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夜の甲板



 夜、ひとりで飛空挺の甲板に出るのが好きだ。特に、星が綺麗な夜はたまらなく良い。けれど、「危ないから一人は止めなさい」と、みんなは言う。それで大抵セリスかティナと一緒に来るのだが、今日は二人とも捕まらなかった。
 久々にひとりを楽しむ反面、少し心細さも感じる。誰かと居ることに慣れたせいだろうか、と思っていると、突然後ろから声をかけられた。


「そこにいるのはマリアかな。」

「そうよ。……エドガー?」


 不意に声をかけられて、内心ヒヤリとした。もしも不審者だったら、と身構えたが、どうやらエドガーらしい。青いマントと長い金髪が、風に乗ってはためいている。それを確認し、わたしは少しほっとした。


「こんばんは、レディ。」


 そう言うやいなや、エドガーは恭しくわたしの手をとった。そのまま彼の顔に近づけて、甲にキスを落とす。流れるような美しい所作で、それが極自然に馴染んでいる。その優雅な挨拶にぼうっとしながら、やはり彼は王族だったのだ、などと考えた。


「しかし、感心しないな。甲板とはいえ、独りで外に出るとは。もう夜中だよ。」


 彼は困ったような顔をして腕組みをし、ため息をつく。


「ごめん。でもね、見て?」


 そう言いながら、わたしは空を指差した。


「ほう、これは素晴らしい。」

「でしょう!この辺りは特に空気が澄んでいて、特にきれいに見えるの!」


 今夜はここで停泊すると決まったとき、実は小躍りするほど喜んでいた。丁度天気も良く、眠る前に星を見ておこうと思っていたとエドガーに話す。


「この辺りには詳しいのかい?」

「んー、ちょっとだけ、かな。」


 この辺りは母の故郷らしい。一度も訪れたことはないが、話には聞いていた。


「そうか、君のお母上の。」

「うん。嫁入りしてからは一回も帰ってないみたいだけどね。」


 言いながら、わたしは両親の顔を思い浮かべる。頭の中の母が、にこりと笑った。


「君の母君なら、きっと美人だろうね。」

「またそういうことを言うんだから。」


 彼の悪癖が始まった。面白くないわたしは、少しだけ頬を膨らませる。


「マリアのことは何だって知っていたいからな。」
「お母さんの事じゃない。」

「マリアの母君だからさ。」


 この人、いつか母まで口説くつもりだろうか。ますます面白くないわたしは、話を逸らそうと試みた。


「エドガーはお母さんとお父さん、どちらに似てるの?」


 エドガーは顎に手をやり、暫く考えてから答える。


「そうだな……俺達は叔父に似ているそうだから、父似かな。」

「へえ。じゃあ、お母さんには似てないの?」

「どうだろうね。」


 エドガーは、目線だけでに斜め上の方を見ている。彼も両親の顔を思い浮かべているのだろうか、とわたしは思った。


「やっぱり、お母さんもすっごい美人なの?」

「相当な美人だったとは聞いているよ。何でも『砂漠の泉』と、呼ばれるほどだったそうだ。だが、母は俺とマッシュを産んですぐに亡くなってしまってね。俺たちは母の顔を知らないんだ。」


 エドガーは、穏やかな、けれど寂しげな目をしていた。少し微笑んでいるようにも見えるが、瞳は悲しげに揺れている。


「……ごめんなさい。知らなかった。わたしったら、こんなこと聞いちゃって……。」

「いや、構わないよ。もう古い話だ。気にしなくていいさ。」


 それでも、申し訳なく思ってしまう。わたしはいたたまれない気持ちになって、エドガーにどう言葉をかけるべきかがわからなかった。
 そんなわたしを気遣ってくれたのか、エドガーは小さく微笑んだ。心配ない、と言われているような、優しい顔つきだ。


「母はね、当時まだ16歳だったそうだ。双子を生むには若すぎたんだろう。体が持たなかった。」


 エドガーは空を仰いだ。無数の星々が眼前に迫るように、暗い夜空に光っている。


「この星の中のどれかに、いらっしゃるのかな。」



 きっとそうだ。見守ってくれているんだ、とわたしは思った。
 不意に、エドガーに肩を抱かれた。そして、釣られてわたしも上を向いた。


 「出来ることならば、君を母に紹介したいんだがな。」


 エドガーはそう小さく呟くと、上を向いた姿勢のままのわたしに唇を重ねる。ほんの少しだけ、しょっぱいと感じたその時、小さな星の中のひとつが、一際輝いたような気がした。

20140715



あとがき
今回のは言わずと知れた、フィガロ王家の裏設定です^^
本編には名まえすら出てこないのですが、細かい設定がいろいろあって面白いんですよね
ファンの間で裏設定について賛否あるそうですが、わたしはこういうの、結構好きです
 ちなみにエドガーマッシュのお母さんの名前はクリステールさんだそうです
孤児院で育ってお父さんのステュアート・レミーさんに見初められて結婚したんだとか
魔導の力を持つ?みたいな案もあったそうですが、何も触れられてないところを見ると廃案になったのでしょうね
そうなるとこの人の出生の秘密がますますややこしくなりそうです




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