INFINITY WORLD
あたしと高尾和成

「まーだっかなー」

 愛車を路駐させそれにもたれながらこの道に現れるであろう人を待つ。人通りは多くなく、やや閑散とした此処では暗くなった辺りを照らすのは街灯のみ。
 白い息を吐き出しながら手に持った小箱を握る。

「なぁーにしてーんのっ」

「ひぎゃあああああ!!?」

 不意に耳元にふうっと生温い息が掛けられ聞き慣れた声が聞こえたが急な事に吃驚して飛び上がり絶叫した。
 ぞわりと鳥肌がたった耳を押さえて振り向けば、そこにはタカ君がいて鼻を赤く染めながらニシシッと笑う。ハニカミ王子め。

「タカ君!吃驚した!」

「それはこっちのセリフ〜。こんな所で何してんの?危ないじゃん」

 鷹の目で直ぐにあたしがいるのに気付いたらしい。辺り暗いんだし、と言うタカ君にうっと言葉が詰まるが待ち人が来たので早速本題に入る。寒いしずっとこのまま冷気にさらされてるのはきつい。

 あたしは答えを口では言わずに手に持っていた箱を押し付けてマフラーに顔を埋める。恥ずかしい。乙女か自分。

「え?」

「ハッピーバレンタイン…」

「え!?マジで!?」

 やったー!!とかなり喜んでくれるタカ君を見て笑みが零れる。喜び過ぎそして可愛過ぎ。どんだけ嬉しいんだよ。

「本命!?これ本命!?」

 しっかりした箱だしどう見てもこれ本命じゃんね!?と詰め寄るタカ君を見つめて、肯定するようにコクリと頷く。途端に自分で本命か聞いたくせに動きを止めて放心状態になった。騒がしいなこの子。

「…え。マジで?」

「自分から聞いたくせに」

「いやいや!だって…え、オレ!?」

 何度も聞き返すタカ君にうんうんと頷いていると、タカ君は手元の箱を見下ろしあたしを見た後わなわなと震えた。どうした。

「そらさぁぁぁぁん!!」

「うわあああ!?」

 急に抱き着いてきたタカ君を受け止められず一緒に転ぶ。頭を撃たないようにすかさず腕を回してくれたタカ君は流石だ。でもお尻が痛い。

「嬉しい!!マジで嬉しい!!」

「う、ん。よかったね」

「赤司や真ちゃんに勝った!!」

「あ、うん…」

 ぎゅうぎゅうと抱き締めながら叫ぶように勝利?を噛み締めているタカ君の喜びようにやや置いてけぼりを食らいながら、ポンポンと背中を撫でる。

「じゃあこれでそらさんはオレの彼女!?」

「そ、そうなりますね」

「マジかぁぁぁぁ」

 一度体を離して間近で見つめられながら改めて確認されると恥ずかしくなったが、頷いて肯定するとさっきまで元気な声だったのが段々小さくなってあたしの肩に額を乗せる。上がり下がりが激しい。

「よかった…マジで。そらさんに選んでもらえて本当に嬉しい…恋が実った…ちょっと無理だと思ってたけど」

 ポツリと話し出す言葉を聞き取りながらあたしの事が凄く好きっていうのが伝わってきて、嬉しくて胸が苦しくて大好きって気持ちがいっぱいになって、背中に両手を回してぎゅっと抱き着くときつく抱き締め返される。

「好き…」

「うん」

「そらさん大好き」

 耳元で囁くように言われた言葉は擽ったくて、でも胸がいっぱいになる素敵な言葉で笑みが零れた。

「あたしも大好きです」










【高尾side】

 好きなのかもって思うようになったのは、そらさんがこっちの世界に来てから。あの世界では色々てんやわんやでそんな事思う余裕はなかった。
 そらさんの性格や雰囲気が好きで、たまに意味わかんない事言うけど一つひとつが面白くて、笑うと太陽みたいにあったかくて可愛いなって思う事が何度もあった。

 だから二人っきりになると股ドンしちゃったりキスなんかしちゃったりセーブが効かなかったわけだけど。それでもそんなどうしようもないオレを嫌いになんかならなくて変わらず接してくれた。見て欲しいってオレの我が儘込みで言ったのに、そらさんはちゃんと向き合おうとしてくれた。

