FOR YOUオールと霊感少女
【黒子side】
どうも。黒子です。今僕は火神君と桃井さんと青峰君、そして緑間君と高尾君の六人でマジバに来ましたが、深妙な面持ちと空気に占められています。
「「オレもう学校行かねえ」」
「ちょっと大ちゃん、かがみん!そんなわけにはいかないでしょ」
「学校行かない理由がそれでは…情けないです二人共」
「テメッ!情けねえって何だ!」
「だってもうオレ耐えらんねえ!!」
青峰君にそのままの意味です、と言うと青筋を浮かべながらも舌打ちをしてジュースを飲む彼を一瞥し、半泣きで食い掛かってきた火神君を無視して桃井さんに目配せをする。彼女も困った表情を浮かべていた。
「でもこのままじゃ困るよなぁ」
高尾君も面倒臭そうな顔をして頬杖をつき、ジュースをストローで啜っている。隣では緑間君が眼鏡を押し上げた。
此処で話の内容の詳細を説明します。簡単に言うと、僕達が通う高校各校で心霊現象が起きるという問題が発生しています。此処一ヶ月の間に学校中でポルターガイストが起こったり霊の姿が目撃されたり、そして何故かバスケ部の面々の中で多くの人が急に霊が視えるようになったんです。僕達も然り。
この場にはいませんが黄瀬君なんかは生き霊まで憑いてくる事が多く参っていると電話で聞きました。まあモテますからね彼は。調子の乗るので本人には言いませんが。
余談ですが、他の県外校である洛山や陽泉でも被害は多いらしい。
ちなみにそんな今日は、カントクの計らい(恐らく恐怖故)で部活は休み。放課後同じく部活が休みだった彼らを誘いマジバに。
このままでは、という事で公にしてはいないが学校教師が寺の住職や神社の神主にお祓いを依頼し、お祓いが執り行われたが効果はなし。
学校側は早くも断念したり諦め掛けたりしているが、このままでは学校に行けないと喚く火神君と青峰君の言葉により、今回僕達が集まったという事です。
まあ僕達が集まったところで何か出来るというわけではありませんが。
そう思いながらバニラシェイクを飲んでいると、僕の携帯に着信が入った。表示された名前に僅かに目を見張る。
「…赤司君からです」
「赤司だと?」
「はい。…もしもし」
『やあ、テツヤ。今いいかい?先日話した件で話があってね』
「はい、大丈夫です。今丁度青峰君達と集まっていたところです」
緑間君に返事をしつつ電話に出る。先日電話で心霊現象の話を赤司君から聞いたが、その件で話があるそう。
『そうか。なら都合がいい。みんなで僕の代わりに向かって欲しい所がある』
「向かって欲しい所…?」
僕が首を傾げると電話に耳を寄せていた五人も首を傾げた。
「此処、ですね」
僕は携帯の画面を眺め、赤司君から送ってもらったメールに書かれている住所を一瞥してから目の前の長い階段を見上げる。火神君達も一緒に来ており長い階段をこれから登るという事で怪訝な顔をしている。
「チッ…人使い荒い奴だぜ」
「けど此処に頼るしかねえんなら仕方ねーじゃん」
「つべこべ言わず行くのだよ」
青峰君、高尾君、緑間君の会話を聞きながら僕も階段を登る。
「長いね…」
「桃井さん、大丈夫ですか?よかったら手を」
「テツ君…っ!」
手摺りに手を添えながら桃井さんが後について登るが些か階段が急なので手を引くと抱き着かれ、危うく落ちそうになったところを火神君に腕を引かれて助けてもらった。
そんな事がありつつ階段を登り切るとそこには立派な、少し古びた大きな神社があった。赤司君の情報によると、伝がないと依頼を受けてもらえない有名な神社らしい。流石赤司君。
おわかりだと思うが、僕達は京都にいる赤司君の代わりにお祓いの依頼をしにきた。話は通してあるという事で、境内を進んでいくと拝殿の前で巫女姿をした少女が竹箒で落ち葉を掃いていた。見たところ、僕達と同年代のように見える。
「あの、すいません」
「っ!!?」
桃井さんが声を掛けると巫女さんはビクゥッと肩を大きく飛び上がらせて振り返る。その表情には喫驚だけではなく不安が浮かんでいた。
「は、ははははひっ!」
「あ、驚かせてごめんなさい!あの、神主のみょうじさんに用事があって来たんですけど…赤司君の代わりで、」
「あ、赤司、さん…」
桃井さんは慌てて用件を説明すると彼女はハッとした表情を浮かべ、しどろもどろにお待ち下さいとだけ残し足早にその場を後にし本殿へと入っていった。そして待つ事数分、にこやかな表情を浮かべた中年男性と一緒に先程の少女が戻ってきた。彼女は男性の後ろに隠れている。
