FOR YOU
オールと対人恐怖症がホラゲ

「…面倒やなぁ」

 今吉がポツリと呟いた。それに対し赤司が眉を顰め、花宮が舌打ちをする。
 頭脳派の三人の様子に周りの者達は困惑した。

「今吉さん達が苦戦してる…」

「そんなに難しいのかな…」

「ざまぁ…」

「誰や今ざまぁ言うたんは」

 バスケ部に関わりのある、というかバスケ部の選手達とマネージャーが洋館仕様の難易度の高いホラーゲームの世界に招待された。そして強制参加を強いられゲームを進めているのだが、一つひとつの問題が超難問な上に答えに迫るまでに幾つもの妨げや仕掛けをクリアしなければならない。その為今吉が面倒だと言ったのだ。

 それに加え、青白い顔で黒目が極端に大きく口が縫われた幽霊、全身贅肉ダルマで血だらけになりながら追い掛けてくる異物、エイリアンのような怪物も邪魔をしてくる。武器は銃やナイフ等あるが、倒す直前に逃げられるので仕留められずじまい。
 桃井やリコや桜井といった繊細な人達、肝試しやホラー系が苦手な木吉と福田は精神的にも参り始めていた。安全な空間は未だ見付けられていない。何処から来るかわからない恐怖と難易度の高い問題が大きな枷となっていた。

「あ、あの…」

 不意に選手達から離れた位置からか細い声が聞こえた。その声に反応して振り返れば、全員と全く接点のない少女、なまえがいた。誰も接点がないという事でこの世界に連れて来た張本人では、この子の所為で巻き込まれたのでは、敵なのではなど不信感を抱かれ疑心を向けられたのは少し前の話。
 長い前髪で顔を見えにくくし目も合わせず人と話す事に対し恐怖心があるとわかった赤司が、余計な事や怪しい事をしないように見張ると言ったのも少し前。
 そのなまえが恐る恐る口を開く。

「あ、の…わ、私に…任せてもらえませんか…?」

「ああ?」

「ひぃ…!っ、あ、の…私…ホラーゲーム……得意です…」

 青峰がただ聞き返した声に小さな悲鳴を上げたなまえ。名前や学校など根掘り葉掘り聞いたが、ホラゲが得意とは聞いていなかった。怪しい子に協力を求めようとせず大人しくしていて欲しいと思っていたのもあり、なまえの言葉に赤司がやや目を見張る。

「へえ…得意っていうのはどれくらいかな」

「……休みの日や時間があればずっとホラゲに勤しんでます…真っ暗な中でスピーカーを四方に置いてプレイするホラゲは格別です…」

 ふふふ…と静かに笑いながら少し饒舌に話す様子を見て、髪が長いという事もあり幽霊にも劣らないと思った数名がいるのは致し方ない事だ。根暗、と言われても仕方ない。

「だが君には任せられないな。信用出来ない。僕達をゲームオーバーに導く為の罠だとしたら、」

「信用して、もらえるチャンスを…くれま、せんか?わ、私だって…ホラゲは大好きですけど……死にたくない…っ」

 自分の為でもあるんです。そう言って赤司の言葉を遮ったなまえは初めて赤司のオッドアイを直視した。一瞬ではあったが、涙目ながらも強い意思を感じた赤司は面白いと少しだけ口角をあげる。

「…いいだろう」

「おい赤司」

「但し。少しでも不審な動きがあれば容赦しない」

 根武谷が制止を掛けるが赤司は厳しい視線と言葉を向ける。なまえはゴクリと喉を鳴らし頷いた。










 それからは事態が変わった。なまえが率先して進む中で、超難問の問題にも少し時間を要するが今吉や赤司の助言を経てクリアしていき、クリアに必要なアイテムがある場所を直ぐに見付け出しトントン拍子に進み始めた。
 あまりにトントン拍子に進むので、やはり自分達を招いた元凶ではと思う人は少なからずいたが、選手を庇って軽いが怪我はするし、怪物や異物に果敢に立ち向かい鋭い観察眼で弱点を見付け仕留める様子、そしていつでも恐怖心はあり顔色が悪いながらも真剣に前を見据える彼女に心動かされる人も出てきた。

「なまえちゃん。髪の毛結ぼうか?邪魔じゃない?」

「いっ、いや…大丈夫…!」

「前髪目に入って痛くないの?私長い髪はどうも苦手だから凄いと思うわ…あ、悪い意味じゃなくてね?」

「だいだだい大、丈夫でふ!」

「「(だいだだいだい?)」」

 桃井とリコがそのいい例だ。小動物のような反応に庇護欲が掻き立てられているようにも見て取れる。積極的な二人になまえはたじたじだ。
 赤司もその一人だった。というのも、ほんの一瞬の隙を突かれてエイリアンっぽい怪物が噛み付いてきた所を助けたのはなまえ。転んだ拍子に擦り剥いたので、自分の所為で女性に怪我を負わせたという負い目をほんの少しながら感じているのもある。
 なまえは対人恐怖症で人が怖いくせに、心配性故人を心配する優し過ぎる性格をしていた。どう見ても守られる側の少女だが、守る側に回ろうとする自己犠牲精神がどこか気に入らず目で追うようになり、いつの間にか赤司の足はなまえの方へ自然と向いていく。

「なまえ」

「…え!?(名前…呼び!?)」

「次の問題に進もうか。但し、ここからは君が率先していく事はない」

「へ、?」

 話しながらポンと頭に手を乗せた赤司。なまえはビクゥッと肩を飛び上がらせ何をされるかと不安になり涙目になるが、よしよしと撫でる動きに鷲掴みにはされないと理解したようでほっと息を逃した。昔親にされたような優しい手付きに安堵し自然と少しだけ、僅かに目元が緩んで赤司はそれを見た。

「完全に疑いを拭い去ったわけではないが、君の働きに免じて少しは信用しよう」

「はぁ…、あ、あり、ありがとう…ございます…?」

 急に手のひらを返された感覚になり、普通ならこの状況であれば安堵するところがなまえは不安に感じた。
 この人には裏の裏のそのまた裏がある気がする、と。

 そのなまえの思考を読み取ってか、オッドアイが不敵に輝いた。











桜様、三つ目のリクエストお待たせしました!
どうしても私の文才では対人恐怖症=ただのチキンになってしまいます…!お目汚しすみません!少しでも楽しんでもらえると嬉しいです。
素敵なリクエストありがとうございました!

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