上が五階までならな

【黄瀬side】

ピンポーン

ザザッ…

《…だから悪かったって言ってんじゃん…先程、三階のボスが倒されました。三階攻略おめでとうございま〜す。程々に頑張って下さ〜い。…私だって休憩したいわ本当マジで…ゆっくり攻略してくれよ…早いわ…》

ブツッ

 不意にまた放送が鳴った。かと思えば変な呟きが聞こえて、その後に今のタイミングで三階をクリアした事を告げられた。最後にも何か言ってた。
 その内容に目が点になる。今更?っていうかあの感じじゃ放送するのを忘れてた感じじゃん。しかもマスターとかいう人の他に誰かいるっぽくてその人(か定かではないが)に指摘されて拗ねてる感じじゃん。口調ってかテンション違うけどさっきのマスター本人なんスよね?

「休憩していたから放送し忘れたんでしょうか」

「そんな感じっスよね〜」

 黒子っちの言葉に思わず苦笑しながら頷く。こんなゲームを作ったかと思えばあんな抜けた感じもあって、一体どんな奴がマスターを名乗ってるんだろうと疑問が膨らんだ。

「素敵な殿方…まあ確かに筋肉質でイケメンだったから納得は出来るけど…」

「あのオカマは男なら誰でも素敵とか言いそうだけどな」

 何かぶつぶつと呟いている春添さんに青峰っちが近寄って話し掛けた。何の話かと青峰っちに聞けば、三階にいた怪異が三階のボスは素敵な殿方と言っていたから春添サンが納得してるってだけの事らしい。
 あー、そういえば最初ら変の情報交換の時に言ってた気がするっスね。

「何にせよ、無事に三階もクリアしたって事だな!」

「後は二階と五階か…五階から上はまだ誰も行った事ないよな?」

 小金井サンと土田サンに周りの人が頷き肯定する。

「この流れでいくと碧ちゃんのクローンを含めて、残りの四神のクローン二人がそれぞれのボスでしょうか?」

「上が五階までならな」

 桃っちがそう言うと、今吉サンがそう呟いた。四階は今の所見当たらないし、取りあえずあるとわかっている二階と五階をクリアするのが妥当っスよね。

「二階と五階の探索に行くか」

「じゃあオレは春添ちゃんと五階な〜。霊感覚醒を目指して!」

「勝手に決めるな高尾。春添はずっと出突っ張りだ。休ませてやる事も必要なのだよ」

 大坪サンがそう言うや否や、高尾君が春添さんに一方的に肩を組んで断言する。勝手な物言いに春添さんが文句を言うかと思ったけど、意外にもそれを咎めるのは緑間っち。

「ありがとう緑間君。大丈夫だよ。これくらいで根を上げるような柔な体作りしてないから」

「大丈夫じゃないでしょ?無理しなくていいのよ」

「けど春添さんがおらな解決せん事もありそうやでなァ…ワシも春添さんには五階に行ってみて欲しいのが本音や」

 実渕サンが心配そうに声を掛けるが、この場で戦う実力が一番あるのは春添さんだし、今吉サンの言葉に納得したようで渋々口を閉じる。

「じゃあ高尾君が五階に行くなら私は二階の探索をするわ」

「え!じゃあリコさんが行くなら私も行きます!」

 桃っちも相田さんと一緒に行くと言う。春添さんに守ってあげてって頼まれてたし使命感に駆られている部分もあるみたいっスけど、その気持ちを汲み取り桃の印がちゃんと発動する事にも賭けて赤司っちは許可をした。

 話し合いの結果、二階には相田さんと桃っち、岩村サンと葉山サン、そして赤司っち。五階には春添さんと高尾君、木村サンと氷室サン、そして大坪サンが行く事になった。
 赤司っちも出突っ張りだけど大丈夫っスかね。

「お気を付けて」

「無理そうなら直ぐ戻って来て下さいっスよ!」

「ああ」

 黒子っちやオレ達に見送られて、2チームは出発して行った。










【赤司side】

 先頭に岩村さんと葉山が並び、その後ろに女性陣が続きオレが最後尾で歩く中。ナースステーションから大分離れ、曲がり角をいくつか曲がる。この施設は結構屈折していて、覚えられないわけはないが怪異の仕業により迷う可能性も否めない為警戒しながら進む。

「漸く来てくれたのね」

 廊下に凛とした声が響いた。その声に立ち止まると、暗い廊下の奥からドアが開く音がし、足音が近付いてくる。

「っ、伏せろ!!」

 すると奥から何かが飛んできて、飛んでくる前に気配を感じ取った岩村さんが声を上げると同時、岩村さんは葉山の、オレは相田さんと桃井の頭を押さえてソレをギリギリで避けた。
 奥の壁に刺さったその正体は矢。飛んできた豪速の矢を避けられたのも、放った奴からの(恐らく)殺気を感じ取った岩村さんのお陰だ。賞賛を送りたい。

 姿を現したのは女子生徒。ブレザーの制服を身に纏い、弓を手に持つ彼女は恐らく最後の四神。

「お前が朱雀だな。南の武道家、夏富朱親なつとみあけちか」

「弓道…」

 岩村さんが気付かなければ誰かに矢が突き刺さっていたかもしれない。相田さんが青ざめて、彼女の手に持つ弓矢を見て呟いた。

「ええ、そうよ。お会い出来て嬉しいわ。青龍はいないのが残念だけれど」

 小柄な体格で、ふわりと微笑む夏富のクローン。オレは彼女を見て違和感を感じた。葉山も違和感があるらしく、眉を顰めて首を傾げている。

 何の違和感か考えていると、葉山が軽い身のこなしで一瞬にして夏富に近付き、スカートの中に手を突っ込んだ。…手を突っ込んだ?

「やぁんっ!」

 突然の奇行に叫んだ彼女は顔を真っ赤に染め上げて素早く後退し、距離を置く。葉山は何をしているんだ。急にそんな事をしたら犯罪だぞ。遂に頭のネジでも飛んでしまったのか。

「な、何するのよ!?」

「やっぱり!!!」

 桃井と相田さんが非難の目を向ける中で、何やら確信めいた事を叫んだ葉山は嬉々とした表情で振り返る。この後の言葉がなかったら完全なる変態で処理をされていたな。

「赤司!!コイツ男だ!!」

 わかったから手をワキワキさせないでくれるか。
 どうやら違和感の正体は、彼女…いや、彼が所謂“男の娘”だかららしい。

 触って本当に女性だったらこの場にいる女性全員を敵に回していたぞ。春添もこの話を聞けば彼女も当然敵に回るだろうなとぼんやり考えた。

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