INFINITY WORLD
あたしと合コン

「合コン?」

「はい!そらさんしかいないんです!お願いします!この通り!」

 とある平日、仕事帰りに久しぶりに寄ってみようと喫茶店へ行った。今日はマスターとあたしが働いていた時からいるバイトの女の子が勤務しているようだ。
 その女の子は茶髪のポニーテールがよく似合う可愛い子で、あたしと同い年の大学生なのだがあたしの方が姉御っぽいという事で敬語にさん付けで接してくる子である。

 その子から急にお願いされた事は、合コンに人数合わせで参加して欲しいとの内容。しかも今晩だ。両手を合わせて頭を下げる彼女に苦笑しながらどう断ろうか視線を宙に向ける。

「うーん。あたし知らない人とのそういう場苦手なんだよなー」

「そこを何とか…!あれ?そういえばそらさん彼氏いましたっけ?ハッ!まさか出来たんですか!?」

「いやいやそうじゃないけど」

 何度か告白はありますが、と心中一人乾いた笑みを零す。出会いの為じゃなくて人数合わせだとしてもなぁ。

「お願いしますううう!!他の子はもう全員駄目で…新しい出会いの為じゃなく仕方なしに人数合わせの為だからと…人助けだと思って!」

「うーん」

「相手は日本トップの大学に通う大学生なんですよ!会った事はありませんが、イケメン揃いとの話です!」

「うーーん」

 普段から周りにイケメンが多いので目が肥えてきているのかあまり魅力的には感じないな。

「お願いじまずうううう!!」

「そらちゃん、行ってあげたらどうかな?話し合わせるだけでもいいんだし」

「うーーーん」

 鼻水垂らしてまで泣いて懇願する彼女に良心が痛んでいるところにマスターからも促され、深く溜め息を吐いてから仕方ないと腹を括った。

「わかった。そこまで言うなら」

「!!!そらさん好き!!ありがとうございます!!」

「その代わりあたしの話し方下手くそだったとしても知らないからね?」

「フォローはお任せ下さい!」

 こうしてあたしは合コンに行く事になりました。この世界では初参加です。
 それから喫茶店で一杯珈琲だけを飲んで帰宅し、シャワーを浴びたり身支度したりとさっさと整えてから集合場所に向かうと丁度時間ピッタリだった。ちなみに服装は特に凝ってない殆どいつも通りの服装だ。下はショーパンにしたけど。

「今日急遽来てもらった山口そらさんです!」

「「お願いしまーす!」」

「こちらこそでーす」

 みんな同い年のようだが、バイトちゃんが敬語とさん付けなのでそれに倣って一緒のように残り二人に接される。別に合わせなくていいよこの世界に来て同い年の女子の友達とかバイトちゃん以外初めてなんだからもっとドンと来いよ!!フレンドリーに来いよ!!

「あ!来た!」

 そう思っていると相手さんが来られたようで、あたしは気持ちを切り替えて向き直った。

「…そらさん?」

「…翔ちゃん?」

 な、なんですとおおおおお!!










【今吉side】

「吃驚しましたよ〜!まさかそらさんの知り合いの方がいるなんて!」

「アハハハ」

 同じ大学の同じ科の奴が同学年の女子大生と合コンが組めた言うて騒いどったのはいつの事やったか。ワシはサークルもあるさかい、来るか声掛けられても断っとったんやけど今日行く奴が一人風邪でおらんなったで埋め合わせに来てくれって頼まれたんが今朝やった。

 サークル後でも間に合うから言われてめっちゃ頼み込まれた。でもワシは毎日諏佐とサークル後もバスケの自主練しとるからそれ邪魔される思うと気ぃ進まんかったけど、土下座までされたら流石に可哀想になって行く事になった。こいつ以外知り合いちゃうけど、そこはしゃーない。

