何かあったら直ぐに言ってね

「チッ…」

「ふんんんん!!」

「いや、今ここで筋肉使わなくていいんだけど…」

「オレにはラッキーアイテムがあるから怪我などあり得んのだよ」

「(何かこのメンバー不安なんだけど)」

 Aチーム:花宮、根武谷、伊月、緑間、春添

「宜しゅう」

「楽しみだね」

「楽しむ所じゃないッスから!」

「室ちんズレてるよ〜」

「(何か緩過ぎる気がします…)」

「ワン!」

 Bチーム:今吉、氷室、高尾、紫原、黒子、2号

「あんな気持ち悪い怪物に会わねえといいがな」

「何で春添さんと離れさせたんだ…!オレが守ろうと思っていたのに!」

「(異色メンバー…)」

「怪物は撃ちまくっていいんだよね?」

「そうですね…弾の無駄遣いに注意してもらえれば」

 Cチーム:笠松、森山、若松、原、赤司

「取りあえず、一回目の探索という事で5人ずつに振り分けてみたが…」

「春添がいるAチームですが、かなりリスクが高い事は承知で言います。一階の探索をお願い出来ますか?」

 大坪さんが分けられたチームを見て腕組みをしながら不安要素が少しでもあるのか難しい顔をしている。赤司君が気にしているのは、強いと言えど女子であるあたしがいるにも関わらずリスキーな場所へ向かわせる事のようだ。安全区域がないからこそ、ヒントが多く隠されているかもしれない。不安はあるが、大丈夫だろう。

「オレ達は構わないけど…春添さん。大丈夫か?」

「はい。無理そうだと判断したら戻って来ます」

 伊月さんの問いに頷く。戻る選択肢があたしの中にあった事で安堵したのか赤司君が微笑む。話し合いの結果、花宮さんがAチームのリーダーになったので彼の指示も必要だろうけど、妖関係はあたしの指示で動くので上手く連携を取らなくちゃいけない事を自分の中で留めておく。

「伊月君。春添さんは女の子なんだから、しっかり守ってあげるのよ。頼んだわよ」

「ああ。わかってるよ」

 相田さんが同じチームメイトの伊月さんに話し掛けあたしの事を見ながら話すので少し気恥ずかしくなり俯く。

「にしても…何で2号まで連れて行くの?」

「犬は幽霊が視えるってよく言うじゃないですか。僕のサポート役です」

「ワンッ!」

「「そういう意味かよ!つか視えなかったらどうすんの!?」」

「頼むから無茶すんなよ…」

 そんな相田さんが視線をBチームに向けて、唯一の動物である犬のテツヤ2号君?を心配そうに見た。それに対し黒子君はあっけらかんとそんな事を言って火神さん、小金井さんからツッコミを頂戴していた。日向さんはキャプテンとして、先輩として心配なのか不安そうに呟いた。

 確かに犬や猫の目の機能は人間と違うので視えやすくなっているのは本当らしい。このワンちゃんの場合は、未だ廊下でふわふわ浮遊しながら空中散歩を楽しんでいるあの妖の方を視ている様子は見受けられなかったけど。でももしかすると視ないようにしている賢いワンちゃんなだけかもしれない。

 一人で悶々と思考を巡らせていたが、先程気を遣ってくれた相田さんの方を見ては忘れないうちにと進言しておく。

「相田さん」

「ん?何かしら」

「桃ちゃんと一緒にいると安全なので、もし怖い事があった時は彼女の近くにいて下さい」

「え?」

 急に進言され目を丸くしている相田さん。あたしはその様子を視認しながら桃ちゃんに視線を移して言葉を続けた。

「桃ちゃんも、一緒にいるだけで大丈夫だから守ってあげてほしい」

「…うん。わかった!」

 桃ちゃんは僅かに顔に力を入れてしっかり頷いた。そんな責任を負うような表情をしなくても大丈夫なんだけど、こんな状況だし気を引き締めたのかな。もしくは桃ちゃんくらいの可愛い子なら殆ど守られる立場だろうから、頼られて嬉しいとか。
 何にしても、桃ちゃんみたいなしっかりした子なら安心だ。

「でもどうして桃井さんと?」

 相田さんが気になっていたらしい疑問を投げ掛けてくる。あたしは桃ちゃんから視線を戻して答える。

「桃ちゃんは桃の印で加護されています。古来より桃には邪気を払う力があると言い伝えられていて、その為妖は桃を嫌うんです。さっき妖が桃ちゃんを視て近付きたくない存在だと話していましたが、それくらい強力なんです。あたしにも桃ちゃんの周りに柔らかくて温かい桃の印が視えます」