「こんにちは。赤司さんから話は伺っています。赤司さんのご友人ですね」
「はい」
「私がみょうじです。どうぞ中へ。さあ、なまえ。隠れていないで案内して差し上げなさい」
「は、はいぃぃ」
彼女はなまえさんと呼ばれ、視線を彷徨わせながらもどうぞと中へ促され六人でついていく。案内された部屋は神社の中の居間で、敷かれた座布団の上で各々が座る。
対面にはみょうじさんとなまえさんが座り、彼女に出されたお茶を頂く。一息ついてから本題に入った。
「事情は聞いています。色んな学校中で騒ぎになってパニックらしいですね。此処最近同業者からも話をよく聞きます」
落ち着いた声色で話し出すみょうじさんは、現状を整理した上でにっこりと笑った。
「皆さんが霊が視えるようになった理由は現在は定かではありませんが、私共にお任せ下さい。最善を尽くしましょう」
その言葉に、今まで何度かお祓いを受けても解決しなかったのに不思議な安心感があった。
みょうじさんはなまえさんに目配せをする。
「紹介が遅れましたが、この子は私の娘のなまえと言います。なまえ、ご挨拶を」
「は、じめ、まして…」
「見ての通りこの子は人見知りが激しく…しかし霊能力は師である私の教えに沿い覚醒し、強大な力があります。この子にも手伝わせましょう。なまえも、いいね」
「は、はいっ」
「緊張する事はないよ。修行の一環だとでも思いなさい」
ポンポンと優しく頭を撫でられ、緊張からか強張った肩を少し下ろしたなまえさん。何処にでもいそうな容姿をした彼女だが、目元を和らげ安心の表情を浮かべる様子は庇護欲を掻き立てられる、気がする。
そんな出会いがあり、早速行動に移すと言ったみょうじさんはなまえさんと共に準備を行い、此処から一番近い僕の高校、誠凛に向かうという。
「格別危険というわけではありませんが、一緒に来ると何があるかわかりませんので皆さんとは此処でお別れです」
みょうじさんにそう言われ神社で別れた僕達一行は、誠凛高校の方へ歩いて行く二人の姿を見送りながら顔を見合わせた。
「「気になる」」
「行くしかねーだろ」
青峰君と高尾君はニヤッとニヒルに笑い、火神君も行く気満々でそう言ったが、冒頭で怖がっていたのは何処の誰だと言いたくなった。桃井さんと緑間君も僕と同じような表情を浮かべているが、六人で後についていった。
「「天地玄妙神辺変痛力離」」
日暮れの校舎。辺りはすっかり暗くなり部活があった生徒も帰っている時刻で、職員室のみ明かりが点いている学校の校庭ではみょうじさんとなまえさんが何やらお経?呪文?よくは聞こえないが何かを長い時間唱えていた。その後、僕達全員が目にしたのは校舎から溢れ出てくる死霊、もしくは悪霊達。桃井さんが小さく悲鳴を上げた。
しかし、一番目を引いたのはなまえさん。先程までの不安や緊張の表情から一転し、自信に満ち溢れた、真っ直ぐで強い眼差しを向けながら霊達と対峙している。そこからは彼女の独壇場だった。
「アビラウンケンソワカ」
「ノウマクサンマンダ バザラダンセンダ…」
九字切り、というものだろうか。少し違うかもしれないが、時折手で印を結んだりお札を取り出し投げたりしながら着実に悍ましい容姿をした霊や黒い霊を祓っていく。お祓いを実際に目にしたのは初めてだった。
勢いに圧倒され呆然と見ていたが、祓っていく彼女が強いのは一目瞭然で、勇敢で、そして綺麗だと思った。
一頻り祓い終えると何か会話を交わして何処かに歩いていく。後をついていけば、学校で一番大きな木の前に二人がいて、何処から出したのかなまえさんは刀を持ち鞘から抜くと
一文字に何かを斬る。その瞬間断末魔が辺りに響いたが、直ぐに静寂を取り戻すと空気が変わったのがわかった。
「…空気が軽くなった気がするのだよ」
そうだ。今まで気付かなかったが重苦しい空気が一掃されたような、清々しい空気。その変化に六人で唖然としていると、いつの間にか近くに苦笑をしたみょうじさんと先程とは一変し困った表情を浮かべたなまえさんがいた。
「こらこら。ついてきてはいけませんと言ったのに」
「すみません」
僕が咄嗟に謝ると僕の存在に気付いたからか、少し吃驚した後ふわりと微笑んだ。
「巻き込まれなくてよかったです。…どうやら、各校を騒がせている心霊現象は人間の仕業のようですね」
みょうじさんの言葉の後なまえさんはまたいつの間にか刀をしまい、代わりに木で出来た変な形の人形を両手で持ち差し出してくる。それを取ろうとした青峰君の手に慌てて引っ込めた様子を見ると、どうやら見せただけの様子。
