17 選び取る事は
イヴはセフィロスと共にソルジャー司令室へ駆け込んだ。もしも自分がいない間にラザードが何か悪事を働いていたら、と思うとイヴはいてもたっても居られなかった。
とはいえ、もしも本当に何かが起こっていても、自分一人ではどうにもならない。それどころか巻き込まれるか、返り討ちに遭うかのどちらかになることは十分に想像できる。それで言い出しっぺのセフィロスを捕まえて大急ぎで戻って来たのだが、司令室は普段と変わらない。いつもの風景の中に、いつも通りのラザードが座っていた。
「あ、あれ……? 」
イヴはヘナヘナとへたり込んだ。何も起こっていなさそうな事への安堵感と、常の運動不足が堪え始めている。
「イヴ? 」
ラザードはへたりこむイヴに驚いて、入り口まで走ってきた。セフィロスはイヴの手を引いて立たせるが、イヴはまだ呼吸が乱れてゼイゼイしている。
「どうしたんだい。何かがあったのか? 」
セフィロスとイヴを交互に見て、怪訝そうな顔をした。
「いや、特に何もない」
「そうかい? やけに急いで来たように見えたんだけどね」
訝しがるラザードに、セフィロスは涼しい顔でふ、と笑った。
「リフレッシュルームからここまで、俺よりも早く来られたならコーヒーを奢ってやろうと言う話になってな」
セフィロスはチラリとイヴを見た。ようやく息を整えたイヴは、なんとか話しを合わせようと必死に頭を回転させる。
「そ、そうなんです。1st相手に無理だって言ったんですけど、ハンデくれるっていうからつい……はは、大人気なくてすみません」
イヴはそう言うと、誤魔化すように頭を掻いた。
「だが筋はよかったぞ。訓練、やってみるか? 」
セフィロスはさも面白そうに、口角を釣り上げている。
「え、無理よ。わたし文化系だから」
「そりゃ残念だ」
セフィロスはニヤニヤ笑いながら、司令室にあるソファにどっかりと座った。
「今度のモデオヘイムへの任務だが、冬物のコートが欲しい。自分で見繕うから支度金をくれ。イヴ」
目配りするセフィロスにイヴはほんの一瞬だけ
思惟すると、セフィロスの意図する事を汲み取った。にっこり笑うと、早速デスクから金庫の鍵を取り出す。
「わかったわ。ちょっと待ってね」
イヴはデスクの下に潜り込んだ。隣り合うラザードとイヴのテーブルの下には金庫が入っている。
ソルジャー達への支給品は、大抵会社から直接支給される事がほとんどだ。けれど、今回のセフィロスの用に、任務で必要ではあるが個人的に調達事が必要な物に関しては、現金で支給する。基本的に償還払いで、領収証さえあれば後で精算できる。だが、信用さえあれば先に必要な分だけ貸すこともあった。
セフィロスはソファに座ったまま、イヴが潜ったデスクをじっと見ている。イヴは金庫の鍵を開けた。そこにはいつも通りの金額が、いつも通りに収まっている。
「セフィロス、幾ら? 」
「5万」
「はいはーい」
イヴがセフィロスに現金を手渡すと、セフィロスはコートのポケットに仕舞った。
いくらセフィロスといえど、少々高額である。にも関わらず、イヴはあまりにも躊躇なく紙幣を手渡したので、ラザードはチラリと彼らに視線を寄越した。だが、イヴもセフィロスも素知らぬ顔だ。忙しそうに出納台帳に書き込むイヴを尻目に、セフィロスはさっさと司令室を出て行った。
セフィロスが部屋を出るとすぐに、イヴの携帯がブルブルと震えた。イヴは喜々として携帯を手に取るが、そのテキストの差出人はセフィロスだった。今回もハズレである。イヴはまたため息が出た。
メールの内容は、金庫の中身が無事だったかどうかを問うものと、ラザードに変化があれば知らせる事への念押しだった。
「ああ、もう。ツォンもセフィロスも甲斐性なしめ……」
イヴは心の中で毒づくに留め、仕事に戻った。
ラザードが怪しいのは本当だろうか。イヴにはまだ信じられない。
念の為に尤もらしい理由をつけたセフィロスに乗って金庫を開けたが、特に普段と変わりなかった。しかし、ソルジャーの給与をちょろまかしているのが本当ならば、統括の地位どころか会社からも追放されそうだ。
もしもラザードがいなくなると、ソルジャー部門の存続はどうなるだろう。万年大赤字のソルジャー部門に、社長は渋い顔をしているという。後任の統括を寄越すとは、イヴにはとてと期待できなかった。
とはいえ、さすがにソルジャーをまとめて解雇する事は無いだろう。しかし、自分の立場はどうなるだろう。いまさら他の部署へ移動になるのか、それとも体よくリストラされるのだろうか。そう考えて、イヴは顔を青くする。
(統括、ほんまに横領なんかしてはるんやろか……参ったな……)
だが、イヴの憂いは現実となる。翌朝、ラザードはいつまで待っても姿を表さなかった。金庫の中身と共に、その姿を消してしまったのだった。
2020/06/30
ラザード失踪!
子犬ちゃんは今ごろコスタで強制バカンスです。そしてツォンさんたらリゾートでも涼しい顔してスーツで現れるんですよね。うーんプロフェッショナル。
この頃ツォンさんはかなり忙しいんじゃないかなと。世界をあっちこっち飛び回ってますやんか、と。
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