よう見付けたなあ
【黒子side】
圧巻だった。
正に無双。その言葉がピッタリ似合う程、春添さんは圧倒的な強さを見せた。
腕を伸ばし春添さんを捕まえようとする怪物の腕。春添さんはバツのような剣筋しか見えない程の速さで袈裟斬り、逆袈裟斬りと腕を素早く振るい怪物の手をバラバラに叩っ斬る。
バキボキと骨が砕け折れる音が聞こえる。怪物が一瞬怯んだ拍子に春添さんがその場から跳躍し、怪物の上に乗った。
ぅワあぁアアあ…
図に乗るナァぁアア!!
「そっちこそ」
鉄パイプを大きな体の中心部に突き刺し、微塵にするかの如く乱れ斬りをする。
バラバラと崩れる怪物。しかし先程も銃で微塵にされたにも関わらず完全に再生を遂げた怪物なので、早くも再生し始めている。
フっ…ハハハァ!!
甘ィわ小娘ェェえ!!
してやったり。それぞれの体がにんまり笑う中で、春添さんも口角を上げたままだった。
「だーかーら。そっちこそ」
そう言った春添さんは再生し引っ付き始める体の中で、肉体の一部を鉄パイプで外に弾き出した。
宙で回転するそれは真っ赤な手の平サイズの石で、春添さんがそれをキャッチする。
ナッ…そ、ソれはぁ…!
「倒しても倒しても死なない、再生する奴の弱点は体の何処かにある“核”が心臓であり、脳である…ってね。ゲームの常套だしまさかとは思ったけど、当たりみたい」
か…返セぇエエええ!!
「だが断る」
バラバラの未完成な体で春添さんに迫るが、彼女はニヤリと意地悪な笑みを浮かべれば鉄パイプでそれを叩っ斬った。
その瞬間、再生を続けていた体は動きを止め、あっという間に塵になって消えていった。
廊下に静寂が戻る。ふう、と息を吐き出した彼女は鉄パイプを肩に担いでこちらを振り向いた。
野生。我流で戦っていた春添さんは、正にそれだった。型にはまらない剣術で、見事に勝利した。
「よう見付けたなあ」
「再生する時に気付かれないように庇ってたので。隠すもの程目に付きますし」
カウンターに寄り掛かり春添さんに話し掛けた今吉さん。春添さんは一度(みんな若干存在を忘れそうになっていた)妖がいるであろう方を一瞥してからそれに答えた。
そんな今吉さんに、笠松が問い掛ける。
「あの鉄パイプよく貸そうと思ったな。相手は女だぞ?」
「だってこの子有名やん。青龍の春添碧さんやろ?」
「そのネタもういいです」
その異名を嫌がっている春添さんは、何度目かのやり取りに早くも慣れように言ってのけた。
「え、全員って…どういう事ですか?」
「今この場にいるみーんな入れて、多分この世界に呼ばれた人全員揃ったって事!」
ナースステーションへ春添さんを入れて、今吉さん達の経緯を聞いてこちらのこれまでの経緯も話した。するとこの下の階、つまり二階のナースステーションに他のみんなが揃っているとの事。
その内の一部が最初一階にいて、他が二階にいたらしい。怪物に追い掛けられて一階にいた人達が二階へ上がってきた事で合流出来たとの事。この話から、難なく他の階に行き来出来る事が判明した。
上の階が騒がしい(春添さんが戦っていた時の音と思われる)為、何かあると思い取りあえず少数派の三人で来たと言う。
「その内の誰かが偽物だったり…」
「可能性が全くないわけではないな」
「まあもしそうやっても、全員揃ったら違いがわかる人もおるかもしれへんし。取りあえず合流やな」
降旗君の呟いた言葉に対し否定しない古橋さん。今吉さんの話から警戒を怠っていない事は理解出来る。相変わらず何を考えているかわからない笑みだと思った。
「この銃みたいに色んな武器も見付けた。春添さんが使えそうなのは今の所その刺股と鉄パイプくらいやけど、堪忍してや」
「いえ、ありがとうございます」
「ブフッ…刺股って…勇し過ぎ!」
この人も相変わらず沸点低いなと思いながら腹を抱えている高尾君を見た。当の本人である春添さんは特に気にした様子なく傍観している。
「…あなたも、貸しがあるんだからついてきてくれるよね」
…フン。拒否なんかさせるつもりなど毛頭ないだろう。
カウンターの向こう側にいる妖に話し掛けたようだ。春添さんの反応を見るからに反感は買わなかった様子。というか、あんな戦闘シーンを見せられて歯向かうなんて出来ないと思う。
彼女に霊感がある事を信じるか否かはさておき、高尾君達にも軽く説明してある。本当に視えているのか疑い不思議そうな顔をしているが、氷室さんと赤司君が笑みを浮かべながら「彼女を信じてあげて下さい」と言った事で疑いの眼差しは少し薄らいだ。
「じゃあ早速行こうか。どの階のボスから探して倒すか話し合いたいしね」
氷室さんの言葉により、ナースステーションから出て二階のナースステーションへ移動する事になった。
16/50
←|→
BACK/
TOP
ALICE+