FOR YOU緑間とお嬢様系彼女
「パーティー、だと?」
「ええ。今週末にパパの会社主催のパーティーがあるのよ。是非真太郎に一緒に来て欲しいの。征十郎も来るわよ」
帝光中学校にて、二年に進級したキセキの世代達はいつものように朝練に勤しんでいた。桜も散り次は梅雨や夏に向けて季節が移り変わろうとしている時期で、緑間はなまえからタオルを受け取りながら流れ落ちる汗を拭った。
そしてその時になまえの父親が経営している会社のパーティーがあり、それに恋人である緑間を連れて行きたいと突如言い出したのだ。
「オレがか?」
「そうよ。私の自慢の恋人ですもの。パパとママに紹介したいし」
「!? しょしょしょ、紹介、だと!?」
「何驚いているの?」
紹介と聞いて赤面しながら焦り出す緑間になまえは首を傾げた。
「いやいや、挨拶って言われたら誰でも吃驚するっスよみょうじっち」
「そうなの?」
「別に緑間っちが何の考えもなしに付き合ってるとは思わねーっスけど、両親に会うって言われたら緊張するっスよ。まだ中学生っスもん」
黄瀬の最もな言葉になまえは納得し、顎に手を添えながら考え込む。
「そう…結婚まで私もまだ考えられないけど、真剣に交際しているから紹介したかったのよ。でもそれで真太郎に負担を掛けるのは嫌だから、諦めるわ」
納得したなまえは申し訳なさそうに緑間を見つめる。緑間は嬉しい気持ち反面申し訳ない気持ちになって複雑そうな表情を浮かべる。
「みょうじ、一緒に来て欲しい理由をきちんと伝えないと」
「征十郎…」
そこへ赤司が近付いてきて声を掛ける。その言葉にみんな目を丸くし、青峰もドリンクを煽りながら口を開いた。
「理由があんのか?」
「…実はそのパーティーには色んな名家のご子息もいらっしゃるの。征十郎は違うけど、そのご子息達の中から婚約者をそれとなく見繕っておこうっていうパパの魂胆があって…」
「こっ」
「「婚約者あ!?」」
婚約者の言葉に青峰と黄瀬と桃井が食い付いた。その後ろで紫原がのんびり尋ねる。
「中学生なのにもうそんな話あんの〜?」
「まあ、ね。そこで決定になるわけじゃないしあまり気にする必要はないんだけど。パパもママも私の話をちゃんと聞いてくれるし、私が自分で恋人を連れて行けば納得してくれると思うから真太郎に一緒に来てもらおうかなと思ってね」
ちゃんとした理由を聞いて納得したのか、緑間は軽く咳払いをしてからなまえに向き直り答えを出す。
「…そういう事なら、オレでよければ行こう」
「! 本当?ありがとう!」
「婚約おめでとうございます」
「!? 黒子ォォォ!!」
話をちゃんと聞いていたのか、気が早いなどと怒る緑間を見ながらなまえは嬉しそうに笑った。
「…これでいいのか?」
「ああ。よく似合っているよ、緑間」
パーティー当日。なまえの誘いを目の前で聞いていた赤司の計らいで、赤司家で身支度を整えてもらう事になった緑間。
二人共ピシッとしたスーツに身を包み、よく似合っていると使用人に褒めてもらっている。緑間はあまり着慣れない服に少し居心地が悪そうにしながら、パーティーに参加する数時間を問題なく過ごせるだろうかと思考を巡らせた。
「そろそろ行こうか」
「ああ」
赤司の声に頷き、車に乗って二人でパーティー会場へ向かう。赤司の父親は会社から直接向かうとの事で一緒に乗車はしていなかった。緑間は緊張するのでよかったと一人静かに安堵の息を零した。
「着きました」
使用人の声の後、開けられたドアから赤司が出て、緑間も後を追って出た。パーティー会場はなまえの家ではなく大きなホテルを借りて行われるようで、目の前に高くて綺麗なホテルが佇んでいた。
