D+S FF-D m-ds New!夢物語


花火



 大輪の光の花が、バロンの夜空を彩る。城下は見物客で賑わい、あちこちで歓声が上がっている。次々と咲く花火はどれも美しい。ドンと響く音が更に興奮を呼ぶ。年に一度のエブラーナ秘伝のその催しは、バロン国民にもとても親しまれている。花火が打ち上げられる度に感嘆の声が上がり、人々を魅力していた。
 セシルとローザもその中にいた。1日の仕事を終え、花火を見に城下まで出てきていた。


「綺麗だね。」

「本当に。ステキだわ。」

「二人にも、見せてあげたかったな。」


 ここにいない友人達に思いを馳せる。


「そうね。マリアは特に楽しみにしていたもの。」

「カインは張り切っていたけどね。マリアと一緒だから。」

「あの二人、そろそろ進展しないかしら。」


 セシルは普段の二人の様子を思い浮かべ、うーんと唸る。


「どうだろうね。それにしても、こんなときに急な仕事が入るなんて、マリアは気の毒だったよ。」


 花火が二人を照らしている。ローザはセシルに寄り添い、セシルも彼女の背に手を回す。光る夜空を見つめながら、遠くへ派遣されている友人達を思った。



 マリアはフォークに野菜を取り、口に入れる。もぐもぐと咀嚼し飲み込んだ後、もう幾度目かのため息をついた。日中は精力的に仕事をし、嫌そうな素振りは全く見せなかった。しかし、今はどうだろう。暗い顔をし、不平こそ口にはしないが様子が違う事は明らかだった。カインは不信感を覚え、食器を置いてマリアに問うた。


「マリア。俺との食事がそんなに不服か。」


 マリアははっとして、フォークを置いた。決まりの悪そうな顔をし、弁解する。


「ううん。違うの、カイン。今日ね、バロンの花火大会なの。」

「ん?ああ、そういえば、そんなものもあったか。」

「毎年すごくすごく楽しみにしてるのに、よりによって今日なだなんて……。はあ。」


 マリアはまた一つため息を漏らした。頭から花火のことが離れないらしい。
 二人はカイポに来ていた。バロン王に派遣され、既に数日滞在している。辺りは一面砂漠で高台はなく、高い建物もない。花火が見えないことにマリアは心底がっかりしていた。カインはスープを飲みながら、彼女の不運に同情した。


「何時から始まるんだ?」

「7時から。もう始まった頃じゃないかな。」

「……そうか。」


 カインは何とかしてやれないものかと考え始めた。しかし、カイポまで来てしまってはどうしようもない。二人は黙々と食事した。カインはマリアの事に、マリアは花火の事にそれぞれ思いを巡らせていた。
 やがて食事を終えた二人は店を出て、連れ立って宿に戻る。しかし、途中でカインは突然立ち止まり、マリアを街の外れまで連れ出した。


「ねえ、カイン。どこに行くの?こんな所まで来ちゃって、何だか怖いよ。」


 街の外も見えるそこは真っ暗で、草木が生い茂り少々不気味な所だった。出来れば昼間でも近づきたくないな、とマリアは思う。カインの事を信用しているとはいえ、あまりにも場所が悪い。マリアは彼の動向を注意深く見守ることにした。すると、前を歩いていたカインが急に振り返り、笑った。マリアは思わず身を固くした。


「マリア。花火を見る方法なら、ないこともないぞ。」

「え?花火?どうやって?」


 マリアは警戒していたことも忘れて、カインに期待をこめた眼差しを送る。


「お前をおぶってジャンプする。見える保証はないが、試してみる価値はあると思う。どうだ?」


 マリアの表情が、ぱっと花が咲いたように明るくなった。大喜びしてカインに飛びついた。


「ありがとう!カイン!お願い!」


 カインは頷き、マリアに背を向けてしゃがんだ。マリアはカインの肩に手をかけて、そっと背中に身を預ける。カインはしっかり支え、ジャンプの準備に入った。


「よし。落ちるなよ。」


 カインは空高く舞い上がった。遠くの空に、丸い大きな花火が見えた。幾つもの花が咲いたように空を明るく照らし、枝垂れながら消えていく。マリアは歓喜し、興奮している。大喜びしているのが背中越しにも分かり、カインも満足そうに笑った。






「カイン。ありがとう。今年はもう見られないかと思ってた。」


 マリア満面の笑みでカインに言った。カインは照れたように目線を泳がせる。


「何、あれくらい構わんさ。もう少し広い場所があればもっと跳べたかもしれん。」

「ううん、十分。よく見えたよ。」

「それにしても、お前は昔から本当に花火が好きだな。」

「うん。大好き!」


 マリアはにっこり笑った。そして、


「カインの次にね。」

 と、聞こえないようにぼそりと言った。


「ん?何か言ったか?」

「ううん、なにも。」

「そうか?」

「そうだよ。」


 二人は並んで、宿へ戻った。



20140818
D+S FF-D

今年は花火を見そびれました。
雨だったり、わたしがそこにいなかったり。
好きなのに、もうことごとく。
遂に一回も見ないうちに夏が終わりそうです。
と、いうわけでカインにお願いしてみたわけです。


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