INFINITY WORLDみんなで初詣
「私達と行くの!」
「いっつも桃っち達女子で色んな所行ってるじゃないっスか!たまには譲って下さいっス!」
「そうだよ〜オレ達なんて県外だから全然会えないんだよ〜?」
「此処は県外組のオレ達の中で決めたいんだが」
おはようございます。新年明けましておめでとうございます。今日は元旦です。
昨晩から赤君邸でみんなで年越しパーリナイをして無事に年を越し、その後少し騒いだ後にその場で雑魚寝をする人続出。
自宅に帰る事なく赤君宅で睡眠する彼らは此処からそう遠くない神社に初詣に行き易いからとかでお泊まりするらしい。自由か。
初詣に行こうとみんなに誘われOKして迷惑かなって思ってあたしは一旦帰ろうとしたんだけど、このまま泊まればいいと赤君のご好意に甘えてあたし達女子組は空いている客室に通してもらいベッドで休ませてもらった。空いている客室が二部屋以上あるとかどうなのってツッコミはなしで。
で、早朝に峰さんときー君に叩き起こされて睡眠不足で眠気と戦いながらソファーに座るあたしは、目の前で繰り広げられるさっちゃんときー君とあっちゃんと赤君達が言い合いするのを眺めている。
パーリナイした部屋でのやり取りなので寝ていた人は騒ぎで続々起きてくる。あたしは言い合いの原因なので黙って見守るしか出来ない為静かに眠たく虚ろな目を向けて傍観している。
そう。モテモテそらちゃんは初詣に行くグループ決めで揉める彼らによって引っ張りだこなんです。きゃぴ!…ごめんなさい。
喜ばしい事なんだけどね。あたしが誰と行くのでもいいって言ったからこうして揉めてるわけで、これ以上何か言うと更に揉めるかと思い口を開けない。でも言いたい。この状況だから言いたい。ベタでもなんでもいい。言わせてくれ。
「もうやめて!」
「「?」」
「あたしの為に争うのはやめて!」
「何か急に劇入り出したで」
「「うっぜ」」
あたしが急に立ち上がりいつもと違う裏声を使いながらふざけて言うと翔ちゃんは冷静に分析し峰さんと復活した灰君に暴言を吐かれた。そう言われると思ってました。思ってたから別にショックなんか受けてないし。ぜ、全然受けてないし。ぐすっ。
「いやまあ冗談なんだけども。みんなで適当に行こうよ」
「そらちんわかってなーい」
「オレ達の気持ちを踏みにじるつもりかな?」
あっちゃんとたっちゃんの有無言わせない迫力にあたしはうっと言葉に詰まった。そう言われたらそうだけど。やっぱり余計な事を言わないべきだったか。
「そらちんが決めてくれたらそれで済むのに誰でもいいとか選べないって言うから〜」
「う゛」
「だからオレ達で話し合ってるんじゃ〜ん。優柔不断なそらちんに代わってさ〜」
「うぐ」
あっちゃんに見下ろされ鼻先触れる程近くで睨まれながらい圧を掛けられるあたし。怒ってはいないにしろ拗ねてて不機嫌だ。そりゃまあ、あたしが無責任な事言ったからなんだけども。
「申し訳ございませんでした」
「もー。仕方ないなぁ〜」
今の言い寄られて答え出さない状況も示唆されているような気がして咄嗟に土下座をする。そりゃもう少し前に流行ったスライディング土下座で綺麗に。
するとあっちゃんから半笑いで呆れたように案外簡単に許しを得て、土下座の体勢から持ち上げられソファーに座らされる。あたしは子どもか。
「でもあたしだって本当にみんなで行きたいんだよ。人に揉まれながらわっしょいわっしょいしたいんだよ。何回でもこればいいだけの話かもしれないけどさ、それは正直面倒だし一回のお参りでみんなで行きたいんだもん」
「結構我が儘っスね…」
「男の子は女の子の我が儘を叶えてナンボだよ!」
「語尾に星付けんな気色悪い」
「泣いていい?」
きー君にまでやや呆れられたような視線をもらいながら人差し指を立ててキラッとして言うとマコマコから厳しいツッコミ。本当泣きそう。新年早々暴言吐かれまくるあたしって何なの?あたしがうざい事吹っ掛けるんだけどさ。
「じゃあこうしよう。あたし一人で行くから、あたしを見付け出した人と回るってことで」
「「はぁ?」」
「じゃあ今からあたし行くから。GPS機能使うの禁止ね。電源切るし。自分達の勘や五感を使って探して下さい。制限時間は一時間。あたしが出発してからみんなは5分後に出てね。誰も見付けられなかったらあたしは此処に帰って来ます」
「ちょっと待つのだよ!それでは赤司や高尾や伊月さんが有利になるのだよ」
「じゃあ三人は目隠しして」
「「「えっ」」」
「テッちゃんとちーちゃんミスディレして尾行とかなしね。あたし直ぐ気付くよ」
「「……チ」」
舌打ち!?テッちゃんまで!反抗期!?
