22 彼は
イヴとツォンが再会を喜び合っていた頃、セフィロスはやはり資料室にいた。
セフィロスはテーブルに着くことも忘れ、座る手間さえ惜しんでひたすら資料を読み漁さっている。数ヶ月かけて読んだ結果的、遂に全て読み終わろうとしていた。
だが、やはり肝心な部分がどうも抜け落ちている。近いところにはたどり着けても、最も知りたい事に関わることは、まるで初めから無かったかのように内容が変わってしまうのだ。
「またか……」
セフィロスは深いため息をついた。もう殆ど全ての資料を読んでしまっている。セフィロスは、このままでは真実にはたどり着けないのではないかという気になっていた。
なんとも苦い気持ちが、胃のあたりに流れ込んで来る。歯痒すぎて気持ちが悪かった。
「やっぱりここね」
ガチャリと扉が開くと、栗毛がひょっこりと顔を出した。
「オリビア」
セフィロスとオリビアは、ジュノンで別れて以来だった。足早に歩み寄るオリビアに、セフィロスは緊張と会えた喜びが混ざりあった気分だ。
「セフィロス。任務よ」
「……ああ」
セフィロスはそう言うと、手にしていた厚いファイルを閉じる。遂にこのビルにある資料は全て読んでしまった。
せっかくオリビアに会ったのに、セフィロスは何を話せば良いか分からなくなってしまった。好意を自覚してしまうと、以前のように気軽に呼び出せなくなっていた。
それに、ジュノンでの告白後、まだオリビアから返事を聞いていない。待つと言った手前、自分から聞くのは気が引けた。
セフィロスが思いを巡らせていると、オリビアがセフィロスを見上げている事に気付いた。オリビアの心配そうな表情に、セフィロスは心がぎゅっと締め上げられる。衝動的に抱きしめてしまいそうになるのを、努めて冷静そうな顔を作って押し留めた。
「どう? 」
オリビアの問いに、セフィロスは否定の言葉の代わりに首をゆっくりと横に振った。全ての資料に目を通したのにも関わらず、結局全部ハズレだった。
ラザードの横領に気づいただけでも儲けものだったかもしれないが、それはセフィロスの本来の目的ではない。
「ここまで無いとなると、科学部門の連中はどうしても俺に読まれては困るということだろうな」
セフィロスはファイルを睨みつける。古ぼけた青いプラスチックの表紙はやや色褪せて、如何にも年季の入った感があった。
「俺は神羅で育ち、物心付いた頃には科学部門の実験に付き合わされていた。それなのに、何も無いわけがあるまい」
オリビアは驚いた。ソルジャーならは、健康管理のために時折科学部門に呼ばれることがあるのは知っている。けれどそれは科学部門がソルジャーになるための手術を施しているからであり、幼少期から通う必要はないはずだ。
「どんな実験したの? 」
「あまり覚えていない。幼かったからな」
セフィロスはこれまで自分の生い立ちをあまり気にしていなかった。他を知らないし、知ろうともしていなかった。だが、同じソルジャークラス1stだったアンジールとジェネシスを追う内に、彼らが作られた人だと知ってしまった。それ以降、セフィロスはただならぬ不安感と焦りに支配されている。
「俺も……まともに生まれた存在ではないなのかもしれない。そう思うと、恐ろしくてたまらない」
セフィロスはそこまでしゃべると口を噤んだ。
「すまん、今のは忘れてくれ。まだ憶測だ」
「今からの任務、ニブルヘイムなんだけど……」
突然話し始めたオリビアに、セフィロスは不思議そうな顔をする。何の脈絡もないかに思えたが、次の言葉を聞いたセフィロスの顔付きが変わった。
「そこに古い建物があって、それは昔の科学部門が実験に使っていた施設らしいの。もしかしたら」
「そこに何かあるかもしれない、という事だな」
「ええ。もしかしたら」
セフィロスは持っていたファイルを棚に戻すと、資料室の出口へと歩き始めた。
「とりあえずブリーフィングルームで集合よ」
「分かった。詳しいな」
セフィロスは隣に並んで歩くオリビアを、感心したように見下ろした。
「あら、だってわたしも同行するんだもの。言ってなかった? 」
オリビアはそう言うとにっこり笑い、資料室の扉にカードキーをかざした。
2020/07/21
FF-D D+S New!夢物語
- 23 -
prev * next
しおりを挟む
MODORU