FF-D D+S New!夢物語

13 壮大な夢を


 オリビアは魔晄炉の中の長い通路を歩いていた。出口を目指してひたすら歩いている。時折現れるモンスターはセフィロスがさっさと倒してしまうので、オリビアはただ歩くだけで済んでいる。
 セフィロスは剣さばきも、姿勢も、相変わらず所作の一つ一つが美しい。特に今は、憂いを帯びた表情をしているせいか、それとも薄暗いせいか、とにかくそれらが彼を引き立てている。
 ずっと闘う様を見ていても飽きることは無い。そう思えるのはこのセフィロスくらいのものだろうと、オリビアは少し前を歩くセフィロスを眺めていた。

 オリビアにとってツォンは憧れだ。たまに同じ任務に出るとなると、ツォンの全ての技術を吸収しようとよく見ているつもりだ。だが、ツォンにここまでの優雅さはない。眺めるならセフィロスだろうななどと勝手に考えていると、セフィロスが不意に立ち止まった。
 オリビアを振り返ったセフィロスは、何ともバツの悪い顔をしていた。

「俺は、お前をダシにした」

 ぽつり、とそう言うと、セフィロスはオリビアを見た。普段の自信満々の英雄の姿は幻だったのかと思うほど、情けない顔だった。

「何か口実が欲しかったのだと思う。俺一人では、とても向き合えるとは思えなかった」

 セフィロスはため息をついて、足元の鉄板の隙間から見える魔晄炉の下部へ視線を移した。オリビアはセフィロスの自分の感情を持て余すような仕草に、意外だと思いつつほっとした。伝説のソルジャーと言えど、やはり人の子だったと思ったのだ。

「わたし、何にもしてないわよ。資料を回収しただけ」
「そうだな。だが、それでいい」
「ふうん」

 オリビアがセフィロスと目を合わせると、セフィロスは目を伏せた。彼はそのまま視線を動かして、落ち込んだ顔で遠くを眺めている。
 セフィロスは背が高く、体格もいい。なのに、この時のセフィロスは、オリビアにはとても小さく見えた。

「俺はずっと一人だった。孤独には慣れているつもりだった。だが──」

 セフィロスは遠くの魔晄炉の光を見つめたまま、これまでの思い出を辿るようにゆっくりと話した。

「友を得て、誰かと共に過ごす事を知ってしまうと……存外寂しいものだな」

 魔晄の光を眺めるセフィロスはとても幻想的だった。たとえ浮かない顔をしていても、それすら絵画から浮き出てきたような神聖さすら感じる。

「なぜ、奴らは俺に何も知らせずに去ったのか。俺達は友ではなかったのか。それとも、俺はそんなに頼りないだろうか」

 セフィロスは悲しみにくれた表示で一気に言うと、通路の手すりを両手でガバリと掴んだ。セフィロスは項垂れて、じっと動かない。
 オリビアはかける言葉をが見つからなかった。

「俺は……一人なのか……? 」

 ゆっくりと顔を上げたセフィロスは、ひどく悲しい顔でそう言った。その表情があまりにも悲壮で、オリビアは咄嗟に否定したくなった。事実はともかく、放って置くと自棄になるのではと思うほど荒れて見えたのだ。

