FF-D D+S New!夢物語

20 かつて憧れていた


 オリビア達がジュノンに着いた時、ジェネシスコピーが大量に押し寄せて、街は既に大混乱だった。神羅兵、ソルジャー、そしてタークスまでもが総力を上げて対応する。
 ようやく退ける事が出来た頃には、ジュノンで取り調べ中だったホランダーにはまんまと逃げられたことが判明した。

 セフィロスはお目当てのザックスに会うことも出来て、ようやく彼の本来の任務地・モデオヘイムへ赴く事になる。
 セフィロスはこれから乗り込む予定の飛空艇を見上げた。見事な夕焼けに照らされて、飛空艇はキラキラと輝いている。シビアな戦況とは裏腹に、風景だけはとても幻想的で美しかった。

「逃げられたな」
「そうね。でも、ジュノンのタークスが足取りを追っているの。すぐに見つかるはずよ」

 オリビアは栗色の髪をかきあげた。ちょうど吹き始めた風が気持ち良いが、なびいた髪がバラバラと乱れている。

「そうか。いくらジェネシスとつるんでいても、タークス相手ではホランダーも分が悪い」

 セフィロスは口元だけでふっと笑った。

「さて、俺はそろそろ行かねばならない」

 セフィロスは視線をオリビアに向けると、彼女にゆっくりと近づいてゆく。

「うん。気をつけて」

 風が強くなってきた。オリビアはなびく髪を抑えながら、近づいて来るセフィロスを待っている。

 セフィロスの長い髪が、風に弄ばれてふわりと舞った。強い西日が当たり、オリビアにはセフィロスに後光が差したように見える。
 セフィロスはオリビアの目の前までやって来ると立ち止まり、オリビアを見下ろした。そのまますこし屈むと、セフィロスはオリビアをじっと見つめた。

「俺にしておけ。オリビア」

 オリビアはハッとしてセフィロスを見上げた。セフィロスはいつになく真剣な表情だ。その翡翠色の瞳は、真っ直ぐにオリビアを捉えている。

「セフィロス? 何を―」
「ツォンだろう。わかっている。けれど」

 オリビアが言い終わる前に、セフィロスは自らの唇でオリビアの口を塞いだ。触れるだけだが、オリビアの言葉と思考を奪うには十分だった。

 すぐに離れて行ったのに、触れた場所は意外なほどの熱を持っている。それがオリビアをひどく揺さぶった。

「今すぐ答えなくてもいい。だが、俺は本気だ、という事だけは伝えておきたい」

 オリビアが二の句を継げぬうちに、セフィロスはさっさと飛空艇に乗り込んでしまった。

 セフィロスの長い髪に覆われた背から、オリビアは目が離せなかった。片手で口元を覆うと、幾度もセフィロスのセリフが頭を木霊する。けれど、未だにそれを飲み込み切る事が出来ない。

「キス、された……」

 セフィロスが自分をどう思っていたかなど、オリビアこれまで考えもしなかった。便利に呼び出されているくらいの認識だったし、むしろ常にツォンで頭も胸もいっぱいだった。
 とはいえ、ツォンには何も始まらない内に振られてしまった。心が大きく傷付いた矢先に、思いもしない男に愛を囁かれる。妙な巡り合わせにオリビアは恨みすら覚えた。

 いっそ縋ってしまえば楽だろうか。けれど、それではセフィロスに悪い。オリビアは考えの纏まらないぼんやりした頭で、ぐるぐると堂々巡りを繰り返す。
 セフィロスときちんと向き合うには、オリビアはとにかく心の整理をつけなけれぱならない。セフィロスの言葉に甘えて、すぐに答えを出すのは止めたほうが良さそうだ。そこまで考えると、オリビアはとにかく落ち着こうと決めた。

 心が少し静まると、オリビアにはさらに別の懸念が生まれた。キョロキョロと辺りを見回し、人の気配の無いことを確認する。

「まさかこんな所にファンクラブの人なんていない……よね」

 セフィロスファンに知れたら袋叩きに遭いそうだ、とオリビアは身震いした。素人相手に下手な手出しは出来ない分、何も起こらない方が良いに決まっている。
 見たところ、広いヘリポートには誰もいない。オリビアはホッと息をついた。

2020/07/10
セフィロスくんの猛攻撃


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