FOR YOU
花宮とケンカップル

「はぁ〜今日もかったるい一日が始まるね〜」

「お前それ毎日言ってんな」

 ある朝。花宮が原と一緒に登校していると、彼らの後ろからドドドドという地鳴りのような足音と共に土煙を立てながら何かが走ってきた。二人が振り返ると、そこには鬼のような形相をした女生徒。

「「!!?」」

「まぁぁぁぁぁこぉぉぉぉぉとぉぉぉぉぉ!!!」

「な、おまぇうっふ…!!!」

 頭から花宮の鳩尾にドゴォと突っ込んだ女生徒。原はそのまま軽く吹っ飛ばされて尻餅つく花宮を見送り、花宮は腹に埋まる頭を掴んで上げさせた。

「おはよう真」

「おっま…ゴホッ、普通に挨拶出来ねえのか!バァカ!」

「あたしをほってくのが悪い」

「お前が寝坊するからだろーが。オレは先に行くってちゃんとメールした阿呆なまえ」

 顔を上げた女生徒はなまえと呼ばれ、花宮や原と同じ霧崎第一高校の生徒でありながら、なんと花宮真の彼女である。

「阿呆って言う方が阿呆なんですぅー」

「ハッ成績で抜かす抜かすっつっていつまで経っても抜かせねえ奴がよく言う」

「この前靴下片方ずつ違うの履きそうになったのを教えて止めてあげた恩を忘れたか」

「テメェこそ間抜けにも財布置いて購買行ってわざわざ届けてやったのを忘れたか」

「(しょうもない言い争い…どっちもどっちだよん)」

 そしてこの二人はケンカップルとして有名だった。花宮が猫を被っているのもあって一部の者に、だが。

 たまにヒートアップして小学生の言い争いのようになったり側から聞けば惚気にも聞こえるような内容だったり。いつもの光景に原は風船ガムを膨らませて見守っていたが、いい加減に痺れを切らせて声を掛けた。

「このまま喧嘩してたら夕方になっちゃうよん。オレ先に行っくよーん」

「「!?」」

 ハッとした二人は既に歩き出した原を追った。

「チッ…お前の所為で朝から気分悪い。雌豚が」

「雌豚って言いますけどその麗しいお顔に負けず劣らずあたしがモテているのをお忘れのようで」

「ハッ…物好きもいたもんだな」

「それをあんたが言うか物好きめ」

「お前が付き合え付き合え煩いから付き合ってやってるだけだろーが」

「だって好きなんだもん。あたしだって好きになるとは思わなかったわこんなクズゲス悪童野郎をな!」

「そっくりそのまま返してやるよバァカ」

「もーうるさいよーん」

 勿論喧嘩(?)付きで。










「キャー!花宮君とみょうじさんが来たわよ!」

「みょうじさん!おはようございます!今日もお美しい!」

「花宮君!今日もかっこいいね!」

「あははーありがとー」

「おはよう、みんな」

「「キャー!!」」

 校門を潜れば注目を集める二人。原は慣れたように二人の側を風船ガムを膨らませながら歩いており、チラリと横目で盗み見た。
 なまえはいつでも素でいるので人前でも登校中のような暴言は吐くが、花宮が猫被り中の喧嘩は二人共笑顔で陰で小突き合いながらする。現に今も二人共仲よさげに互いの腰の腕を回しているように見せて腹を抓っている。

「また太ったな。肉が簡単に摘めるぞ」

「また真クンはそういう事言う〜性格ブスその蛙の子ども眉毛を田んぼに返して来い」

「あはは」

 ボソッと言う花宮に対してなまえは普通に言うので表向きは笑って許す花宮を見て、以前は花宮ファンから鋭い視線をもらったり呼び出しなるものをされたりしたが、なまえが髪の毛を引きちぎる勢いで反撃したのをきっかけに陰口や呼び出しは直ぐに沈静化していった。

