FF-D D+S New!夢物語

18 出来ただろうか。けれど、


 オリビアはヘリの最終点検をしていた。これからそれを操縦してジュノンへ向かう事になっている。
 オリビアが操縦席を一通り確認して一旦ヘリの外へ出ると、オリビアの後ろにセフィロスが立っていた。オリビアはセフィロスを振り返って見上げると、小首をかしげる。

「ねえ、モデオヘイムに行くって言ってなかった? 」
「ああ」
「ここで何してるの? 」

 モデオヘイム行きの軍用トラックがそろそろ出発するはずだ。けれど集合場所は地下駐車場で、このヘリポートは屋上にある。セフィロスは地下にいるべきなのに、行き先も集合場所も真逆である。
 けれど、オリビアの質問にセフィロスは真顔で且つ平然と答えた。

「モデオヘイムへ行くのさ」
「これ、ジュノン行きなんだけど」

 セフィロスは「知っている」とだけ返事すると、そそくさとヘリに乗り込もうとする。

「意味が分からないわ」
「野暮用だ。先にジュノンに寄りたい。それに……いや、いい」

 何か言いかけて言うのを止めた、といった風のセフィロスにオリビアはますます変な顔をした。

「ええ? 何? 気になるわ」
「気にするな」
「無理よ。聞きかけたもの」

 どこまでもマイペースなセフィロスに、オリビアは呆れ顔だ。そんなオリビアをじいと見つめると、セフィロスは右手をヘリに付いてオリビアを見下ろした。少し屈みながらオリビアの耳元にそっと囁く。

「言ったら、オリビアは応えてくれるのか? 」

 オリビアは息を飲んだ。セフィロスとヘリの間で、セフィロスの悩ましい視線を一身に受け止める。俄に胸がドキドキし始めて、オリビアは一瞬言葉を失った。
 オリビアはすっかりセフィロスに翻弄されている。けれど流されるまいと、必死で抗う。動悸は激しい。れど、あくまでも平常心を保とうと努めた。 
 だがオリビアの動揺を尻目に、セフィロスはちゃっかり後部座席に収まってしまった。さっさと乗り込んで、既にシートベルトまで締めている。
 背の高いセフィロスには、ヘリの内部はやや窮屈そうだ。長い脚を折りたたんで、やや前傾姿勢でオリビアを見る。

「ともかく、行き先は同じだろう。頼む」

 いいけど、といいながらオリビアはセフィロスに向き直ると、腕組みをしながらため息をついた。

「順番が逆ね。先に頼みなさいよ」
「そうか。悪かった」

 セフィロスがシュンとした表情で素直に謝ると、オリビアは怒ったフリを続けながらプッと吹き出した。

「良いわ。もう、大きな子供みたい」

 オリビアがふふふと笑うと、セフィロスは少しムッとした。

「聞き捨てならんな」
「あら、だってすっごくワガママじゃない」

 セフィロスの顔には納得が行かないと書いてある。それを見て、オリビアはまた笑った。
 セフィロスはケラケラ笑うオリビアに何か言い返そうと口を開く。だがその時、ツォンが現れたために会話はそこで一旦途切れてしまった。

「オリビア、待たせたな。出発しよう」
「はい! よろしくお願いします」

 オリビアはくるりと振り返ると、溌剌とした笑顔でツォンを迎える。

「ああ、よろしくたの……セフィロス? 」

 ツォンはヘリの後部座席にセフィロスが乗っていることに気付いて驚いた。ツォンはオリビアと同じように、セフィロスは地下駐車場から出発するものと考えていたのだ。
 オリビアが事の顛末を説明すると、ツォンはそれ以上何も言わなかった。何か言った所でこの頑固な英雄は行動を変えることはないと、ツォンはそれなりに長い付き合いから知っている。余計な事は言わぬに越したことはない。

 一方セフィロスはさらに不満そうな顔をしていた。オリビアとの言葉の応酬を楽しんでいたのに、とんだ邪魔が入ってしまった。セフィロスはフンと鼻を鳴らすと、操縦席に乗り込むオリビアを後ろから眺めた。
 オリビアはキラキラした瞳でツォンを見ている。さらにツォンと遣り取りするオリビアからは、どこか心が浮き立つような喜びすら感じた。

 セフィロスは面白くない。
 セフィロスはザックスがジュノンにいると聞いていて、さらにオリビアもそこへ派遣される事も本人から聞いた。それらを口実にオリビアと同行ようと目論んでいたのだが、まさかツォンも居るとは想定外だった。
 しかも、オリビアは分かりやすくツォンに好意を向けている。せっかく無理やりオリビアのヘリに押しかけたのに、セフィロスの計画も気分も台無しだ。実に面白くない。セフィロスは大きなため息をついた。

 やがてヘリは定刻通り、ジュノンへと向かって空へ舞い上がった。

2020/07/04



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