「さっちゃんも情報集めるのなしね。自力でその場その場で探して下さい」
「えー!」
そんな可愛い顔して不満そうにしても駄目です。ぷくっと膨らませても駄目ですああ可愛い!!
「翔ちゃんとマコマコも誰か脅して探させるとか情報集めるとかなしね」
「ワシを何やと思っとんのや」
「この人と一緒にすんな」
「内藤さんもいつもどんな方法使ってるか知らないけど卑怯な事したら嫌いになるからね」
「!?っていう事は今は嫌いじゃないって事…好き?大好き?愛してるって事ですか!?」
前向き過ぎてうざいわこいつ。清ちゃんに頭鷲掴みされているのを見て溜め息を吐いた。
「携帯切ったしー、財布持ったしー、鞄持ったしー、ティッシュやハンカチあるしー。うんOK!じゃあ今からスタートね。行ってきまーす!」
「「早っ!?」」
スタタタターと軽快にそして素早くその場を後にしたあたしに数名が目ん玉ひん剥いていた感じがする。
さてさて!誰が見付けてくれるのかしら!楽しみ!
今思ったけど、この状況でこの作戦を思い付いて楽しむって相当あたし性格悪いよね。小悪魔とかそんなんじゃなくてただただ性格悪いんだけど。これ自分の首絞めてる?
「ぐえっ…本当に絞まってます…!」
「テメェがふざけた事するからだろーが」
「返す言葉もございません」
みんなが出発したであろう時間から開始し、そのスタートから約5分後。マコマコ率いる霧崎御一行様に捕まりました。開始早々って…どうなの…。
近くの神社に来たはいいものの人が多くて多くて。参拝方法を思い出しながら手水舎で清めたまでよかったんだけど、中々進めないがこれだけの人混みなら簡単に見つけられまいよと思っていたら屋台からいい香りがしてそちらに気を取られ、参拝前に焼きとうもろこしの前に並んでいたら簡単に見付かってしまったのです。
マコマコ曰く霧崎全員一致の意見であたしはまず屋台に行くと予測したらしく、それで来たら当たったらしい。食い意地に負けた…。結局買わせてくれなかったし…。
やりたい放題したあたしに天罰とばかりにマコマコは襟を掴みながら上に持ち上げるので必然的に首が絞まる絞まる。顔面蒼白で謝罪するとやっと下された。新年なのに死にそうになった。
「そらさんも大変だねー」
「?」
「人生にまたとないモテ期じゃね?」
「またとないって言葉は必要なかったよね」
風船ガムを膨らますかずやんの言葉にちょっとイラッとしながらも否定出来ない。腹いせに風船ガムを指でプスリと指すと簡単に割れたが自分の指に付いてしまった。
「きったね!」
「自分からやっといてそれ酷くない?もういいや食べちゃえ」
「は」
人差し指に付いたガムを見てやらなきゃよかったと後の事を考えなかった自分の行動に落ち込んでいると、かずやんに指に付いたガムを口で剥がされる。つまりカプリと噛み付かれたのである。
「っ!!?」
「自業自得〜」
あたしがズザザッと後ずさると健ちゃんにぶつかったけどビクともしなかった。かずやんはケラケラと笑っているが、いや人の指に付いたガム食う方が可笑しいよ!嫌がれよ!
「チッ。馬鹿な事してんじゃねえよバァカ」
マコマコは舌打ちをするとあたしの腕を引いて通り過ぎた手水舎に戻り、水を少し拝借して指を濯ぐ。お、お母さん…!
