D+S FF-D m-ds New!夢物語
読書の会
バロン城の図書室には、それはもうたくさんの資料が揃う。黒魔法、白魔法、武術、歴史、地図、経済、外国語から純文学、芸術に料理本までなんでもあった。国内随一と言えるだろう。
「よいしょっと。これくらいあればいいかな。」
わたしは陛下に命により、1日も早い黒魔法の実用化を目指し日々研究を重ねている。毎日のように図書室へと通い詰め、大量の書物を読み漁っていた。
わたしは何冊もの本を抱え、研究室に戻ろうとしていた。一歩踏み出したところでふと、一冊の本が目についた。タイトルには、「恋人の心をがっちりつかむ本」と書いてある。
わたしは自然と、銀髪の心優しい暗黒騎士を思い浮かべた。甘い疼きを覚える。と、同時にこんな本まであったのか、と感心してしまった。
個人的に読んでおきたいと思い、手を延ばす。けれど、あと少しが届かない。わたしはめいいっぱいの背伸びをし、必死で本を取ろうと奮闘し始めた。
「これかい?」
暫く格闘していると、頭の上から声が降ってきた。思わず見上げたわたしは驚き、ひどく焦ることになる。
「え?セシル!?あ、うん。あ、ありがとう……」
「うん。そうだよ。はいどうぞ。」
なんて事だ。わたしは心の中で頭を抱えた。よりにもよって、思い浮かべていた本人が取ってくれたなんて。とてつもない恥ずかしさに襲われている。誰のために読みたかったのか。流石に弁解の余地はない。こんな本は、出来ればこっそり読んでおきたかった。
加えて、今の体勢にも問題があった。本を取る際に、わたしはセシルに後ろから抱き締められるような格好になっていた。本を受け取ろうとして顔だけでセシルを振り向いた。だが、そこで事態を把握したわたしが固まってしまい、彼はその後もずっと真後ろにいる。
わたしはセシルの両手と本棚に囲まれたままだ。互いの顔の距離も近い。お互いの息がかかるほどだった。そしてここは公共の場所。いつ誰に見られるかもわからない。
わたしは恥ずかしさから、思わず俯いてしまった。
「あ、あの、えっと、これは、その」
「ありがとう、マリア。この本は僕の為なんだよね。」
もちろんセシルの為、そして自分の為だ。けれど、それをわざわざ確認されると、より恥ずかしい。そして、何よりこの体勢が本当に恥ずかしい。
反対に、セシルはとても嬉しそうにしていた。だが、わたしは一刻も早く、ここから立ち去りたい。なんなら穴を掘ってでも入りたい。わたしの顔は、きっと首まで真っ赤に染まっていることだろう。
セシルの腕からの脱出を試みて、身をよじってみる。けれどわたしの力ではびくともしない。全く動けなかった。普段本を読み漁ってばかりいる魔導師が、鍛え上げられた騎士になど適うはずがない。
「どうしたの?逃げなくてもいいのに。」
セシルはさも楽しそうに、にっこりと笑った。満足そうな顔に悪意すら感じる。これは絶対、わかってやっている。わたしが恥ずかしがるのを見て、楽しんでいる顔だ。
「は、早く研究室に、帰らないと。お互い勤務中なんだし、ね?」
わたしは一応主張しておいた。けれど、セシルに引く気配はなさそうだ。本棚から手を離したと思ったら、そのまま後ろから抱きしめられてしまう。わたしはもう一度脱出を試みたが、やはりびくともしなかった。
どうしようかと思っていると、耳にセシルの吐息がかすめる。驚いたわたしは、もう一度顔だけで後ろを振り向いた。何だか余計にドキドキしてくる。
「ねえ、ちょっと。こんな所でやめ──」
言い終わる前に、わたしの唇は彼のそれで塞がれていた。段々深くなってきて息が苦しい。何度も何度も繰り返されるうち、気付けばわたしも彼に向かい合い夢中で応えていた。
ふと我に返ると、わたしは抱えていた本を全部落としてしまっていた。代わりにわたしがセシルに抱えるように支えられている。貴重な本もあったのにな……と、未だぼうっとする頭で考えた。
「ふふふ。顔、真っ赤だよ。」
「誰のせいよ。」
わたしはセシルは睨み付ける。けれど彼は先ほどよりも幾分さっぱりした面持ちで、ただ笑うだけだった。
「良いじゃない。かわいいよ。それにしても、嬉しいなあ。マリア、君が読み終わったら僕にもその本、読ませてね。」
「う、うん。」
セシルは言いながら漸くわたしを解放し、落ちた本を一緒に拾ってくれた。わたしはもう一度本を全部抱え直す。
「よし、元通りだね。じゃあ、マリア。続きは今夜。」
「……へ?」
「僕は今すぐにでもいいんだけどね。生憎、これから閲兵式なんだ。」
セシルは颯爽と、上機嫌で去って行った。わたしはまた本を取り落としそうになるのを、なんとか堪えた。
20140718
D+S FF-D
あとがき
ローザさんのことはとりあえず置いといてください
セシルって、優しいこと言いながら結構いじわるだと思うんです
基本的には優しいイイ男なんだけど、ちょっとからかって遊んじゃうタイプかなと
そして自分のペースは崩さない
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