「これって何ッスか?」
「これは人形呪詛。呪いを掛けられた人形です。これがその大木に括り付けられていましたが、結界が貼ってあったので気付かなかったのでしょう。でもこれで被害は減ると思います」
高尾君の問いに答えたみょうじさんに目を見開く。何の目的で誰がこんな事をしているのか。その疑問が脳内を巡る。
「君達が急に霊感に目覚めたのにも繋がりがあるかもしれません。残りの高校のお祓いをまず優先し、それから解析の方を進めていきます。今の所君達に大きな被害はないと思いますので特に何も施しませんが、何かあればいつでもご相談下さい」
そこまで言うと、みょうじさんはなまえさんに顔を向けた。
「これくらいの力ならなまえ一人でも大丈夫だね。早急にお祓いを進めていく必要がある。都内の高校は私がするから、なまえは県外の高校を頼むよ」
「は、はい!」
ピシッと姿勢を正したなまえさんを見て、このオンとオフがわかりやすい彼女がこれ程の強さに留まらず、これからまだ見えもしない敵と対峙して僕達を守り、同時に平凡に見える人見知りの激しい彼女のちょっとした特色に惹かれた僕達が交流を深めていくのは少し先の話。
【赤司side】
テツヤに電話した翌日。放課後の部活を終え、これから寮に帰る玲央達と一緒に自宅である別宅へ向かおうと校庭を歩いていると、オドオドした挙動不審の少女が校門の前にいる事に気付く。服装は私服で他校生である事は一目瞭然。その様子を見て、思い出した。
昨晩、僕が紹介した神社の神主とその娘に早速誠凛高校の除霊が行われたとテツヤから聞いた。その娘が印象的だったようで、いつもより饒舌に話していた彼から聞いていた特徴と一致する。
人見知りでオドオドしている、容姿は平凡で何処にでもいるような少女だが、除霊となるとその姿は変貌するらしい。
校門前にいる少女は、その印象によく当てはまる。
「洛山に何か用事かい?」
「はいぃぃはっはい!!」
ピシィッと姿勢を正した彼女はこちらが赤司だと名乗ると依頼主であると気付きみょうじなまえだと名乗り、例の神社の娘である事が証明された。そして生徒がいなくなった今を見計らって除霊をするという。
「僕も見ていていいかな?」
「え!?えっと…き、危険ですのでいない方が…」
「自分の身は自分で守る。君には迷惑を掛けない」
真っ直ぐ見つめてそう伝えると祓う者として見過ごせないのか彼女も負けじと見つめ返してくるが、こちらの視線に負けたのか目を逸らしたので勝手にさせてもらう事にした。玲央達が何か言いたげな視線を送ってくるが、気にせず傍観の態勢をとる。
「ノウマクサンマンダ バザラダンセンダ マカロシャダ ソワタヤ ウン タラタ カン マン」
暫くして行われる除霊。テツヤの言っていた通り、様子がガラリと変わった彼女に興味が湧く。そして僕達にも視える霊達が校舎から出てきてそれを着実に祓っていき、僕達にもそれとなく気を配って被害がいかないように配慮しているのもわかる。
暫しそれが続き不意に彼女が何処かへ走り出してそれを追うと、洛山高校の裏庭にある大木の前にいて胸の前で手を合わせる。その直後起こった現象に、僕達は瞠目した。
斜め後ろから見ている為ハッキリとは言えないが、光る胸から刀が出てきた。
そしてそれを鞘から抜いて素早く一文字に斬る動作をすると、途端に空気が軽くなったように変わった。同時に彼女の足元に落ちる木の歪な形をした人形。それを見て歩みを進めて彼女に近付き、それは何か問い掛けると誠凛にもあったという人形呪詛というもの。それが霊障の原因らしい。
「こ、これで大丈夫だと思います…」
「そうか、ありがとう。ところでその刀は…」
「!?え、と…な、内緒です!」
そう言うと足早にその場を後にしようとした彼女の腕を捕まえて笑みを浮かべた。
「色々と聞きたい事がある。少し時間をくれないかな」
その言葉にみょうじなまえはわかりやすく諦めたように落胆した。
桜様、大変お待たせしました!
二つ目のリクエスト消化です。全校の選手と希望されていましたが、話の都合上全員は出せなかった事をお詫びします…!また赤司お相手希望でしたが、あまり絡ませられずすみません。でも書いていて楽しかったです!
少しでも楽しんでもらえると嬉しいです。
素敵なリクエストありがとうございました!
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