もそらちんと二人っきりで話したかったのに、他の奴らがいるから中々それが出来なかった。けど、思えば今がチャンスじゃん。一回しかキスしてないし、もう一回したらもっとオレの事意識してくれるかな?
「お待たせあっちゃん!準備OK!」
そらちんが笑ってオレの前に立った。薄く化粧してて可愛い。
「んー。化粧してんの?」
「まあね、外出の時はする。家にいる時は面倒だからしないけど。あと仕事の時もあんまりしないかな、しても社会人として最低限の化粧くらいだけど」
確かに合宿の時とかあんましてなかったかも。汗かく時とかはしないらしい。化粧のイメージ少ないのはその所為かー。スッピンでも充分可愛いから気にしてなかった。
「ふーん。可愛いね〜」
「え、ありがと」
素直に褒めてみると吃驚しつつもちょっと恥ずかしそうに笑ったそらちん。うん、やっぱり笑顔が一番。
「もうちょっと待って〜食べ終わるから」
「まだ時間あるし、ゆっくりでいいよ」
「そらちんも食べる?はい」
「あー、ありがとう」
そらちんはオレの隣に座るとポテチを摘もうと手を出すが、それより早くオレが一枚親指と人差し指で摘んで口元に差し出す。そらちんは一瞬止まったけど口を開けて受け入れた。
「…!」
「特別だよ、舐めさせてあげる〜」
指ごと口内にポテチを入れるとそらちんの目が見開いた。指に付いた塩をいつも最後に舐めるけど、そらちんに舐めさせたい願望が芽生えて入れちゃった。
そのまま口を閉じたそらちんが固まる。オレの指にはそらちんの唇の柔らかい感触が伝わってちょっと擽ったい。
自分でもわかるくらいにニヤッと笑うと口の中でポテチを離してツツ、と唇を人差し指でなぞった。
「!?」
慌てて身を引いたそらちんは口元を押さえて真っ赤になりながら咀嚼する。そして早々に飲み込むと早口で文句を言った。
「ななな何してんのあっちゃん!指食べちゃったじゃん!」
「食べさせてあげたんだよ〜」
「何プレイだ!!自分の体は大事にしないと!てかマジで吃驚…っ」
指くらいで大袈裟だなと思いながらオレはポテチを最後まで食べ切りぺろりと人差し指を舐めた。それを見てそらちんは更に赤面をする。面白い。
「はい」
「!?」
「舐めて〜」
パクパクする口に親指を突っ込んだ。こっちも塩付いてるし〜。調子に乗ったオレはその指でそらちんの口の中をなぞる。歯列をなぞったり舌に絡めてみたり…あ、これ結構エロい事してるかも。
そう思ったと同時に見たそらちんの顔がそれはもう真っ赤で、どうしようって顔してテンパってるのがわかった。
気付いたら体が動いてて、そらちんの上に上半身を覆い被せていた。見下ろすそらちんは既に涙目だ。いじめ過ぎたかも。
「そらちん。オレそらちんの事好きだよ。優しい所も馬鹿な所も全部全部、大好き」
囁くように、間近にいるそらちんだけに聞こえるくらいの声の大きさでそう告げると目を瞠目させた。
オレはそのまま顔を近付けると、そらちんの見開かれた瞳に少し意地悪い顔をしたオレが映っているのが見えた。
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