 そしたら、なんとそこにはそらさんの姿があって互いに吃驚した。いやまさかおるなんて思わへんやろ。相手は女子大生やのに社会人のそらさんがおるなんて。

 合コン会場の居酒屋に男女四人ずつが向かい合って座る。居酒屋言うてもノンアルがあってドリンクの種類も豊富な店や。
 ワシは勿論そらさんの正面。そらさんの隣の女子は元バイト先で同じバイト仲間やった子らしい。あの喫茶店にそんな子おったか覚えてなくて向こうも覚えてないから、多分会った事はあらへんのやろうな。

「今吉も珍しく吃驚してたな!」

「なんも珍しい事あらへん。ワシかて吃驚くらいするわ」

 隣に座るのは土下座して頼み込んできた奴で肩に手を置いてくる。こいつワシを何やと思ってんねん。

「なな。こっそり酒頼んじゃう?ここの店規制ちょっと緩いんだよね」

「オレら別に20歳以下に見えねえし」

「誰も運転して帰んねえし」

「えー…どうする?」

「…実は私このカクテル気になってたんだよね」

「わ、私も。このミルクティーっぽいやつ気になってた」

 そして何故かアルコールを頼む流れになる。オイオイ、流石にワシら未成年やで。店先で堂々飲むてどうなんや。
 全く口にした事がないか言われたらそりゃ否定出来やんけども。あ、勘違いせんといてや。親が飲む酒を一口飲むとかそんなレベルや。いやいや嘘やないで。うん。

 そらさんは特に先日の一件で酒に弱い事はわかったし飲ませられへん。本人が飲みたい言うたとしてもや。

「そらさんは何にしますか?」

「あたしオレンジジュース」

 だがそれもワシの杞憂に終わりそらさんは酒を頼まんかった。

「あり?飲まないの?」

「未成年だし」

「お堅いよ〜今日だけでもパッとさ!」

「あたしそういうの苦手なんでごめんなさい。お堅いって言われても飲めないや。飲みたいならどうぞお構いなく〜(こないだ飲んじゃったけどあれは不可抗力なのでノーカン)」

 ヘラヘラ笑いながらもここでキッパリ断れるん凄いと思うわ。こういう場が苦手なんやろうなって雰囲気で察しとったけど、そういうタイプは大概その場の空気悪くせんようにって流れに身を任せるのに流石そらさんや。

「えーノリ悪いよ〜」

「ワシもウーロン茶にするわ」

「ええ!今吉も!?」

「ワシも未成年やもん」

 な、そらさん。と話し掛けるとそらさんは目を丸くさせた後賛同してくれたのが嬉しかったんか少し照れ臭そうに笑った。前から思っとったけどこの人の笑顔可愛いよなぁ。

 そらさんの言葉で迷っとった他の女子達は結局一杯だけ言うて頼んどった。ワシ以外の三人もそらさんの言葉で揺らぎつつ飲みたい欲求には逆らえず頼む。

 酒が入った席は直ぐに盛り上がった。そらさんも人柄はええから難なくこの場に溶け込めとると思う。そらさんの意識は殆ど料理に向いとるけど。

「今吉さんはぁ、どんな人がタイプ?」

 酒を飲んで顔が赤い、一番端におる女子にそう言われて少し考える。

「気配りが出来る子かな」

「へぇー。私気配り上手って言われるよ!」

 例えそうやったとしても自分では言わへんやろ。酔うとるから仕方ないんかもしれへんけど。ああ、そらさんもそんな事自分で言うかって顔しながら出し巻き玉子食べとるわ。
 最初から何度かチラチラ見られとる気ぃするしアピールなんかこっち向けて谷間まで見せてきとるその子に苦笑した。あーいう視線には正直身に覚えがある。巨乳なんはええけど、ワシはそんなんでは揺るがへんで青峰は食い付くけど。目の保養にはなるけど、それはしゃーない男の性や。

