FOR YOU
オールと怪我人が無人島サバホラ

 此処は無人島。だが、普通の無人島ではなくバーチャルの世界の無人島。普通ではあり得ない現象が起こり、死すれば即ゲームオーバー。化け物が潜むサバイバルゲームの世界だった。

 急にそんな事を言われても信じられないのは誰もがそう。WCが終わって暫くして、バスケに関わりのある選手達はこの場に連れて来られ、ゲーム参加を強いられた。

 状況もルールも何もわからない状態で世界へ放り出された一同は、みんなバラバラになってしまった。
 そんな中、黒子と火神、降旗と言った誠凛一年組が何とか集合する。

「うわぁぁぁぁ!!?」

「火神君!!」

 気が生い茂る森の中。恐竜のような生物に服の端を咥えら連れて行かれそうになる火神に黒子が手を伸ばす。指先が触れそうなところだったが掴む事は叶わなかった。

「火神ぃぃぃぃ!!」

「やめろォォォォォ!!!」

 喰べられる。誰もがそう思い降旗も福田も腹の底から叫び手を伸ばすが、ヒョイと器用に真上へ火神を放り投げた恐竜が涎を垂らし大きな口を開いて喰べようとした。

 が、大きな口は何も含む事なくバクンと閉じられる。恐竜が空振った感覚に目を瞬かせる。
 河原は一瞬、口が閉じる瞬間に影が通り、火神と一緒に消えたのを目撃した。そして唖然とする。

「え、か、火神…?」

「喰われた、か!?」

 その場にいる四人が目を見開き硬直しながら状況把握をしようとする。すると少し遠くから聞き慣れた声が聞こえた。

「お、オレは此処だ!」

「!? 火神!!」

 黒子達が振り返ると木の枝に登っている火神。その側には紐のような物があって、福田が一見して思った事はターザンの紐、だった。
 恐竜も倣って火神の方を見て青筋を浮かべた。食べようとした奴が消えて生きていたので怒ったのだ。

 地鳴りのような鳴き声を上げる恐竜に黒子達は体を強張らせた。そして恐竜は一歩踏み込み再度襲おうとする。

「こっちだよ」

 不意に女の声が聞こえた。その声の方へ視線を移した恐竜だが、その姿を捉える前に頭を撃ち抜かれた。

 ドガァァァァン!!

 撃ち抜く、と言っても銃ではなく。ロケットランチャー、バズーカと世間一般で言われる武器だった。
 辺りには恐竜の紫色をした血が飛び散り、頭を失った恐竜は力をなくして地響きを鳴らして地面に倒れた。黒子達は飛び散った血を体に浴びて固まる。

「お前ら大丈夫か!?」

「か、火神君…僕は平気です。大丈夫ですか?」

「ああ。何とかな」

 木から降りてきた火神が黒子達に駆け寄る。互いに安否を確認し、そしてバズーカを撃った張本人、少女に顔を向けた。
 そこには小柄な体で大きなバズーカを肩に抱えた普通の少女。黒のセーラー服を着ており可もなく不可もない容姿でこの場には多少不釣り合いだった。

「この世界は、」

「え?」

「危険だから。気を抜けば殺られる。もっと気を張っていた方がいいよ」

 そう言って立ち去る少女。しかしその背中の破れたセーラー服から見えた肌に滲んでいる血に気付き、五人は顔を見合わせて頷き合った。










「…それでこの彼女に助けてもらったと」

「はい」

 あの後直ぐに赤司達洛山と会った。安全確認の済んだ洞窟の中で輪を作り話し合いをしている黒子達と洛山。そして先程の少女。
 少女はブスッとしたような、それでいて少し不安そうな面持ちで正座している。その隣にはバズーカ。やはり不釣り合いだ。

 立ち去ろうとした少女を捕まえ同行を強制した火神。まず第一に怪我をしている事、この世界について知っているような口振りだった事、武器を持っている事、そして命の恩人である事から協力を得ようと五人が目を合わせた一瞬で至った考えだ。
 そして黒子が持っていた使っていないハンカチで傷口を押さえ、自分の服を破り包帯の要領で体に巻き付け応急処置をし、何があったか情報共有を行い今に至る。

 ちなみに、応急処置をする工程の中で肌が結構見えて赤面していたのは黒子以外の誠凛四人。なまえは俯いていたが同じく羞恥から赤面していた事は、本人と正面にいた赤司のみぞ知る。