「誰がテメェのお母さんだ」
「何故ばれたし」
「顔に書いてあんだよ」
ベシッと頭を叩かれながらみんなの所に戻るとかずやんとザキがニヤニヤしていた。
「なぁに?マコマコ、ジェラシー?」
「あ゛あ?」
「えっ」
かずやんの揶揄を聞いてあたしがマコマコを見上げるとマコマコから鋭い眼光で見下された。ひいっ!怖い!
「んなわけあるかバァカ!調子乗ってんじゃねえぞ!」
そう言うとマコマコはスタスタ歩いて行ってしまった。あたしはそれが肯定しているように見えて思わずニヤニヤする。マコマコでもヤキモチとか妬くんだ〜。へ〜。…ん?でも何でヤキモチ?
「…そらさんはわかってニヤニヤしてるのか?」
「え?」
「…いや、何でも」
ずっと黙ってた康ちゃんがあたしを見下ろしてそう聞くので聞き返すが意味を教えられず康ちゃんも歩いて行ってしまった。ど、どういう意味だ。
…え、いやまさか。違うよね。マコマコがヤキモチって、普段から何だかんだあたしに懐いてるからちょっとジェラっただけで赤君達みたいな事は…、
「……さっさと歩け」
ない、よね?え?ないよね?
少し歩いた先でマコマコが睨みながら促してくるのを聞きながら、あたしはまさかあのマコマコがそんな事あるはずないって言い聞かせるように思った。
でも康ちゃんの発言が示唆する事ってマコマコの事だろうし。“花宮の気持ちをわかってる上で嫉妬しているのを見てニヤついているのか”って意味に聞こえなくもない。いやいやそんなまさか。アンビリーバボーだよ。
「そらさんほら行くよ」
「あ、健ちゃ「まあ考えてる通りなんじゃない?」
「え、何で「見れば何考えてるかわかるから」
「いや、遮らな「それは無理」
うおおおぉぉ!!久しぶりの健ちゃんのこの嫌な感じ!!いつやられても嫌だ!!
そんな健ちゃんに背中を押されながら進み取りあえず参拝完了。今年から宜しくお願いしますって挨拶しといた。参拝内容可笑しくても笑わないで。
「そらさん、ホラ」
「ん?…!!焼きもろこし!!」
「さっき買えなかったろ」
「ザキィィィィィィ!!」
かずやんが甘酒が飲みたいと言い配っている方へ向かって歩きながらマコマコの事を悶々と考えていると、目の前に差し出されたこんがり焼けた焼きとうもろこしに目を見開いた。
手渡してくれたのはザキで丁度通り掛かったので買ってくれたらしい。気付かなかった。っていうかザキ気が利くヤバいマジイケメン。
興奮してあたしはザキの腕にしがみ付き何度も頭を下げた。ザキは勢いにビビってたけど焼きとうもろこしを渡してくれたので受け取る。お金も必要ないなんて、マジイケメン。
「いただきまー…」
「………」
大きな口を開けて齧り付こうとするとやや不機嫌なマコマコと目が合う。さっき考えていた事もあってやや居心地が悪い。
「…す」
「何だよその間は」
ザキがケラケラ笑いながら突っ込んできた。するとマコマコが近寄ってきてあたしの腕を引き、座れそうな所に無理矢理座らせた。
「んなもん食いながら歩いてたら周りに邪魔だろうが。考えろよ」
「ごめんなさいませ」
「謝るならちゃんと謝れ」
周りに迷惑とか考えるんだね…って失礼な事を思ったのは此処だけに留めといて。ピシッとデコピンを頂きながらとうもろこしに齧り付くと、マコマコは鼻で笑ってみんなと甘酒をもらいに行った。
何かさぁ、こういうちょっとした優しい?場面があると思い込んじゃうよね。いいように解釈しちゃうよね。
あたしは頬が少し熱くなるのを感じながら誤魔化すように香ばしいとうもろこしに齧り付いた。
その後続々とみんなが集まり霧崎に負けたっていう事でかなり怪訝な顔をする人もいたけど、負けた悔しさがありつつも何だかんだズルズルになって結局みんなでドンちゃん騒ぎしたって話。
此処数年のあたしの新年は静かだったけど、やっぱりこういうのもいい悪くないなって思った元旦でした。
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