「オイなまえ。ビブスと得点板出しとけよ」

「はいはい。まったく、指示ばっかで嫌んなるよね〜」

「部員と話ばっかでまともにマネージャー業やってねえなまえチャンよりはマシだな」

「ぞわわ〜!チャン付けとかキモーい。てかちゃんとマネージャー業やってるわ失敬な!」

 部活中も変わらず口を開くと小言や嫌味ばかりで。部員も慣れた光景なので生暖かい目で見守っている。

 こんな二人に恋人同士の甘い時間は皆無かと思えば、そうでもなかったりする。
 部活後、一緒に帰宅した二人はなまえの家でなまえママの手料理を食べて自室で各々過ごす。どちらの親にも公認の仲なのである。

 花宮はテーブルで課題に取り掛かり、なまえはベッドに寝そべりながら雑誌を読む。我が家のように振る舞う花宮をなまえは横目で見た後、ムスッとしながら起き上がり花宮の隣に移動する。勿論、我が家のように振舞っているのを非難するわけではなく、唐突ではあるが別件で物申す事があった。
 花宮は視線を向ける事なく淡々と課題をこなし、あっという間に終盤に差し掛かっていた。

「ねえ」

「何だよ」

「最近キスしてない」

「だから何だ」

「っていうかデートもしてない」

「部活で忙しいからな」

「あたしも同じ部活ですけど」

「知ってる」

「マネージャーですけど」

「知ってる」

「休日とか日や時間を合わせようとしてるんですけど真さんが合わせてくれませんよね」

「普段は部活で出来ねえやりたい事が溜まってんだから仕方ねえだろ」

 直球で言えば、欲求不満である。なまえはムムムと唇を尖らせて不機嫌になると、花宮の胸倉を掴みグイッと自身の方へ引き寄せ強引に唇を奪った。

「っ!」

 唇同士がぶつかって痛みが走るが口を切る事はなかった。花宮は目をぎゅっと閉じながら不器用に唇を合わせるなまえを見下ろす。

「…ってえな。下手くそ」

 少しして離れたなまえの頭をガシッと両手で掴むと、同じように強引にキスをした。貪るようなキスだが、ぶつかるキスではなく幾度か角度を変えるキス。今は花宮もムキになっているので強引だが、なまえの目をトロンとさせ気持ちよくさせるには充分だった。
 リップ音を立てて離れた花宮は、その気になって頬を染めたなまえを鼻で笑う。その笑みになまえがまたムッとした。

「キスして欲しいって素直に言え。無駄な怪我が増えんだろーが、バァカ」

「彼氏なら察せおたまじゃくし」

「彼女ならもっと上手く甘えろブス」

 黙らせるように舌を差し込まれ執拗に絡め取られる深くねちっこい口付けに、なまえの息は簡単に上がり胸倉を掴んだままの手の力が抜けていき緩く服を掴むだけとなった。
 暫くご要望のキスをしてもらったなまえは少しは機嫌が直り、首に腕を回して抱き着きながら間近で見つめて乞う。

「じゃあもっとちゅーして。あわよくば先までどうぞお願いします。…あと休日はたまには遊べ構えどっか連れてけあたしを優先しろ」

「…最初っからそう言えっつーの」

「言わなくてももうちょっと構うべきだと思いますよ彼氏さん。真ももっと欲を出せ思春期少年よ」

「……言ったな」

「え」

「お前を気遣って抑えてやってたのになぁ?後悔すんじゃねーぞ、馬鹿なまえ」

「えっ」

 ひょいをなまえを抱き上げた花宮はふかふかのベッドに彼女を投げ、その上に覆い被さり身を沈めた。なまえが後悔するのもあと少し。











莉央様、二つ目のリクエスト大変お待たせしました!
ケンカップルいいですよね、微笑ましさが少しでも出ればと思い管理人の完全妄想で書き上げました。ちなみに共学設定です。暴言吐きまくりですが悪意ではなく愛故です!彼らもそして書いていた私も(笑)
楽しんで頂けると幸いです!
素敵なリクエストありがとうございました!

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