もう大丈夫かもしれないじゃない
【黄瀬side】
赤司っち達は今五階に行って春添サンのクローンと戦ってるはず。オレ達は閉じ込められている三人を見付ける為にボスのいなくなった階を虱潰しに探す事になった。今は一階から回っているが、一階は唯一ナースステーションがない階。安全圏がないから此処になるべくなら近寄りたがらないとオレ達が考えるのではないか、とゲームマスターが考えてそうだと相田サン達が言ったのと、一階の探索をちゃんと出来てないからっていうので一階から探す事になったんだけど。
さっきから何が気になるって、薄暗い中から何が出てくるかわからないって事とか急にそこの部屋から怪異が飛び出てきたらちゃんと倒せるかとかって事じゃなくて…隣の青峰っち。
「…青峰っち」
「あ?んだよ」
「近くないっスか?」
「あ゛?…近くねーよ廊下が狭いんだから仕方ねーだろ」
「いやそんなに言う程狭くない…」
中学の頃に入ったお化け屋敷での事を思い出す。ビビってる桃っちをオレと青峰っちが笑ってたけど、緑間っち達曰く青峰っちもビビってて誤魔化す為に桃っちをからかってたとか言ってた。その時そうなのか…と曖昧に思ったけど、今ならハッキリ言える。
青峰っち超怖がってんじゃん。
自分と同じくらいのタッパの奴にこんなに近寄られても全く嬉しくない。それが尊敬する青峰っちであったとしてもだ。
肩が触れ合う程の距離にいる青峰っちの体を押し返した。
「あーもう!暑苦しいっスよ!離れて青峰っち!」
「な!?テメェ言い掛かりはやめろよ!オレがいつテメェに引っ付いたんだよ!?」
「今っスよ今!!なう!!」
「お前らうっせえぞ!!」
「いや日向も煩い」
グイグイと押し返してると青峰っちは青筋立ててオレの腕を掴んで止めさせようとする。そんなに必死にならなくても、と思うけどどんだけ怖いんだよとかこんな大きい体して心は繊細なんだとか思うと笑えてきた。
青峰っちは怒ってるけどオレは半笑いで押し合いってるとそれに痺れを切らせた日向サンが怒った。伊月サンに指摘されてるけど。
「ちょっと、怪異が寄って来ちゃうでしょ。静かにしなさいWおバカ」
「「Wおバカ!?」」
何スかそのあだ名!と憤慨してると相田サンは振り返って言った。
「赤司君と笠松さんが探索前に二人が騒いだら容赦なく叱っていいって言ってたのよ。その時教えてもらったあだ名よ」
「「いやそんな呼ばれ方された事ないけど!?」」
「息ピッタリね」
笠松先輩と赤司っちは何てあだ名付けてくれてるんスか!人が知らない所で!
不服に思っていると、伊月サンと相田サンが急に立ち止まった。
「どうした?」
「何か聞こえた気が…」
「オレにも聞こえた」
視線の先はドアが閉まっている部屋。これまで通り過ぎてきた部屋は何処もドアが開いていて、探索しても何もない部屋ばっかりだった。
薄暗い廊下の中この先にもドアが閉まっている部屋はいくつか見えるけど、霊感が覚醒した二人が言うので目を合わせて頷き合い中を調べる事にした。
「この部屋か?」
「多分…微かに聞こえた程度だからハッキリとはわからないけど」
相田サンがそう言いながら部屋に顔を近付けて耳をすませる。伊月サンも同じように耳を傾けていると、二人が頷き合った。
「やっぱりこの中から聞こえるわ。カチカチって」
伊月サンも頷いたので間違いないらしい。オレ達には聞こえないから、確実に妖だ。
身近に妖と関わるタイミングが来るなんて…と少しの恐怖心と不安と期待で緊張していると、グワシッと二の腕を掴まれた。
「痛い痛い痛い!!え!?何スか青峰っち!」
「オレにも聞こえた気がする」
「青峰っちの場合本当に気がするだけだから大丈夫だと思うっス」
「お前…オレはお前らが思ってるよりナイーブだぜ」
「開き直ってるじゃない…」
