オレは信じるよ
二階のナースステーションにこのゲームに呼ばれた人が集まった。結構トントン拍子に集まっているので、この後何かしらあると勝手に思ってる。とか言ってみる。
あたしは壁際に座り込みながら話に耳を傾けていた。
まず赤司君と黒子君が話し始める。あたし達一行のそれぞれの経緯、合流後から先程までの出来事などざっと話した後、二人が自分達にもあたしにも霊感がある事を告白する。
今まで一緒にいたチームメイト同士でも知らない事だったようで、何人かが目を見張っていた。
「霊感なあ…」
「俄かに信じられない話だけど…」
ムキムキの人と美人で仕草が女っぽい人がそう口々に言うのを聞いて、普通はそうだよねと思う。信じようが信じまいが、そこは強要するつもりもないし、別にいい。
先程の戦闘の際にいた妖が、今もカウンターを挟んだあたしの背後にいる事を伝えると益々不信感否めませんの顔をされた。
「…何とか“此処にいる”とみんなにもわかるように出来ないか?」
「何とかって言われても……どう?」
フン、信じてもらえぬか。哀れな事よのう…
「…煩いよ」
これで貸しは返した事になるかい?
「そんなわけないでしょ。あたしの貸しと全然重みが違うじゃん」
赤司君の問いに応えようとあたしが妖とボソボソと話をすると、数名目を細め不信感が強まった気がする。こればかりは仕方ない。
「今から妖が何かするみたいです」
あたしがそう言うと、妖はやれやれと深く息を吐いて壁をドンドンと叩いた。手っ取り早いポルターガイストにしたな。
「!?」
「音した!すげえ!!」
急な物音にビクつく人、八重歯が特徴の人が目をキラキラ輝かせるなど、反応は様々。だがこれでは偶然などといちゃもんを付けられるかもしれない。現に鼻で笑う人もいた。…何だあの眉毛。何か顔面でおたまじゃくし飼ってる人いるんだけど。
「これだけじゃあね〜」
「もっと何かないアルか?」
前髪が長い人と変な喋り方の人の言葉を聞き、気の荒い妖がこの言葉を聞いた暁にはきっと荒れに荒れてこの二人は襲われてるだろうなと呑気にも思った。
現にこのプライド高そうな妖も青筋浮かべてるし。ナースステーションに入れないから今は何も出来ないけど激おこっぽい。
「じゃあ…あたしとデュエットします。さんはい、ババンババンバンバン」
ドドドンドン
「ババンババンバンバン」
ドドドンドン
淡々と棒読みであたしが歌うと妖はノリよく合いの手として音を鳴らしてくれたが、正にこの光景はシュールだろう。
この現象に高尾君はまた吹き出していた。唾が…。
「何でそれをチョイスしたんだ…」
パッと思い付いたのがそれだったので仕方ないでしょう。宮地さんに視線で答えていると、疑っていた人達も流石にこの不毛なやり取りが馬鹿馬鹿しくなってきたのか少し笑っていた。
「わかったわかった、ちょっとだけ信じるよ。そこまで正確にタイミングよく音が鳴ると、流石にね」
前髪が長い人が膨らました風船を割って半笑いになりながらそう言った。何か癪に障る言い方だなとモヤッとした気持ちになりつつ、わかってもらえたならよかったと安堵の息を吐いた。
「オレは信じるよ」
他の人もまあ信じるかな、くらいの気持ちになっているであろう空気の中。そんな中で、凛とした声が響いてみんなが視線を向ければ、あたしの正面に立つ人がいた。
切れ長の目が真剣な眼差しであたしを見下ろしていた。これはまたイケメンだ、と思っているとその人は座っているあたしに目線を合わせるように片膝をついて座った。
「こんな細い腕の何処に力があるんだと思うけど、笠松や赤司達が言うんだ。彼女の強さ、今までの経緯、霊感の話は嘘じゃない。オレはそれを信じる。それに…」
そっと伸ばされた手は、あたしの手を取りゆっくりと持ち上げる。あたしはその流れるような動作に驚き過ぎて身動きが取れずただ呆然と見ていた。
「こんなに綺麗な目をしている美しいお嬢さんが嘘を吐くわけがない。馬鹿にされてしまう可能性がある話を正直に話してくれた事、オレは勇気があると思う。他の奴らの数々の無礼、お許し願えますか…春添さん」
う、美しい…!?初めて言われた…っていうか、台詞が一々恥ずかしい。これが臭い台詞っていうやつか。
そう思いながらあたしは目を見開き、慣れない女の子扱いで体の奥から熱が生じてじわじわと体温が上がっていく。首から頬、耳まで熱く感じながら何とか言葉を返そうと口を開くが、真っ直ぐな視線に耐え切れず落ち着きなく視線を彷徨わせる。
「あ、う…んと、えっと…赤司君達が説明してくれたので、あたしが正直に話したわけでは…」
「でも否定せずに何とか霊感があるという事を証明しようとしたじゃないか」
それはそうだけども。あたしが言い淀んでいると、ふわりと微笑んだ彼はあたしの手を握る力を少し込めた。
「そんな健気な春添さんが凄く可愛い」
ぶわっと自分の顔が一気に熱くなるのがわかった。かかかか可愛い!?何言ってるのこの人!しかもあたし健気ではないんだけど…!
