FF-D D+S New!夢物語

15 彼の人は果たして


 オリビアはカードキーを通した。襖のようにすっと開いた自動ドアを超えて資料室へ入る。オリビアは「なるべく急いで資料室に来るように」とセフィロスに呼び出されていた。

 目的の人物は探すまでもなかった。大きな身体で小さなパイプ椅子にちょこんと座り、セフィロスは黙々と資料を読みふけっている。
 データは何れも古く、その多くは紙の資料だ。セフィロスの陣取るテーブルには、資料の入ったファイルが山のようにうず高く積み上がっている。

「セフィロス。来たわよ 」

 オリビアの声にセフィロスはやや遅れて反応した。セフィロスは顔を上げると、オリビアをじっと見る。クマはないが、随分くたびれて見えた。

「ねえ、ご飯食べてる? せっかくの美肌がやつれてるよ」
「そんなものどうでもいい」
「えー。勿体無い」

 オリビアの言い分に、セフィロスは怪訝な顔をした。

「俺はちゃんと働くし、いくら肌がきれいでも強くはならん。問題ない」
「そういう事じゃないんだけど」

 セフィロスは反論すると「もう言うことは無い」と言わんばかりに、視線をまた手元の資料に戻した。

「何調べてるの? 」
「昔の実験──いや……」

 セフィロスは何か言い淀むように濁すと、それきり黙ってしまった。いつもの仏頂面よりも難しい顔をして、説明するのを躊躇うような表情をしている。
 オリビアは一旦聞き出す事を諦めて、積み上がったファイルを一冊手に取った。それは既に神羅を去って久しいガスト博士の研究レポートで、古代種について書かれている。

「古代種、か……」

 オリビアの脳裏にエアリスの笑顔が浮かび上がった。

 エアリスはオリビア達タークスの保護対象だ。いつも誰かに監視され、干渉されるような不自由な生活なのに、エアリスはいつも快活で朗らか、そして自由だ。オリビアはタークスである事に誇りを持つ一方で、死ぬまでタークスである事に縛られている。オリビアは、エアリスが眩しくて仕方がなかった。
 資料を眺めながら思いを馳せるオリビアだが、大事なことをまだ聞いていない事に気が付いた。オリビアはファイルを机上の山に戻すと、再びセフィロスに声をかけた。

「ところでセフィロス。何の用? 」

 ゆるゆると顔を上げると、セフィロスは面倒くさそうに答えた。

「いや、特にない」
「……は? 」

 セフィロスは悪びれもなく、また意識を資料に戻した。しかしオリビアとて暇ではない。思わずぷっと頬を膨らませる。

「ちょっと。便利に使えると思わないでくれない? 」
「思ってない」
「もう行くわ」

 オリビアはくるりときびすを返した。突然呼び出すからには何かあったのかと急いで仕事を片付けて来たのだ。用もないのに呼び付けられてはたまらない。
 だが、オリビアはそれ以上進むことは出来なかった。

「待て」

 オリビアはセフィロスに手首をぐいと掴まれて、その反動でむしろ後ろへ倒れた。セフィロスが抱きとめたので怪我はないが、小柄なオリビアにはひとたまりもない。

「……少し鈍くさくはないか」
「あんたのせいでしょう」

 セフィロスを睨みつけるとオリビアは体勢を整えて立ち上がった。セフィロスは、立ち去ろうとするオリビアの背中を追うように椅子から立ち上がり、静かに呼び止めた。

「ここにいてくれ。それだけでいい」

 セフィロスの声があまりにも寂しくて、オリビアは思わず立ち止まった。ゆっくり振り返ると、セフィロスは思い詰めて疲れきった顔をしている。けれど目は真っ直ぐにオリビアを見ていて、真剣そのものだ。
 セフィロスを見捨てる事に罪悪感を覚える程の出で立ちに、オリビアは半ば白旗を上げてしまっている。

「どうして? 」
「怖いんだ」

 オリビアは目をぱちくりさせてセフィロスの近くへ戻った。世界最強の男に怖いものなど無いと思っていたオリビアには、セフィロスの「怖い」が意外だったのだ。
 オリビアが見上げると、セフィロスはやはり情けない顔をしている。彼のファンが見たら失望するのではないかと思うほどの表情に、オリビアは折れてやる事にした。

「俺は真実を探している。だが、知るのが恐ろしい」
「ジェネシスと、アンジールの? 」

 オリビアの問いに「いいや」とセフィロスは横に首を振る。

「俺自身の事だ。まだ大した資料は見つかっていない。だが……」

 セフィロスはため息をついた。まだ半信半疑といった風な気持ちで資料を探しているが、同時に何かを確信しているような風でもある。セフィロスは自分の悪い予感を否定する確証が欲しいのだが、どれも肝心な部分には触れられていなかったとオリビアにこぼした。

「わかった。今日はもう仕事終わったし、任務が入らない限りいいわ」
「……ありがとう」

 仕方ないなあとオリビアが笑ってみせると、セフィロスはほっとしたした顔をして口元を綻ばせた。

「ま、とりあえず何か食べたら? さっきカフェテリアを通って来たけど、空いてたよ」

 オリビアは言うが早いかセフィロスを引っ張って、カフェテリアへ向かった。


2020/06/19
ルクシーレ氏によると資料室には携帯持ち込み禁止らしいんですが、タークスは特例なんじゃないかなー? なんて思った次第です。
英雄さんはとにかく落ち込みまくって、その末に自分は? と気づく瞬間がどっかであったんでしょうね。きっと。
苦悩が深すぎて辛いから、CCは一回最後までクリアしたら途中までしか進められなくなってたなあ、わたし……。


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