「…そらちゃんはどんな人がタイプ?」

 次はワシの列の一番端におる奴がそらさんに質問を投げ掛ける。そらさんはもぐもぐとリスのように咀嚼しながら思案し、嚥下した後答えた。

「適度に構って適度に放置してくれる人」

 何やねんそれ。初めて聞いたタイプにワシも思わず笑った。まあ空気読める人っちゅう事かいな。

「オレ、結構相手の事よく見てるからそういうの出来るよ」

 何やねん。今日の端に座る奴は自己アピールが激しい奴ばっかか。自分ではそれ言わへんって。

「へーそうなんだー。すげー」

 そらさん絶対思ってないやろ…めっちゃ棒読みやで…。でも酒飲んどるから相手はお世辞やってわかってない。

「席替えしましょー!」

 そして少ししてから急に席替えが始まってワシの隣に例の女の子、そらさんは横に一個ズレて男子に挟まれるように座る。その一人は例の男。そらさんちょっと居心地悪そうやな。ってワシどんだけそらさん見てんねん。今更やけど。

「今吉さんは、私みたいなタイプどう思う?」

 さっきからアピールが凄い子の相手しとるけど、この子一杯だけ言うて何杯か酒飲んどるから絡みがハンパない。そしてめげへん。

「どうやろなー」

「えー、言ってよー」

 甘ったるい声を出しながら少し体を寄せてくる。この子は肉食系女子やな。きっと今までに合コン参加して逃した獲物はないとか言うタイプやな。自分で言うてちょっと面白なってきたわ。

 不意に視線を感じて前を見ると少し眉の皺を寄せたそらさんがこちらを見ているのに気付く。何や不機嫌やな、そない両隣が嫌か?そう思って見つめているとワシと目が合ってから慌てて逸らされた。え、何や今の。嫉妬か?もしかして嫉妬か?

「そらちゃんってスタイルいいよね」

「いやいや、そんな事ないですよ」

「えー。足とかめっちゃ綺麗じゃん」

「ちょ!」

 そのまま見つめとるとアピールしとる男が食事中のそらさんに引っ付いて褒め出した。そしてあろう事かまじまじと足を見た後そっと手を這わせた。机で見えんけど触ったんはわかった。そらさんも吃驚して手掴んどるし。

 それを見てイラッとする。そらさんは確かに足綺麗やけど、勝手に触ってええなんて誰が許可してん。ましてや今日会った奴に。

「今吉さーん?」

 隣から話し掛けてくるのよりそっちに意識が向いとって、気付けばワシは立ち上がってその男を引き離してそらさんの隣に座っとった。

「ああ、自分そっち空いとるでそっち行きぃや」

「は、え?」

「今吉さん?」

「ワシそらさんの隣がええ」

 ニッコリ笑って言うと二人は何も言い返さんと男は移動して、静かにその場に二人で座っとった。これでええわ。他の四人も吃驚して目が点になっとるけど構へん。

「…どうしたの翔ちゃん」

「そらさんの隣に来たいなー思って」

 そう言うとそらさんは少し安心したように肩の力を抜いて食事を再開した。てかどんだけ食うんや。ええけど。

「翔ちゃん内心デレデレしてるのかと思った」

「んな阿呆な」

 先程の事を言うとるらしく、ワシは苦笑してもしかして知らんうちにデレデレしとったか?と不安になった。でもそう見えたとは言うてないで大丈夫か。ああ、勿論デレデレしてへんよ。そしてやっぱり嫉妬やったんか、そうか。何や嬉しいなぁ。
 そう思いながらそらさんを見て考える。気付いたらこっちに移動しとったけど、客観的に見たら今の行動もどう考えても嫉妬やな。まさか嫉妬でこんな行動取るとは自分でも思わんかったわ。嫉妬したとしてももうちょい余裕持って動ける思っとったけど、そうでもないらしい。

