INFINITY WORLDあたしがアメリカ出張後編
翌日の29日。昨晩ゆっくり休んだ為今日は万全である。昨日も充分元気だったけどね。
泊めてもらう代わりに食事作りを任せてもらい、昨日帰りに買ってきた材料で朝食を作る。
「おっはよー。起きてー」
「んー…」
「おーおはようそらさん」
ヨッシーは目覚めがよく直ぐに起きたがにじむーはまだ眠たそうに布団に包まっていた。可愛過ぎか。
いつの間にか半裸で寝ていたアレクさんも起こしに行き、ちゃんと服を着るように促した。ヨッシーは案外冷静そうだけどにじむーは爆発しちゃうかもしれないしね。
起きてきた三人に日本食を振る舞うと、材料はこちらのものだが日本食が食べられて嬉しいと言ってくれた。
準備が出来てから家を出て車で向かった先は本場の某夢の国やユニバーサル的な所ではなく、絶叫系が集められているというテーマパークだった。
「うぉおおおお!!乗りてええええ!!」
「あ…あれ乗るのか…」
隣のにじむーが頬を引き攣らせているが気にしない。
あたしが見上げているのは数秒で百何十キロに達するらしいタワーのアトラクション。目をキラキラ輝かせているとあれはちょっとと腰が引けているが、あたしがグイグイ引っ張っていく。
「ひょおおおおおおお!!」
「ぎゃあああああぁぁぁ!!」
「あっはっはっはっは!!」
「サイコー!!フゥー!!」
にじむーのみが絶叫していてあたし達は満面の笑み。にじむー意外と苦手なんですね。
他にも長さと落下速度が世界一のジェットコースターや宙ぶらりんでレールを上るアトラクション、椅子が回転して走るアトラクションなど全てを乗り尽くしてこの日の一日は終わった。
「うぉっぷ…」
「大丈夫?」
「…じゃねえ…」
にじむーは力尽きてしまったのでヨッシーに運んでもらいその場を後にした。頑張ってついてきてくれたにじむーマジ男前。
この後ヨッシーがちょっと病院に用事があるらしくにじむーがダウンしてしまったので、にじむーは家で休ませヨッシーを送り届けてからアレクさん行きつけのバーに二人で行った。あたしは飲めないしアレクさんも運転があるから飲まないけど。
「Hey, Alex. Who is this girl?(おい、アレックス。この子は誰だ?)」
「It's my friend.(私の友人だよ)」
「Oh. Or Japanese.(へえ。日本人か)」
「コンニチハ」
「Hello.(こんにちはー)」
カウンターでノンアルコールのカクテル(超絶美味)を飲んでいるとまたアレクさんの知り合いの男性達が声を掛けてきた。モテモテだな。このルックスだもんねぇ。
そう思ってると一人に笑顔で声を掛けられ日本語だったので思わず破顔し答えると目を瞬かせていた。
「Pronunciation I hope.(発音いいな)」
「アレクさん何て?」
「発音がいいなってさ」
「発音だけは得意だよ」
「Pronunciation only is good. Because.(発音だけは得意だよ。だってさ)」
「Or pronunciation only! Interesting I girl's!(発音だけか!面白い子だな!)」
Ahaha!と笑いながら背中をバシバシ叩かれて口に含んでいたチェリーの種がどっか飛んでいった。マスターごめんなさい。
黒人で怖そうな感じだと思ったけど気さくな人達だったようで、そこからは肩を組んで歌ったり日本語の歌を歌ってあげたり、世界共通のギャグや歌を歌ってあげたりして仲を深めた。酒が入ってないのにこの適応能力の高さ。自分を褒めてあげたい。
そして時間になったのでヨッシーを迎えに行きアレクさん宅に帰って、幾分回復したにじむーを連れて次は彼のお勧めの店で夕食を食べた。それでその一日は終わり、残すところ明日一日だけ。
海外出張最終日の30日。昨日バスケ関係の所に行くと思ってたらまさかのテーマパークだったが、今日はNBAなどのバスケで有名なステープルスセンターに来ている。
きっとみんながいたら来たがったであろうこの場所は一応あたしのリクエスト。お土産もそうだけど写真撮りたかったんだよね。