「君の名前は?」

「みょうじなまえ」

 赤司が名を尋ねると素直に名乗った少女。だが目は合わせていない。明らかな自分達に対する不信感を感じ取り赤司が目を細めた。

「学校は?」

「秀徳高校一年。あなた達は全員知ってるよ。WCに出てたのをテレビで見た」

 まるで自分の身の潔白をするような話し振りにみんなが僅かに目を見張る。

「私は日が昇った回数でいけば一ヶ月くらいは此処にいる。だから戦い慣れているし、ある程度はこの世界の事をわかっている。知ってる情報はあげる。だからもう私とは関わらないで欲しい」

 自分の膝を見つめながら話すなまえを見て実渕と葉山が目を合わせた。仲間になれるかもしれない人達を見付けたとは思えない反応と口振りだ。

「今までずっと一人か?」

「……最初は友達がいた。けど死んだ」

 火神の問いに対して暫し口を噤みなまえが口を開く。“死んだ”。あっさりと紡がれた言葉に黛と根武谷が眉を寄せる。

「さっきの恐竜もどきや口裂け女みたいな化け物に食べられたり、踏み潰されたり。みんな一瞬の隙を突かれてる。だから気張れって言ったんだよ」

 淡々と話す内容は、聞いているだけでも気分を害するものだった。話している本人はどんな気持ちなんだとなまえの様子を河原が窺うと、ゾッとする程無表情だった。

 まるで自分の感情を押し殺しているようだった。

「その傷は?」

「これはさっき倒した大トカゲの尻尾で……、! シッ。静かに」

 葉山の質問に答えようとしたが不意に人差し指を口元に立てたなまえは何かに気付いて目を閉じ集中する。その様子に降旗が首を傾げた。

「……来る」

「何?」

 そう言って立ち上がりバズーカを持って足音もなく洞窟を出たなまえ。その後について行く赤司を実渕達が追おうとしたが、手で制されみんなはその場に残る。

 そして数分後。ドガァァァァン!!と先程も聞いた大きな音が聞こえて、少しして二人が足早に帰ってきた。

「この場を離れた方がいい。怪物がこの周辺に寄ってきてる。私が巻きます。その間に逃げて」

「君は」

 バズーカを抱え直したなまえの発言を遮る赤司。なまえは赤司を見た。

「耳が随分といいようだね」

「…そんな事は今はあんまり関係ない」

「関係あるさ。さっきの話の続きだが、僕達に協力してもらう」

 なまえはその言葉に眉を顰めた。

「…協力したくない。どうせ、裏切られる」

 小さく呟いた最後の言葉を言うとなまえの瞳に影が差し掛かった。それを聞いた赤司と黒子のみが影に気付く。過去に何かがあった事を推測するには充分な様子だった。

「でも僕達もこの世界から出る為に戦う必要がある。君のようにね。その為には武器が必要だ。こんな所で死にたくはないし、脱出してこの世界に連れてきた張本人を見付け話がしたい。僕達が生きて脱出する為に、是非協力してもらいたい。勿論君も一緒にね。それに君は負傷している。一緒の方が生存率が上がるだろう」

 その言葉になまえの瞳が揺れる。赤司はわかっていた。なまえは言い方は突き放すようなものにしろ、優しい心を持っている。そうでなければ黒子達を助けないし、率先して怪物が来た時に出て行くわけがない。
 そして、生きて帰るという目的を口にすれば、慈悲深い彼女なら手助けになってくれると。そう確信しての事だった。

「……わかった。この無人島は広い。安全地帯と思う施設もいくつか見付けた。そこに行けば武器があるし衣食住にも困らない。そこでいいなら今から案内するよ」

「ああ。宜しく頼むよ」

 案内だけして後はずらかろう。そう思いながらなまえは淡々と話し歩き出した。その後ろに一同はついて行き、赤司は面白そうに口角を上げた。

 この後他の選手達とも合流し、直ぐに別れるつもりだったなまえだが、自分を守ってくれるような周りの人達の行動や気遣う声掛けに心が揺れてずるずると関わりを持ってしまう事を、なまえはまだ知らない。











桜様、四つ目のリクエストお待たせしました!
詳細をお送りして頂いていたので案外スラスラ書けました。こんな感じで大丈夫でしょうか?ちなみに火神を助けた方法はターザン方式です。あ〜ああ〜と飛んできてヒョイと助けたんですね(笑)
夢主はきっとこれから心を開いて本当の自分を見せてくれると思います。
素敵なリクエストありがとうございました!

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