 印というか、わかりやすく言えばオーラのようなものだ。柔らかくて温かい、それでいて強力な桃の印。彼女自身に霊感はないだろうが、生まれつき桃の加護によって安全な暮らしを保障されている。ちなみに結婚して名字が変わったとしてもこの加護は彼女を一生守り続ける。

「成る程ね」

「あ、だからあの時“桃井さんだからね”って言ってたんだね」

「そうそう」

 妖と会話する様子をバッチリ見ていたらしい桃ちゃんも納得する。今だから納得してもらえたけど、あの瞬間は誰と話してるかわからないし言葉の意味もわからなかっただろうから本当不気味だっただろうなと今更ながら思う。怖がらせて本当にごめんね桃ちゃんや。

 納得してもらえたところで、出発するらしい。あたし達Aチームは一階。Bチームは二階。Cチームは三階に行く事になっているので各々武器を持って準備を始めた。
 一番霊感の低い黒子君がいるBチームを待機組がいる二階にしたのは赤司君の考えだろう。あたしが指揮を取ったとしてもそうしてる。何もない事を祈るばかりだ。
 あ、フラグになってないよね?あれ。この発言が既にフラグ?

「皆さん気を付けて下さいね」

「天使に見送られる日が来るなんて…春添さんと離れたけど幸せだ!」

 森山さんは軽いなと思った瞬間でした。
 そんな森山さんを笠松さんが足蹴にして、あたしは桃ちゃんにずっと背負っていた鞄を預けて鉄パイプを手に持ちAチームに歩み寄った。










 Bチームは二階の奥の散策へと向かい、あたし達AチームとCチームは階段の方へ向かって歩いて行く。妖はあたしが動き出したのを見て何も言わずともついて来るようで隣を浮遊している。
 何とも遭遇する事なく階段へ辿り着き、あたし達は下へ、赤司君達は上へと上がる。

「気を付けろよ」

 笠松さんの言葉に頷き返し、あたしと花宮さんが先頭で階段を降りた。後ろに続くのは緑間君と伊月さん、最後尾に根武谷さん。ガタイのいい方なので妙な安心感があるのは気の所為だろうか。

「何かあったら直ぐに言ってね」

 隣の花宮さんが声を掛けてくるので見上げると、にこりと微笑んでいた。あれ?この人霊感の話してる時に鼻で笑っていた人だよね?チーム編成の時に舌打ちしてた人だよね?
 あたしが目を瞬かせ多重人格?と違和感を感じていると、花宮さんは首を傾げた。

 おやおや…怖い怖い。

 久しぶりに喋った妖は口元を袖で隠しながら戯けるように言った。その言葉で何となく今吉さんと同類だと理解し、蟠りが取れた。

「普通でいいですよ。別に隠さずとも」

「何がかな?」

「今吉さんと同じニオイがします」

 そう言えば花宮さんは一瞬目を丸くして、フッと笑った。

「つまんねえな」

 何だそりゃ。あたしをからかうつもりだったのか。
 妖同様怖い怖いと思いながら、階段をあと一段残して降り切る前にあたしの足が止まった。

「…どうしたのだよ」

「…いや、何か」

 雰囲気がもう駄目っぽい。

 後ろの緑間君が足止めされた事で怪訝な声色で聞いてくるのでそう言葉を続けようとして、あたし暗い廊下の奥へ視線を向ける。
 二階三階と比にならないくらいの空気の重さを感じる。怨念、禍々しい気配、執念…そんなのが混ざり合って空気を作ってるような。これはナースステーションがないのも頷ける気がする。

 それを感じ取っているのはあたしだけじゃないようで、隣であたしに合わせて足を止めた花宮さん、伊月さん、根武谷さん、そしてあたしの視線の先を追うように奥へ目を向けた緑間さんも僅かに息を飲んだ。

「…最初に一階にいた時、こんな感じだったか?」

「…いや。こんなに空気が重いとは思わなかったのだよ」

 最初に一階からスタートした二人が声を揃えて空気が変わっている事を告げた。その変化は何かが此処で起こっている、もしくは起こる事を示唆しているようだった。

 その時、廊下の奥にぼうっと白い影が浮かび上がってきた。あたしが瞬きをするとその影は濃くなり、その場でゆらゆら揺れている。目を凝らせば、白いワンピースを着ている髪の長い女性だった。
 隣で妖が目を細める。

 私が視えるの?人の子…

 その言葉を聞き取った瞬間、あたしの体がグンと引き寄せられるように浮き上がって階段から離れた。

「っ!?」

「春添!?」

 私を引き込んだのは、お前?

 緑間君の声が聞こえる中気付けばあたしは仰向けに寝転がっていて、その上を血走った目をした女が跨り怒りの形相であたしを見下ろしていた。

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