「今日は試合がないんだねー。あったらあったで人多いから疲れるんだろうけど」
「そうだな。試合はまた観にこればいいさ」
観光客はいくらかいるが試合がない今日は静かな方だと思う。中には入れないのであたしは外観やでかい像をいっぱい撮った。
「これはプロバスケ選手のマジック・ジョンソン像だよ」
「へー。ジョンソンっぽい顔してんね」
「お前それ適当だろ」
バレたか。あの子らなら目を輝かせるだろうけど残念ながらあたしはよく知らないので思ったままの感想を言うとにじむーに呆れられた。
併設しているショップを見て土産を吟味する。みんなに買って行ってあげたいけど何しろ人数が多い。順ちゃんみたくレイ・アレンだっけ?が好きだとかわかってればいいんだけど。
「流石にお菓子は売ってないもんねー。バスケ型のクッキーとか」
「まあ主にグッズだしな」
「別に此処にこだわる必要ないんじゃないか?みんな何でも喜んでくれるよ」
「あいつらなら無事に帰ってきただけでいいって言いそうだけどな」
にじむー、ヨッシー、アレクさんの順でそう言われ順ちゃんとかNBA選手で好きな人言ってた事ある子の分を此処で買って後は別の所で買う事にした。
そこから少し移動し着いた所はシタデル・アウトレット。何処かの宮殿を真似て造られた所らしく雰囲気もよかった。
ぐるぐる見て回っていたが少し疲れてしまったので昼食を兼ねて休憩する事になった。適当にカフェに入ると対面の店でタイムセールをすると店員が叫んでいるのを見てアレクさんが立ち上がった。
「何!?タイムセールだと!?木吉ついて来い!」
「ええ!?」
アレクさんは側にいたヨッシーの首元を掴むと我先にと走って行った。人気店らしく既に人が集まってきていて臆せず突っ込んでいくアレクさん流石。でも怪我人連れて行くかね普通。
アレクさんも女子だなーと思いながらにじむーと先に何か頼む事にして注文する。
「なあそらさん」
「ん?」
「何に悩んでんだよ。初日に何か意味深な事言ってたろ」
メニューを眺めていると頬杖を着いたにじむーに質問を投げ掛けられる。二人きりになる時間があまりなかったが今のタイミングだと思って声を掛けてくれたらしく、車内での事を意味している事を理解してメニューで口元を隠す。
「んー…あの新婚旅行云々のクダリでしょ?」
「おう、それ」
「…あのね、」
折角だし聞いてもらおうと思って今までの経緯をざっと話した。赤君達複数に告白をされている事、逃げていたが向き合う事にしたがまだ誰が好きかわからない事、でもあたし自身に気持ちが全くないわけではなく誰でも可能性がある事など口下手ながら伝えると、にじむーはふんふんと相槌を打ちながら聞いてくれた。
「黄瀬とかはともかく…赤司が告白って想像出来ねえな」
「…だよね」
特ににじむーは中学の頃の赤君をよく知っているわけで、昔からモテていたが誰にも靡かなかった彼から告白など想像出来ないようだ。しかも相手はこのあたしだしね。
「でもみんながそれぞれ、好きの意味が違ってもそらさんが好きなのはわかるぜ。オレもその一人だし」
「きゅん」
「口で言うなよ」
だってナチュラルにそんな事言われたら誰でもキュンキュンだよ。まあ口に出したのはおふざけですが。
「成る程なぁ。だから恋愛の事で悩んでて今のそらさんは敏感になってんのな」
ドリンクが届いてストローでジュースを吸い上げながらにじむーは納得してくれた。ちなみにこの話はアレクさんにも昨晩のバーにいる時にチョロっとしてたりする。
「みんな自分が幸せに出来たらって思ってる中でもまず第一にそらさんの幸せを願ってると思うぜ。別にフったらどうなるとかそらさんが重く考える必要ねえんじゃね?フられた奴の中で諦めきれねえ奴がいたとしても幸せならって一歩引く奴もいるだろうし、人の気持ちはいつでも変わるもんだろ。他の奴の後の事を考え過ぎてるその同情は必要ねえと思う。同情があるからそらさんの中でまた一歩が踏み出せねえんじゃねえのかな」
な、成る程。確かに一人を選んだら後の子が…って考えて申し訳ない気持ちが芽生えると思ってたけどそれは同情か。されたら嫌だろうな。惨めになっちゃうかもだし。
