INFINITY WORLDあたしと青峰大輝
【青峰side】
部活後、さつきに連れられて誠凛に向かいながらこれからテツにあげるチョコがどうのこうのとずっと話しているのを聞き流し、テツを不憫に思った。バレンタインだからと言ってダークマターを食わされるあいつの身が哀れで仕方ねえ。
そう思っていたが、オレに渡すのを忘れていたと言い鞄から何かを取り出した。オレは長年の付き合いで食わされ続けたダークマターに怯えビクッと肩を上らせたが、無理矢理持たされた、何だっけか…マレドーヌ?を見て目を丸くする。
普通じゃねえか。そう思って聞けば昨日そらと作ったらしい。女子か。ああ女子か…。
なら大丈夫だな。料理に厳しいあいつがいりゃあ味は保証されるはず。今まで一緒に作ったやつは普通に食べられた。
それを鞄に突っ込みながらあいつ今日何してんだろーなと何となく思った。スケートに行ってからさつきが目を光らせてやがるから、こないだの合宿でもあんま弄れなかった。色々ちょっかい掛けてやろうとしたのに。
そう思っていると誠凛に着いて、薄暗くなりかけた辺りに映えるように体育館に明かりが点いているのが見えた。さつきが体育館に直行するのを見ていると、後ろからガシッと襟元を掴まれた。
「ぐえっ!?」
「さっちゃーん!この子借りまーす!」
「え!?そらさん!?」
丁度さっき思い浮かべてた奴の聞き慣れた声が聞こえ、顔を振り向かせると無駄にいい笑顔でオレを引きずる。つか何でこんな所にいんだよこいつ。
さつきは吃驚したように目を丸くさせていたがそらは気にせずオレを引っ張っていく。
「なっ…ぐえええ!!くっ苦しい死ぬ!!そらテメェ!!」
「さっちゃんはテッちゃんに送ってもらいたまえよー」
「話を聞けええええ!!」
スタタターと何処にそんな力があるのかオレを引きずったまま誠凛を後にしたそらは、近くに停めていた車にオレを放り込む。これが言ってた新車か。って下手すりゃこれ誘拐だぞ。
「いってえな!何すんだテメェ!」
「出発しますのでシートベルトをご着用下さい」
「自由か!」
やりたいようにしているそらにイラッときながらも仕方なく助手席に座ってベルトを締める。
直ぐに出発した車に揺られながら意外と安全運転だなとか思った。こいつ暴走しそうじゃん。車乗ったら性格変わりそうじゃん。
暫く走って着いたのは真新しいストリートバスケのコート。車から降りてこんなとこに出来たのかと思っているとそらが鼻高々に腰に手を当てながら踏ん反り返った。そのまま転けろ。
「こないだ完成したんだってー。峰さんの家からちょっと遠いでしょ?仕方なく連れてきてやったよ」
「あーハイハイどうも」
適当に流しながらわざわざ何で此処に連れて来たのかがわからず、取りあえず折角だし遊ぶかと思いボールを取り出すとゴールに向かって片手で投げた。
当然入ったボールにそらがパチパチと拍手を送る。入って当然なんだからやめろ。何か恥ずいわ。
「峰さんが嬉しそうでよかったよ」
「あ?…別に」
「えりか様かよ」
そんなツッコミを入れながらベンチに座ったそらの腕を引いて立たせる。疑問符を浮かべるこいつを笑って見下ろした。
「相手しろよ。1on1」
「いや前ので懲りて」
嫌がるそらを引きずってコートの中に入れると対峙しそらにボールを持たせて始める。嫌そうな顔のままドリブルをするそらが動き出し、オレも即座に動いてボールを弾いてやった。ボールは転がってフェンスに当たって跳ね返り動きを止めた。
相変わらずど素人だな。いつ見ても酷い。
「下手くそ」
「わかっててやれって言ったのは峰さん!!」
苛ついて地団駄を踏むそらに合わせてピョンピョン跳ねてやるとうざいと怒った。本当飽きねえな。面白え。
「もう峰さんにはチョコやらん!!」
「別に特別好きでもねーからなー」
本気か否かそう言うのでバレンタインである事を思い出しオレの分もあんのかとちょっと嬉しく思ったが、意地悪でそう返すと目に見えてそらが沈んだ。どうした今日のこいつ。
「んだよ。オレが欲しがると思ったのかよ。紫原じゃあるまいし」
「…欲しがれよ。あたしの作ったチョコだぞ」
そう言って睨むそらに首を傾げていると、そらは鞄を置いている方に歩いて行き箱を持ってズンズン近付いて来た。それをずいっとオレに差し出す。
さつきのとはまた違い、しっかり箱で包装された洒落てるやつ。
「今日バレンタイン」
「知ってる」
「だから渡しに来たの」
「そりゃどうも」
「もー!わかんないの?」
いつまで経っても受け取らねえオレに痺れを切らせたかのように押し付けるので、それを落とさないように持つとそらは少し顔を赤くして眉を吊り上げた。
「峰さんに、これを、渡しに来たって言ってんの!」
いい加減察せよ!と怒るそらにポカンとしていたが、やっと意味がわかった。つまり、本命って事か?他の奴とは違うって言いてえのか?