散散オレに勝てるのはオレだけとか言って弱味を見せてこなかった人が言ったとは思えない言葉だ。っていうか、それ幽霊怖いって認めてるようなもんスよ、わかってんスかね。相田サンは呆れた感じで呟いたが、色黒で周りが薄暗い中でもわかる青ざめた顔を見て相当キているようなので相田サンもオレもそれ以上は何も言わない事にした。
部屋に入って妖が視えたら霊感覚醒って認めてあげよう。そう思っていると、日向サンが緊張の面持ちで目配せをする。
「よし…開けるぞ」
緊張感が伝わるピリッとした雰囲気の中、流石誠凛の主将と言うべきか率先してドアを開けると言った。鍵が掛かっていたら開ける方法を考える必要があるが、まずは開くかの確認。
誠凛の二人が頷き返す中で各々武器であるナイフを取り出し構えるので、オレも青峰っちを引き剥がして担いでいた刺股を手に持つ。青峰っちにも目で促せば渋々といった様子で、持っていたライフルを構えた。頑張れ青峰っち。三階で気持ち悪い怪異見たんでしょイケるっスよ。
日向サンがドアノブに手を伸ばし掴もうとした瞬間、バチッと電気の音がした。
「っだあ!!?」
「え!?」
「日向どうした!?」
日向サンの声に全員がビクッと肩を上がらせ、声を上げた本人は顔を顰めて手を摩っていた。
「静電気…」
「…ちょっと伊月君も開けてみて」
「え!?」
「もう大丈夫かもしれないじゃない」
まさか指名されるとは思わなかったらしい伊月サンが吃驚しながら相田サンを見るが、にっこり笑みを返されて引き攣った顔で仕方なしに手を伸ばす。
バチィッ
「ったい!!」
「うーん…わざと入れないようにしてあるのかしら」
チームメイト二人が静電気で痛がっている様子を見ながら冷静に考えている相田サン、流石誠凛の監督。
にしても薄暗い中で部屋に入ろうとしてドアノブから静電気って…。
「ガ◯使かよ」
「オレも思ったっスけど青峰っち、シッ」
ゲームマスター、年末の特番ファン説浮上。
ドアノブを触ろうとすれば静電気被害に遭うという事で誰もそんな地味な攻撃受けたくないと進んで開けようとする人が出なくなったが、じゃんけんで決めて負けたオレが静電気に耐えながら開けるという事になった。最悪。
「はぁ…いくっスよ」
静電気がくるとわかっていて触るとか怖過ぎ。よくバラエティであるけどその恐怖心が今ならわかる。
ビビりながら恐々手を伸ばし、意を決して目を瞑り勢いよくガシッとドアノブを掴んだ。
「「……」」
「…あ、大丈夫っス。開くっスね」
全然バチッとも何ともなく掴めてしまった。何もないとわかって拍子抜けしたが、目を開けて冷静にドアノブを捻れば開いたのでそう伝えれば、日向サンと伊月サンから恨めしい目を向けられた。だって仕方ないじゃないっスか何もなかったんスから。オレの所為じゃないっスよ。
多分ゲームマスターはオレ達が翻弄されるこんな様子を見て楽しんでいるのかも、と思うと腹が立つが、開くとわかったので気を取り直し改めて緊張感を持ってこのまま勢いよく開ける事にした。日向サンも武器のナイフを取り出し構えている。
「…せーのっ!」
オレがドアをバンッと豪快に開け、青峰っちはライフルの銃口を部屋の中に向けて誠凛の三人もナイフを構えながら部屋へ入った。
部屋の中は四隅に蝋燭の明かりが灯っていて少し明るい。真ん中にベッドが一つあるだけで、何の変哲もない部屋だが、相田サンと伊月サンが目を見開いた。
「何か視えるのか?」
「…ええ。ベッドの上に、多分…虹村君」
相田サンの言葉を聞いてオレと青峰っちは目を丸くさせた。虹村先輩ならオレ達にだって見えるはず。でも部屋の何処にもいない。青峰っちも探すように部屋をぐるりと見渡していた。
え?ちょっと待ってよ。何でオレ達に見えなくて相田サンと伊月サンには見えてんの?オレ達が見えないって事は…。
「お、い…それって…」
状況を理解したらしい日向サンが冷や汗を滲ませながら詰まる声で口を開くと、伊月サンが同じように冷や汗を滲ませ眉根を寄せながら認めたくない事実を突き付けた。
「…虹村君が、妖」
それって、死んでるって事っスか?
45/50
←|→
BACK/
TOP
ALICE+