INFINITY WORLD
あたしと今吉翔一

 さっちゃん情報で、翔ちゃんの家と今日の予定を聞いたあたしは翔ちゃんの家の前で待ち伏せ中です。
 翔ちゃんへの気持ちはあたしの中で整理したから自信持って告白したいと思う。当たって砕けたらそれまでだ。それは仕方ない。頑張れあたし。

 あれから考えてみると、やっぱり合コンの時ヤキモチ妬いてたんだなって。巨乳は基本的に敵だけど(さっちゃんとアレクさんは別)、相手が誰でもベタベタしてたら嫌だなって思った。

 翔ちゃんは何考えてるかわかんない人だし意地悪な時多いけど、優しくて人を見る目がある。落ち着いた話し方するから安心するし、アドバイスとかもらうと言いくるめられてるとかそんなのではなくて、納得するしあたしでは思い付かないような考えを出すから勉強になる。無駄に煽ってくる時もあるけどそれはまあ、翔ちゃんだから仕方ない。

 寒いな〜と思いながら手袋をした手を擦り合わせマフラーに顔を埋めていると携帯が鳴った。
 掛けてきたのは翔ちゃんで、待ち伏せの事は言ってないはずなのにこのタイミングで掛かってきた電話にちょっと怖くなりながら、片方の手袋を取って電話に出る。

「はぁい」

『もしもしそらさん?今何処におんの?』

「少なくとも家ではないよ」

『あちゃーマジでかぁ。ワシ今そらさんの家の前におんねんけど』

「あたしは翔ちゃん家の前におんねんけど」

『え?』

「うふ」

 突撃訪問をしたのは翔ちゃんも同じのようでバレてない事に安堵したものの結局ネタばらしをしたくなって同じ言い方で返すと、意外に素っ頓狂な声を出して吃驚しているであろう相手の顔を思い浮かべながら含み笑いをする。
 翔ちゃんは一瞬間が空いたが直ぐに理解して声色的に恐らく苦笑した。

『何やねん。そらさんはワシの家の方におるんか』

「うむ。サプライズで突撃訪問」

『なら入れ違いやなぁ。折角そらさんのチョコもらいに来たのにー』

「あたしもチョコあげにきたのにー」

 とことん真似してやろうと思ってそう言うと、また少し間が空いてホンマに?と聞き返された。
 今日は翔ちゃん吃驚する事多いなと思いながら笑って、今から帰るからフロントで待ってるように伝えて車に乗り込んだ。

 突撃訪問も上手くいかない時もありますな。
 翔ちゃんはどっちの意味で理解してチョコを待ってるだろうかと思いながらアクセルを踏んだ。










【今吉side】

 サークルでの集まりが終わってそらさん家が近い事を思い出し、今から行って今日はバレンタインやし逆チョコでバッチリ決めたるんやって諏佐に言うたら半笑いで頑張れって言われて別れた。何で半笑いやねん。もうちょっと友人の恋くらい応援してくれてもええやん。

 まあ逆チョコなんてワシがあげるようなタイプには見えへんやろうで可笑しいんかもしれへんけど。こないだ街中でそらさんが好きなチョコのメーカーの新作が出とったからそれ買って渡すだけなんやけども。

 まあワシ以外にもそう思って家に来とる奴も多いんかなと思ったらまさかの留守。ああ、もしかしたら配り歩いとるんか最悪誰かと成就してデートかいなと思うと自分でもわかるくらいに肩が落ちる。
 決め付けてもしゃーないから取りあえず電話して聞いてみよと思ったら、まさかまさかのワシの家におるって言う。何でや、と思ったけど桃井に聞いたんやろうなって直ぐにわかった。

 んでもって、ちょっと期待した。義理でもわざわざ渡しに来てくれるそらさんの優しさって思う反面、もしかしたらって思う。

 言われた通りフロントで待っとると小走りでそらさんが帰ってきて、外気にさらされた肌を赤く染めながらワシの前にやってきた。

「ごめんね翔ちゃん!お待たせ」

「ええよ。こっちこそすまんなぁ、急に来て」

 ブンブンと頭を横に振るそらさんに微笑ましく思いながらロックを解除された中へ入る。
 部屋に通されて二人で手洗いうがいしながら、ワシ此処の同居人みたいやんて浮かれた頭で思った。そらさんと並んでこんなんするん初めてやし。

 キッチンに立って珈琲を淹れてくれるのを横目に見ながら、何となく緊張して許可を得てテレビを点けた。丁度バレンタインの特集みたいなんがやっとって、何処も彼処もバレンタインかと心の中で思った。

「はい」

「おおきに」

 喫茶店で磨いた珈琲を淹れる腕があるそらさんの珈琲は美味い。ちゃんとドリップしとるからな。ブラック珈琲に口を付けながら、ソファーの隣に座ったそらさんを一瞥する。相変わらず甘そうな珈琲飲んどるわ。

