持ってましたっけ!?
【桃井side】
急に体が浮いて、見えないナニカに持ち上げられ夏富さんのクローンの方へ連れて行かれそうになったが、リコさんが身を呈して私を助ける為にしがみ付き、気付けば私もリコさんも誰かに抱えられるように浮いていた。
違うのは、さっき私を捕まえていた奴とは違うという事。
リコさんはその直後、ナニカが視えているように視線を私や他の人ではなく、一点を見つめたり辺りを見渡したりやや挙動不審だ。
「り、リコさん…?」
「え!?あ、大丈夫!」
まだ何も言ってないのに大丈夫だと言い切った彼女に目を丸くさせる。
その間に体は下へとゆっくり降ろされ、床に足を着く。
「桃井、相田さん!」
声に反応して振り向けば赤司君が揺れの収まった床にしっかりと立ち、持って来ていた銃をこちらに向かって構えている。その光景に撃たれると思ってドキリとしたが、顔を少し動かしその場から下がるように指示を出すのでリコさんの腕を引いて壁側に下がる。
すると直ぐさま私達のいた床に向かって数発打ち込んだ。
「っ!!」
途端に床が大きく波打ち、静かに盛り上がりが引いていく中で両耳を塞いで音を遮断するリコさんに驚き肩を支える。
「え!?大丈夫ですか!?」
「うっ…平気よ、大声に吃驚しただけ」
大声とは?と疑問符を浮かべていたが、赤司君が自分の方へ来るように声を掛けたので一緒に退避する。
「葉山!岩村さん!」
「ん!?」
「二人も一度こちらに引き返して下さい!」
「えー!?」
何で何でと文句を言いながら葉山さんが足早に戻って来て、岩村さんも逃すまいと夏富さんの放つ矢を避けながら戻って来た。
「何で呼んだんだよ赤司」
「床に妖が隠れている。まずはそいつを倒さない限りこの場では有利に勝てない。夏富は体術も嗜んでいるようだが今までの四神よりは強くはない。飛び道具を使う事が難点だったが、岩村さんはものともしていないし大丈夫だろう」
「作戦はあるの?」
夏富さんがこちらに弓矢を構えている姿が見える。岩村さんがいつ射ってきてもいいように警戒してくれているから大丈夫かもしれないけど、もしもの時の為に私も警戒しておく。桃の印はさっき発動してくれたけど捕まった時は発動しなかった事で不安もあり、私の意思で操作出来ない事が少し悔やまれるが。
また狙われた時はどうか発動しますように。
「妖はオレと…相田さんしか視えない」
「え!?リコさん視えるようになったんですか!?」
「…ええ。ついさっきね。経緯はまた後で話すわ」
だから挙動不審だったのか。赤司君の言葉に私達三人が目を見張る。
「だからオレと相田さんで倒す。桃井はオレ達が妖の相手をしている間、攻撃が来たらさっきのように防いで欲しい」
「でも私…意図的には、」
不安が一気に募りわしどろもどろとすると、赤司君は優しく微笑んだ。
「大丈夫だ。お前になら出来るよ、桃井。誰かを守りたいという気持ちがあればな」
その赤司君の言葉がストンと胸に落ちた。
守りたい、私はこの場にいるみんなを。
この場だけじゃなくて、この世界に来たみんなを守りたい。
そう思うと、胸と手がじんわり熱くなった気がした。
「…桃井さん、あのね。私を庇った時は矢を射たれて確実な悪意があったから弾いたんだけど、桃井さんが連れられた時は悪意が不確定だったから守護が間に合わなかったんだって」
「え?」
「桃の印の守護者がそう言ってるわ」
桃の印の…守護者?首を傾げていると相田さんは苦笑して詳しくは後でねと言う。
「だから次はあなたの意思があれば大丈夫よ」
真っ直ぐ私を見つめて言う相田さんの言葉にも、胸は熱くなりやる気が伝わるようにしっかりと頷き返した。
「相田さんも、協力してもらえますか?」
「…ええ、私に出来るなら」
恐怖心がないわけない。でもリコさんもしっかり頷いた。
「岩村さんと葉山は、妖を倒した後直ぐに夏富を倒して欲しいです。弱点はさっき観察してわかりました」
「ん!了解!」
「わかった」
そして私達は赤司君から作戦の流れを聞いた。
「作戦会議は終わった?待ってあげたんだから感謝しなさいね」
話を終えて対峙する私たちに向かって、キリキリ、と弓を引く夏富さんは口角を上げた。
夏富さんの足元の床はゆらゆらと蠢いていて私には床がただ動いているようにしか見えないが、床に潜む妖が視えている赤司君とリコさんは睨むように見据えている。
リコさんは一歩踏み出し、ドンッと武器を床に着いて構えた。
それは碧ちゃんが愛用していた刺股だった。
「…え!?それ何処から出したんですか!?」
「オレが持って来たやつ!」
「持ってましたっけ!?」
まさか此処でツッコミ役に回るとは思わなかった。そして此処でまた刺股が活躍するとも思わなかった。
38/50
←|→
BACK/
TOP
ALICE+