そう思いながらも否定する言葉が上手く出てこず、あわあわと口が動くだけで言葉が一向に紡げないので顔を俯かせる。
「(春添さん、ああやって言われる事に慣れてないのかな…)」
何やら桃井さんのキラキラした視線を感じるが、何だか怖くてそっちが見れない。誰かにヘルプを出そうにも、今誰かと目を合わせるだけで自分がこんな事を言われている姿を見られたという羞恥心でどうにかなってしまいそうだった。
すると、バシッと近くで叩く音が響いて吃驚して思わず顔を上げた。
「いたっ!?」
「いい加減そのキザな台詞をやめろ!!聞いている方がむず痒いわ!!」
少し頬を染めてわなわなしている笠松さんが古い本を片手に怒鳴っていた。どうやらその辺にあった本で頭を叩いたらしい。イケメンさんが空いている手で頭を押さえていた。
「何だよ笠松!いいところなんだから邪魔するなよ!」
「何がいいところだボケ!関係ない話になってんじゃねえか!」
「関係なくないぞ!?春添さんが可愛いからそれを素直に伝えたまでで、」
「だからそれが今の話に関係ねえっつってんだよ!」
「可愛いと素直に伝えて何が悪い!?」
「うるせえ!もうお前黙れ!」
「理不尽!」
始まった言い争いにポカンとしていると、イケメンさんがハッとしたようにあたしに顔を向けて微笑んだ。
「オレは森山由孝。由孝先輩って呼んでくれ」
「は、はぁ…」
呼び方を指定されてしまった。笠松さんを呼び捨てにして普通に接している辺り先輩かなと思っていたが、今まで人を名前で呼ぶ事が少なかった為途端に恥ずかしくなる。
「…よ、」
「よ?」
「よよよよよ由孝、先輩そろそろ手を離して頂けると…」
かなりどもってしまった。更に顔が熱くなるのを感じながら視線を落として何とかそう伝えると、ハッとしたようにあたしの手を離した。
「ご、ごめん!」
由孝先輩はそう言うと顔を覆って反対側を向いてしまった。後悔してるんだろうか。
「(こ、これは脈アリか!?脈アリだよな!!だってめちゃくちゃ赤面してるし!!キタオレの時代!!!)」
そんな由孝先輩を正面から見ている笠松さんの目が凄く白けているんだけど、何なんだろうか。
「おい春添」
「? はい」
「普通に森山でいいと思う」
「おい宮地!?」
宮地さんが近付いてきてそう言った。あたしがどもっていたからだろうか。森山さんがその言葉に吃驚して振り返った。
「呼び難いんだろ?だったらオレらみてえに森山さんでいいじゃねえか。な?」
何だろうこの有無を言わせないような威圧感は。チラリと由孝先輩を見るとブンブンと顔を横に振っている。そ、そこまで呼んで欲しい理由とは。
あたしが答えあぐねていると、宮地さんがあたしと由孝先輩に何かを向ける。
「な?」
「「ハイ」」
宮地さんが二丁の銃口を突き付けてくるのでそう答える他なかった。
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