「そらさん、これ」

「ん?…ん?」

「逆チョコってやつや」

 持っていた小箱を差し出すとそらさんはキョトンとして目を瞬かせた後、逆チョコと聞いて衝撃を受けた。

「…翔ちゃんが逆チョコ…」

「ちょっとその反応失礼やと思うで」

 絶対ガラでもないとか思っとるんやろうな。わかっとる。ええねん、どうせオレはそう見られがちや。毒でも入っとるんちゃうかって思われてんのやろ。

「あはは!めんごめんご。ありがとー」

 そらさんはケラケラと笑うと受け取ってくれて、既製品やけど可愛くラッピングされたそれを見つめた後自分の後ろから同じように小箱を出す。

「じゃあこれ翔ちゃんに」

「おお、えらい可愛らしいな。おおきに」

 そらさんの手作りって言う受け取ったそれを見つめた後直ぐに開けて中を見れば生チョコで。普段品がないのに品のあるもんよー作れるなって失礼な事を思った。いや馬鹿にしてへんで。

「他の奴のと一緒?」

 ちょっと意地悪な言い方でニヤッと笑いながらそう問い掛けるとそらさんは少し顔を赤くさせて珈琲に口を付けながら視線を逸らした。何やの、その愛らしい反応は。

「一緒じゃないよ。そんな立派なの何十個も作れないし。…翔ちゃんだけ特別」

 その言葉だけで充分理解出来て、にやけそうになる口元を隠して顔を背ける。つまり本命っちゅー事で、ワシの意味と同じっちゅー事な。
 直ぐに落ち着きを取り戻してから顔を向けてニッコリ笑った。

「じゃあ両想いやな」

「へ?」

「ワシとそらさん。既製品やけどワシも本命やもん」

 そう伝えるとそらさんは暫く間が空いた後じわじわ赤面する。可愛いなー。

「え、嘘。日頃の感謝の気持ちとかそんなんじゃ、」

「それもあるけど、そんな事言うてないやろ。本命や本命」

「翔ちゃん、あたしの事好きなの?」

 信じられへんって顔しながらワシを見て硬直するそらさんの手からすり落ちそうな珈琲を取って机に置いた。こかしたら火傷すんで。

「大好きやで」

 此処はちゃんと決めやなあかんとこやって思って、はっきりそう真剣に伝えるとそらさんは目をうるっとさせて俯いた。そしてワシの手にワシのより随分小さい手を重ねてぎゅっと緩く握る。

「あたしも、翔ちゃんが好きだよ。それを言おうと思って突撃訪問したんだよ」

 予想出来た言葉やったけど、改めてそう言われると嬉しくなるもんで。胸いっぱいっちゅうんはこういう事やな。嬉しくてちょっと恥ずかしゅうて、顔を上げて笑ったそらさんが好き過ぎて仕方なかった。

「おおきに」

 引く手数多なこの人が選んだんが、ワシやって自覚するとまあ優越感ハンパないな。付き合ったなんて言うたら赤司にでも刺されそうやわ。…あ、冗談抜きでマジで刺されそうやわ。怖いんやけど。

 そんな事を考えているとススッと寄ってきたそらさんがワシの肩に頭をコテンと乗せる。その行動に目を見張ると、そらさんは顔を上げやんまま深い溜め息を吐き出した。

「よかった…フラれる覚悟で来たけどよかった…」

 安堵の息やったみたいでホッとするそらさんの言葉にじわじわと胸と体が熱くなる。可愛い事言うて、ワシかて同じ不安あったっちゅうの。

「ワシかて同じや」

 そらさんの手の上にまた手を重ねてそう言えば、目をパチパチと瞬かせながら顔を上げそらさんと目が合う。んで嬉しそうにはにかんで笑うもんやから、可愛過ぎてめちゃくちゃにしてやりたいって思った。せーへんけど。可愛いもの見るとうわあああってなるやん。アレな。

 でも今までワシの事見ればいいとか紫原みたいにベタベタとまでいかんでも触れたいとか思っとったから、結局我慢は出来やんくて気付いたらそらさんにキスしとったんやけど。重ねるだけのキス。

 顔を離すとまだ少しだけ潤んだ目と目が合って、こんな顔されたらどの男も我慢出来へんやろって思いながらワシは他の奴と違うんやって自分にも言い聞かせるように大事にしたい気持ちを勝たせる。我慢や我慢。

「これから宜しくお願いします」

 突然のキスに吃驚しとったくせに畏まってそう言うから、もうこの人色々わざとやっとるんちゃうんって疑った。翻弄されて翻弄するのがこの人やけど。

「こちらこそ、宜しゅう」

 そう返事を返せばそらさんはぎゅっと抱き着いてきて、今までこんなんなかったから中々の行動力に吃驚させられながらも嬉しくて抱き締め返す。
 この後もあんまり煽るようならちょっとは色々しちゃってもええやろかと思いながら、目の前の髪に唇を落とした。










Syoichi Imayoshi END.

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