「峰さんあたしの事好きって言ってくれたじゃん。だから喜んでくれると思ったのに反応薄過ぎ。芸人ならもっとオーバーリアクションで来いよ」
「いや芸人じゃねえし」
話がズレてるのを修正するが、そらを見て何となくわかった。照れ隠し。それを見てフッと鼻で笑うとそらは拗ねた顔をする。
「…オレにしろよって言った」
「ああ、言ったな」
「だから峰さんにする」
「妥協かよ」
こいつが言いたい事はこの雰囲気では流石のオレでもわかる。一つひとつの言葉に少し意地悪な返しをすると、そらは一度俯いてから耳まで赤くさせて真剣にオレを見上げる。
「ううん、妥協じゃない。巨乳好きの助平だけど峰さんといてあたしも楽しいし、カッコいいって思う時もある。たまにだけど」
「最後のいらねえだろ!」
何で最後まで真剣に言えねえかなと思いつつ、それがこいつらしいなとも思った。
「案外人をよく見てて気付かせてくれる事も沢山あるから、勝手な事言うけどこれからも気付かせてくれたり支えたりして欲しい。これからも楽しく峰さんと過ごしたい。だから、あたしの傍にいて欲しい、です」
段々か細くなっていく声だが、辺りには誰もいねえし車の通りも少ねえからよく聞こえる。精一杯のこいつの言葉に擽ったい気持ちになりつつ、素直に嬉しいと思った。
赤司とか紫原とか他にもいんのにオレを選んだって事で優越感を感じる。然程離れてねえ距離にいるそらに近寄ると、目を伏せたそらの頭にチョコを持ってない右手をポンと乗せる。
「別にオレは赤司みてえに何でもわかるわけじゃねえから、期待されても応えてやれねー時が殆どだと思うぜ」
「…別にそれだけが理由じゃないから、いい」
「本当にオレでいいのかよ」
今気付いたが自分の手が少し震えていた。緊張か嬉しいからか、よくわかんねえけど誤魔化すようにポンポンと頭を撫でる。
そらはオレの言葉を聞いて、声色的に不安感が出てしまったのに気付いたのかクスクスと小さく笑った。
「オレにしろよって言った割には慎重だね」
「…悪いか」
「悪くない。峰さんが好きだし、峰さんと一緒にいたい」
自分でも若干拗ねた口調になったのがわかったが、そらは笑う事なく嬉しそうにして首を横に振ると頭の上に乗せた右手を両手で取って下ろし、オレより小せえ手で握った。
オレの手も冷気にさらされて充分冷えてるが、そらの手も赤くなって冷え切っていた。オレより低い位置で手を握るそらがどうしようもなく可愛く見えて、その手を引き抱き締める。腕の中に収まったそらに満足しながらさっき苦しい思いをしたのを思い出しぎゅうぎゅうときつく抱き締めるとくぐもった声が聞こえた。
「んぐぅ…っ!!ぐるじい…!!」
「さっきの仕返しだバーカ」
「心が狭いよ峰さん」
「うっせ」
「ぐうううぅぅぅ」
一瞬力を緩めたが負けじと悪態吐くこいつをまたきつく抱き締めると苦しそうな声が聞こえた。ざまあ。
あんまりやり過ぎるとマジで折れ兼ねねえからある程度で緩め、落ち着いたように一息吐いて抱き締め返すそらの頭をポンポンと撫でて、少し体を離し顔を上げさせる。
しようとしているのがわかったらしく、ぎこちなく視線を彷徨わせた後オレと目を合わせてぎゅっときつく目を閉じた。何一丁前に緊張してんだと思って前髪を上げてデコにキスをする。
「…峰さんデコチュー似合わない」
そう言うそらに恥ずかしいからって言いたい放題言いやがってと青筋が浮かぶ。
「ならオレっぽいチューしてやるよ。後悔すんなよ」
言った途端にこないだのを思い出したのかまた真っ赤になってわたわたと慌て出すがもう遅い。もう知らねえ。
逃げねえように抱き寄せたまま顎を掴んで何かを訴えようとする口を塞ぎ、隙を逃さず舌を絡め取った。
にしても低いんだよな、首痛え。でもそらも見上げてるから同じかと思いながら食べ尽くすように深いキスを送る。
オレを馬鹿にしたから腰でも砕けちまえ。これからはこんなもんじゃ済まさねえからな。
Daiki Aomine END.
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