「ううん。違うわ」

 面食らったような顔で、セフィロスはオリビアを見た。自分をすがるように見るセフィロスに、オリビアは改めて彼の孤独の深さを知る。

「少なくとも、わたしがいるわ。ザックスだって仲間でしょ」

 セフィロスは我に返ったようにハッとした表情になると、掴んだ手摺を放して姿勢を戻した。

「……悪かったな。こんな話」
「吐き出せるなら、その方がいいわよ。いつでも聞いてあげる」

 誰にも言わないから、とオリビアはニッコリ笑った。セフィロスも口元をほころばせる。少し嬉しそうな様子に、オリビアはほっとした。

「タークスの仕事は機密を守る事。口は硬いから安心して」

 そう言うとオリビアは歩き始めた。いつの間にか足が止まっていたセフィロスも、つられて歩き出す。

「そいつは頼もしいな」
「これでも敏腕エージェントの端くれよ」

 セフィロスは、声を出して笑った。表情もやや明るくなっている。

「オリビア。この後、仕事がないなら飯でもどうだ。この近くに気の利いた小料理屋がある」

 思わぬ誘いだっだが、悪くない。オリビアは、この際泣き言でも何でも聞いてやろうと思った。だが、オリビアが返事をしようとした時、オリビアの携帯が鳴りだした。

「はい、こちらオリビア。……ええ、今は伍番魔晄炉です。……了解」

 電話を切ると、オリビアは申し訳無さそうな顔で手のひらを合わせた。セフィロスも内容を察していて、既にいつもの仏頂面に戻っている。不機嫌というわけでも無いが、ようやく通常運転のセフィロスに戻ったといった具合だ。

「ごめんね。セフィロス。任務、入っちゃった」
「ああ、また誘う」

 残念そうなセフィロスだったが、さして気にしない風でまた歩き始めた。二人は魔晄炉の出口で解散し、オリビアはそのまま伍番街スラムへ向かう。

「今日は、教会に来てるかな……スラムにはあまり被害はなかったようだけど」

 オリビアの新しい任務は、世界でたった一人の「古代種」の身辺警護だ。ジェネシスの襲撃による混乱がまだ続く今、その古代種の身の安全を確認せよとの命令が、たまたま近くにいたオリビアに充てられたのだ。

 古代種は、名をエアリスという。彼女の警護任務は長年ツォンが主に請負っているが、オリビアも時折出向く事がある。
 エアリスとは同性で割と歳も近く、互いに見知った仲だ。けれど、かといって友達でもない。あくまでも仕事の一環として接するのが、少なくともオリビアには少々複雑だった。

「あ、居た。エアリスは無事ね……あら。あれは、ザックス? 」

 オリビアはいつもエアリスが居る教会に向かっていたのだが、そこへ行く途中のマーケットでエアリスを見つけた。けれど、なぜか伍番魔晄炉ではぐれたはずのザックスがエアリスと一緒にいる。

「知り合いだったの……? ううん、そんなはずない。これまで一切名前なんて出なかったし」

 今うかつに出て行くのは得策ではないだろう。さり気なく人混みや建物の影に隠れながら、ザックスとエアリスの様子を伺う。後で報告しておこうとオリビアが思っていると、ザックスの脇に少年が寄って来た。少年はザックスにドンとぶつかって、そそくさと逃げて行く。

「あ、スられた」

 エアリスの任務の途中でなければ、すぐに少年を捕まえに行くところだ。だが、今は出られない。それなのに、ザックスは財布をスられた事に全く気付いてない。
 オリビアがヤキモキしていると、エアリスがザックスに何か言っている。ザックスはそれでようやく財布が無いことに気がついたらしい。彼はパニック気味に慌てている。

「気付きなさいよ、1stでしょう……」

 オリビアはそう呟くと、物陰で頭を抱えた。

2020/06/11
セフィロスがすんごい情けない男になってる。
でも、そのくらいさらけ出せる人が居なかったからジェノバに負けたんじゃないかなと思うわけです。
孤高の英雄であるが故の悲劇かな、と。
うちの英雄はちょっとかっこ悪いかもしれない。

2023/06/16
リメイクに際して、どこで聞いたか忘れたけれどセフィロスはあくまで自分の意思で星を我が物にしようとしているんだとか。つまり、ジェノバには負けてない。むしろ勝ったのかも。ジェノバの意思に負けたのかもしれない、というのが長年のわたしの解釈でしたが、そうじゃない事が判明した模様です。
さあ、これは夢だから!を3回唱えてから続きをどうそ!


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