 最初はええ人やとか面白くて花宮にも臆さず接する事が出来る変わりモンやと思っとっただけやけど。いつからか変わったな。あれか、そらさんが風邪引いた時ら辺からかな。それか円堂の件ら辺からか。
 呪われたって聞いた後に会いに行った時少し痩せて疲れとるように見えて、そう声掛けたら本人は否定したけど色々頑張っとる時期やったから心配やった。んでその後やっぱり風邪引いて、諏佐から寝込んだ話回ってきてみんなで見舞い行くってなった時は迷いなかった。常にそらさんの事で迷いなんかないけど。

 部屋に入ったらそらさんがしんどそうに寝とるんみてモヤモヤした。我慢せんと頼ればええのにって。喫茶店に様子見に行った時も頼れ言うたはずやのに、迷惑掛けると思って中々正直には言わへんこの人に呆れつつワシら周りが守ってあげやななーなんて思った。

 起きてからご飯食べてまた寝る時頓服効いとってご飯もしっかり食べたから顔色はよくなっとったけど、それでも辛そうなそらさんが寂しいって言った事や安心して寝てく様子見たら可愛くて瞼に内緒でキスを落とした。寝顔も安心した様子で、その瞬間はワシ“ら”じゃなくてワシ“が”守りたいなってちょっと思った。

 そらさんが周りの奴らに好意寄せられ始めとるんは見ればわかる。態度が大っぴらやしな。そらさん自身色々苦悩する部分があるらしくてあたふたしとって、勿論ワシはその苦悩の真意や理由が如何なるもんかってのはわかっとるけど慌てるそらさんが可愛くてみんなに振り回される光景が面白くて、助言なんて事はせんかった。最近はなんや少し前向きになったように見えるけど、誰かとじっくり話しでもしたんやろうな。

 でもそう客観的に見れる自分がおる反面、その光景を見て心に蟠りがあるようなそんな気がしやんくもなかった。でもさっきの男の行動で嫉妬起こしてわかったわ。

 ワシもそらさんの事が好きなんやな、勿論一人の女性として。今気付くってワシも人に阿呆言えんくらい阿呆やな…。

 隣のそらさんを頬杖ついてじーっと穴が空く程見つめると、そらさんは視線に気付いたのか少し吃驚しながらも暫し視線を彷徨わせてワシの方を向く。

「監視されてるみたいで怖いです」

「ああ、スマンなぁ」

 真顔でそう言うたかと思えば可笑しそうに笑って。

「そらさんって笑顔可愛いよな」

「何急に。変な物食べた?でもありがと」

 気にしてない素振りで淡々と言うものの照れ隠しが出来やんと少し赤面しとって。
 一つひとつの反応が可愛いんよな、この人。たまに阿呆やけど。口悪いけど。

 普段面倒見いいし、ワシも普段面倒見る側に回る事が多いけどそらさんからの見守ってくれるような視線は心地いい。そらさんの側はあったかいし、落ち着くから人が寄ってくるんやろうな。

 そう色々思って考えて自覚すると無性にそらさんに触れたくなって、さっきの男じゃないけどトンと肩を寄せて引っ付いてみた。そらさんは目を見張ったけど何してんのって笑ってもたれ返してきた。ええな、このやり取り。

 その後暫く会話や食事を楽しんで解散になった。二次会や言うて誘われたけど、ワシは朝練あるしそらさんは仕事やしでワシら二人は行かんと六人で行かせた。うち二人は不服そうな顔しとったけど知ったこっちゃない。
 んでもって家までそらさんを送って行った。夜道一人で歩かせられへんしな。

 結局今回の合コンは出会いっていうより発見の場やったな、ワシにとっては。勝手な行動して誘ってくれた土下座したあいつには悪いけど、アピールしてきた女子とそらさんにアピールしとった男への尻拭いは彼に任せよ。






未成年の飲酒は法律で禁止されています。あくまでお話の中の出来事ですので真似しないで下さい。

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