あんたらが本物っていう証拠は?

【黒子side】

 今僕達は後ろ手状態で縛られています。そして僕達の前には赤司君がいます。

 たださっきとは違うところは、特徴的な赤い瞳が真っ黒になっているという事。白目部分も真っ黒なので怖いです。

「嗚呼、本当におかしい。こんな簡単にまんまと騙されるとは」

「何だよ赤司じゃねえのかよ。誰だテメェ」

「教える義理はない」

 どうやら僕達は偽物の赤司君についてきてしまったようです。

 急にゾンビのいる奇妙な所(予測廃病院)に連れてこられて襲われそうになったところを中学時代の信頼の置ける主将に救世主の如く助けられ、本人と比べおかしい点がなければ安堵から気持ちは緩み警戒心も薄くなってしまうのも無理はない。と、自分に言い聞かせる。
 そう思えるのもこうやって無事だからこそで、笑っていられる状況ではないのですが。

 二度も同じ手は踏みませんけどね。次からは絶対に間違えないように警戒しながら細心の注意を払って見極めたいと考えている所存です。それもこれも、この人から逃げる事が出来ればの話になりますが。

「チッ…偽物かよ。騙しやがったな!」

「いや、のこのこついてきたお前も悪いぞ」

 青峰君の発言に対してそう冷静に言うのは、同じく縛られている笠松さん。その隣には氷室さんもいて、この状況に苦笑している。
 笠松さんが“お前ら”ではなく“お前”と言ったので僕に気付いていない為、僕もいますと声を掛けるとやはり吃驚された。

「此処には本物と見分けが付きにくい偽物がいるという事はわかりました。この失敗を無駄にはしない」

「カッコイイように言ってっけど、此処で死んだらおしまいだぜ」

「ところでお二人は何故此処に?」

「無視かよ!」

 笠松さんの話は勿論聞こえていたが余裕がない所為かちゃんとした受け答えが出来ず、頭に浮かんだ事を質問すると少し青筋を浮かべて怒っていた。すみません、許して下さい。

「オレ達は元々この部屋にいたんだ。目を覚ましたら笠松さんがいて、話している時に赤司君に扮したコイツが来てね。僕達も赤司君だと思って気が緩んだ隙に捕まってしまったんだ」

「そうですか。…他にも誰かいるんでしょうか…」

 成る程。そう思って頷きぼんやりとそう呟くと、青峰君が笠松さんと氷室さんを見ながら尋ねた。

「あんたらが本物っていう証拠は?」

「そんな事言ったらお前らもだろーが」

 青峰君の質問も笠松さんの言葉にも納得出来る。疑い出したらキリがないが、一度こういう事が起こってしまったらどうしても疑ってしまう。
 少し剣呑な空気になり始めた時、今まで黙ってやり取りを見ていた偽物赤司君が口を開いた。

「お喋りはしまいだ。少し黙っていろ」

 何かを探るように室内やドアの方へ視線を何度も向ける偽物赤司君。また僕達みたいな人を捕まえようとしているのか。

「オレ達をどうするつもりだ」

「その時の気分だな」

 何とも適当な言葉に、質問した笠松さんが眉を寄せる。でも喋るなと言われても喋っているのに対し、何もしてこないし怒ってこないのは寛大な心を持ち合わせているからか、また別の意味があるのか。

「あなたは何故赤司君に化ける事が出来るんですか?」

「(この状況でよく色々聞けるな)」

 そこで僕も質問を投げ掛けてみると氷室さんが苦笑しながら見ていて、偽物はやはり怒る事はなく僅かに口角を上げながら話し出した。

「情報は一通りもらっているからな。貴様は幻の六人目の黒子テツヤだろう。普段は極端に影が薄いらしいが、怪異であるオレ様達には問題ない」

「情報をもらったって、誰にだ」

「それは」

 ピンポーン

 笠松さんが質問を投げ掛けた話の途中。スピーカーから突然音が聞こえた。

《これより、S.O.Tエスオーティーゲームを始めます》

 低いモザイク声が古いスピーカーから流れた。古いので所々音にノイズが入っている。

《参加者の皆様は私が選抜した上で勧誘致しました。強制参加ですので皆様に拒否権はありません。このゲームの世界の事、参加人数、敵キャラの数等はご自分達で調べ、お考え下さい。ゲームクリア、つまり脱出する為には各階のボスキャラを倒す必要があります。尚、命の保証は致しませんのでご了承下さい》

 その思わぬ理不尽な言葉にみんなの眉が吊り上がる。

《無事にゲームクリアが出来れば、ゲームマスターである私の元に招待しましょう。そこで話なり文句なりお聞き致します》

 モザイクの声なのでわからないが、やや楽しげに弾む様子が聞き取れる話す調子なので、僕は単純に愉快犯かと思った。でもゲームの世界に引き入れるって、非現実的な事なので困惑は拭えない。

《一つ助言するならば、簡単にクリア出来ると思わない事です。それでは、皆様のご武運とご検討を祈ります》

 そして危険を示唆するような言葉を残し、スピーカーはブツリと音を絶ってしまった。

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