D+S FF-D m-ds New!夢物語
やけ酒
ごとんとゴブレットの音が響いた。カウンターには胡桃の入った器と、それなりに上等な葡萄酒が置かれている。その瓶を掴むと、エドガーは手酌で空になったばかりの自らのゴブレットを赤い液体で満たす。
ケフカはもういない。緑も以前のように豊かになった。葡萄酒もその恩恵の一つである。救世の英雄だと持て囃されようとも、エドガーはこれまで以上に懸命に働いている。元通りとはいかなくとも、より良い明日のために。愛する全ての人のために。今日も明日もまた働く。
さあその酒を飲むぞ、という時に、カウンターの向こう側にいた男の横槍が入った。
「飲むねえ。王様ってのは、酒も強いもんなのかい」
彼はそう言いながらずいと自分のゴブレットをエドガーの前に置いた。「ついでに入れてくれ」という意味として受け取ったエドガーは、酒を飲もうとしていた手を止めて彼のゴブレットにもワインを入れてやった。
「今日は飲みたい気分なのさ」
「ああ、弟か」
「ああセッツァー、皆まで言ってくれるな」
ニヤニヤしながら喋ろうとしたセッツァーを手で制し、エドガーは今度こそ葡萄酒を口に付けた。果たして何杯目だったか、そもそも何本目だったのかもわからない。明日の朝、片付ける時に数えてもいいが、いちいち知らなくても良いだろうとエドガーは考えるのをやめた。
「やけ酒か。悪酔いするなよ」
「そんな安酒でもなかろう」
「なら、もっと味わえ」
エドガーは返事もせずに胡桃を摘み上げると、それをじいと見つめた。
「ああ、マリア」
ガリガリと音をたてて胡桃を噛んだ。それを飲み込んで、またワインを煽る。
「お前さん、胡桃は親の仇か何かかい。さっきから恨みが篭りすぎて怖いぜ」
エドガーはチラリとセッツァーを見た。肘をつき頬杖をつき、人相も目つきも決して良くないが、彼のエドガーを見る瞳は頗る優しい。
「仇か。…そうだな。親の仇ではないが、そうなるな」
「ほう」
エドガーはもう一粒胡桃を摘むと、それも口の中に入れた。
「マリアは、これが好きな男の妻になってしまった。俺だって、胡桃もマリアも好きなのだがなあ」
「ああ、そうだったな」
セッツァーは、また始まったとは決して言わない。だが、言わない代わりにもっと飲ませる。早く潰して黙らせる魂胆だ。
とくとくと音を立てて、葡萄酒がエドガーのゴブレットに再び注がれてゆく。
「ああ、ありがとう」
「飲み過ぎだぞ」
「お前と一緒だからさ」
どういう意味だと睨みつけると、エドガーはにっこり笑った。
「君なら聞いてくれからな。口も固いし」
「フィガロ中に噂を流してやろうか」
「ははは」
エドガーは笑いながらまた飲んだ。セッツァーもつられてゴブレットを傾ける。渋みがじんわり広がるのを堪能すると、妙に楽しそうなエドガーを眺めた。
「傷は深いな」
「ああ、ざっくりバッサリだ」
分かっているのかいないのか、このあと3回は同じ話をして、エドガーはカウンターに突っ伏して寝てしまった。
やっと静かになった、とセッツァーは葉巻に火をつけた。酒ならいつでも歓迎だが、祝い酒の方が美味いに決まっている。それでも、孤独な男を放っておくこともできないお人好しは、今宵も黙々と酒を飲む。酔い潰れた男と空瓶の山を眺めながら、ふう、と煙を吐いた。
2024/01/17
エドガーの話をまた読みたいとリクエストくださった方!ありがとうございます。リクエストと思って書き始めたものの、これは流石にだめだなと思ったのでまた別の機会にします。
エドガーとマッシュはめちゃくちゃ酒に強そう。そもそも酔わない気がする。酔うとしたら、こういうヤケになってる時に変な飲み方した時なんじゃないかな、と。
セッツァー氏も絶対強いけど、普通に飲んだらエドガーの方が強そう。飲み比べなんかしてもあっさり負けそう。(エドガーが強すぎて話にならない)
ロックはたぶん下戸。酔う酔わないでなくて、飲んだらあかんタイプ。げろげろ、となってむしろ青くなるやつ。セリスの方が飲むよねきっと。(しかしセリスは未成年!)
D+S FF-D m-ds New!夢物語
- 40 -
prev * next
modoru
しおりを挟む
↓選択できます↓