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晴れの日
今日はめでたい日だ。遂にヒルダ様とスコット様は婚礼の日を迎えられたのだ。
私は婚礼の儀の、挙式を執り行う大役を任された。今はその役目を滞りなく果たしたところだ。随分と緊張したが、ヒルダ様の晴幸せそうに微笑む姿を間近で見守ることができたのだからこんな幸せはない。ヒルダ様とスコット様に、心からの祝福を贈った。
これから私はリリーと共に披露宴に出席する。今は控えの間へ通され、休んでいるところだ。
実は私自身もリリーとの婚礼が決まり、いよいよ来月に迫っている。さらに、挙式こそまだだが、リリーは既に私の妻として周囲から認知されている。今日の宴も、リリーは私の妻としてご招待いただいたのだ。
もちろん、ヒルダ様とリリーは今も友人同士だ。だが、身分の壁は厚い。数週間ほど前から国中がヒルダ様とスコット様への祝福ムード一色だが、実際に婚礼や披露宴に出席できるのは城の中でも極々限られた立場の者だけだ。そのためリリーは諦めていた出席が叶い、感激しきりだ。ちなみに、彼女は挙式には出ていない。
披露宴はまだ始まっていないのに、リリーもう泣いている。どうやら挙式が終わった後の国民へのお披露目で、リリーはヒルダ様のお姿を見たようだ。それですっかり感激したらしい。
「ヒルダ様、お綺麗でしたね……ぐすっ。やっと、やっとですよ、本当に」
「そうだな。ヒルダ様は随分とご苦労なさった……先王のことも、スコット様のことも、ご心労は絶えなかったはずだ」
「うう……よかった、です……」
リリーはまた泣いた。私が彼女の肩をそっと抱くと、リリーは私に身を預けてしゃくりあげた。けれど、顔を寄せると衣装を汚してしまうと思ったのだろう。リリーは頭だけをそっと私の胸に乗せて、ハンカチで涙を拭いた。
今日の私たちは、いつもの白魔導師の格好ではない。私はミシディアの正装である伝統織物を使った衣装を身につけている。いつものように真っ白ではなく、細かい柄で華やかだが、落ち着いた色味で統一されてこういった儀式の際に着用するものだ。
一方リリーはフィンの正装だ。淡いピンク色の薄い布を幾重にも重ねたドレスは、この日のために新調した物だ。形はヒルダ様が平時着ているドレスとよく似ていて、リリーはその辺りも気に入っているようだ。それにフィン伝統のネックレスとピアス、そして私が贈った指輪でドレスアップしている。よく似合っていると言えば、リリーは頬を染めて照れていた。
フィンでは女性なら誰でも婚約指輪とやらに憧れを持っているそうだが、元々ミシディアには婚約の記念に指輪を贈る習慣はない。魔導師たちにとって、指輪を含む装飾品はそのほとんどが魔道具だ。その殆どは戦闘における魔力に関する品ばかりで、婚礼と結びつくことはない。もちろん、私も聞いた当初は驚いたものだ。
とはいえ、リリーは生まれも育ちもフィンだ。それに、私もフィン王室に仕える身。リリーもやはり憧れを持っているようだし、その風習に倣おうと考えた。実のところ、初めはその程度の認識だった。しかし、実際に贈ってみれば、見方はがらりと一変する。
時折リリーは、その指輪を幸せそうに眺めてはうっとりしている。そして何より、そんなリリーを見ているのはなんとも気分が良い。私まで幸福な気持ちになるのだから、この風習はなかなか良いものだと今では思っている。
披露宴まではまだ時間がある。けれど、そろそろ涙を止めないと、リリーは泣き顔のままになってしまう。それはそれで良いのかもしれないが、きっと本人は後悔するだろう。勝手にそう予測すると、思わず笑みが漏れた。
それにしても、ヒルダ様もスコット様も本当にお幸せそうだった。昔からお二人を見守って来ただけに感慨深い。
あの時、私はミシディアで死んでいたはずだった。それが運命だと悟りを開いたつもりでいたが、その実初めから諦めていただけなのかもしれない。
しかし、一度でも欲しい物を手に入れてしまうと欲が出る。それを遠ざけるのに必死になっていたのだが、リリーの存在がそれを覆してしまった。もう元には戻れない。
私は確かに生きている。今日の幸せも、今日の善き日も、来月迎える私たちの門出も、生きているからこそ得られるのだ。既に死んでいたのだと思うと心底恐ろしい。そして、失うことが怖いということも、つい最近知ったことだ。そういう感情が芽生えたのも、他でもないリリーのおかげだ。
「リリー」
「はい。何でしょう、ミンウさま」
私をじっと見つめる我がの妻の頬を、手のひらでそっと撫でる。涙で濡れた頬はいつにもまして瑞々しい。そして、私がこうするといつも恥ずかしそうに頬を染める姿がいじらしかった。
「次は私たちの番だな。お前の花嫁姿、楽しみにしているよ」
リリーは幸せそうにはにかんだ。
私は、幸せだ。
20171103
引っ越し前にいただいたリクエストでした!
「ミンウとリリーがくっついてからの話、ミンウ目線で」
「ミンウかエッジの話」
とのことでした
遅くなりましたが、これで勘弁してくださいませ
リクエストありがとうございました!
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