何かあったのか?
新たに人が加わった。帝光で特に色々と有名だった赤司君とタメだと言う降旗君、そして先輩の宮地さん。っていうかイケメンに囲まれ過ぎてあたし此処で死ぬんじゃないかなって思ってる。
宮地さんがあたしを知っていて少し詳しい感じだった事が、驚きもありつつやっぱり恥ずかしい。っていうかマジで恥ずかしいから青龍とかドラゴンとかの異名なくなってくれ頼む。
互いのこれまでの経緯を簡単に話して情報を共有し合い、みんなで探索をする事になった。安全な場所がまだ確保出来ていないので何処かに留まっているとまた怪物に襲われる可能性が高い事、武器が刺股しかない(しかもあたししか扱っていない)状況では戦う術がない事から全員で行く事になった。
だが人数は八人。人数が多ければ必ずしも襲われないわけではないし動きにくいし、
逸れる可能性もあるのでこの判断が吉と出るか凶と出るか。
これ以上増えるようなら本当に安全地帯で自分達の基地的な場所を確保しないと。
「一度ナースステーションに行ってみませんか」
出発しようとしたところで、赤司君が提案する。みんなの視線が赤司君に集まった。
「ナースステーション…つったら、春添がいた所か」
「ああ。みんなの話の中で唯一怪物と遭遇していない場所がそこだからな」
「でもあたしもあんまり長居してないし…アテにならないかもしれないよ」
「構わないさ。行ってみる価値はある」
青峰君があたしの方を見る。確かにざっとロッカーやナースステーション内を見ていたその間何も遭遇していないけど、偶然あたしが何とも会わなかっただけで安全とは言い切れないそこに行こうという思考に至るのが凄い。チャレンジャーだ。
あたしが安全区域だと思えないのにはもう一つ理由がある。こう、ナースステーションって窓や壁などの仕切りがないオープンな感じだし。窓口がカウンターで開放的だから、普通の病院ならそれがいいんだろうけど此処は廃病院。そこから何かが侵入してきたら…と考えると怖い。
それをそのまま赤司君に伝えると、優しく微笑まれた。
「春添さんの言う事には一理ある。人は安全を求める時に閉鎖的な所を探し求めてしまうものだ。だが必ずしも閉鎖的な場所が安全とは言い切れない。だからこそ逆をかいて安全なんじゃないかと思ってね」
深い意味はないよと言われ、成る程と納得した。帝光で常に首席だった彼が言うのなら、バスケ部の仲間が異議なく従うのならあたしもそうしよう。
そう思っていると、頭に微かな重みが加わった。
「取りあえず行ってみよう。もし何かあっても大丈夫だよ、オレが守るから。さっきのお返しの意味でもね」
赤司君の手が頭の上に乗っている。優しくポンと置かれた手は直ぐに降ろされたが、慣れない行為に体や顔が熱くなる。周りが薄暗くてよかった。
しかも守るって言われた。う、嬉しいけど恥ずかしい。言われ慣れない事は照れる。
「まあ守るつってもコイツ強いけどな。オレらの中で一番強いんじゃねえか」
ごもっともです。自覚してます。
青峰君のあっけらかんとした発言に対し赤司君も苦笑しているが、そういう事だからいいのではないと付け足した。
「剣術が優れているとはいえ、春添さんも女の子だよ。強ければ守らなくていいものではない」
何なのこのイケメンは。外見も中身もイケメンとか見てるだけで(幸福過ぎて)辛い。
あたしが両手で顔を覆うと隣にいた心中を察してくれたであろう黒子君にポンと肩を叩かれた。
ナースステーションに着いた。見る感じではあたしがいた時と変わりないように見える。って言っても薄暗いし他と同様廃れているので、違いがあってもわかりにくそうだが。
「注意しろよ。どっから怪物が来るかわかんねえからな」
宮地さんと笠松さんが先頭に立ちながらナースステーションに踏み入る。確か鏡からあのオカマが出てきたんだっけ。そうなると確かに何処から奇襲を掛けられるかわからない。
あたしは最後尾にいて、隣にいた赤司君に続いてナースステーションの区域に踏み入れる。
貴様ら、人の子か。
「わあ!?」
ふう、と耳に冷たい息が吹き掛かる。同時に囁くような女の声が聞こえぞわっと背筋に冷たいものが走る感覚がして、振り返るが後ろには何もいない。
なら前にいる、と思い前を向き直すが怪しい影はなく。隣の赤司君は吃驚したように目を丸くさせ、私達の前を歩いていた黒子君と青峰君は喫驚の表情で振り返っていた。ナースステーションを探索し始めていた降旗君や先輩方も同じような顔をしている。
「ななな何だよ吃驚させんな!急に大声出すんじゃねえよ!」
「ビビってるんですか青峰君」
「びびびびびビビってねえし!」
「ビビってるんですね青峰君」
「テツてめえ!!」
明らかにビビってるな。全員がそう思ったが口にはしなかった。
そんな中赤司君が声を掛けてくる。
「何かあったのか?」
「何でもない、大丈夫。ちょっと埃が虫に見えただけ。ごめんね」
「…そうか」
あははと笑いながら取り繕う。大丈夫。いつものように笑って言えてるはず。
妖の類が視えない人からすればあたしの言動や行動は怪しく、頭が可笑しい人に見られる。そんな目は昔から嫌って程浴びてきた。慣れたけど今でもそんな目は嫌いだ。
最初はこうやってみんなのようにキョトンとする。同じ事を繰り返せば不信感に変わる。気を付けないと。
それとなく意識を周りに向けるがやはり何も感じなかった。
「手分けして調べるか」
「はい。じゃあ降旗君、一緒にこっち見ようか」
「はい!」
「じゃあオレはテツとな」
「嫌です。僕は春添さんとで」
「何でだよ!」
「よく喋って煩いからです」
「お前マジで後で覚えとけよ…」
笠松さんの指示で各々分かれる。
青峰君、黒子君大好きみたいに見える。まあ中学の時も仲良かったっぽいから納得。
結局宮地さんと笠松さん、氷室さんと降旗君、青峰君と赤司君、黒子君とあたしで手分けして調べる事にした。
ナースステーションは結構広い。殆どを機械や書類、治療道具で占めていて一見広く思えないが、それがなければ広さは結構あると思う。
あたし達は埃被ったパソコン周辺を調べる事にした。一人の時はこんなに細かく見てないから、何か見付かるといいけど。
「春添さん。大丈夫ですか?」
「ん?」
「顔色が悪いですよ」
散らばる書類を退けていると声を掛けられる。顔を向ければ心配そうな表情の黒子君。あたしは口角を上げる。
「平気だよ。大丈夫」
「…さっき何か見たんですか」
その言葉にドキリとした。さっきの様子を見て思う事があったんだろう。
言えるわけがない。そう思いながら何でもないよと返す。だが。
私が視えているんだろう。人の子よ。
黒子君の背後。そこにはカウンターから広がる廊下が見えているが、廊下側のカウンター前に浮かぶ赤い着物を着た
白髪の女の姿が目に写った。少し頬が痩けているが顔立ちは綺麗で、紅を塗った薄い唇が弧を描く。
そこから出て来い。
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