FF-D D+S New!夢物語

19 思い描いた通りではなくとも


 そろそろジュノンにさしかかるという頃、ツォンは難しい顔をして携帯電話を睨んでいた。
 かれこれ20分は画面とにらめっこしたまま固まっていて、ツォンの眉間のシワは深くなるばかりだ。ツォンをこんなにも長く悩ませる案件とは、いったいどんな無茶な任務なのだろう。気になって仕方がないオリビアは、思い切ってツォンに聞いて見る事にした。

「ツォンさん。新しい任務ですか? 」
「ん? いや、これは……すまない。私用だ」

 ツォンはハッとした顔でオリビアを見ると、急いで携帯をスーツのポケットに仕舞った。

「あ……すみません。すごく難しい顔で考え事されてたみたいだったから、仕事かと思って」
「すまない。私としたことが」

 ツォンはバツの悪い顔つきでそう言うと、咳払いをした。

「二週間ほど、返事をしそびれていてな」
「……はい? 」
「その相手に、どう返信すべきかを考えていた」

 ツォンはもともと生真面目そうな表情を、今はさらに固くしている。けれど、瞳は捨てられた子犬を連想するほど困り果て、切なく揺れていた。

「ツォンさんでも、そんな事があるんですね」
「そうか? 忙しいと偶に……いや、しょっちゅうやってるか」
「あああ……任務中だと、確かに……」

 オリビアも割と最近、バノーラで音信不通をやらかしたばかりだ。首の痣はすっかり治ったが、もちろん連絡どころではなかった。

「確か、モデオヘイムでスキッフが墜落した頃だったかな。件のテキストを受信したのは」

 目指していた施設や村から離れていたために、電波が届かず携帯電話は完全に圏外だったとオリビアは聞いている。ツォンはその任務を遂行後、そのままコスタに派遣された。そして、今度は息つく間もなくジュノンに向かっている。
 既に人間らしい生活から離れつつあるツォンに、テキストなど返しそびれても仕方がない。むしろ無事に生きて仕事をしている事が素晴らしいくらいだ。同じタークスであるオリビアならそれがよくわかる。だが、ツォンの口振りからその相手はきっと違うのだろうとオリビアは予測する。

「ツォンさん。もしかして、彼女ですか? 」

 オリビアは冗談めかして、けれど本気で聞いてみた。ツォンは虚をつかれたような顔をした後、キュッと口角を上げる。
 オリビアに俄に緊張が走った。答えを聞きたいけれど、聞きたくない。何故だがいい予感は全くしなかった。

「……そう、だな。長らく音信不通だった為に愛想を尽かされないかと心配しているところさ。女には、大抵それで振られる」

 そう言いつつも、ツォンは穏やかな表情で笑っている。相手との信頼関係まで見えた気がして、オリビアは金槌で頭をぶん殴られたような気分だ。
 オリビアは自分で聞いておいて、ツォンの答えに相当なショックを受けている。否定されることを心のどこかで期待していたのだが、結果は見事に玉砕である。
 そして、ツォンの相手はきっと、あのソルジャー部門の統括補佐だ。リフレッシュルームでの、ツォンを心配するイヴの振る舞いからもほぼ間違いない。タークスの訓練と実戦でで鍛えられたオリビアの第六感がそう言っている。

「きっと、お相手も心配されてますよ。ツォンさんの事」
「ありがとう」

 ツォンは「そうだといいな」と言って、にこやかな表情のまま窓の向こうに視線を遣った。

「そろそろジュノンか……またしばらく返信しそびれそうだ」

 ツォンは自虐的な笑みを浮かべながら呟いた。ツォンはおどけて見せたつもりだったが、オリビアにとってはとどめを刺されたようなものだ。込み上げる物をぐっと飲み込んで、オリビアは操縦桿を握り直す。
 オリビアは泣きたい気分だった。けれど、ここで泣くわけにはいかない。自分の心をこんな形でさらけ出すのは、どうしても嫌だ。
 オリビアは努めて心を無にしている。今はもう、何も考えたくはない。

 程なくしてジュノンのオペレーターから通信が入った。天気は良好。オリビアは憎たらしいほど晴れ渡った空を睨みつける。そして、そんなオリビアをセフィロスは苦い顔で後部座席から見つめていた。


2020/07/08
ヒロイン失恋!
でもここから!


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