 その中でオレにもドキドキしてくれてそうな顔したり赤くなったり、反応がいいから見込みあるんじゃねって思ってたけど周りには色んな奴がいる。
 完璧な赤司様に甘え上手な紫原、天然な真ちゃんに抜け目のない宮地さん。他にも諸々いる。だからこれ勝てねえかもってちょいナーバスになる時が多々あったけど、今これだよ。

 奇跡が起きた。キセキの世代+他に勝った。
 そらさんのハートを射止めたのはオレだ。

「あたしも大好きです」

 欲しかった言葉がそらさんの口から聞けて胸がいっぱいになった。もうこれでオレ死んじゃうんじゃねって思うくらい幸せだ。幸せ過ぎ。

「オレを選んでくれてありがと」

 言葉では伝えきれない分は抱き締めて伝わればいいと思ったけど苦しそうな声が聞こえて抱き締める力を緩める。するとそらさんは少し体を離してオレの顔を両手で包む。冷たい手が冷たい頬を挟んで、熱に変わる。

「タカ君だって顔も性格もイケメンだしより取り見取りじゃん。それなのにあたしを選んでくれて、こちらこそありがとう」

 立っているとオレのが身長が高い分目線は合わないが、今は座り込んでるから目線は同じ。少し潤んでいる目に可愛いなぁと思っていると、そっと触れるだけのキスをされた。まさかそらさんからしてもらえるなんて思わず目を見開くと、そらさんは恥ずかしそうに俯いた。

 それが可愛くて吐血しそうになる。よくグハァ!!とか言って桃井ちゃんや誠凛のカントクさんとか可愛い人見て胸を押さえて悶えてるけど、その気持ちわかるわそらさん。
 自分がそう見られる側になってるなんてきっとこの人は思わないんだろうな。自分可愛くないって思ってるし。

「ねーそらさん」

「ハイ」

「もっかいして?」

 そう言うとそらさんが目に見えて真っ赤になった。あーもー可愛い可愛い。
 おねだりするように言うと、そらさんはうっと言葉に詰まりながらもきゅっと口を結んでから意を決したようにもう一度唇を重ねてくれた。
 唇は熱くてオレのと重なってもっと熱くなる。直ぐに離れそうになるのを後頭部を押さえて引き寄せる事で防ぎ、角度を変えて柔らかさを堪能するように何度もキスをする。
 ペロリと唇を舐めて離れると羞恥でプルプルと震えていた。

「タカ君」

「何でしょう」

「そんなエロチックに育てた覚えはありません」

 真っ赤な顔でそんな事を言われると吹き出してしまった。何じゃそりゃ。エロチックって。

「なになに?キスだけで感じんぶ!!」

「シャラーップ!!」

 言葉攻めってわけじゃないけどからかってやろうとそう言えば、頭から煙を出して口を押さえられた。もう、照れ屋さーん。

「ぷはっ!あのねそらさん。男はみんなエロで出来てるんですよ」

「今この場にエロは必要ありません」

「じゃあオレの家かそらさんの家ならエロがあってもいいと思います」

 口を押さえるそらさんの手を握って外しながら淡々とそう言うと、そらさんは目を細めてやや呆れた顔をしながらそう言い返す。
 その後の言葉には返事がないので見つめると、視線をウロウロさせながら明らかに狼狽していた。

「直ぐにではないよ。けど、オレも今まで我慢してきたからね。段階は踏んで進展したいよね」

「結構飛び越えてるけどね」

「それ言っちゃあおしまいよ」

 確かに股ドンとかキスとかしたけども。でも漫画でもよくあるじゃん?現実でもよくあるじゃん?順序すっ飛ばしちゃう事。
 結論、可愛いそらさんが悪いって事で。これ言ったら怒られるな。

「そらさんは嫌?」

「………」

 割と真剣な顔をしてそう問い掛けると、そらさんはじっと見つめた後俯いて顔を逸らし、髪の隙間から見えた耳が赤くなるくらい赤面しながら口を開いた。

「嫌じゃない」

 その言葉を聞けただけで充分で、また抱き締めるとグリグリ肩口に顔を押し付けられた。

「寧ろしてって言ってくれたらオレ嬉しい」

「少しは自重して下さい」

 真剣にそう言いながらも、直ぐに若干呆れつつ可笑しそうに笑い声を漏らすそらさんに、これからはそれなりに自重はするけど遠慮はしなくていいんだなと思うと口元がにやける。
 勿論体目当てなわけじゃない。そらさんっていう人間が好きだけど、好きな人が目の前にいて何も気が起きないわけがないって話です。何てったって男はみんなエロで出来てますから。










Kazunari Takao END.

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