23 近づく事はできただろうか。
オリビアはタークス本部へ来ていた。ニブルヘイムへの出立前に寄るようにとのツォンからの指示である。そのツォンは一人で事務仕事をしていて、この部屋にはオリビアとの二人きりだ。
主任であるはずのウェルドが不在で、代わりに副主任のツォンがタークスを切り盛りしていた。
「ツォンさん。セフィロスの件ですよね」
「ああ、そうだ。聞こう」
ツォンはパソコンに向かっていた身体を、脇に立つオリビアに向けた。
「セフィロスは、自分の出自を疑い始めています。ジェネシスたちのように作られた存在ではないか、と」
「そうか……科学部門のやりそうなことだ」
ツォンは険しい顔でため息をついた。
「セフィロスが神羅をも疑い始めるのも時間の問題かもしれません
「そうだな。だが、機密を知りすぎた事には変わりない。このまま監視を続けてくれ」
「……はい」
淡々と告げるツォンにオリビアは困惑していた。だんだんセフィロスと仲良くなるにつれて、オリビアはこの監視任務がつらくなって来ている。だが元より拒否権などないし、拒否したらそのままツォンにこの場で
退職させられるのは間違いない。
用は済んだ。オリビアはタークス本部を出ていこうと踵を返す。任務のために気持ちを切り替えようと努めていると、ツォンが呼び止めた。
「あまり、ターゲットに情をかけるな。辛くなるぞ」
オリビアがはっとして振り向くと、ツォンは苦笑いしていた。
「お前たちはなかなか馬が合うようだから、この件はオリビアが適任だった。だが……深入りはしないことだ」
ツォンはどこか遠い目をしている。想いを馳せるような面持ちで、自嘲するようにふっと笑った。
「私も、ターゲットに恋をしていたことがある」
「……え? 」
「立場と本音の間でかなり悩んだものだが、終わりは呆気ないものだった。横から掻っ攫って行った男がいたのさ」
ポカンとしているオリビアを見て、ツォンは声を出して笑った。
「何だ。そんなに意外か? 」
オリビアがこくこくと頷くと、ツォンは笑いながら彼のデスクに置かれていた冷めたコーヒーを口にした。
「こうして言葉にすると散々だな」
ツォンはコーヒーを飲み干すと、空のカップをデスクの端に置いた。
「けれど、そのおかげで目が覚めた」
ツォンはオリビアを真っ直ぐに見た。表情は真剣そのものだ。
「私たちはタークスだ。冷静になれ」
ツォンは優しく、しかしきっぱりと言った。有無を言わせぬツォンの迫力は只者ではない。オリビアは返事するので精一杯だった。
なんとか本部を出ると、オリビアはヘたり込むのではないかと思うほど疲れていた。思わず壁にもたれると、足元を見下ろしながらため息をつく。
「でもわたし……それでもセフィロスを裏切れない、きっと」
オリビアがセフィロスを監視してきた事は、まだセフィロスには気付かれていない。それなのに、セフィロスはオリビアに心を開いた。他には誰も寄せ付けないのに、だ。
心をすり減らしながらも真実を求めるセフィロス。オリビアもそれに応えたい。なのに、タークスという立場とその任務が立ち塞がっている。
葛藤も想いも全て隠したつもりだったが、ツォンにはオリビアの気持ちをあっさり見抜かれていた。ツォンは諭してくれたが、つまるところオリビアへの牽制でもある。
もしもセフィロスが本当に神羅を疑い始めたら、自分はどちらにつくのだろうか。セフィロスに肩入れしたら、間違いなく自分も神羅に、それも恐らくツォンに追われる事になる。それでもセフィロスに付いていく自分しか想像できずに、オリビアは途方に暮れた。
ツォンに追われるなど考えただけでもぞっとする。オリビアは背筋をぶるりと震わせた。
2020/07/28
突然の ツォン→エアリス→←ザックス の構図をねじ込んでしまった。
過去形にしてでもこの三角関係ははずせなかったわけです。
FF-D D+S New!夢物語
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