シャンと背筋を伸ばして歩き、時折赤司家のご子息という事もあり声を掛けられる赤髪の彼を見ながら、その慣れた様子に緑間は何故か少しだけ悔しく思った。
「真太郎!」
会場に入って直ぐ、聞き慣れた声が聞こえて振り向けば嬉しそうにドレスを靡かせ少し早足に近付いてくるなまえの姿。綺麗な緑色のドレスを着た彼女は、一言では表せない程に綺麗だと感じた。緑間の頬に熱が集まる。数名伺える周りの同年代の男子達も目を奪われる程だ。
「いらっしゃい。来てくれてありがとう」
「ああ」
「そのパーティースーツ、素敵よ。よく似合ってるわ」
なまえは僅かに頬を染めながらふわりと微笑んだ。その様子と言葉に更に熱は上がる。
「…なまえも、よく似合っているのだよ」
「! ありがとう」
恥ずかしげに眼鏡を押し上げながら褒めた緑間の言葉になまえは驚きつつも目を細めて礼を言った。
その様子を温かい眼差しで見守っていた赤司は小さく微笑み、なまえに挨拶だけしてその場から離れた。
結果から言えば、問題なくなまえの両親に挨拶を済ませる事が出来た緑間。婚約者を探すという目的は確かにあったようだが、なまえから直接紹介された緑間を見て、父親は「ビビッときた!」とかわけのわからない事を言ってから「娘を宜しく!」と熱い握手を交わして涙を流していた。
その様子に緑間はたじたじで頷き、母親となまえは乾いた笑みを浮かべて眺めていた光景は中々面白かったと後に赤司は語る。
なまえは緑間の紹介を終えてから両親と挨拶回りをした後、その間に赤司と食事を終えた緑間を連れて息抜きに静かなロビーへ移動した。ロビーには誰もおらず、見事な絵画やモニュメントが展示されていた。
「疲れたでしょ?大丈夫?」
「問題ない。なまえの方こそ、挨拶回りで疲れただろう。そこに座るのだよ」
「ありがとう」
近くにあった高級そうなベンチに二人で腰掛け、一息吐いたなまえ。その様子を見て労わるようにセットされた髪を崩さないようにそっと撫でる。
「…やっぱりパーティーに連れて来なければよかったかしら、って思ってたの」
「! …何かしたか?」
「ううん。そういう事ではなくてね。ご令嬢の方々が征十郎もそうだけど、真太郎を見ていたから…少し妬いちゃった」
何か気付かぬうちに失態でも…と不安に思った緑間だが、なまえは否定してただのヤキモチだと言う。見るからに大手企業が集っていたので、ご子息ともいればご令嬢も確かにいたなと緑間はぼんやり思いながら呟く。
「…なまえが妬くとはな」
「ええ?何言ってるのよ。当たり前でしょ」
普段ヤキモチを妬くのは自分の方が多いと思っていたし、ヤキモチを妬く程余裕がないようには見えないなまえ。そう思っていた事もありそう呟いたのだが、なまえはクスクスとおかしそうに笑ってから高い天井を見上げる。
「確かに家柄は他の人よりいいかもしれないけど、私だって一人の人間よ。ただ一人の男の子が大好きな…ね」
そして直ぐ隣にある緑色の髪にそっと指を通すなまえ。その言葉と仕草に、緑間はぐっと心を掴まれた感覚を覚えた。
「なまえ」
「なーに?」
「…綺麗だ」
会場では似合っていると言われただけだったが、珍しい直球の褒め言葉になまえは赤面し、同時に嬉しそうに破顔した。
「大好きよ。真太郎」
「…オレもだ」
なまえはその小さな手を自分より大きく骨張って、男の手をした緑間の綺麗な手に添え、指を絡ませた。
月影綺羅様、最後のリクエストお待たせしました!
お嬢様系彼女という事でしたが、系というより正しくお嬢様になっちゃいました…(笑)
書いた事のない話だったので楽しく書かせてもらいました!気に入ってもらえると嬉しいです。
素敵なリクエストありがとうございました!
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