誰からにする?
【黒子side】
放送中、一つも情報を聞き逃す事のないようにと全員が黙って聞いていて、終わると青峰君は盛大に舌打ちをする。
「…君がこの階のボスかい?そして先程言い掛けた情報をもらった相手というのが放送していたゲームマスターという事かな」
「そう。此処の階のボスはこのオレ様だ。そしてオレ様の主人はゲームマスター。あの方にお仕えしている」
何者か言わないんじゃなかったのか。そう細やかなツッコミを心中呟く。
偽物からすればゲームマスターが自分の仕えているリーダー。そのリーダーが思うままに事を動かそうとしている事やこの先の出来事を想像してか、偽物は楽しげに微笑んでいた。そんな偽物に問い掛けると、体を僕達の方に向けて鼻を鳴らす。
「さて。聞いた通りお前達はゲームクリアを目指さなければならない。しかしオレ様に捕まってしまった。さあ、この状況をどう打破する?その状態では動けまい」
後手に縛られているだけだが、壁に深く突き刺さる錆びた鉄パイプに括り付けられているので、そう簡単には動かなさそうだ。
「オレ様に喰べられたいか?或いはこの建物内を彷徨く奴らに喰べさせるか?ああ、此処で死なない程度に甚振ってやるのもいい」
貴様らの足止めは仕事ではあるがこの弱さでは暇潰しにしかならん。そう言った偽物は段々と牙を剥いてきて、赤司君の面影がなくなってきた。
「誰からにする?」
そう言って僕を見た偽物は、黒い目を爛々と輝かせてニヤリと大きく開いた口を歪ませた。
「貴様からにしようか。黒子テツヤ」
見た感じ幽霊ではなく怪物だからか、青峰君は臆する事なく僕を庇うように前に出た。
その時。
ドガァン!!!
突如締め切られていた錆びたドアが蹴破られたように、大きな音を立てて吹っ飛んだ。部屋の奥にまで飛んでいき、壁にぶち当たって床に無残にも転がったドアを見てから、吃驚して全員がドアのあった方に意識を向ける。
「ボスってあなたの事ですか?」
埃が舞い上がり土煙が起こる向こう側からジャリッと塵を踏む足音が聞こえ、姿を現したのは黒のセーラー服にベージュのカーディガンを着た少女。髪をふわりと靡かせ部屋に入ってきた。
僕はその姿を視認し、驚きから目を見開いた。
「あなたは…」
「…ほう、貴様か。知っているぞ貴様は」
偽物は面白そうに口角を上げ、僕の名前を知っていたように彼女の名を当てようとした。が、しかし。話し終えるまでに彼女は持っていた物を振り回し、偽物の顔面を殴り飛ばした。
ドアが飛んで行った方に同じく飛ばされ壁に激突する偽物。僕以外の三人は状況が飲み込めず唖然とした。僕も状況を飲み込んでいるわけではありませんが、この方には見覚えがあった。
「質問に答えて下さい。この階のボスは、あなたかって聞いてるんですよ」
そう言った彼女は無表情に冷めた目をして、偽物のいる方を睨んだ。そして振り回した武器にしているであろう物を肩に担ぎ上げた。
「春添さん…」
「あ?」
「春添碧さんですよ。青峰君、覚えてませんか?」
僕が彼女の名前を呟くと青峰君が怪訝そうな顔をしながら僕を見る。すっかり忘れているようなのでフルネームで伝えると、漸く思い出したのか「あ」と声を漏らす。
「あれか。帝光のドラゴン」
「…その呼び名はやめて下さい」
思い出したように言った呼び名にすかさず反応した彼女、春添さんは怪訝な顔でこちらを見たが、青峰君(と一応僕)を認識すると僅かに目を見開いた。
僕は彼女の反応よりも、彼女の持つ偽物を殴り飛ばしたであろう武器が、学校などで防犯用に設置されている刺股だった事に唖然としていた。
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