「他の奴の事を心配する必要は全くねえとは言わねえけど、そらさんの気持ちが大事なんだし、そらさんの決断で他の奴の人生が終わるんじゃあるまいし自分の気持ちを優先しろよ。肩に力入れ過ぎねえで感じたままで考えりゃいいんじゃねえの?」
彼曰く肩に力が入り過ぎらしい。だから今の自分が早くに決断出来なくて情けないとか重く受け止めてしまうのではないかと言う。
でもそうかもしれない。あたしは一度深呼吸をした。
「そうだよね、失礼だね。…うん。ちょっとわかった気がする。ありのままに感じればいいんだよね」
「おう。それそれ」
「ありの〜ままの〜」
「言うと思った」
にじむー先生に聞いてもらったから更に心の整理が出来た気がする。あたしより精神年齢年下なはずなのに。流石兄貴。
「ありがとね、にじむー」
「おう」
そう言ってにじむーはわしゃわしゃとあたしの頭を撫でた。あたしは犬じゃないんだよにじむー。
それから買い物して機嫌がいいアレクさんとやや疲れた顔をしたヨッシーが戻ってきて、そこで昼食を済ませた後お土産なども購入して時間は過ぎ、いよいよ帰国の時。
荷物は送るので最小限の荷物だけを持ち空港に立つ。出発までもう少しだ。振り返るとアレクさん達三人が見送りでついてきてくれているが、この三日間が楽しくてまた離れると思うと寂しかった。
「また来るからね。次はみんなで来るよ」
「ああ。待ってるぞ。私もまたそっちに行くからな」
アレクさんに抱き着くとたわわな胸に埋もれるがその温もりが安心した。
「早く足治して日本に帰ってきてね。みんな待ってるから」
「ああ。みんなに宜しくな」
次にヨッシーに抱き着くと優しく抱き締め返してくれて、更に高い高いもされてしまった。流石にやめて欲しい。
「にじむーも話聞いてくれてありがとう。お父さんお大事に、自分も大切にしてね」
「おう。そらさんも一人で背負い込むなよ」
最後ににじむーに抱き着くと飛び付くのではなく普通に抱き着いた事で少し体が強張っていたが、頭を優しく撫でてくれた。
「向こうに帰ったら一足お先に年越し迎えてるけど、三人もよいお年を!」
「ああ、そらもな。Have a nice year!(よいお年を!)」
「無事に着いたら連絡するのと、こっちも年明けたらあけおめ電話するからね!」
「あけおめ電話…」
「待ってるぞー」
荷物を片手にブンブン手を振って進んでいくが、ふと思い出しあたしは振り返った。三人共が目を丸くさせる。
「後でヨッシーとにじむーは鞄の中!アレクさんは車の運転席チェックしてね!」
「「「?」」」
「クリスマス過ぎちゃったけどお世話になったお礼と兼用って事で!バイバイキーン!」
そう。もう言っちゃったけどそれぞれに今回のお礼と過ぎたけど日が近いクリスマスプレゼントでこの三日間の中で買い物した時に買ったプレゼントをこっそり仕込んでおいたのです。
アレクさんには眼鏡ケースとその他女子力向上グッズ、にじむーには店先で欲しいけどちょっと値が張って買えないって言ってた靴、ヨッシーには予め持ってきていた新しい花札(電話で何枚か汚れてしまったと言っていたので)とこれまた欲しいと店先で言っていたバッシュを使ってもらえるようにって思って買った。
目を盗んで買って隠すの大変だった。喜んでもらえますように。サイズとかも大丈夫なはず。
律儀な彼らはお返しをと言うはずなのでお返しは不要とばかりに言い逃げのように去って奥に消えると、三人が大きな声でお礼を言ってくれているのが後ろで聞こえた。ドラマのワンシーンみたいだ。
こうしてあたしの海外出張編は幕を閉じるのでした。
帰りの飛行機は16時頃出発。31日の18時頃に日本に着くので、帰ってから荷物をパパッと整理したらみんなに集合呼び掛けよう。六時間もすれば年明けるしね。
あたしがこっちにいるのは知っているだろうけど、まさかあたしだけ除け者なんて事…ないよね。え、ないよね?不安なんですけど。
時差ぼけ防止の為に対策を読み返して飛行機に乗り込み、あたしは日本へ帰国した。
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