D+S FF-D m-ds New!夢物語


秘策



「いらっしゃい。もう支度できてるの。入って。」


 男は玄関先に立ち、扉をゆっくりと開いた。中からひとりの女が出てきて、優しい微笑みを浮かべて出迎える。


「ああ、邪魔をする。」


 女は彼を玄関に上げ、外套を受け取った。それを大事そうに抱えると、奥の部屋へと消えていった。



 連れ立って狭い廊下を通り、リビングに入る。決して高級ではないが、室内はきれいに整頓されていた。
 テーブルには暖かい料理が並び、白い湯気が上がっている。


「ほっとするな……。」


 男は思わず、ぽつりと呟いた。巷で英雄と呼ばれるこの男にとって、ひと息付ける場所は数える程もない。ここはそのうちのひとつだった。
 外套をハンガーに掛ける彼女に促されるまま、腰を掛ける。


「今回は長かったのね。」

「そうだな。3週間ほどだったか。調査に手間取った。」

「大変だったのね。お疲れ様、セフィロス。明日は休み? 」


 彼女も席に着いた。テーブルの上で冷やされている白ワインのボトルを手に取り、コルクと格闘している。
 

「いや、朝からまた任務が入っている。」

「……そう。忙しいのね。」

「すまないな、マリア。」


 マリアは寂しそうに顔を曇らせる。しかし、やっと会えた恋人とのひと時だ。楽しく過ごしたいと思い直す。彼女はにっこり笑う。
 マリアのコルクを抜こうとする手が止まるのを見計らい、彼はさっとボトルを攫った。いとも簡単に開封し、互いのグラスにワインを注いでゆく。


「俺も、もっと時間を取りたいとは思ってはいる。」


 セフィロスはボトルをワインクーラーに戻すとマリアの手を取り、自分の頬に当てて目を閉じた。長い銀色のまつげが彼の顔に影を作る。


「仕方ないわ。それに、暇を持て余す生活の方がよっぽど問題よ。」

「はは、それはそうだな。」


 セフィロスはその言葉に思わず笑ってしまった。マリアの手の甲に、今度は彼の唇をそっと這わせる。
 マリアはあまり文句を言わない。言ってどうなる事でもなく、セフィロスを困らせるだけだとわかっているからだ。
 とは言え、マリアに寂しい思いをさせているのは確かだ。それをセフィロスもよく理解しているだけに、このままの状態にしておくのは心苦しかった。


「マリア。」


 セフィロスは立ち上がって、マリアを抱きすくめる。マリアも彼に腕を回す。セフィロスはマリアの首筋に顔を埋めた。長い銀色の髪がさらさらとマリアの頬ををかすめる。
 マリアはこの瞬間が好きだ。世界の英雄がただの男に戻る。今だけは、彼はマリアだけのものなのだ。

 ただ抱き合うだけで、それまでの寂しさが満たされ、幸せな気持ちが溢れていく。


「だから……今夜は泊めてくれ。明日は早いが構わないか。」
 

 返事をする前に唇を塞がれる。同意の意味を込めて、マリアも彼に身を任せた。けれど、同時にテーブルにも視線をやった。このまま放っていたらテーブルの料理が冷めてしまうし、開けたばかりのワインもぬるくなってしまう。


「それはいいけど、セフィロス。食べないの? 」

「先にマリアがいい。」


 こうなると、もうセフィロスを止めることはできない。
 言うが早いかセフィロスはマリアを抱え上げ、足は既に寝室に向かい始めている。マリアは食欲よりも、この数週間の空白を先に満たして貰うことにした。
 






 数日後、マリアの携帯電話が鳴った。「セフィロス」の文字が画面に踊る。


「マリア。来週、1日だけ休みが取れた。家に来ないか。」

「本当? 来週ね……行くわ。久しぶりね、セフィロスの家。」


 マリアは頬が思わず緩んだのを感じる。
 何を着ていこうか、などと考え始めていると、セフィロスの話には続きがあった。決して口数の多い方でない彼には珍しく、今日は些か饒舌だ。


「それまでに荷物を纏めておいてくれ。当日はトラックで迎えに行く。」

「……トラックですって? 」


 マリアは話を飲み込めないでいた。セフィロスの家に遊びに行く話だったはずだ。どうしてもトラックとは結びつかない。
 マリアが困惑しているうちに、セフィロスは更に言葉を繋ぐ。


「なかなか会えないからな。いっそ同居してはどうだ。お前が嫌なら無理にとは言わんが……。」


 我慢できなければ、そのうち連れ去りに来るかもしれんぞ、とセフィロスは電話の向こうで朗らかに笑った。

20140808
New!夢物語 FF-D D+S

初FF7です
だんだん広く浅くになってきました
気が済むまでは手広く行ってもいいかな、と
行けるものならどんどん手を広げてみようかしらん
ひとりを掘り下げられるほど、深い観察眼なんて持ってません


D+S FF-D m-ds New!夢物語
- 19 -

prevnext
modoru
しおりを挟む

↓選択できます↓